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圧倒的爆発不足「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」レビュー

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評価 ★★☆☆☆(32点) 全111分

劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』予告①【2024年4月12日(金)公開】

あらすじ 北海道・函館にある斧江財閥の収蔵庫に、怪盗キッドからの予告状が届く。キッドの狙いは新選組副長・土方歳三にまつわる日本刀だったが、折しも函館で開催される剣道大会のため、服部平次やコナンも同地を訪れていた引用- Wikipedia

圧倒的爆発不足

本作品は名探偵コナンの劇場アニメ作品。
名探偵コナンとしては27作品目の作品になる。
監督は永岡智佳、制作はトムス・エンタテインメント。
なお、本レビューにはネタバレが含まれます

幕末

コナン映画としては珍しく物語冒頭で現代ではなく過去、
幕末時代の土方歳三が映画冒頭で登場する。
今作では「土方歳三」が1つのキーワードのようにもなっており、
事件の根幹に関わるものだ。

そんな過去が描かれてから現代へと時系列が戻る。
怪盗キッドが北海道で「刀」を盗み出す予告を出している。
いつもは宝石、ビッグジュエルを狙っている彼が、
何故か今回だけは刀を狙っている。

なぜ怪盗キッドは刀を狙っているのか?という部分に注目させながら、
怪盗キッドからお宝を守るために我らが江戸川コナンと、
服部平次が怪盗キッドの盗みを止めるために動いている。

冒頭から派手なアクションシーン満載だ。
怪盗キッドがお宝を盗み出し逃げようとする中で、
服部平次はバイクのエンジンを吹かし、ステンドガラスをぶち破る(笑)
怪盗キッドに追いついたかと思えば彼と剣戟をかわしと、
本来の主人公であるコナンそっちのけでアクションをく広げている印象だ。

今回、メインは服部平次だ。
だからこそではあるが、彼に関連したキャラが多く登場する。
幼馴染である和葉はもちろんのこと、彼に恋する「紅葉」やその執事、
更に紅葉の同級生である沖田 総司まででてくる。

最近のコナンを見ていないと「沖田 総司」って誰?と
なってしまう部分があり、終盤に出てくる「鬼丸 猛」なども
もともとは名探偵コナンと同じ作者が描くYAIBAに登場するキャラであり、
名探偵コナンにも高校生の姿で登場しているものの、
最近のコナンを知らないと「誰?」となってしまうキャラが多い。

冒頭のいつもの自己紹介で簡単にキャラ紹介はされるが、
「沖田 総司」や「鬼丸 猛」などの説明はなく、
このあたりは今作がファン向けであることを根強く感じさせるものだ。

事件

そんな怪盗キッドの盗みのあとに殺人事件が起る。
怪盗キッドが盗もうとした刀の持ち主の秘書を務める人物であり、
刀で切りつけられたような傷と空のゴルフバッグがそこには
残されていたというところから物語が動き出す。

なお、この殺人事件が本作で唯一、死者が出る事件だ。
犠牲者と言えるのは一人しか居ない。
そんな事件の犯人を探しながら怪盗キッドが狙う刀の謎を
コナンと服部平次が推理していくのが基本的なストーリーとなっており、
どこか淡々としている。

ここ数年のコナン映画はスケール感の大きな物が多かった。
ゼロの執行人は衛星を落とし、ド派手なカーチェイスもあり、
紺青の拳はシンガポールが舞台で、あのシンボルが爆破されており、
緋色の弾丸はリニアがオリンピック会場につっこみ、
ハロウィンの花嫁では渋谷全体を巻き込む事件がおき、
黒鉄の魚影は黒ずくめの組織が絡むことで大きな事件になっていた

だが、今作のスケールはここ数年のコナン映画の中で
1番小さなものになっている。服部平次がメインだからこそではあるが、
どこか物足りない。

途中で怪盗キッドを狙う謎の人物なども出てきて、
「刀」は複数あり、刀の所持者や武器商人なども
刀に秘められた「お宝」を狙って動いているのだが、
どうにもパットしない。

武器商人が敵ということで街中で銃をぶっぱなしながらの
カーチェイス的なシーンもあるのだが、
コナンがスケボーを持ってきてないせいも合って、
服部平次によるバイクアクションメインになっているが、
バイクアクションに関しても過去作を超えてこない。

爆発

なにより、今作は爆発がほとんど無い。
武器商人が終盤で人質を取り、宝を持ってこなければ
人質の命も奪うし、函館中に設置した爆弾を爆発させるぞ!と
コナンたちを脅迫してくる。

コナン映画ファンとしては函館が爆発される展開を予想するはずだ。
札幌時計台あたりを今回は爆破してくれるのではないか?
そんな期待感をつのらせてくれるのだが、
この武器商人が爆発したのは車1台だけだ。

武器商人が聞いて呆れるほどのスケール感の
小さすぎる爆発しかおきず、本当に残念でならない。
コナン映画は爆発してなんぼだ、そんな爆発が
車1台レベルで収まってしまうところが
今作のスケール感の小ささを表している。

物語の終盤で、とある人物が「隠された宝」を
破壊するためにかなり大きな爆弾を飛行機に積んで運ぶシーンが有る。
コナン映画ファンなら自ずと期待してしまう、
武器商人が駄目でも彼ならこの爆弾を札幌時計台にぶちかましてくれるはず。

しかし、服部平次により阻止されてしまう。
行き場のない爆発欲が満たされない作品だ。

とってつけた感

序盤から中盤まで「阿笠博士」や「少年探偵団達」は出てこない。
特に阿笠博士に関しては映画ではお約束とも言える
「ダジャレクイズ」のために出てきてもらわなければ困る存在だ。

序盤から中盤まで一切出てこない上に気配すら見せないため、
1コナン映画ファンとして
「今回は阿笠博士のダジャレクイズはないのでは…?」と
不安な気持ちにすらなってしまう。

しかし、終盤で新幹線に乗ってやってくる。
阿笠博士や少年探偵団達の登場もどこかとってつけた感があり、
少年探偵団も無理矢理登場させた感すらある。

更にスケボー要素。
今回、少し面白かったのはコナンのスケボーを
歩美ちゃんが「投下」するシーンだ(笑)
なぜかロケットの着陸のごとく、機能満載で安全に着陸させる
シーンは思わず笑ってしまった

「コナン君!スケボーだよ!」
とアンパンマンが新しい顔をバタコさんに交換してもらうがごとく、
歩美ちゃんに投げてもらうのはちょっと斬新なシーンではある。

ただスケボーシーンに関しても今回はとってつけた感がある。
コナン映画ではコナンのスケボーシーンはとんでもないアクションを
見せてくれる重要な要素の1つだ。
遠心力でぐりんぐりん回ったり、とんでもない跳躍を見せたり、
「嘘だろ…!?」と思うようなシーンを映画で披露してくれていた。

しかし、今作ではロープウェイのロープを渡るくらいだ。
確かにありえないようなアクションシーンではあるのだが、
過去のコナン映画に比べるとかなり物足りない。

コナン映画特有のとんでもアクションや爆発が少なく、
今作は刀による戦闘シーンの描写に重きをおいており、
あくまで個人的にではあるが、
コナン映画で剣戟シーンを見せられても…と微妙な気持ちになってしまった。

暗号

今作の刀には暗号が隠されている。
6本の残された刀、そんな刀を盗み盗まれされる中で、
実は刀とともに「こういうものももってました」と
後出しで暗号文や地図のようなものがどんどん出てくる。
その暗号を解読した後の推理、お宝が隠された場所も相当面倒くさい。

ややこしすぎて子供には理解できない可能性が高い。
大人でもコナンの推理を聞いて
「あー…なるほど?」となるような感覚になるほど、
かなり複雑な暗号や、土方歳三の知識がないと解けない謎でもある。

終盤で唐突に新キャラである巫女が現れて色々と話し出したりと、
キャラクターも今作はかなり多い。

コナンを中心としたいつものキャラ、服部平次を中心とした大阪京都組、
怪盗キッドを中心としたキャラ、今作オリジナルキャラと、
かなりキャラクター数が多く、そんなキャラが一箇所に集まっているならともかく、
それぞれがそれぞれの立場で動き回っているため、
場面転換もかなり多い印象だ。

キャラの多さや後出しの暗号や
土方歳三の知識などかなり複雑なものになってしまっており、
本格的なミステリーとも言えるのだが、
本格的と言うよりも複雑という印象が強く残ってしまった。

ラブロマンス

この作品で描きたいことの1つが「服部平次」と「和葉」の
ラブロマンスだ。工藤新一と毛利蘭が告白し結ばれた今、もう1つのカップルも
いつ結ばれてもおかしくない。
そんな状況だからこそ服部平次も気合が入っている。

「和葉」に告白する気まんまんだ(笑)
そんな和葉に言い寄る男や、怪盗キッドという邪魔者まで登場し、
服部平次が計画する一世一代の告白、
それを今作で描きたいのはわかる。

ラストでそんな告白シーンが描かれるものの、
そんな告白シーンの前にとある出来事が起きている。
そんな出来事の後に告白をし、エンドロールに入る。

見ている側とすれば「あ、これ和葉聞こえてないパターンだ」と
わかりきった状況であり、その結果をエンドロールを挟んだ後に
描かれてもあまり予想外の展開にもならず、
予定調和な感じで終わってしまう。

服部平次と和葉のファンならば楽しめる部分は大きいのだが、
いっそのこと実は聞こえてましたという展開でも良かったのでは?
とやや物足りなさを感じてしまう。

怪盗キッド

今作の怪盗キッドは父が盗もうとしたお宝を
なぜ盗まなかったのかという理由を探っている。
映画では初登場となる彼の幼馴染なども出てきて、
怪盗キッド関連もかなり掘り下げられている。

特に怪盗キッドとコナン、いや工藤新一との関係性は
原作にも踏み込むものだ。
ここが今作の最大のネタバレになるので言及は控えるが、
衝撃の事実が明らかになる。

この衝撃の事実の明かし方自体は素晴らしいのだが、
映画自体の印象はかなり薄味なものになってしまっていた。

総評:スケール感が小さすぎる

全体的に見てスケール感がこじんまりとしてしまった感じだ。
函館という場所を舞台にして、五稜郭にお宝の謎を仕込み、
函館山に隠されたお宝を巡るアクションシーンを描いている。
要素だけ抜き出すと渋谷全体を巻き込んだハロウィンの花嫁のような
作品を想像してしまうのだが、どうにもこじんまりとしている。

爆発に関しても爆弾による爆発は実質1回だけで
車1台を破壊しただけで、他の爆弾は阻止されてしまう。
そのせいでコナン映画だからこそのド派手さ、「映画感」というものを感じず、
少しスケールの大きいTVSPくらいの印象になってしまった。

から紅の恋歌もそうだったが、服部平次をメインにすると
スケールが小さくなってしまう。
しかし、同じ歴史的要素、刀などの要素がある迷宮の十字路と
比べてもやはり物足りなさが強い。

迷宮の十字路はコナン映画としては珍しく爆発がないのだが、
その分、多くの犠牲者が生まれており、アクションシーンにも見応えがあった。
から紅の恋歌では爆発要素もかなりあり、とんでもスケボーアクションもあり楽しめたが、
この作品はそんな過去の服部平次メインの映画と比べても
迫力やスケール感が小さいものになってしまっている。

やたらめったら複雑というより面倒くさい感じもある暗号や、
殺人事件の犠牲者が実質一人というせいもあるだろう。
キック力増強シューズを使った戦闘シーンも一応はあるが、
このあたりも過去の映画と比べるとこじんまりとしている。

函館の各所がやたらめったら強調されているのも気になるところだ。
一時期聖地アニメを狙った作品が多かったが、
それに近いものをこの作品では感じてしまった。

ラストのサプライズ、怪盗キッドと工藤新一の以外な事実があったからこそ
映画という特別感のあるストーリーにはなっていたが、
そこ以外はTVSPレベルになってしまっているような
感覚を覚えてしまう作品だった。

個人的な感想:来年

ただ来年は大いに期待したいところだ。
誰がメインなのかというのは言及を避けるが、
予想外なメインであり、そして舞台は「雪国」だ。

コナン映画で雪といえば誰しもあのコナンによる「神の御業」を
思い出すだろう。
あの雪崩をもう1度、あの神の御業をもう1度劇場で拝めるかもしれない。

来年には期待したいところだ。

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