ファンタジー

予算少なめ、転生抜き、強制完結で「魔王軍最強の魔術師は人間だった」レビュー

1.0
魔王軍最強の魔術師は人間だった ファンタジー
©羽田遼亮・アナジロ/双葉社・魔王軍最強の製作委員会
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この記事を書いた人
笠希々

オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、
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評価 ★☆☆☆☆(15点) 全12話

TVアニメ「魔王軍最強の魔術師は人間だった」本PV第2弾

あらすじ
『魔王軍最強の魔術師』と呼ばれ、単身で砦をも攻略する魔族、その名はアイク。絶大な魔術で敵をなぎ払う様は、まさしく『化け物』そのもので、敵味方から畏怖される存在だった。
引用- Wikipedia

予算少なめ、転生抜き、強制完結で

原作は小説家になろうで連載されている小説作品。
監督はながはまのりひこ、制作はstudio A-CAT

賢者の孫

主人公は大魔術師ロンベルクという偉大なる魔術師の孫として
「魔王軍」の不死旅団の団長をしている。
彼の見た目は骸骨の仮面を被った魔族のような見た目をしており、
魔王軍も彼のことを評価している。
しかし、そんな彼ではあるものの実は魔族ではなく「人間」だ。

人間であることを隠し、魔王軍として人間と戦っている。
人間だからこそ無駄な死を好まない、
相手の将を目の前にしても攻撃はしても殺しはしない。
優秀な「将」として人間としての罪悪感は感じつつも戦っている。

彼を拾った偉大なる魔術師、いわゆる賢者は
滅びた文明のことやだれもしらないような知識をももっており、
その全てを彼に教えている。

魔王に、魔族たちに自分の正体がバレてはいけない。
20年間守り続けた秘密ではあるものの、
あっさりと人間のメイドにバレてしまうところから物語が始まる。

ただ、人間のメイドにも魔王軍の一人にもすでにバレており、
魔王もどこか感づいているフシがある。
1話の段階で物語の根幹である
バレるかバレないかの緊張感が薄まってしまっている。

この人は天才だ!

主人公は1話で人間の街を襲い支配する。
彼も人間だからこそ人間の被害も少なかったものの、街は壊滅的だ。
街の復興をどうするのか、普通にやれば一ヶ月以上かかってしまう。
すると天才である主人公様は名案を思いつく。

「8時間毎に魔族と人間で3交代制!報奨金を与えて指揮を高めた!
 この人は天才だ!」

バカでも思いつくようなことを天才だと周囲に褒め称えることで
主人公を天才のように見せる、1話から主人公の正体が
バレバレなのと同じで1話の段階から作品の化けの皮が剥がれている。

主人公は有能といわれているのだが、
その有能感は主人公以外を無能にすることで成り立たせている。
3話では小麦の代わりにコメを育てよう!と言い出すのだが、
肝心のコメの調理方法に関しては主人公は一切知らない(苦笑)

「俺が知ってるのははじめチョロチョロ中パッパ、
赤子泣いてもふたするなだ!」
とドヤ顔してるだけだ。
米に関する知識が一切ないメイドに調理方法を全部任せるのは
意味不明でしかなく、有能アピールがあまりにも下手くそだ。

4話では裏切り者の魔族と模擬戦をすることになるのだが、
兵士を持ちえての模擬戦争に近いものだ。
敵に勝つにはどうすればいいのか、彼はピンとくる。

「そうだ!銃を作れば良いんだ!」

この世界にはボウガンや剣などの武器はあるようなのだが、
彼は失われた文明の知識で知っているものの、文明的に「銃」はない。
そんな彼の前に彼の事情を実は知っていた魔王が力を貸してくれる。
メイドに上司に魔王に、もう正体がバレまくりだ(苦笑)

バレてはいけないはずなのにバレまくりな主人公という
バカっぷりも凄まじく、それなのに
有能のように振る舞うからこそたちが悪い。
失われた文明の知識でどやりつつも、銃自体は魔王が
提供してくれたものであり、弾や火薬も自分で作ったわけでもない。

スカスカな有能主人公と、スカスカなどうでもいいストーリーで
空虚な感覚しか浮かんでこない。
魔王軍の内乱、ゴタゴタなど心底どうでもよく、
面白みの薄いストーリーが淡々と展開していく。

中盤からストーリーの方向性が見えてくる。
魔族でありながら人間である彼だからこそ、
魔族と人間の共存を望み、それを魔王軍にいながら叶えようとしている。
そういうストーリーを描きたいのは分かるが、
本来は正体がバレるバレないが話の塾なはずなのにバレまくりで
話が破綻している。

作画

作品全体に言えることだが、妙に画面が暗い。
日の当たるところでも作画の色合いが悪くパットしないのだが、
暗いシーンになるともう何をやっているのかわからないほど真っ暗だ。
画面を暗くすることで作画のクォリティをごまかしているのだろう。

特に戦闘シーンになるとより顕著だ。
モブキャラやモブ兵士などはフルCGで描かれており、
それをコピペしてるだけだ。
主人公も魔術師として戦うのだが、エフェクトだよりでしかなく、
そんなエフェクトを目立たせて作画の悪さをごまかすために画面を暗くしている。

主人公以外の戦闘シーンは1枚絵を集中線などで
ごまかして「動いてる風」に見せかけている。
徹底的に作画コストを抑えて、それがバレないように工夫している。
悪あがきのような作品だ。

制作のstudio A-CATは作画の悪さで有名だ。
球詠、賢者の弟子を名乗る賢者、HIGHSPEED Étoile、
ここ最近の作品はどれもこれもクォリティが低い。
それはこの作品でも変わらない。

エンディング映像など水晶に映るキャラクターの本編映像を
使いまわしたものをスクロールしてるだけだ、
恐ろしいほどの手抜き、ごまかしかたに
さすがはstudio A-CATと称賛したくなる。

失われた文明

主人公はたまに他の魔族や人間も知らないような、
まるで私達の世界で培ったような知識を披露する。
それは彼を拾った賢者の知識である
「失われた文明」の知識ということは納得できるのだが、
火縄銃や農業のやりかたなど、なろう系にありがちな現世知識による
異世界いきりのようにも見えてしまう。

失われた文明とはなんだったのか。
例えば私達の世界が1度滅びたあとに魔法文明が発達した、
遠い未来の地球だったみたいな設定があるのかと思ったのだが、
調べたところ、主人公は「転生者」だ(苦笑)

異世界転生者だからこその現世知識イキりという
いつものパターンなのだが、
なぜかアニメではこの「転生要素」というのを排除しているため、
わかりづらくなってしまっている。

魔王も「ダイロクテン」という名前なのだが、
実は織田信長の転生者だ(苦笑)
こういう原作にはある設定を何故かカットしているせいで
違和感が生まれている部分が多い。

ただ、カットしたからこそ、いつものなろう主人公による
現世知識イキリにみえず、織田信長というこすり倒された要素を
カットすることでごまかしているとも言えるものの、
かなり大胆な原作改変だ。

火縄銃大好き

アニメではほぼ描かれたいない織田信長要素もどんどん出てくる。
火縄銃を手に入れたかと思えば主人公はそれを量産するために
ドワーフを仲間にする。
大量生産した火縄銃で何をするかと思えば「長篠の戦い」だ

魔王軍の5倍もの戦力がある相手にどう立ち向かうのか、
そんな不利な中でも火縄銃を持ち出してる始末だ。
そもそも、遠距離武器が弓矢しかない時代だったからこそ
火縄銃という武器がやくにたった時代だ。
しかし、この異世界では当然「魔法」もある。

主人公の仲間がメテオのような戦略魔術までつかっており、
他にも多くの遠距離魔法があり、敵味方使っている。
それどころか敵は「投石武器」で仲間ごと攻撃してくる。
わざわざ火縄銃を使う意味がない。
火縄銃にこだわる理由もよくわからず、
主人公の無能さと敵のバカさが際立つだけだ。

そもそも火縄銃を持ち出したのは仲間同士の決闘で、
兵士を操って戦い、魔法は使わないというルールだったからこそだ。
それなのにそれが終わっても
火縄銃にこだわってるのは意味不明でしか無く、
しかも対して火縄銃が役に立ってる場面もない。

ハーレム

終盤になると色々とキャラクターも出てくるのだが、
どいつもこいつも「女性」キャラクターだ。
主人公に好意を寄せるものも多く、
なろうらしいハーレム展開になっていく。

それ自体は別にいいのだが、主人公の正体があっさりバレる(苦笑)
人間との交渉のために人間の街に訪れたら、
人間側の偉い人にあっさりと魔王軍でなおかつ人間であることを
見破られるあっさりさはバカバカしさが凄まじい。

バレたところで特になにか怒るわけでもないため、
「魔王軍だけど実は人間でバレてはいけない」という
序盤の設定が完全に死んでいる。
そもそも魔族の長たる魔王にバレている時点で死んでいる設定だが、
それが作品の根幹のはずなのに、根幹の設定が死んでいるのは残念だ。

そもそも、主人公は祖父から人間であることがバレないように
仮面を外すなと言われていたはずなのに、
むしろ人間ですとバレたいのか?と思うほど仮面を外しまくる。
魔法というものもあり、どこで誰が見てるかわからないのに
あっさりと仮面を外しまくる主人公は何がしたいのだろうか。

仮面は見た目を隠すという要素もあるとは思うのだが、
主人公の正体を知っている軍団長は見た目だけ見れば人間だ。
魔力の量などで魔族と判断する魔族もいるようなのだが、
平常時の主人公の魔力はそこまでではないようで、
仮面にどんな効果があるのかもいまいち謎だ。

主人公にとって都合の良い展開も多い。
食糧不足を解決するために貿易都市に交渉にきたら、
たまたま途中で貿易歳の代表の娘が賊に襲われており、
代表とのつながりをえたかと思えば、代表の娘が許婚になる。

ベルトコンベアのごとく主人公にとって都合の良い展開が
流れてくるストーリー展開はある意味、なろうらしいともいえるが、
薄く浅い展開を無表情で眺めてるしか無い。

そもそも人間と魔族がどうして戦争をしているのか。
そのあたりの理由がきちんと描かれないため、
主人公が願う人間と魔族の共存とやらもふわっとしている。
魔族自体の食料は人間と変わらないようで、
領土問題や差別など色々とあるのかもしれないが、
そのあたりが描かれることはない。

終盤

終盤も特に面白くなるわけでもない。
ドワーフや人間、主人公は種族の垣根を超えて仲間を手に入れている。
彼が目指すのは異種族の架け橋になるということだが、
それをどういう手段でやるのかというのは明確ではない。

終盤では上司が人間の軍隊に襲われて籠城し、
大ピンチの中で主人公たちが助けに行くという展開だが、
戦闘シーンはあいも変わらず死んでおり、
信長のごとく「三段撃ち」のマネごとをしてるのも
茶番感が凄まじい。

最後は主人公の功績が認められ団長になって終わり、
エピローグで彼がそのあとに様々な種族を率いて
国をまとめて世界に平和をもたらしたというナレーションで終わる。
1クールで完結したことは評価したいものの、
結局なんだったんだと感じる作品だった

総評:なんで異世界転生要素隠した?

全体的に見て作品からのやる気が感じられない作品だ。
作画のクォリティはいかに手を抜くかで考えられており、
暗い色合いで作画のクォリティをごまかしつつ、
戦争のシーンではコピペしたような兵士で軍隊を描いている。

ストーリー自体もかなり突っ込みどころが多い。
そもそも原作やコミカライズでは主人公は
「異世界転生」してやってきたことになっており、
だからこそ火縄銃などの現代的な知識を持っており、
それを活用しようとしている。

しかし、アニメではなぜかそこが削除されてしまい、
魔王も実は織田信長の転生というとんでもない要素もない。
1クールである程度完結させるために転生要素というのを
排除したのかもしれないが、そのせいで失われた文明とは
なんだったのかなどのツッコミどころも生まれてしまっている。

主人公も魔王軍に所属していながら実は人間であり、
それがバレてはいけないという序盤の設定があったはずなのだが、
人間のメイド、上司、魔王、出会ったばかりの人間と
話が進めば進むほどバレまくりで、バレて当然のような
行動も堂々としている。
だからこそ、バレるかもしれないという緊張感が一切生まれない。

主人公は優秀で天才魔術師!といような設定ではあるものの、
その天才さも一切感じない。
戦闘シーンでは主人公を際立たせるために廻りをバカにしており、
異世界では一切役に立たないような火縄銃を無理やり、
活躍させるような展開は意味不明でしか無い。

低予算な作画で制作側の、この作品を面白くしようという
やる気も感じられない。StudioAcatらしい作品とも言えるが、
唯一評価できるのは1クールである程度話をまとめたことだろう。

そのあたりは評価できるものの、低予算かつ
低クォリティで低空飛行なストーリーを繰り返している作品だった。

個人的な感想:なろう

studio A-CATはここ最近、より低予算感に磨きがかかっている。
ただ外注はかなり多いものの、ギリギリ作画のクォリティは保っており、
作画崩壊とまではいかないラインを保っている。
商業的にはそれでうまく回せるのかもしれないが、
アニメというコンテンツ、作品づくりにおいては首を傾げてしまう。

声優さんはかなり豪華であり、
主人公を福山潤さんが演じていたりするものの、
そういう声優さんの良さすら感じないほど
ストーリーの中でのキャラクターの魅力を感じられなかった作品だった

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