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カルピスを1000倍に薄めてみました「0歳児スタートダッシュ物語」レビュー

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0歳児スタートダッシュ物語 ファンタジー
©2024 はやせれく/海華/秋水社
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評価 ☆☆☆☆☆(10点) 全12話

0歳児スタートダッシュ物語 テレビCM

あらすじ 魔法も領地経営も、すべてにおいて天才過ぎる侯爵令嬢リリアのチートニューゲーム物語。生まれた時から前世の記憶を持ち、転生した異世界に魔法があると知り前世のゲーマー魂が滾るリリア。引用- Wikipedia

カルピスを1000倍に薄めてみました

原作は小説家になろうで連載している作品。
制作はスナックワークス。
1話3分ほどの短編アニメ。

モーションコミック

この作品はそもそも、アニメといっていいのか微妙だ。
1枚絵のいち部分、手足だったり、口だったり、
そういった「部分的」に動く1枚絵をつなぐことでアニメにしている、
どちらかといえばアニメというよりはモーションコミックの類であり、
作画自体もアニメの作画というよりはイラストだ。

申し訳程度に動くイラストとイラストをつなげることで
アニメーションにしているものの、
1枚絵としてのクォリティは高いが
これを「アニメ」といってしまっていいのかは謎だ。

そもそもTVアニメとして放送してはいるが、
放送局はTV埼玉のみであり、あとは配信サイトだけだ。
OPやED曲すらない低予算感は凄まじく、
1話3分ほどのアニメをなんとか制作している感じが強い。

いわゆるショートアニメであり、
ただでさえ尺がないなかで「なろう系」な
ストーリーを展開しようとしている。

スタートダッシュ

主人公は前世はゲーマーだったものの死んでしまったあとに
魔法のある異世界に転生し、ゲーム感覚でスタートダッシュをするために
0歳児の時点から自らを鍛えようとする。

いわゆるなろう系なストーリーであり、
それ以上でもそれ以下でもないが、
流石に1話3分ではストーリーの細切れ感が半端ない。

1話では転生しましたという事実、
2話では魔法があることに気づいた主人公が魔力を感じる。
3話では成長し領地の問題を自覚し畑を増やすことにする。

ショートアニメの場合はテンポを上げて詰め込んで
ストーリーを描くことが多いが、この作品はそういったことをしていない。
結果的に1話1話の内容が薄い。
無駄に各話で「先週」までの話を振り返るシーンも有り、
こんな薄い内容を振り返る意味もないのに無駄に振り返っている。

単純に1話30分のアニメを5分毎に細切れにしているような
ショートアニメもあるものの、この作品はそれとも少し違う。
各話で急に時系列が飛ぶことも多く、
そのわりに1話1話の内容がうすすぎて面白みを感じられない。

どんなに美味しい料理でも小さじ1杯どころか、
耳かき1杯程度では美味しさを感じることができないのと同じだ。
しかも、この作品の場合はその耳かき1杯程度すくったものを
100倍に薄めたような作品でしかない。

面白さもへったくれもあったものではない。

いつの間に…?

中盤になるといつの間にか鳥やドラゴンをペットにしており、
どんどんと成長している。
そんなペットは実は「高位精霊でした!」という
なろうらしい展開ではあるものの、
どうしてペットになったのかという過程は全く描かれない。

0才児の時から魔法を鍛えるスタートダッシュの結果、
5歳の段階で主人公はチートじみた魔力を持っており、
貴族たちの注目を集めることになる。

そんな主人公はゲーム感覚で異世界の人生を楽しんでいる。
自分の人生や、自分の家族、領民の人生がかかっているのに
全てが「ゲーム感覚」だ。
自分を鍛えることも、領地の問題も、
全てゲーム感覚で主観ではなく客観的に考える

自身の誕生日パーティーに行くかどうかを悩んでる中でも、
乙女ゲーのごとく選択肢に悩んだりしつつ、
自分は「領地育成ゲーム」と「RPG」がしたいんだと叫ぶ始末だ。
自分の命や自分の人生だけでなく、領民すらも
彼女にとっては育成ゲームのNPC感覚なのでは?と思えてしまう。

終盤

終盤になると主人公はとあるイケメンに一目惚れしてしまう。
いきなり現れたイケメンに主人公はドギマギする、
それだけで11話が終わる、話の薄さは終盤になっても変わらない。

最終話でも11話の振り返りをしっかりした後に、
ようやく、そんなイケメンが挨拶してくれる。
彼が国王の甥に当たる人物であり、
キービジュアルにも描かれているメインキャラの一人だ。

そんなメインキャラが出てくるのが11話で、
そんなキャラに主人公が惚れて終わる(苦笑)

総評:耳かき1杯程度のなろうアニメ

全体的に観てアニメといっていいのかすら謎だ。
1枚絵のイラストの一部分だけを動かす、
いわゆるモーションコミックで制作されており、
アニメーションとしての見ごたえはない。

1枚1枚のイラストのクォリティ自体は高いものの、
終盤には無理矢理アップにしているせいか
イラストがぼやけてしまっているシーンもあったりする。
動く漫画に声がついている、ボイスコミック的な感じだ。

しかし、問題はそんなモーションコミックという手法ではなく
ストーリー構成だ。
1話5分にも満たないショートアニメでなろう系作品を描くという
試み自体は大胆ではあるものの、1話1話の内容が薄い。

そんな薄い内容にも関わらず「先週のお話」の
振り返りがほぼ毎話挟まれるのは意味不明でしかなく、
その振り返りのせいで余計に話が薄くなっている。

異世界に転生した主人公がゲーム感覚で
自らを鍛えてスタートダッシュを決めて、
ゲーム感覚で第二の人生、異世界を楽しもうとしている。
そういうことを描きたいのは分かるのだが、
あまりにも話しがうすすぎて面白みがない。

これは1話5分のショートアニメだからというわけではない。
描き方の問題だ、もう少しテンポを上げて話を詰め込んだり、
時系列を飛ばさずに尺を使ってエピソードをしっかり描けば
キャラクターにも愛着がわくかもしれないが、
この作品はテンポはあげずに時系列だけは飛ばすため厄介だ。

そのせいでプロットレベルのストーリーしか描かれておらず、
物語の起承転結も薄い。
1クールで主人公は転生して0才児から魔法を鍛えて、
貴族から注目されるようになり、イケメンな王家の人間に会いました。
これで終わりだ。

ショートアニメとして考えても話の内容がうすすぎる。
モーションコミックによる予算の削減、
うすすぎるストーリー構成と、アニメとして低予算で
なんとか作ろうとしたのは分かるものの、
もう少しなんとかならなかったのかと感じてしまう作品だ。

原作は小説家になろうで連載していた作品であり、
コミカライズにもされており7巻もでている。
そんな原作なだけにきちんとアニメ化されなかったことが残念だ

個人的な感想:実績解除

原作やコミカライズの出版を手掛けている秋水社は
本作品が初のアニメ化作品となっている。
おそらくではあるものの、こういった低予算な形で
アニメ化することで「アニメ化した」という
実績が欲しかったのかもしれない。

普通の1クール1話30分のアニメを作る予算はない、
さらに言えば1話5分のアニメを作る予算も出せない、
しかしモーションコミックという手法で1話5分なら
1クール作れる、だからこその形なのかもしれない。

そういう大人の事情を根強く感じる作品であり、
今後、秋水社の別の作品がアニメ化する際に
同じような形になるのかが気になるところだ。

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