SF

ラスト3分であっさり解決!?「メタリックルージュ」アニメレビュー

2.0
メタリックルージュ SF
©BONES・出渕裕/Project Rouge
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評価 ★★☆☆☆(33点) 全12話

TVアニメ「メタリックルージュ」メインPV

あらすじ 2128年、世界には人間とネアンと呼ばれる人造人間が混在していた。ネアンの少女である主人公ルジュは、バディのナオミと共に火星で政府に敵対する9人のネアン「インモータルナイン」を殺害する任務に就く引用- Wikipedia

ラスト3分であっさり解決!?

本作品はTVアニメオリジナル作品。
監督は堀元宣、制作はボンズ。
脚本はラーゼフォンなどでおなじみの出渕裕。

火星

1話冒頭から世界観をガッツリと見せているような印象だ。
物語の舞台は「火星」だ。どこか砂っぽい、乾いた空気感が漂い、
そこに住まう人達に「笑み」のようなものも見られず、
息苦しさのようなものを感じる。

この火星には人間だけでなく、
ネアンと呼ばれる人造人間が存在している。
彼らは定期的に「ネクタル」と呼ばれるエネルギーを必要としており、
そんなネクタルを人間が使うと麻薬のような効果がある。

そんな世界で謎の男が暗躍し、怪しげな取引をしている一方で
「ルジュ」と呼ばれる少女は潜入捜査をしている。
彼女は政府機関の特務捜査官であり、とある捜査のために
潜入をしている段階だ。

そんな世界観を冒頭から見せているものの、
専門用語も多く、ややキャラクターデザインも硬いせいか、
いまいちこの世界に入り込みづらい。SFな世界観を説明しようと必死な感じだ。

ネクタルが切れたネアンは動けなくなり政府に回収されてしまう。
感情も、心も持ち合わせる人造人間にとっては
「ネクタル」は必要なものであり、各々が必死にそれを求めている。

そんなネアンである主人公達は
政府に敵対する「インモータルナイン」を探している。

グラディエーター

ネアン達の中には戦闘時には「グラディエーター」と呼ばれる
鎧をまとったような戦闘形態に変身することが出来る。
どこか仮面ライダーなどの特撮ヒーロー的なニュアンスもありつつ、
同時にどこか「かつてのGONZO」的な深夜アニメのニュアンスを感じる。

いわゆる質アニメだ。
横文字だらけの専門用語、暗い絵面、わかりやすい面白さではなく、
地味に染み渡るような、分かる人にだけわかれば良いと言わんばかりの
「自己満足」すら感じるほどだ。

ネアンたちは人間ではない。人間からは下に見られ、
奴隷のように扱われている。
そんな彼女たちだからこそ自分の存在意義を求めている、
ネアンと人間の何が違うのか、ネアンとはそもそも何なのか。

そんな自己問答を繰り返しながらも、
主人公は淡々と同じネアンを「任務のため」に殺す。
彼女が何を考えているのか、何をしたいのか、
あまり主張がなく、無機質な主人公なだけに掴みどころなく、
感情移入もし辛い。

宇宙人

この作品の世界は宇宙人と人類の戦争が起こった後の世界だ。
友好的な宇宙人である「来訪者」と、人類に敵対する
「簒奪者」という宇宙人がおり、「簒奪者」との戦争の中で、
「ネアン」と呼ばれる人工人間が生まれたという歴史がある。

ネアンは宇宙人には危害を加えられるが、
「人間」には危害を加えられない、いわゆるロボットの三原則を持っている。
そういった説明を説明セリフとしてだらーっと聞かされるのだが、
それが面白さに変わるわけでもない。

そもそも宇宙人と戦うための兵器であるネアンに
「心」があり、しかも「人型」なのか。
このあたりの根本的な理由が明らかになっておらず、
アンドロイドなのに戦闘形態があるという設定をゴリ押すための
言い訳をひたすら聞かされている気分だ。

設定が説明されると、更に別の用語がでてきて、
それを解説するセリフが繰り広げられて…と
序盤は説明セリフがやたらおおく、それが面白さとして
うまく頭に入ってこない感じだ。

ブレードランナー的なことをやりたいのはわかる。
人間社会に紛れ込んだレプリカントことネアン、
そんなネアンの中でも特別なインモータルナインを
探すために主人公たちは旅をしている。

きちんと設定がねられているブレードランナーに対し、
この作品の設定は色々とガバガバでツッコミどころも多い。
どこかで見たことのあるような設定とどこかで見たことのあるような
ストーリーを言葉を変えて描いているだけの印象だ。

バディ物

戦闘シーンこそボンズらしくグリグリと動くのだが、
動いているだけで面白みが薄い。
なにせ画面がひたすら暗い。

暗い中でグリグリと動かれても何をやっているのかよくわからず、
なんか動いているなくらいの感想しか生まれにくい。
1話も2話も4話も暗い中で戦闘しているため、
戦闘シーンの動きの面白さが全く活きてこない。

二人の主人公の魅力もかけている。
主人公は主体性がなく、主人公の相棒も彼女を道具とみなしており、
バディ物としての面白みもキャラの魅力も薄い。
メインのキャラに魅力がなければSFストーリーもいきてこない。

「ネアンは備品でもなければ道具でもない!」と彼女は叫ぶが、
言われるがままに彼女はネアンを殺している。
そんな旅の中でネアンと人間の違いはなんなのか、
ネアンにとっての自由とはなんなのかを模索していく。

この手のアンドロイドなどを扱った作品では
ひどくありがちな内容をありがちなまま見せられている。
淡々と盛り上がりなく、世界観や設定を見せつけるのに必死だ。

「ネアン」という奴隷のような立場の存在、消耗品である彼らに自由はない。
そんな実情を知り、色々な人との旅の中で主人公の
成長を描きたいのはわかるが、とにかく盛り上がりなく、
戦闘シーンもピンとこず、序盤にわかりやすい面白さが一切ない。

「簒奪者」とは停戦協定が結ばれているらしいのだが、
この本編よりも「前日譚」ともいえる「簒奪者」との戦争の
ストーリーのほうがよっぽど面白そうだ。

掴みどころのないストーリーが淡々と繰り返されるせいで、
話もキャラも右から左に流れてしまう感覚だ。
キャラクターが生きておらず、そのキャラから出た言葉ではなく、
脚本家が書いたセリフを言わされているような違和感すら感じる。

色々なキャラクターが出てくるものの、キャラの名前も頭に残りにくく、
インモータルナインの場合は変身前の名前と、変身後の名前が
違うため、余計に頭に残らない。

やりたいことはわかるものの、それが頭に入ってこず、
面白さに変換されないまま作品を構成する要素だけが残る。

過去

5話になると主人公の過去が語られる。
主人公が兄と慕う存在、怪しげな父、
彼女は「同族殺し」と呼ばれ「同族」を裏切っている。
父を殺したインモータルナイン、そんなインモータルナインに
彼女は復讐を誓っている。そんな過去が断片的に夢として語られる。

インモータルナインは様々なネアンの始祖ともいえる存在だ。
人間を憎むインモータルナイン、そんな彼らを止めようとして父を
殺そうとした。そんなインモータルナインに復讐を誓う
彼女の中には「コード・イヴ」と呼ばれるものがあり、
ネアンにとって変革が起るなにからしい。

思わせぶりな映像で「考察」させたいのはわかる。
エヴァ以降の00年代前半の深夜アニメでよくあった要素だ。
主人公が眠る中で夢の中で自己問答する展開などまさにそれだ。

出渕裕さんが手掛けたラーゼフォンはまさに
エヴァの影響を強く感じたが、この作品でもそれは変わらない。
あの頃の深夜アニメ、質アニメ、雰囲気アニメと呼ばれるノリを
今更、令和の時代に持ち込んでいる印象だ。

ネアンとはなにか、自分がやっていることは正しいのか、
自分自身はなんなのか。

そもそもインモータルナインといっているが、
物語開始の時点で二人、主人公によって殺されているらしく、
作中では7人しか出てこない。このあたりもかなりややこしい。

インモータルナインが所属している組織といえるのがアルターであり、
主人公は父の復習のためにも兄の働く政府の元、
彼らを探し、殺し、「イド」というものを回収している。

裏切り

中盤で唐突に主人公の相棒が裏切り、
主人公と兄が所属する部署が解体されそうになる。
たださえ部署が把握しきれていないのに別部署が出てもややこしいだけだ。
部長だのの上層部により部署のあーだこーだの話がかわされるものの、
心底どうでもいい。

そんな組織の問題に巻き込まれ主人公は拘束されているものの、
「ネアン」に「イモータルナイン」に助け出される。
彼らの目的はアジモフコード、ロボット三原則からの解放だ。
その鍵は主人公の中にある。

ネアンは人類を超えた存在と思うものも居る。
そんな存在が「人類」に支配されていても良いのか。
そんな主張を聞いた主人公はどうするのか。

序盤から中盤までに出てきたキャラクターたちが
己の正体や立ち位置を明かすことで、
ようやく話の輪郭が見えてくる部分がある。

兄の言うことを聞いてインモータルナインを
父の仇と信じ殺し続けてきた主人公ではあるが、
その信心が揺らいでいく。

地下室

急に主人公が主人公の兄のもとに行き、
そこの地下に隠された父の記憶を見ることになる。色々と唐突な展開だ。
過去回想を記憶という形で淡々と見せており、
物語の謎を明らかにしていくのだが、見せ方がわるすぎて
面白さになっていない。

彼女の兄は現状を維持しつつも、いつかネアンを解放しようとしているが、
主人公自体は今、解放すべきなのではと考えている。
かつては言われるがままにネアンを、インモータルナインを
殺し続けてきた彼女が自分で考えるようになる。

やりたい事自体はわかるが、本当に見せ方が下手すぎる上に
そもそもの主人公の魅力も薄いせいで、盛り上がらない。
過去回想をしている間に、主人公の妹がいきなりあらわれて
襲ってきたかとおもえば、去っていく。

こういう意味があるんだかないんだかわからないような
唐突な展開があまりにも多い。
「アルター」は人類への戦争を考えており、
そんなアルターの仲間にならず、
主人公はネアンと人類の共存を目指そうとする。

色々なキャラが終盤死んでいくが、
特に思い入れのない掘り下げの薄いキャラばかりなので、
死のうが生きようが心底どうでもいい。

中盤あたりで出てきた謎のインモータルナインも
主人公の仲間になってくれるのだが、あっさり倒される。
キャラクターの見せ方が下手なのに無駄にキャラを増やすせいで
終盤、キャラが大集合しても盛り上がりに繋がらない。

そもそも主人公ですら掘り下げ不足で、
主人公の相棒なんて影が薄すぎてどうでもいいのに、
メインキャラみたいな顔をして物語にしゃしゃり出てくるため、
視聴者に感情が追いついてこない。

本当に何から何まで見せ方が下手だ。
やっている事自体はこすり倒されたアンドロイドの自我や
人間との共存というテーマなのに、
そんなこすり倒されたテーマすら素直に見せてくれない。

来訪者

唐突に主人公の相棒が「人間」ではなく「ネアン」であることが明らかになる。
衝撃の事実なのかもしれないが、彼女に対してなんの思い入れもないため、
そんなネタバラシをされてもなんの感情も動かされない。

そんな相棒は人間と来訪者とのコンタクト要員だ。
彼女に導かれて主人公は初めて来訪者とあうことになる。
「来訪者」はかつて人間のような姿だったものの、
長い航海のなかで進化し、形を変えている。

アルターにはもう1つの宇宙人である「簒奪者」と協力している。
「来訪者」は長い旅路の末に「金星」を見つけ、
人類に技術を提供し、金星の開拓を依頼している状況だ。
「簒奪者」もまた金星を求めている。

結局、来訪者も簒奪者も「ネアン」を使って
代理戦争しているような状況だ。
そういう物語の根本が明らかになっても、面白くならないのがこの作品だ。

淡々と説明されるものの、キャラの名前と同じく、
来訪者をゼノアといったり、簒奪者をユノイドといったりと、
1つの固有名詞ではなく複数の固有名詞で表現するセリフが多く、
そのせいでわかるようなわからないような感覚になってしまう。

結局、制作側が「見ている側に伝える」ことをしておらず、
自己満足で自分の頭の中だけで物語を完結してしまっている。
エヴァ以降のアニメで本当によく合ったやりかただ。

深い掘り下げもないのに唐突に現れた主人公の妹が
仲間になって行動をともにしていたりと、
終盤になってもキャラの掘り下げと印象付けがたりていない。

結局、インモータルナインもそうだが、
1クールという尺でキャラが多すぎて使いこなせておらず、掘り下げも甘く、
雑に死んでいく。

本来は盛り上がるはずの戦闘シーンもひたすら雑であり、
序盤こそアニメーション部分での動きは悪くなかったが、
終盤はそんな面白さすらなく、相変わらず暗い中での
戦闘シーンばかりで本当につまらない。

真実

最終話で唐突にさらなる真実が明らかになる。
死んだはずの主人公の父が実は生きていて暗躍していたことが明らかになる。
手垢の尽きすぎた展開に苦笑いすら出ず、呆れてしまう感じだ。

正確に言えば人格と記憶をネアンの体にコピーした存在ではあるものの、
彼はインモータルナインたちが自覚ないまま操り、
ネアンが人間を超えられるかを試している。

そんな真実を主人公たちに告げると、
インモータルナインたちは雑に殺される(苦笑)
明らかにキャラを増やしすぎて扱いに困って雑に処理している感じだ。

主人公は相棒と1つになり、お父様を倒して終わりだ。
本来は相棒と合体して戦う!という盛り上がる展開のはずなのに、
この作品の見せ方の悪さは最後まで変わらず、盛り上がらない。

主人公はネアンを開放するために行動をするのだが、
簒奪者によってネアンを支配するウィルスがばらまかれてしまう(笑)
ちなみにこの時点で1クール全13話の13話目の
20分が経過している段階だ、ほぼ終りに近い。
残りの尺が少ない中でどうなるのか。

13話の尺はのこり2分しかない!さぁ!どうなるのか!

「実は簒奪者の狙いに気づいてアンチウィルスを作っておいたのさ!」

視聴者をバカにするような展開を見せつけられて
物語の展開は終わる。
何だったのだろうかこの作品は(苦笑)

簒奪者との戦いも続いており、わたしたちの戦いはこれからだで
終わっているものの、雑な物語のたたみ方に
呆れ返ってしまう作品だった。

総評:あまりにもひどすぎるオリジナルアニメ

全体的に見て、あまりにもひどすぎる作品だ。
序盤こそブレードランナーみたいなこをやりたいんだろうなという
ニュアンス自体は伝わるものの、決定的なまでに足りない
主人公の魅力、メインキャラの掘り下げのせいで話についていけず、
ようやく話に追いついたと思ったら、風呂敷を広げまくる。

ネアンというアンドロイドの自我の目覚めと人間からの支配の解放、
宇宙人同士の金星を巡る争い、ネアンを作り上げた博士の野望、
色々なストーリーが展開しているもののどれもコレも中途半端だ。

本来は2クールだったものを無理矢理1クールに押し込めた感もあり、
インモータルナインといいながら二人は出てこず、
1話の段階で2クール目の1話を見せられているような感覚もあり、
詰め込むだけ詰め込んだ要素のせいで説明台詞の多い会話は
ひどくつまらなく、淡々と消火作業をしているような作品だ。

アニメーションに関しても序盤こそボンズらしい
グリグリと動くアニメーション自体は楽しめるが、
暗いシーンばかりで戦闘しまくるため動きがよくわからず、盛り上がりに繋がらない。
中盤を越えると戦闘シーンも雑になり、面白い戦闘シーンがほぼなくなり、
終盤の盛り上がるはずの戦闘シーンでさえ盛り上がらない。

最後の展開も本当にひどく、敵の宇宙人がウィルスを仕込んでいたかと思えば、
実はアンチウィルスを開発していました!という展開を
わずか3分たらずで魅せられて終わる展開は
この作品の雑さを表すのに最もふさわしいシーンかもしれない。

設定だけはご立派だが、その設定を1クールで消化することに必死で、
ドラマも、キャラクターも、アニメーションも、
どれもこれも雑になってしまっている作品だった。

個人的な感想:微妙

ボンズのオリジナルアニメらしいといえばらしいかもしれない、
ここ数年のボンズのオリジナルアニメは
どれもこれもぱっとしないものが多く、
そんなボンズの25周年記念らしいといえばらしい(苦笑)

2クールあればインモータルナインなのに出てこなかった
残りの二人や、バディ物としての関係性の構築、
各キャラの深い掘り下げや、2つの勢力の宇宙人などを
掘り下げられて面白くなったかもしれないが、
1クールのアニメでは要素が多すぎだ。

せっかくのTVアニメオリジナル作品では合ったものの、
かなり厳しい評価になってしまったのは残念でならない。

「メタリックルージュ」に似てるアニメレビュー

「メタリックルージュ」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください

  1. 匿名 より:

    YouTubeのコメント欄にも記載しましたが、個人的に冬アニメの中でのワースト作品でした。
    放送前は一番期待していたアニメだっただけに、1話視聴後には悲しみを通り越して怒りが湧いてきました。

    >制作側が「見ている側に伝える」ことをしておらず、 自己満足で自分の頭の中だけで物語を完結してしまっている。

    これは私も視聴しながら同じことを思いました。
    このアニメは視聴者に何を見せたいのか、何を伝えたいのか、それが全然見えてこない。
    SF作品って世界観が特殊だからこそ、視聴者が理解出来るように説明しなければならないのに、それをせずに話を展開したって着いて行けるわけないじゃん!! って思いました。

    ・専門用語多すぎ!
    ・キャラ数多すぎ!
    ・世界観や設定を無駄に広げすぎ!
    ・シーンの導入やEDの入り方が唐突で気持ちが追いつかない!
    ・人間×人外のバディ物として観たい人にとっては、ナオミも実はネアンだったというカミングアウトは地雷中の地雷。現にXでそのことを嘆いている人もいた。
    ・主人公の変身要素省いて生身のアクションで魅せた方がまだ男性人気獲得出来たんじゃ……?

    不満を挙げていったらキリがないくらいです。
    良かった点はOPとED、声優さんの演技くらいです。

  2. ピュアポリコネプリキュア より:

    ボンズの駄目な所(外見はオサレだけど中身はスカスカ)が露呈していたアニメだった
    意識だけは高いんだけど、実力が追いついていなくて上手く作品に昇華できていない