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現代的マイルドヤンキーアニメ 「WIND BREAKER」レビュー

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WIND BREAKER アクション
画像引用元: ©にいさとる・講談社/WIND BREAKER Project
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評価 ★★☆☆☆(37点) 全13話

TVアニメ「WIND BREAKER」本PV | 2024.04.04 ON AIR

あらすじ 「偏差値は最底辺、喧嘩は最強の風鈴高校で頂点に立つ」という強い意志を持つ少年・桜遥は、不良高校として知られている風鈴高校のある街に訪れる引用- Wikipedia

現代的マイルドヤンキーアニメ

原作はマガジンポケットで連載中の漫画作品。
監督は赤井俊文、制作はCloverWorks

差別

1話冒頭から非常に重苦しいシーンが始まる。
主人公は独特な見た目をしており、髪の半分が白く、
オッドアイという見た目だ。
生まれつきの髪の色と瞳の色、そんな見た目ゆえに差別されつづけ、
そんな声にあらがうために彼は「力」を求めている。

強さこそ正義、力があれば正しさを、自分自身を証明できる。
両親もおらず、一人暮らしをしている高校生というバックボーンも
気になるところだが、そこはあえて描かれず、
そんな主人公が己の強さを証明するために不良高校である
風鈴高校が存在する街にやってきている。

この街は特殊だ、数々のヤンキーの抗争があり、治安も最悪だ。
風鈴高校というクズ中のクズの集まる不良高校に
存在証明のために主人公はやってきている。
ある種の道場破りだ。風鈴高校のトップになる、それが彼の目的だ。
だが、一人ではトップになれないと助けた女性にいわれてしまう。

行き場のない孤独感を抱えた少年は自己確立のために
喧嘩という手段を用いている。
自分でもなにがしたいのかどうすればいいのかわからない。
そんな彼のピンチに「風鈴高校」の面々が現れるところから物語は動き出す。

孤独に、1人に、誰にも愛されず、誰にも信頼されなかった少年が
「風鈴高校」という場所で仲間に出会い変わっていく、
そんな物語が描かれる予感を1話できっちりと感じさせてくれる。

風鈴高校

主人公が思っていた「風鈴高校」の実態は違う。
街の治安は最悪だった、だが、「風鈴高校」が用心棒として
活動することで街の治安は落ち着き、町の住民は街の治安を守る彼を
防波堤ならぬ「防風鈴」とよび、信頼している。

この作品はいわゆるヤンキーアニメだ。
だが、そんなヤンキーが悪いやつ、いわゆる不良ではなく、
街の正義の味方として描かれている。この違和感自体は凄まじい。

誰も信頼できず信用してこなかった孤独な主人公が
街から信頼されているヤンキーと出会い変わっていく
ストーリーを描きたいのはわかるが、
そもそも街の治安を守るのは「警察」のお仕事だ(苦笑)

ヤンキーたちがナイフを持ち出したりして喧嘩をしてても、
誰も通報しない、誰も警察を呼ばない、警察のけの字もでてこない。
そういったツッコミが野暮であることはわかるものの、
日本を舞台にしていることもあり余計に気になってしまう。

「風鈴高校」の面々や街の人も転校生である主人公のことをやたらと
「外の人」とよんでおり、もしかしたら実は町ごとに高い壁で
区切られていて警察組織が機能していない架空の未来という
世紀末的な設定なのかもしれないと思ってしまうほど、
公的機関が機能しておらず、そもそも学校の先生すらいない。

そのあたりの舞台設定がきになると、
かなり引っかかるものの、とりあえずそういうものとして
飲み込む必要がある。町の住民もなにかあったら
警察ではなく彼らの連絡し、助けてくれたお礼に
いろいろな商品という名のショバ代を提供している。

街のみんなを守る良いヤンキー、それなのに学校は荒れまくりで
落書きもあちこちにある。街の治安を守る前に
学校内の治安をどうにかしろと思うのだが、突っ込んではいけない。
新学期早々に主人公の前には大漁のヤンキーが現れ、
タイマンを張っていく。

ストーリー自体はシンプルかつわかりやすいヤンキーアニメだ。

てっぺん

主人公の目的はシンプルだ、「風鈴高校」でてっぺんを取る。
だが、そんなてっぺんの座を狙うもの、
今の頭、てっぺんを狂信するものもいる。
四天王制度という、最近のファンタジーアニメですら
効かなくなったような設定まである高校だ(笑)

序盤は主人公やメインキャラを掘り下げつつ、
このややツッコミのある世界観を描いている印象だ。
ヤンキーアニメらしく「縄張り」という要素もあり、
「風鈴高校」以外のチームも存在している。

そんな縄張りで問題を起こした主人公たちのせいもあって、
「抗争」が始まる。清々しいほどのヤンキーアニメだ。
しかも、彼らは「タイマン」にこだわっており、
4話になると「チーム戦」が始まる。

主人公にとって自分の強さを証明するものではなく、
学校のために、仲間のために戦う、初めての喧嘩だ。

抗争

抗争は1対1の対決によるチーム戦だ。
武器などの使用はもちろん禁止であり、
細かいルールなどはないものの、どことなくスポーツアニメを
みているような感覚にすらなる。

この手のチーム戦はジャンプアニメでは伝統的な手法だが、
メインキャラクター一人ひとりが喧嘩をすることで、
そのキャラクターを掘り下げつつ、印書付をしている。
序盤からそうだが作品全体で喧嘩、戦闘シーンのアニメーションは素晴らしい。

流血表現などもあえて「血」のエフェクトだけを映すことで、
暴力的な表現の生々しさを薄めている部分があり、
おしゃれな音楽とともにきちんと「手足」の動きを描いている。

それぞれのキャラクターによって喧嘩の手法は違う、
だからこそ見せ方も違い、喧嘩ごとの面白みが生まれている。
タイマンの喧嘩、徒手格闘なアクションシーンは見どころだ。

そんな喧嘩、タイマンの中で「回想シーン」が挟まれる。
喧嘩している同士のキャラクターの過去、
このタイマンに至るまでどんなことをやってきたのか、
そんな回想シーンで敵キャラを掘り下げているのはわかるが、
それが余計にスポーツアニメっぽさが強くなる。

しかも、メインキャラクター、主人公側のキャラの強さが圧倒的だ。
そんな圧倒感をきちんと演出するアニメーションがあり、
喧嘩の強さの描写がそのままキャラの魅力につながっている。
美麗なキャラクターデザインでなおかつ有名な男性声優が
演じているおかげでより彼らの魅力も際立っている。

ただ、その一方でただの縄張り争い、
ヤンキー同士の抗争でしか無いため、ふとした瞬間に
「こいつらなんで戦ってるんだっけ…?」と
冷静になってしまいそうになる自分と常に戦わなければならない。

因縁

タイマンの組み合わせによっては因縁の相手であることもある。
幼い頃の知り合い、幼馴染同士の戦いなどもあるものの、
これまた過去回想を挟みながら喧嘩をする。

本当にスポーツアニメのような作り方ではあるものの、
ぽっと出の敵キャラを掘り下げるために回想シーンを多用しており、
それ以外で敵キャラの掘り下げが出来ていない。

戦う相手は力こそ全てなグループではあるものの、
そんなグループに所属している奴らも実は良い奴ら的なニュアンスで
過去回想が描かれている。
そんな過去回想でキャラのバックボーンを描き、
喧嘩が終わると友情が深まる。

ペラペラの過去回想でキャラ付けされても、
喧嘩やストーリーのテンポが崩れるだけで、
スポーツアニメと同じような欠点を抱えてしまっており、
回想シーンでは感動してくださいといわんばかりに
くそでかBGMで盛り上げようとしているのは
わかるものの盛り上がらない。

悪そうに見えて実はそうなった理由がありますというように
言い訳のような回想シーンばかりでテンポが悪くなっている。

スポーツアニメなら試合の駆け引きなどの面白さもあるが、
この作品の場合はスポーツアニメのように描いているが、
あくまで喧嘩であり駆け引きもクソもない。
キャラの強さに関しても特に裏付けがあるわけではないため、
バトルアニメのような修行シーンや特別な能力などもない。

色々と過去があるものはわかるものの、
そんな暗い過去を抱えて暗い気持ちでヤンキーをやって
喧嘩を続けるならやめればいいのにと思ってしまう。

そもそもチーム戦でタイマンで勝負しまくってるのに
主人公側が連勝で負けることがない。
こういったチーム戦の場合は5回戦あるとすれば、
2勝2敗な状況で最後に大将戦で蹴りがつくみたいなパターンが多いが、
この作品の場合は全勝だ。

最終戦の前にチーム戦なら勝敗が付いてるはずなのだが、
結局、各チームのヘッド同士の勝敗で決まるみたいな流れになっている。
チーム戦をした意味はあったのだろうか?と色々と疑問に感じてしまう。
タイマンに負けると急に「俺は間違ってた!」と気付き
良い子ちゃんになる流れも飲み込みにくい展開だ。

この4話から9話、仲の悪かった別チームと喧嘩をして
友だちになっただけだ。
そもそも彼らが4話から9話まで構想している間、
街の治安はどうなっているのだろうか(苦笑)

「風鈴高校」が街を守ってる云々も序盤以降、
特にその要素が出るわけでもない。

新キャラ

そんな構想が終わると新キャラが出てくる。
結局、1話からずっと、どんなキャラかというのを紹介してるだけだ。
それが時にクラスメイトだったり、敵チームで抗争をしたりしつつ、
孤独だった主人公が拳を通して人との交流を深めていく。

強さを示すことが存在確立であり自己証明だと思ってた主人公が、
多くの強者と出会い、そんな力ある者たちの生き方にふれることで、
自分の存在証明の方法、自己確立していく物語をしたいのはわかる。

ただもうひたすらにキャラが多い。
敵チームもそうだが、主人公たちの学校のメンツだけで
クラスメイト、上級生、四天王など多すぎる。
それが終盤どんどんでてくる。

2期が決まってるからこそのストーリー構成なのはわかるものの、
最終話も1クールの締りとしてはかなり中途半端になっているうえに、
先が気になるという感じではない作品だった。

総評:言い訳ばかりのヤンキーアニメ

全体的に観て主人公やキャラクターはしっかりと立っているものの、
そのキャラクターの魅力に世界観やストーリーが追いついていない印象だ。
ただのヤンキーが街の自警団になっている、その設定段階で
ツッコミどころが多いのに、それが生かされずにヤンキーアニメらしく
喧嘩ばかりに明け暮れている。

ただの縄張り争い、ただのいちゃもんで抗争が始まったかと思えば、
いちゃもんをふっかけてきた相手は悪そうに見えて実は
こういう過去があって本当は良いやつなんですという
言い訳のような回想シーンが喧嘩の合間にひたすら流される。

そもそもチーム戦なのに主人公たち側が全勝しており、
チーム戦の意味もよくわからず、
そんな構想が終わったかと思えば、またキャラが増えて、
2期全体の歯切れの悪いところで話が終わってしまう。

アニメーション自体のクォリティは非常に高く、
徒手格闘な喧嘩というものをメリハリのあるアクションと、
キャラを立たせる構図で描いており、
バトルシーンの関しては本当に素晴らしい。

しかし、ストーリー性が薄い。
ヤンキーという要素もガチなヤンキーというよりは
ファッションヤンキー感が強い。
美麗なキャラデザのキャラが泥臭くも血生臭くもなく、
殴り合う、クリーンなヤンキーアニメだ。

ヤンキーという文化自体が衰退した今だからこその
ヤンキーアニメという感じかもしれないが、
色々と惜しい作品だった。

個人的な感想:2期は…

2期は来年を予定しているものの、似たような流れが続きそうで
個人的に2期は観ないかもしれない。
もともとこの手のヤンキーものはアニメや漫画問わず、
好きなジャンルではないため
ノットフォーミーな部分もあったかもしれない。

2期でも回想まみれなんだろうなと想像できる部分もあり、
2期がそうじゃない雰囲気や評判が聞こえてきたら、
2期を見てみようと思う。

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