評価 ★★★☆☆(51点) 全12話
あらすじ アントムルグのダンジョンに消えた父を追い、単独で挑み続けてきたシーフの少女クレイ。探索の末、ついに前人未踏の地下9階に到達。そんな矢先にモンスターとの戦闘でダンジョンの壁が崩落!引用- Wikipedia
認知の壁をぶっ壊せ!
原作はwebアクションにて連載中の漫画作品。
監督は山井紗也香、制作はOLM Team Yoshioka
父の背中
主人公は子供のころから冒険者の父親に
スパルタ教育を受け、立派なシーフになっている。
だが、肝心の父親はダンジョンの中に消えて3年の月日が流れている。
そんな父親を捜しながらダンジョンに潜り続ける日々、
彼女はろくにパーティーも組まずにダンジョンに潜り続け、
地下9階まで到達している。前人未到の領域だ。
父はいったいどこまで下りたのか、そもそも生きているのか。
主人公が淡々とダンジョンの仕組み、システムについて
見ている側に説明しており、
1話冒頭からやや淡々としている部分はあるものの、
きびきびとした外連味を感じる戦闘シーンが小気味よく
物語に刺激を与えてくれる。
そんな彼女が9回での戦闘中に
壊れるはずのない「ダンジョンの壁」が崩れ、
なおかつダンジョンのモンスターがしゃべりだす(笑)
彼女が見てしまったのはダンジョンの裏側、
ダンジョンの「管理システム」そのものだ。
この世界のダンジョンは「管理」する存在がいる。
タイトル通り、この作品はそんなダンジョンの裏側、
ダンジョンの中の人を描いている作品だ。
ルール
ダンジョンにはルールがある、
モンスターと冒険者は会話をしてはいけない、
ダンジョンに裏側、管理してる存在がいることを明らかにしてはいけない。
あくまでこの作品の世界のダンジョンは自然発生的なもので、
管理している存在がいるなど常識では考えられないことだ・
ダンジョンには居住区もあり、そこに住んでいる者もいる。
主人公が出会ったのはまさに、そんなダンジョンの管理者だ。
そんな管理者にダンジョンの授業員としてスカウトされる。
どこかメタ的な視線で描かれる作品だ。
ゲームの登場人物たちが自分たちがゲームの存在であることにきづき、
ゲームそのものを管理するようなそんな感覚になる。
この作品の中の冒険者にとっては非常識ともいえる
ダンジョンの中の人、ダンジョンに隠されたシステム。
メタ的な部分に触れた主人公はメタ側に回る。
ダンジョンの中の人、管理者は同時にダンジョンのラスボスでもある。
そんなラスボス的存在である「ベル」。
ベルに父は負けたのか、父はどうなったのか。
それを知るためにも彼女はダンジョンの裏側へと足を踏み入れ、
ベルよりも強くなり、父の真相を知ろうとする。
常識外
主人公にとってダンジョンの真実は非常識なものだ。
ダンジョンに出てくるモンスターを雇用していたり、
ダンジョンで働くモンスターの要望に応えたり、
モンスターたちの複製肉体の真実を知ったり。
「シーフギルド」とダンジョンがズブズブにつながっていたり。
主人公にとっては理解しきれないことが多い。
ある意味、ダンジョンの真実がボケとなり、
そんな真実に驚き戸惑う主人公が突っ込みとなっている。
ダンジョンに挑み続けて10年、
そんな10年で知りもしなかった真実がどんどんと出てくる。
ただアニメーションとしてはやや地味だ。
淡々とダンジョンの真実、いわゆる設定について
ダンジョンの管理人である「ベル」が主人公に説明しており、
コメディタッチで描かれている部分はあるものの、
淡々と物語が進んでいく印象だ。
描かれる設定自体は非常によくできている。
多くの冒険者が挑むダンジョン、そんなダンジョンの魔物を
用意するのは大変だ。何百体用意しても足りない。
だからこそ、この作品ではあくまでダンジョンの中にいるのは
魔物の複製体のようなものであり、倒されれば元の体で復活する。
宝箱の中身の補充など、ダンジョンの管理者だからこその仕事、
冒険者に見つからないように「ダンジョン」というシステムを
成り立たせる様子は淡々としてはいるものの面白い。
そんな主人公にとって常識外なダンジョンの真実ではあるものの、
主人公自体も規格外だ。
父のスパルタ教育故に、父がある意味優秀だったがゆえに、
彼女もまた魔法を切るような規格外な技を持っていたりする。
友情
そんな冒険者としては規格外の主人公が
ダンジョンの管理人である「ベル」と出会い、
ダンジョンの真実を知ったことで仲良くなっていく。
この二人の関係性も微笑ましく、彼女たちの日常を楽しめる。
主人公は孤独だ、冒険者でありシーフだった父に
子供の頃から仕込まれ、ずっと冒険者としてシーフとして
たった一人でダンジョンに挑み続けている。
他者と関わることをあまり積極的にやってこなかった彼女にとって
ダンジョンのラスボスであるベルとの日常や
本来は敵だったはずの魔物たちとの交流は始めてのことだ。
彼女はずっと父の背中を置い続けている。
それが彼女の生きる意味であり、そして目標だ。
だからこそダンジョンの中に消えた父を追い求め、
たった一人で3年間もダンジョンに挑み続けている。
そんな彼女がダンジョンの中の存在たちと触れうあことで
少しずつ変化していく。ゆっくり、じっくりと、
彼女はみずからを見つめ直し、更に強くなっていきながら、
父の背中に近づけるように強くなり、内面も変化していく。
派手なシーンや劇的なストーリー展開はない。
淡々としたストーリーではあるものの、じんわりとした面白さがあり、
時折「仮の体」だからこその激しい戦闘シーンも描かれることで
物語にいい刺激が与えられている。
主人公の目的もきちんとある。
父を倒したかもしれないラスボスである「ベル」に
勝てるように強くなる。
そのために彼女はダンジョンの仕組みを知り、ダンジョンの裏側を知り、
冒険者では出来ない経験を積み重ねていく
親離れ
「ベル」も似たような立場だ。
先代と呼ばれる元ラスボス、元ダンジョンの管理者から
業務を引き継ぎ、彼女は孤独になった。
多くの仲間、ドワーフや魔物がそばにいるものの、
理解者足り得る存在が居ない。
父が行方不明の主人公、先代と別れたベル。
似たような立場の二人が徐々に親交を深めていく。
とくに6話は中盤、折り返し地点だからこそ、
この作品を象徴しているとも言える。
父から教わった知識が全てな主人公が「料理」を教わる。
自分で作ったまずい料理ではなく、
ベルとともにドラゴンの肉を量詞して一緒に食べる。
父が全て、父が絶対、父が正しい。
そんな価値観の少女が父が居なくなったことで、
外の世界を、ダンジョンの中で、知っていく。
世間知らずの少女が地下のダンジョンの内側にいる存在とからむことで、
変化していく。
これはある種の親離れの物語だ。
親元を離れた二人は親ではない誰か、他人と関わり、
それまで知らなかった知識、価値観をえて、
時に友情を築き上げていく。
新しい知識や価値観をしることで、
今までの自分を「俯瞰」して見つめ直すこともできる。
ダンジョンの中、ダンジョンの裏側というシステムを
メタ的に見た主人公が、自分自身をもメタ的に見つめる。
よくできた物語の構造だ。
終盤
ただ、終盤もダンジョンの中の設定や仕組みについて
淡々と解説し、それに驚く主人公という流れが続いてしまっている。
ダンジョンと国の関係、ゴブリンの養殖など、
設定自体は面白くはあるのだが、ストーリーとしての
面白さはいまひとつだ。
終盤で行方不明の父親が再登場したりして
親離れという物語の主軸が描かれればまた違ったかもしれないが、
そういった展開もなく、最後まで淡々と世界観と設定の
説明に勤しんでしまっていた印象だ。
1話から最終話まで淡々とした展開が続き、
色々と地味になってしまっていたのがもったいない作品だった。
総評:ダンジョンの中には世間がある
全体的に見て、こういったファンタジーでありがちなダンジョンの裏側、
ダンジョンの管理というものを知ってしまった主人公が、
そのシステムを知っていき、時に驚き、時に戸惑い、
時に世間を知り、時に友情を深めていきながら、
主人公の価値観が変わっていく物語だ。
そういったメタフィクションでメタ認知を描くという
作品の意図自体は感じられたものの、
その物語の構造の面白さが100%発揮しきれないまま終わった感じがある。
1話から最終話まで淡々とダンジョンのシステムを説明し、
それに主人公が驚く、その流れが続いてしまっている。
子供の頃に拾われた主人公がシーフな冒険者の父親に
少し偏った教育をされ、そんな父親が行方不明になっても
孤独にダンジョンに挑み、父親の背中を追い続けている。
そんな彼女がダンジョンの裏側、メタ視点をしることで
新しい価値観、ダンジョンの裏側の人との交流で世間を知る。
メタな視点をしったことでメタ認知、
自分自身を見つめ直すという物語の構造は面白いものの、
1話から最終話までどこか設定資料集でも見ているような感覚になる。
ダンジョンのラスボスと主人公の関係性など
微笑ましい部分もあり、淡々としてはいるものの、
そんな日常を楽しめる部分もあるものの、
この作品でやりたいこと、描きたいことが1クールという
尺では描ききれずに終わってしまった印象だ。
原作はいまのところ5巻まででており、
すでに父親も再登場しているようだ。
それを考えると、もう少し詰めれば原作の最新刊くらいまで
描ける部分もあり、ストーリー構成自体もまったりしてしまったのは
残念なところだ。
もし2期があるなら、この作品のやりたいことが
もっとはっきりと分かるかもしれないだけに、
2期を見てみたいところだが、果たして…
個人的な感想:悪くはないものの..
面白い部分もあるが欠点も目立つ作品だ。
淡々としたストーリー展開、設定資料集のような解説が
非常に多く、序盤の段階では面白さが伝わりづらい。
かといって最後まで見ても
「こういうことがやりたいんだろうな」というのを
掴み取れはするものの、それを完全に描く前に
1クール終わってしまっており、もったいないと感じる作品だった。
人体欠損や血液表現など、この絵柄の雰囲気で
意外とグロいシーンが有るのもギャップではあるものの、
そこもウゲっとなるほど刺激的な感じではない。
主人公とラスボスの少女の関係性もどこか百合ちっくでは
あるものの百合ではない。
ダンジョンというものをメタ視線で描くというのは面白いものの、
そればかりになってしまっており、
1つ1つの要素のパンチもいまいち弱い印象だ。
個人的に割と好きな作品ではあるものの、
アニメとしては色々と物足りなさも感じてしまう作品だった.
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