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地味「冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた」レビュー

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評価 ★★☆☆☆(35点) 全13話

【2023年秋放送開始】TVアニメ『冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた』PV第1弾

あらすじ 若き日に魔獣に襲われ片足を失った元冒険者ベルグリフは、故郷へと戻り村民と日々平穏に暮らす中、近くの森で捨てられていた女の子を拾い、自分の娘“アンジェリン”として男手一人で育て上げる。引用- Wikipedia

地味

原作は小説家になろうで連載していた小説作品。
監督はもりたけし、制作は颱風グラフィックス。

負傷兵

主人公の一人である「ベルグリフ」はかつては優秀な冒険者だったものの、
モンスターとの戦闘の際に片足を食われてしまい、冒険者を引退して、
田舎の村で暮らしている。そんな中で森の中で赤ん坊を拾い、
育てることになるというところから物語が始まる。

1話から作画のクォリティはかなり控えめであり、
あまりピンとくるものではない。
主人公が片足を食われるという決定的なシーンも
主人公の回想、過去の記憶という形で描かれているせいか
暗いエフェクトがかかっており見えにくく、いまいち掴みが弱い。

森の中で拾った少女は大きくなり、父と同じように冒険者になるために
村を出るというところから物語が始まる。
いわゆる「なろう系」ではあるものの、この作品には転生や転移という
要素もなく、ステータスやレベル的な概念もない。

いかにもな「なろう系」らしい要素がないのは、
その手の要素が嫌いな人にとってはいいかもしれないが、
逆にそれが「無い」からこそ、かなり地味だ。

淡々と物語が進み、主人公の娘は「黒髪の戦乙女」と呼ばれる
Sランク冒険者になっており、パーティーとともにモンスターを倒し
平和を守っている。
彼女がSランクになる過程などは一切描かれず、
瞬きをしたらSランクになっているような感じだ。

本来ならば「かわいい」か「かっこいい」と感じるべきはずの
もう一人の主人公である娘の「アンジェリン」のキャラデザも
のっぺりしており、かわいいもかっこいいも感じない。
外見的な魅力が薄く、作画のクォリティもかなり古臭い。

あえてそうしてるのかもしれないが、
どことなく90年代のアニメのような雰囲気すら感じるような
古さが欠点にもなっている。

帰れない

Sランク冒険者になってしまった「アンジェリン」は
優秀な冒険者だからこそ依頼が絶えず、5年以上も故郷に帰っておらず、
父に会うことも出来ていない。

いざ故郷に帰ろうとしても道中に盗賊が現れたり、厄介事に巻き込まれる。
なかなか帰ることが出来ず、そんな苛立ちを盗賊やモンスターにぶつける。
1話の段階で様式美がうまれており、テンプレ的だ。

トラブルに巻き込まれる娘と、故郷で帰りを待つ父。
そんな視点が入れ替わりつつ描かれるのだが、
特に盛り上がるわけでもなく、ひたすら淡々としたストーリーは退屈だ。

父は故郷で娘に帰りを待ちながら村の平和を守っている。
かつては冒険者としてそこそこの腕前だったが、
片足では実力を出すことも出来ず、娘の実力の上がり方、
ランクにどこか羨ましくも感じている。

そんな遠方で活躍する娘は「父」が自慢だ。
「赤鬼のベルグリフ」という2つ名を勝手に作り、
自身が勝ったことがない父の名前を事あるごとに吹聴している(笑)

そんな噂や娘に助けられた縁のあるキャラが父の元に訪れることで
世界が広がりストーリーが広がっていく。
1話ではわかりにくいが、話が進んでくると、この作品の地味な面白さが
じわじわと染み出してくるようだ。

娘の活躍によって縁が広がり、色々な人が田舎の村にやってくる。
強いと噂の、Sランク冒険者よりも上のものを手に入れるために。
貴族や商人、様々なつながりが生まれる。

活発化

娘が帰れないのは魔物がなぜか活発化しているせいだ。
この世界には「魔王」の伝承が残っており、その魔王が復活する全長なのでは?と
人々は不安にかられている。

Sランクな娘はSランクだからこそ、その責務を果たすために帰ることが出来ない。
きちんと「冒険者ギルド」の役割がこの世界の中で生きており、
他のなろう作品では「便利屋」くらいでしかないのだが、
この作品は魔物の脅威という冒険者たちがいる意味がきちんとあり、
そんな冒険者としての仕事をきちんと描いている。

帰りたいという気持ちはある、だが「Sランク」としての
責任が彼女にはある。そんな魔王の一人が復活し、魔物の大量発生をふせぐために、
引退した冒険者たちとともにSランクの娘は動き出す。

ストーリーとしてはかなり丁寧に描かれているのだが、
そんな丁寧なストーリーに「作画」がついていっておらず、
戦闘シーンはちょこちょことあるのに、そんな戦闘シーンの
作画が悪いせいであまり盛り上がりにつながっていないのは残念だ。

そんな魔王の復活の裏で暗躍しているものも居る。
3話で「序章」としてのストーリーの区切りがしっかりしており、
ようやく父と娘が再開する。

3話という序盤の区切りをきちんと意識したストーリー構成は素晴らしく、
骨太かつどっしりと腰を据えたストーリー自体は決して悪くない。
地味ではあるが(苦笑)

世界観も地味にしっかりしている。
例えばSランク冒険者たちが活躍するような大きな街には
「お風呂」があるが、父のいる田舎の村には風呂がない。
貧富の格差や水の入手方法など、地味ではあるもののきちんと
舞台設定が作られている。

Sランクな娘のパーティーの一人は「獣人」と言われる種族だ。
この世界で獣人は差別の対象だ。だからこそ彼女は常に帽子を被っている。
そういう細かい設定が絵的な地味さはあるものの、
面白さにつながっている

魔王

父の強さは見ている側にはいまいち伝わりづらい。
Sランクな娘をあっさりといなすことはできるものの、
それは彼女のクセを知っているからなのではないか、
父自身も冒険者時代はEランクだからこそ、己の強さを自覚していない。

Sランクな娘は魔王の一人を倒すほどの実力だ。
そんな「魔王」に父は昔、出会い、脚を奪われた可能性も示唆されている。
冒険者をこのまま続ければ娘も脚だけではなく命も奪われるかもしれない。
そんな娘のことを思うからこそ、父は娘に立ちはだかる。
だが本気になった娘に父は倒されてしまう。

Sランクな娘という規格外な存在がいるからこそ、
父の強さがいまいちわかりにくい。本当にEランク程度の力しか無いのか。
冒険者を引退して以来、ろくに田舎の村を出ていなかった父は
娘が広げた縁をきっかけに村の外に出ることになる。

村の外にでたからこそ、彼も貴族や「魔王」を巡る争いに
巻き込まれていくことになる。
魔王の配下のようなものを召喚する「聖女」という存在、
そして「Sランクな娘」の出生など、徐々に物語の根幹に関わる
設定が紐解かれていく印象だ。

大体、3話か4話ごとに「章」が分かれており、
その都度、区切りがついた話が起承転結スッキリと描かれており、
それを積み重ねている印象だ。

終盤

終盤になると、より魔王の動きが活発になっていき、
「ベルグリフ」は魔王の一人を育てることにもなっていく。
ややスローペースではあるものの、淡々とストーリーを進ませながら
キャラクターが増えていく印象だ。

淡々として地味にだけに作画のガタガタさが余計に終盤目立ってくる。
序盤から決して良い作画とはいえなかったが、終盤はかなり
作画の悪さが目立ってしまっている。
終盤ももちろん戦闘シーンはあるのだが、止め絵がかなり目立っている。

「アンジェリン」の出生に関しても謎のままだ。
魔王を使ってなにか企んでいる組織も何を企んでいるのかよくわからず、
「ベルグリフ」の過去のパーティーに関しても、
一人は終盤になって出てきたものの、話が進んでいるようで進んでおらず、
1クールでは謎が謎のままで終わってしまっている部分があまりにも多い。

原作は全12巻で完結しているようで、
2クールくらいでがっつりと描かれれば、このあたりの印象も変わり、
地味なだけじゃない!といい切れる作品になったかもしれない。

あまり話題になった作品とは言えず2期の可能性がうすそうなのは
残念なところだ。

総評:良い意味でも悪い意味でもなろうらしくない

全体的に見て一言で言えば地味だ。
なろう原作ときくと「レベル」や「ステータス」という概念があって
「俺つえー」な「異世界転生」ものと想像しがちだが、
この作品はそういう「なろうらしい」要素はかなり薄い。

それゆえに地味だ。
冒険者を辞めた男が田舎の村で赤ん坊をひろい、
成長した娘は父のような冒険者を目立ち旅立ち、Sランクの優秀な冒険者となる。

そんな基本的な設定の中で父と娘の関係性を描きつつ、
徐々に世界観が広がっていき、魔王の問題や貴族のゴタゴタ、
父の元パーティーの問題や、娘の出生問題など色々な謎が出てくる。
ただ、そのあたりの謎が完全に描かれることもなく、
あくまで匂わせるだけの序章で終わってしまっている感じが強い。

貴族同士のゴタゴタも序盤から色々と続いているが、
このあたりは特に面白みもなく、キャラだけが無駄に増えている感じがある。
もう1クールあれば原作ストック的に色々と謎が明らかになり、
物語の完結まで描けたかもしれないが、色々と中途半端で終わっている。

きちんとした設定やストーリーが描かれており、
派手さはないのだが地味な面白さはきちんとある作品だ。
ただ、それゆえに話題性もなく、作画も序盤から悪く、
中盤からはかなり厳しいものになっている。

丁寧なストーリー自体は悪くなかったものの、
2クールくらいで一気に描かれていれば印象も違ったかもしれないだけに
もったいなさを感じる作品だった。

個人的な感想:声優だより

娘を早見沙織さん、父を諏訪部順一さんとベテランで固めており、
新人声優よりも中堅以上の声優さんがかなり目立つ作品だ。
作画のクォリティがあまりよくないからこそ、
声優さんに頼ってる部分も大きい。

2期があれば印象が変わることもあるかもしれないが、
あまり話題にならなかっただけに、その可能性も低そうだ。
かなり硬派かつ地味な作品なだけに、
それを盛り上げるだけのアニメーションがアレば違ったかもしれないが、
作画の酷さだけはどうあがいても擁護しようがないものだった。

良い意味でも悪い意味でもなろうらしくない。
90年代のラノベファンタジーのような雰囲気は
個人的には好きだったものの、それが明確な面白さになることは
無かった作品だった。

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