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クレ泣き?お涙頂戴の醜悪な映画「クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記」レビュー

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映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記 人気記事
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2024
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評価 ☆☆☆☆☆(5点) 全106分

あらすじ 夏休みの始まりにワクワクする野原しんのすけ。ある日、現代によみがえった恐竜が生息するテーマパーク「ディノズアイランド」が東京にオープンすることが決まる。引用- Wikipedia

クレ泣き?お涙頂戴の醜悪な映画

本作品はクレヨンしんちゃんの映画作品。
クレヨンしんちゃんとしては31作品目の作品となる。
監督は佐々木忍、制作はシンエイ動画

呪い

クレヨンしんちゃん映画も本作品で31作品目だ。
平成初期からスタートし、アニメも映画も31年以上の歴史がある。
放送当初は「子供に見せたくないアニメ」として不動の1位をほこっていたが、
そんな作品が今や国民的アニメの1つだ。

しかし、映画に関しては七転び八起きを繰り返している。
初期の映画は名作も多く、クレヨンしんちゃん映画らしさを
築き上げた素晴らしい作品ばかりだが、
「オトナ帝国の逆襲」や「アッパレ!戦国大合戦」が
大ヒットした影響で「感動路線」に走ってしまった。

いわゆる暗黒期だ。
露骨な家族愛の描写、お涙頂戴な展開の作品が続き、
辟易とした時代が長く続いたものの、
B級グルメサバイバルでギャグ路線にもどり、
そこから当たり外れはあるものの名作も生まれた

「ロボとーちゃん」や「花の天カス学園」など
何度みても泣けてしまう作品だ。
しかし、去年で大やらかしをしてしまっている。

クレヨンしんちゃん初のフル3DCG作品ということで
空回りしてしまったのか、ストーリーが時代遅れの価値観で
キャラクターが言わなそうなセリフまで飛び出し、
本当にがっかりしてしまった作品だった。

そんな去年の作品から一変、この作品はCGではなく
通常通りの手書きのアニメ映画に戻っている。
タイトルからも分かる通り「恐竜」を題材にした作品だ。
予告編の段階から嫌な予感がしていなかったと言えば嘘になる。

どこかジュラシック・パークや「ドラえもん」映画のような
雰囲気を感じさせ、クレヨンしんちゃんらしさというものが薄い。
そんな印象を受ける部分が多く、不安半分、期待半分の中で
劇場に訪れた。

子供

クレヨンしんちゃんという作品は子供向けな作品だ、
大人の私が大人の目線で批評するのは、
本来はターゲット層という意味では的はずれな感想とも言える。
だからこそ、劇場に行けば子どもたちのリアルな反応も聞こえてくる。

私が劇場に訪れた際は3分の1ほど席が埋まっており、
その半分が小学生か幼稚園児くらいの子供で、
あとは付添の親御さんという客層だ。

序盤こそ子どもたちの笑い声も頻繁に聞こえてきた。
クレヨンしんちゃんらしいギャグが序盤から多く、
大人は笑えずとも、子供が思わず声を上げてわらう劇場は
幸せな空間に包まれていた。

しかし、中盤から雲行きが怪しくなってくる。
ギャグ自体はあるものの、
そのギャグが「今?」というタイミングで出てきたりする。

例えば終盤で敵の恐竜が次々とやってきて大ピンチ!という状況だ。
敵は強い恐竜を解き放ち、ガチャガチャのカプセルのようなものから
そんな恐竜が出てくる。
どんな恐竜がでてくるのか、大人も子供も期待してしまう。

しかし、蓋を開ければただのダジャレ恐竜だ。
「ティラノサウルス」かとおもいきや、
「チラ見サウルス」でチラチラみてどこかへ去っていく。

制作側がギャグとしてやってるのはわかるものの、
ダダ滑りだ。恐ろしいほど劇場内が冷え切っている。
当たり前だ、子供にそんな言葉あそびなギャグは伝わりづらい。

そのあともギャグ恐竜が出てくるのだが、
極めつけは「モーニング娘」だ。
みてない人にとってはわけがわからないかもしれないが、
とあるギャグ恐竜がモーニング娘のLOVEマシーンを
踊っているところに「しんのすけ」達が逃げ込む。

敵に追われて大ピンチ!という緊迫感のある状況で、
急にLOVEマシーンを踊る恐竜をみせられても、
意味がわからず、小さな子供にはLOVEマシーンなど
通じるはずもない。

わからなくても面白いギャグシーンにすらなっておらず、
劇場には一切笑い声はきこえず、私自身も、
このシーンで開いた口が塞がらなかった。

序盤のギャグこそ悪くはなかったものの、
中盤からのギャグは滑りっぱなしで子供も笑わないレベルだ。
そのせいか終盤に差し掛かるところで、
私と同じ列に座っていたお子様が「つまんない、もう帰りたい」
と騒ぎ始め、お母さんとともに途中退場してしまった。

他にももう一組、トイレなのかなにかわからないが、
二人の子供が親御さんと退場しており、
劇場から出ていった3人のお子様は最後まで映画を見ることなく
劇場から去ってしまった。

最後まで劇場で見ていた子供も、一部は大号泣だ。
感動したわけじゃない、シンプルに「悲しい」からこそ泣いている。
そんな映画が果たして子供にとって楽しい映画なのだろうか?

ちょっと制作陣に対して嫌悪感を抱いてしまうレベルだ。
このあとからネタバレを多く含むレビューになりますので、
気になる方は劇場へ。

ナナ

この作品をわかりやすくいえば「ジュラシック・パーク」だ。
現代に恐竜を蘇らせ、「ディノズアイランド」という
テーマパークが生まれる。
本物の恐竜がいるテーマパーク、子供も大人も1度は行ってみたい場所だ。
そんなテーマパークから1匹の恐竜が逃げ出すというところから物語が始まる。

今作はある意味「シロ」がもう一人、いやもう一匹の主人公だ。
シロはしんのすけに拾われて大切に育てられている、
そんなシロが逃げ出した子どもの恐竜である「ナナ」と出会う。

シロにとっては同じ境遇の存在だ。
捨て犬だった過去、しんのすけと出会い幸せに暮らしている今、
そんなシロだからこそナナを放っておけない。
シロとナナの友情を築くシーンは素晴らしく、
非常に丁寧に描かれている。

シロがメインに描かれるクレヨンしんちゃん映画は意外と少なく、
襲来!!宇宙人シリリくらいだ。
そんなシロとナナをメインにしつつ、しんのすけがそこに絡んでくる。

冗長

これは作品全体で言えることだがテンポが非常に悪い。
序盤からだらーっとしたテンポで場面転換も多く、
その中でギャグをふんだんに入れている印象だ。

そのギャグで笑えばいいのだが、同じようなネタが多い。
特に「売間久里代」に関してはなぜか妙に推されており、
作中で無駄に登場シーンが多い。

あくまでもちょっと出るくらいならばギャグとして気にならないのだが、
序盤、中盤、終盤とかなり出番がある。
「売間久里代」自体、そこまで人気のキャラクターではないのに
なぜ売間久里代を此処まで推すのか意味不明だ。

売間久里代の出番と比較するとメインキャラである
ひまわりの出番とセリフなど数えるほどしか無い。
クレヨンしんちゃんの色々なキャラクターが背景に出ているのは
クレヨンしんちゃんファンとしてはそれを見つける面白さもあるのだが、
売間久里代だけが悪目立ちしている。

そういった余計なギャグシーンがだらーっと間延びした
ストーリーにもつながっている。
ストーリー自体も盛り上がりそうで盛り上がらない展開だ。

序盤はシロとナナが出会い、しんのすけやかすかべ防衛隊とも出会い、
そこでしんのすけの家でナナを恐竜と知らずに飼うことになる。
途中で本当の飼い主である「ビリー」が現れる。
ここまではいいのだが、そこから追いかけっこが始まる。

実はナナは「ディノズアイランド」での唯一の恐竜だ。
ナナ以外の恐竜は全て精密にできたロボットであり、
ディノズアイランドはロボットではなく、
本当の恐竜を欲しがって狙っている。

そんな彼らが狙ってくる。
このあたりはクレヨンしんちゃん映画らしい展開だ。

とにかく敵がつまらない。
クレヨンしんちゃんといえば個性的な敵だ、
「オカマ」キャラは昨今では使われなくなったものの、
そんな敵との愉快なバトルもクレヨンしんちゃん栄華の醍醐味だった。

しかし、この作品にはそれがない。
一応敵キャラとして「三葉虫」というキャラが序盤に出てくる、
三葉虫みたいなのに乗りながら川から3人組現れ、
「サン、ヨウ、チュウ!」とそれぞれがポージングする。

ただそれだけだ。
本当に心の底からつまらないギャグを見せてくれる。
そんな三葉虫もあっさりとナナに倒され、
しんのすけたちは家に戻る。

今までのクレヨンしんちゃん映画なら
そこから流れるようにストーリーが展開していきながら
逃走劇を繰り広げたりしそうなのだが、そういう展開にはならない。

そのせいで話が盛り上がってきた感じが生まれても、
すぐにその盛り上がりが失われる。
ずっと盛り上がりそうで盛り上がらない展開が続いてしまう。

今回の黒幕たる「バブル・オドロキー」は
息子が生み出したナナを手に入れて、
本当の恐竜のテーマパークを作ろうとしている、
彼は昔はいい人だったが、妻が亡くなり、
仕事で成功することに夢中になるあまり暴走している親だ。

今回はそんな親子の物語を描きたいのはわかる。

親子

今作は過去で描かれてきた親子、家族を1つのテーマにしている。
親は子供に自分の考えをおしつけがちだ、
しかし、子供はいつしか成長し、親の言うことをきかなくなり、
親の考えとは別の考えがうまれ意見が対立することもある。

それを今作の「バブル・オドロキー」は許せない。
自分を見放し離れていく、我が子だからこそ余計に苛立つ。
一方で野原夫妻はしんのすけの自主性を重んじている。

彼が勝手に拾ってきたナナ、そんなナナが例え
しんのすけを傷つけても、しんのすけ自身が「ナナにやられた傷ではない」
と主張すればそれを信じ、ナナを飼うことも後押ししてくれる。
中盤で野原夫妻が「バブル・オドロキー」にやや
説教臭いセリフを言ったりするものの、言いたいことはわかる。

ただ、このナナがしんのすけを傷つけるシーンで
私の中の違和感が増大してしまった。

クレヨンしんちゃん映画の中でしんのすけが
流血するシーンは私の記憶が正しければ無い。
鼻血程度はあるものの、明確に「傷」をつけられて
流血するシーンはなかったはずだ。

しかし、今作では「ナナ」が野生の本性に目覚め、
しんのすけの頬をひっかき、流血させる事件がある。
鼻血はまだギャグとして受け止められる部分があるが、
流石に明確な流血シーンはかなりの衝撃だ。

それは子供向け映画だからこその配慮でもある。
流血シーンは子どもとしてはショッキングな表現だ、
クレヨンしんちゃん映画はそういう配慮があるからこそのものだった。

最近は違うが「しんのすけ」の泣き顔は決してみせないという
こだわりまであった。
主人公の泣き顔をみせることでみている側も
感情移入して涙につられてしまう部分があるものの、
それはある種の禁じ手だ。

流血シーンも表現としてはかなりショッキングだ。
この作品はそんな禁じ手にまみれている。

禁じ手

1番の禁じ手は「死」だ。
クレヨンしんちゃん映画では「アッパレ!戦国大合戦」や
「ロボとーちゃん」でキャラクターの死が描かれることもあったが、
その死の描写にきちんと意味があった。

死という消失はショッキングなものだ、
だからこそ涙を誘われる。
キャラクターを殺すのは簡単だ、しかし、そこに
きちんと意味がないといけない。この作品にはそれがない。

ナナの親ともいえる「ビリー」とナナも親子の関係性だ。
終盤でナナが本能に目覚め暴走している中、
ビリーは止めるために命を奪おうとしてしまう。
しかし、しんのすけは「ずるいぞ!」といってそれを止める。

親が子どもの生死を決める権利はない。
そういいたいのはわかるものの
「ずるいぞ!」という言葉を使うのもまた禁じ手だ。
オトナ帝国の逆襲の二番煎じでしかない。

そこからの展開が今作の最大問題点でもある。

黒幕である「バブル・オドロキー」は唐突に
どこからともなくゾイドのようなロボットで現れたものの、
恐竜とナナによって破壊される。彼は此処で退場だ。
そこからは暴走したナナをどうするのかという問題になる。

この終盤でもグダグダしている。
かすかべ防衛隊がいちいちギャグを披露したりしながら、
しんのすけがなんとかナナの元にたどり着き、
シロとともに問いかけることでナナの意識が戻る。

本来は此処でハッピーエンドのはずだ。
ナナは「ビリー」とともに、どこで平和に暮らしてる。
離れ離れでも家族であることは変わりない、
そういうラストでも良かったはずだ。

しかし、この作品は無駄にナナを殺す。
唐突に建物が倒壊し、
シロとしんのすけを守るためにナナが犠牲になる。
意味がわからない。

このラストのシーンで「ナナ」が死ぬ必要性はあっただろうか?
どれだけ考えても脚本的にナナという唯一の恐竜の存在が
じゃまになっただけだ、だからこそ、それを解決させるために
ナナというキャラクターを殺し、メインキャラが泣きじゃくり、
無理やりお涙頂戴している。

品性のかけらもない展開だ。
みている子どもたちは大号泣だ、それは感動ではない、
ただただ「ショッキング」な展開を魅せられたからこそ
泣いているに過ぎない。

みている大人の私でさえ、唐突すぎる死に驚いたくらいだ。
もう少し説得力のある展開ならば違っただろう。

例えばナナはあくまで恐竜の遺伝子からコピーされた
クローンで寿命が短く長く生きられないといような設定で、
伏線をストーリーの中で描いていれば
ナナの死を受け止めることはできる。

しかし、この作品はあまりにも唐突にナナが死ぬ。
だからこそ「悲しい」という気持ちよりも
「ショッキング」なだけだ。
後ろから唐突に殴りかかられて泣かない子供がいるだろうか。
それと同じことをやっているような作品だった。

総評:子供も見放すレベル

全体的に見て品性のない作品だ。
恐竜をテーマにしたクレヨンしんちゃん映画という試みは面白く、
恐竜の描写はかなりこだわって描かれていることを感じる。
しかし、それ以外の部分はかなり厳しい。

恐竜の部分にしても「ジュラシック・パーク」でみたと
重ような、オマージュとしてみればいいのかパロディなのか
パクリなのかよくわからないようなニュアンスのシーンも多い。

敵の魅力もない。
「バブル・オドロキー」は来週には忘れていそうな敵キャラでしかなく、
それ以外の雑魚敵はほとんど出てくる意味もなく、
後は恐竜とひたすらおいかけっこしてるだけだ。

ギャグシーンも序盤こそ悪くなかったのだが、
中盤からは「このタイミングでギャグ?」と思うほど
話の腰を折るタイミングでギャグを入れてくる割には
ティラノサウルスやLOVEマシーンを踊る恐竜など、
子供すら笑わないレベルの滑りまくりなギャグが多い。

これだけならまだ過去のクレヨンしんちゃん映画でも
シンプルに見ていて微妙な、つまらない作品もあるため
そういう作品だと受け止められるが、
問題なのはラストだ。

扱いに困った現代に蘇った恐竜であるナナを、
無理やり「死」という形で唐突に退場させる、
これほど品性のない脚本はない。

子どもたちはたしかに涙を流すだろう、
しかし、それは後ろからいきなり殴りかかられたようなものだ。
ただただショッキングなだけで感動ではない。
過去のクレヨンしんちゃん映画のようなキャラクターの
「意味のある死」ではなく「意味がない死」でしかない。

いろいろな意味でひどい作品だった

個人的な感想:前作

前作はフルCG作品という挑戦的なことをしており、
そのあたりの面白さはありつつも、
脚本が老害思想に染め上げられている点が厳しい作品だった。

しかし、今作は特に挑戦的なことをしているわけではない。
要素や流れ自体はいつものクレヨンしんちゃん映画であり、
恐竜以外に目新しい要素はない。それなのにこの有り様だ。

前作も1本の映画としてひどかったが、
今作はクレヨンしんちゃんの映画としてひどい。
来年のクレヨンしんちゃん映画は果たして大丈夫なんだろうかと
色々と心配になってしまう作品だった。

もしかしたらクレヨンしんちゃん映画は再び
暗黒期に突入したのかもしれない…

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  1. ポリコレプリキュア より:

    予告見ただけで悪い意味でジャリ向けだと確信したけど案の定だった
    ドラえもんののび太の恐竜と比べたら天と地の差がある