評価 ★★★☆☆(49点) 全12話
あらすじ 学園に通うアリサ・ミハイロヴナ・九条(アーリャ)は、中学3年生の時に学園に転校し、学年1位、スポーツ万能の才色兼備で、さらには生徒会では「会計」を務める、ロシア人の父、日本人の母を持つ銀髪ハーフの女子高生。引用- Wikipedia
最高のラブコメかと思いきや、なろう系?
原作はライトノベルな本作品。
監督は伊藤良太、制作はAlya-san Partners
高木さん系
ここ最近は「からかい上手の高木さん」のヒットもあってか、
特徴的なヒロインとのラブコメを原作としたアニメも多い。
メガネを忘れまくるヒロインだったり、いじってくるヒロインだったり、
モブな男子をいじる正統派ヒロインだったり。
この作品もそんな高木さん系であり、
「ロシア人と日本人」のハーフな女子だ。
主人公の隣の席に座る彼女は学校中で話題になるほどの美少女であるものの、
ツンツンとした態度なツンデレ女子だ。
主人公に対してもツンツンとした態度ではあるものの、
彼女はときどき「ボソッ」とロシア語を喋って顔を赤らめてくる。
ロシア語は英語以上に普通の人には何を言っているかわからない、
英語であれば「cute」という言葉でかわいいという意味なのは通じるが、
「милый」といわれてもかわいいという意味なのは一切わからない。
しかし、主人公は実はロシア語がわかっている(笑)
ヒロインはロシア語が通じないと思って、
主人公に対して「デレ」な言葉を投げかけているものの、
主人公は実はロシア語が理解できてしまい、それを隠している。
本当は隠している主人公へのヒロインの思い、
それがボソッとロシア語という形でこぼれ出る。
日本語によるツンとロシア語によるデレ、
新しいツンデレの見せ方だ。
1話からそんなツンデレヒロインの魅力をしっかりと描きつつ、
セクシーシーンもきちんと描いている。
唐突に濡れてるソックスを脱ぎ、ソックスを履かせてもらう。
ツンツンな態度ではあるものの、ロシア語ではデレまくり、
パンツを見せてくる(笑)
清々しいほどのラノベ原作アニメ的なセクシーシーンを描きつつ、
ツンデレヒロインというやや廃れ気味な要素もどこか懐かしくも感じる。
久しぶりに主人公がヒロインのパンツを見て
殴られてぶっ飛ぶなんていう2010年代にはよく見たシーンを
拝むことができる作品だ。
かつてのラノベ原作アニメのツンデレヒロインなら
なかなか本性が見えずに主人公に対する暴力がばかりが目立っていたが
この作品はかつてのラノベ原作ラブコメアニメを土台に起きつつも、
同時に昨今のラブコメのテンプレ、高木さん感を融合させている作品だ。
ロシア語でのデレがすぐに見れるからこそ、
ツンデレヒロインに対するフラストレーションが溜まりにくい。
ライバル
そんなロシア人ヒロイン事「アーリャ」さんにはライバルが居る。
主人公には幼馴染の女の子がおり、美少女だ。
仲が良い幼馴染のことをアーリャさんは恋人と疑っているものの、
彼女は主人公の妹だ(笑)
主人公の両親は離婚しており、父と母、
それぞれに引き取られており姓が違う。
しかし、そんな事実を周囲には告げずに幼馴染ということにしている。
家と学校ではまるで態度が違う幼馴染という名の妹。
学校では完璧美少女ではあるものの、家ではガチオタクだ。
ツンデレにオタクな妹、キャラクター設定の数々、
その1つ1つの要素の度合いなど最近のアニメというよりは
かつての深夜アニメ、どこか気持ち悪いとも言われるような
「オタクアニメ」っぽさが凄まじい作品だ。
妹も妹でアーリャさんの主人公への好意を見抜いているからこそ、
彼女をいじってくる(笑)
ヒロインは普通はわからないロシア語でデレつつツンツンし、
主人公は普通はわからないロシア語をわかることを隠しながら照れ、
妹は妹であることを隠しいじってくる。
3人のメインキャラがそれぞれ隠していることがあり、
それが相互に作用することでラブコメにおける「コメディ」が
しっかりと生まれている。
更に主人公が幼少期に仲が良かったロシア語を喋る少女は
「アーリャさん」の姉だ。
ラブコメ感が話が進めば進むほど増していくような印象だ。
きっかけ
この手のラブコメの場合、ヒロインたちがなぜ、
主人公を好きになったのかわからないという欠点のある作品も多い。
しかし、この作品はそこもしっかりしている。
ヒロインである「アーリャさん」は真面目な子だ。
何事にも一所懸命で本気で挑み、その結果、1番になることを目指している。
だが、誰しもが何事も一所懸命ではない、誰もしもが本気ではない、
誰しもが1番になりたいとは思っていない。
周囲への期待が裏切られた彼女はどこか諦めつつ、一人で頑張ろうとしていた。
そんな彼女に寄り添ってくれるのが主人公だ。
一人で頑張ろうとしていた彼女を見て、手伝おうとしてくれる。
無理をしている彼女にアドバイスをくれる、彼女にとっての心の支えだ。
ヒロインの頑張りを支えたくれた主人公、
どこかやる気もなく寝てばかりな彼が本気でヒロインに寄り添ってくれる姿に
彼女は惚れた。
「ああ、これは惚れる」
ラブコメにおいて見ている側にそう感じさせる流れが
この作品にはしっかりとある。
そんな過去を序盤の山場である3話できちんと描くことで、
作品とキャラクターへの感情移入を強めてくれる。
1話でキャラを見せ、2話でラブコメをえがき、3話で恋愛を描く。
この序盤の3話は完璧とも言えるような導入だ。
好みなどは個人個人であると思うが、そんな好み以外で
欠点らしい欠点も見えない。
しっかりとした作画でヒロインの可愛さやセクシーさを描きつつ、
声優さんの演技がそれをささえつつ、
ラブコメの基本を抑えたストーリーを描いている。
各話毎回EDが変わるというこだわりも見せており、
ハレ晴レユカイや可愛くてごめん、
学園天国や、ラブ・ストーリーは突然になど
時代もジャンルもバラバラなエンディングはその回の内容に
合わせて変えている印象だ。
このあたりも高木さんを意識していると感じられるものの、
3話までできちんと導入を描いている作品だ。
生徒会
中盤になると「生徒会」が物語の中心になる。
アーリャさんはトップを目指すために生徒会長を目指しており、
そのために生徒会長の会計を務めている。
主人公は中学時代に生徒会に関わっていたものの、
とある事情で生徒会に関わることを高校ではやめている。
そんな彼がアーリャさんを支えるために生徒会の庶務として
生徒会に入り、彼女を手助けする。
その流れ自体は序盤からアーリャさんが提示していた部分であり、
終盤の生徒会選挙に至るまでの流れも納得できるのだが、
シンプルに微妙だ。
序盤こそ高木さん系のテンプレで主人公の妹や、
ヒロインの姉などラブコメ要員が加わり、
ワチャワチャした楽しいラブコメになるのか?と思いきや、
中盤からは生徒会の真面目なストーリーになる。
主人公の家も家でかなり複雑であり、元華族の旧家という名家の母をもち、
跡継ぎだのなんだので両親が揉め、離婚し、
名家の重責は妹に任せてしまい、主人公はその責任感を感じている。
妹も中学生のときは生徒会長を努め、
高校でも生徒会長になるべく目指している。
つまり妹とアーリャさんは生徒会長を目指すライバルだ。
この作品の生徒会長選はかなり特殊であり、
生徒会長を目指すものが副会長候補とともに立候補しないといけない。
主人公は副会長、アーリャさんは生徒会長を目指すために
生徒会長選にでることになる。
中盤からはロシア語要素がかなり薄まり、
序盤のような和やかなラブコメ感も薄まってくるうえに、
キャラクター数もかなり増えてくる。
だんだんと主人公の要素も増えてくる。
優秀な妹がなにをやっても勝てなかった兄、
神童と呼ばれた天才、ピアノも天才的だった主人公。
そんなどことなくラノベ原作アニメらしい
厨二病感のある設定ではあるものの、生徒会選挙を描くための
有能設定が足されているような印象だ。
中盤で生徒会選挙にむけて生徒たちが動き出し、
生徒同士の討論会も行われるものの、
かなり真面目なディベートが繰り広げられている。
「サクラ」などの仕込みも当たり前で行われる討論会は、
ある種リアルではあるものの、リアルすぎて面白みが薄い。
序盤のラブコメの面白さが中盤ではかなり薄まってしまい、
生徒会選挙をめぐるゴタゴタで困り果てるアーリャさんを
有能な主人公がその都度助けるという
イキリムーブが目立ってしまう。
終盤になると閑話休題的に「催眠術回」など、
序盤のようなノリのストーリーはあるものの、
そういうのがあると余計に「こういうのが見たかった」と感じてしまう。
終盤
終盤になると妹とアーリャさんの生徒会選挙が本格的になっていく。
もっとも生徒会選挙自体は行われず、
その前哨戦と呼べるものでしかなく、候補者同士の小競り合いだ。
妹も徐々に本性を見せるようになっていくものの、
アーリャさんは逆に序盤の威勢はどこへやらだ。
主人公がどんどんと有能かつ実は天才でしたという
設定がでるたびに、アーリャさんの性能が落ちていく。
主人公がいなければ生徒同士の討論も負けていただろう、
事実、主人公がいない状態で妹と討論すればあっという間に負けてしまう。
ちょっと揺さぶりをかけられただけで動揺しまくる
アーリャさんというヒロインに
フラストレーションが溜まってしまう。
1クールの最終話で生徒会選挙が行われて、
中盤からのこの生徒会選挙の行く末がどうなるのかというのが
決まって話がまとまればまだ納得できるのだが、
1クールの最終話でやることは終業式での役員の挨拶だ。
それ自体が生徒会選挙の有利不利を決めるというのは納得できるが、
ここまで引っ張ってきた生徒会選挙が開催されすらされずに
終わってしまうのも首を傾げてしまう部分だ。
その最後の挨拶も「?」が浮かんでしまう。
なにせアーリャさんは全部ロシア語でスピーチしだす(苦笑)
聞いている生徒たちも「ぼー」っとしてしまうが、
見ている側もぼーっとしてしまう。
スピーチにおける「つかみ」なのはわかるが、
そのあとのスピーチも頑張ります、
努力します、応援してくださいくらいのものだ。
「アーリャ、お前の力で勝ち取った拍手だ」と主人公は言うものの、
主人公に頼りっぱなしな彼女が一体何をしたのか疑問な
作品だった。
総評:嗚呼、懐かしきラノベラブコメアニメ!と思いきや…
全体的に見て序盤は素晴らしい作品だった。
いわゆる高木さん系な隣の席の女子とのラブコメという
昨今の流行りなテンプレを用いりつつも、
「ツンデレ」という2010年代のラノベ原作ラブコメアニメらしい
ヒロインの属性を活かしている。
日本語ではツンツンしているけど、ロシア語ではデレている。
このギャップが素晴らしく、実はロシア語がわかっている主人公が
それを隠しつつ彼女のツンデレ感を視聴者とともに
楽しんでしまうような作品だ。
アニメーションのクォリティも動画工房らしくしっかりとしており
セクシーシーンなどは気合が入っているものの、
かつての動画工房ほどのパンチのある作画はあまり感じない部分がある。
実は腹黒な妹や、ヒロインの姉との関係性、
追加されるキャラクターは魅力的で可愛らしいキャラも多く、
そんな魅力的なヒロインたちとのラブコメを楽しめるかと思いきや、
中盤からは「生徒会選挙」の話になる。
しかも、生徒会選挙本番ではなく、その下準備の段階だ。
中盤からはずーっと生徒会選挙で有利になるために各ヒロインが動き、
そんなヒロインたちの行動に主人公が振り回されながら、
ときに主人公の有能さが役に立つという展開を繰り返しており、
それが長い。
これが2,3話くらいで終わるならまだしも、
1クールのうちの半分がその手の話だ。
流石に長い上に1クールの最終話までいっても
生徒会選挙が始まりすらしない。
序盤でラブコメらしい面白さがしっかりとあったのに、
中盤からはそれが鳴りを潜めてしまい、
時々、ラブコメ的に面白いシーンや催眠術回など
面白い部分があるものの、生徒会選挙の話ばかりになってしまう。
色々と複雑な家庭な主人公だからこその妹との関係性や、
ヒロインの姉と幼馴染だったという関係性など気になる部分はあり、
アーリャさんがどうそこでメインヒロインとして存在感を
見せてくれるのかという期待感はあるのに、
そんなヒロインたちに中盤以降は食われ気味だ。
序盤だけ評価するなら70点だが、中盤で50点、
終盤で40店くらいになってしまうような右肩下がり感があり、
2期でこの状態からどう盛り返すのかは気になるところだが、
果たして…
個人的な感想:世情
昨今、ロシア問題は複雑な問題になってきており、
この作品自体も放送はどうなることかとおもいきや、
無事放送されたことは何よりだ。
個人的に序盤は懐かしさと新しさを同時に感じて
非常に楽しめたのだが、
中盤くらいからは序盤のような面白さを感じず、
だらーっと見てしまう感覚だった。
インパクトはあるものの、それが長持ちしない。
最近のアニメにありがちな感じではあるものの、
2期でどうなるのか気になる部分もあるため、
2期に期待したいところだ。
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