青春

青い大根をかじり尽くせ!「Unite Up!」レビュー

3.0
Unite Up! 青春
©Project UniteUp!
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評価 ★★★☆☆(58点) 全12話

TVアニメ『UniteUp!』PV第1弾

あらすじ 「俺が、アイドル…?」歌が大好きな高校生・清瀬明良。彼の歌は歌い手“KIKUNOYU”として動画配信サイトに公開されていた。ある日、その歌声を聴いた芸能事務所“sMiLeaプロダクション”にスカウトされる。引用- Wikipedia

青い大根をかじり尽くせ!

本作品はソニー・ミュージックグループによるアイドルプロジェクトを
原作としているアニメ作品。
監督は牛嶋新一郎、制作はCloverWorks

ライブ

1話冒頭からアイドルアニメらしくライブシーンから描かれる。
細かいダンスの動きとライブだからこその綺羅びやかな演出は
アイドルアニメが始まった感を強く感じる冒頭だ。

そんなアイドルのライブがテレビで流れる中で、
主人公は部屋の中で立った一人で歌っている。
シングルマザーな家庭で育った彼は夢を失った少年だ。
ヒーローになることを夢見ているものの、現実はそう甘くはない。
夢に憧れる子供心を失った彼は無駄な毎日を過ごしている。

彼は一人で部屋で歌うほど歌のうまい少年だ。
そんな彼の歌唱力に目をつけた友人は
勝手にカラオケで彼の歌を録音し芸能事務所に送ってしまう(笑)
それどころか勝手にネットにアップしている。
とんでもない友人だ。

歌は好きだがアイドルになろうなんて考えのなかった主人公、
アイドルというのは彼にとっては非現実的だ。
芸能事務所に所属する話をきいても、彼はどこか上の空だ。

CloverWorksらしい丁寧なキャラクターの描写、
特に「顔」の描写は本当に絶妙だ。
セリフではなく、顔で主人公の心理をきちんと描写しており、
言葉がなくとも彼の心が見てる側にも伝わる。

自分の歌がネット上の多くの人に、友人に、
そして芸能事務所にも認められる。
彼を思う友人の一言が彼に一歩を踏み出させる。
諦めていた夢を、諦めていた非現実的な現実を求めるために
彼は一歩を踏み出す。

母親への告白は勇気がいることだ。
「アイドルになりたい」なんて普通の男の子にとっては
非現実的なことに過ぎない。
だが、母はすべてを知っており、彼の背中を押してくれる。

どこか恥ずかしい思いはありつつも、
周囲の思いを受け止め、夢を形にしていく。
丁寧な1話の導入は王道ではあるものの、丁寧な
アニメーションの描写とあいまって素晴らしい導入だ。

ん!?

2話からは研修生として同期の二人の歌い手とともに
レッスンを受けることになる。
この二人のアイドルのうちの一人が問題だ。

この作品は新人の男性声優さんが多く起用されている、
このあたりは男女問わずアイドルアニメとしてはありがちだ。
アイドルアニメは声優さんを売出し、
声優さん達によるライブを行う側面もあるため、
新人声優が起用されやすい。

それ自体は問題ないのだが、問題は演技力だ。
他のキャラクターを演ずる声優さんでも演技が
やや拙い部分や気になるところはあるものの、
特筆するレベルではない。

しかし「五十鈴川 千紘」を演じている声優さんはかなり厳しい。
キャラクターの性格的にクールでツンツンとした感じで、
無表情なキャラクターだ。
感情的にセリフを読みあげる他のキャラと違い、
あまり強い感情をセリフに込めづらいキャラクターだ。

だからこそ演技力が目立ってしまっている。
キャラの特性上仕方なくはあるのだが、
それにしても、いわゆる「棒演技」な演技は
新人声優さんが多く起用されている中でも悪目立ちしてしまっており、
彼の演技のおかげで他の人の演技が気にならなくなるレベルだ。

シンプルに声の抑揚の付け方が甘い。
全部同じ抑揚で台詞を読んでしまっているため、
台本を目の前にして台本の文字を読んでいる光景が
想像できてしまうほどの棒読み感はかなり厳しいところだ。
しかもメインのキャラなだけに厄介だ。

2話では歌うシーンもあるのだが、
「五十鈴川 千紘」を演じている方の歌唱力は素晴らしいものがある。
歌唱力と演技力のギャップには驚かされるものの、
ちょっと残念な部分だ。
ただ話を追うと慣れてくる部分もあって妙にクセになる。

ストーリー自体は王道かつ丁寧だ。
主人公が組む二人は「歌い手」としての実績がある、
他の二人はアイドルになりたいという思いがある。
だが、主人公にはそれがない。

周囲に言われてなんとなくアイドルを目指しており、
アイドルに対する憧れや、アイドルに対する知識もない。
だからこそ他の二人とどこか温度差があり、
同時にそれを憂いている部分もある。

1話と同じく2話でも繊細なキャラクターの表情の描写が
セリフでは感じさせないキャラの心理描写を後押ししており、
王道なストーリーだからこそ繊細な心理描写が光っている。

自分のアイドルへの思いを二人に告白し、
二人はそれを否定するわけでもなく受け入れてくれる。
二人も色々な思いを抱えている。
「直江 万里」は昔、顔をいじられたことで自身の顔にトラウマを持っており、
だからこそ顔を隠して歌い手をしている。

だが、そんなトラウマもあっさりと銭湯で乗り越える(笑)
がっつりと重いストーリーになりかねない部分もあるが、
あくまでもさらっとトラウマを克服していき、
それぞれがアイドルになる過程を描いている作品だ。

総理大臣?

主人公はアイドルのことを何も知らない。
他の二人もまだ研修生だ。そんな彼らを導くのが先輩アイドルたちだ。
すでにプロのアイドルとしてユニットを活動している先輩たち、
そんな彼らがなんでアイドルをやっているのか、どうしてアイドルなのか。

先輩のライブを見に行ったり、話を聞く中で、
そんな思いを主人公は受け止めていくことで
自身の「アイドル像」を定めていく。
そんな先輩たちも壁にぶつかっている。
自身の中のアイドル像、目指す道があるからこそぶつかりあっている。

先輩アイドルの一人は「総理大臣」を目指している(笑)
トップを、てっぺんを目指す。
アイドルでも総理大臣でもそれはかわらない。
多くの心の人を掴んだもののみがトップに立てる。

総理大臣という突飛なワードが出てきたときは驚いたものの、
序盤から本当に丁寧にストーリーとキャラクターを描写している。
ライブシーンもフルCGでは描かれているものの、
おしゃれな曲でおしゃれなダンスを踊りながら披露される
ライブは「アニメ」の男性アイドルというよりは
最近流行りのK-POP的な男性アイドルのニュアンスを感じる。

3人で

そんな中で主人公は気負ってしまう。
他の二人に比べてダンスの経験は殆どない、
だからこそ先輩のアイドルとしてのバックダンサーを
務めることになっても彼だけが足を引っ張ってしまう。

今回は自分は外してやって欲しい。
そんな気持ちを二人に吐露するものの、二人は彼の背中を押す。
決してウジウジせず、シリアスな要素を引き伸ばさずに、
爽快感のある青春アイドルストーリーが心地よく、
ひたすらに王道を突き進む丁寧な積み重ねが素晴らしい。

ただ一方で地味さは否めない。
優秀なキャラデザのおかげもあってキャラの魅力も
印象もしっかり残り、大根な棒演技な彼も、
大根だからこそ逆に印象づく部分があり、
話が進んでくるとクセになる味わいすら出てくる。

中盤になると事務所の社長や副社長な元アイドル達や、
先輩アイドルたちがどうして、この事務所にいるのかという
ストーリーもきちんと描かれることで
「unite up!」というアイドル全体の掘り下げも行われている。

驚くほどに丁寧なストーリーは見れば見るほど
この作品の面白さが深まっていく。

カッチャン!

中盤になると彼らのデビューが決まる。
せっかくのお披露目ではあるものの台風がきてしまい、
彼らは手作りの配信お披露目会の準備を始める。

アイドルによるアイドルのためのアイドルのお披露目。
そこには主人公の歌声を勝手にアップしていた「カっちゃん」もいる。
アイドルが好きな彼が友人のアイドル性を見出したからこそ、
彼が居たからこそ今の主人公はここにいる。

彼は決してメインキャラではない、見た目だって完全にモブだ。
しかし、そんな彼の再登場に心が踊ってしまう。
そんな彼の前で彼はアイドルになる。

1話ではアイドルになることすら考えていなかった高校生が、
友人に背中を押されアイドルになる。
ダンスだってほぼ未経験で必死に練習してきた彼を見てきたからこそ、
彼らのデビューライブにどこか親心のようなものすら感じてしまう。

丁寧な積み重ね、セリフではなく表情で見せるアニメーション、
王道のアイドルストーリーが描かれたからこそ、
6話のデビューライブがきちんと盛り上がりに繋がっている。

青い大根

7話では例の彼こと「五十鈴川 千紘」のメイン回だ。
アイドルとしてデビューたものの、彼は父にだけそのことを言えていない。
彼の父は日本舞踊をしており、厳しい父親だ。
大きくなったら家元になりたい、父のようになりたい。
そんな思いが子供の頃にはあった。

しかし、夢は形を変える。
決して日本舞踊が嫌いになったわけではない、
だが、それ以上に歌うことに、アイドルに、自分の存在を
世界に届ける魅力に彼はハマってしまった。
それを父に言うことがなかなかできない、真面目な少年だからこそだ。
そんな思いを秘めた彼を二人の仲間が背中を押してくれる。

父に認めてもらいたい。
それが父と同じ日本舞踊ではない、アイドルだとしても。
言葉の少ない不器用な父と真面目な少年の親子の関わり合いは
涙腺をくすぐられる。

相変わらずの演技ではあるが(苦笑)
だが、それでも彼がアイドルとして成長していくように、
中の人の演技も1話に比べれば少しは成長している。
見ている側が慣れただけかもしれないが、
それをさしおいても演技力は中盤から少し変化が見える。

アイドル未満だった彼らが周囲に、親に、
多くの人に認められてアイドルとして輝いていく。
彼らの「ファン」も増えていき、
アイドルとしての形が整ってくる。

先輩

基本的には主人公を含めた3人、PROTOSTARを中心に
物語が描かれており毎話のストーリーも基本は3人の物語だ。
だが、ときおり先輩アイドルたちの掘り下げや
結成に至るまでのストーリーもサクッと描かれており、
あくまでも先輩たちはサブキャラではあるもののきちんと印象に残る。

全員を主人公にすることはキャラ数的に無理だ。
だからこそ、きちんと取捨選択をし、
PROTOSTARを中心に物語を描きつつ、
自然と先輩アイドルたちも掘り下げていく。
そんな先輩アイドルたちとともに事務所の合同ライブが決定する。

そんな中で誰をセンターにするのか。
みんながみんな自身を持ったアイドルたちだ。
だが、そんな先輩アイドルたちを前に主人公は一歩引いてしまう。
同時に事務所の元アイドルである社長の怪我の真相も知る

野球

主人公はかつて野球という夢を諦めた少年だ。
そんな少年が野球を通じて先輩アイドルの背中を押す、
背中を押されてばかりだった少年がアイドルとして
仲間を支えるまでに成長している、
そんな過程が1クールできちんと描かれている作品だ。

合同ライブには色々な思いが詰まっている。
音楽の道を進もうとしてアイドルになったもの、
アイドルの夢を諦めたもの、夢途中で破れたもの。
そんな彼らがステージに上がる。

かつてアイドルだった物の姿もそこにある。
もう完璧なステージは出来ない、だからこそアイドルを引退し、
アイドルを生み出す側に立った彼らが、
後輩への花道を作るためのステージだ。

ライブシーンもそれぞれのグループごとのシーンがきちんと描かれる。
それぞれのグループらしい楽曲とパフォーマンスを、
フルCGによる描写できちんと描いており、
1クールで丁寧に描いたキャラクター描写がライブで生きている。

お客さんの前での初めてのステージをこなし、
主人公が「どんなアイドルになりたいか」という思いが固まる。
友人に背中を押されてアイドルになった彼が、
アイドルとしての形を定めた1クールだ。

まっすぐに王道なアイドルストーリーを見せてくれた作品だった。

総評:これぞ王道アイドル!でも青い大根が…

全体的に見て清々しいほどの真っ直ぐな王道アイドルアニメだ。
最近はアイドルアニメと言っても、そこにプラスなにかを
足すことも多く、変化球な作品も多い。
そんな中でこの作品はど直球なアイドルアニメを描いている。

そんなどストレートなアイドルアニメを盛り上げるのは
アニメーションの良さもある。
セリフではなく、きちんとアニメーションによる演技、
表情によって見せるシーンが特徴的であり、
だからこそ、よりキャラクターに愛着を持てる。

メインを3人のアイドル未満な歌い手たちに焦点をあて、
彼らが先輩アイドルと関わり合いながら自身と向き合い、
ときに先輩たちのエピソードも描かれつつ、
デビューライブからの合同ライブの流れをきれいに描いている。

惜しむべきというより気になるのはやはり
新人声優や俳優をやっている方も多いため、
演技力が厳しい部分もあるところだ。
特に青い髪の「五十鈴川 千紘」に関してはやや厳しい部分があり、
序盤は彼が喋るたびに気になってしまう部分がある。

ただそんな彼の演技も中盤くらいから
見てる側がなれる部分もあり、逆に演技力があまりないからこそ
気になってしまう部分がある。
他のキャラクターの声優も演技力が厳しい人もいるのだが、
彼のお陰で気にならない部分もあり、欠点とは言い切れない部分もある。

この「五十鈴川 千紘」こと青い大根を
見てる側がどう飲み込むか、消化できるかで
この作品の感想も大きく変わってきそうだ。

そこ以外は丁寧なストーリーの積み重ねとキャラクター描写が
生きてる作品であり、久しぶりにここまで真っ直ぐな
王道アイドルアニメを味わった気分になれる作品だった。

個人的な感想:もっと話題に…

放送中は残念ながらほとんど話題にならなかった作品だ。
この作品が放送されていた2023年冬アニメは
延期していた作品も多く、この作品も4話以降の放送が
2週間ほど延期してしまった。

そのせいもあってか話題にならなかったことは残念でならない。
確かに演技で気になる部分はあるのだが、
そこ以外は本当に素晴らしい作品だ。
2期も決定しており、そんな2期でどんなストーリーを見せてくれるのか。
気になるところだ。

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