日常

仕事に疲れた貴方に「ポケモンコンセルジュ」レビュー

3.0
ポケモンコンセルジュ 日常
(C)2023 Pokémon. (C)1995-2023 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
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評価 ★★★☆☆(57点) 全4話

【公式】「ポケモンコンシェルジュ」予告編 – Netflix

あらすじ 南の島にある”ポケモンリゾート”で働く新米のコンシェルジュハルとポケモンたちの触れ合いを描く引用- Wikipedia

仕事に疲れた貴方に

本作品はNetflixオリジナル作品として制作された。
監督は土城温美、制作はドワーフスタジオ

ポケモンリゾート

本作品の舞台はポケモンのための「リゾート」だ。
ポケモンたちが自由にバカンスを楽しむ南の島、
そんな島にあるリゾート施設ではポケモンたちが楽しそうに休暇を楽しんでいる。
人間よりもポケモンのほうがこの島は多い。
そんなポケモンたちの描写が本当に可愛らしい。

本作品はいわゆる「ストップモーションアニメ」で制作されている。
簡単に説明すると実際にキャラクターの「フィギュア」をつくり、
それを細かく動かしながらカメラで撮影することで
「アニメーション」に仕上げるのがストップモーションアニメだ。

恐ろしく手間ひまがかかる手法であるものの、
近年では「PUI PUIモルカー」が羊毛フェルトなモルカーによる
アニメーションが大ヒットした。

制作のドワーフスタジオはNetflixで
「リラックマとカオルさん」などを手掛けており、
ストップモーションアニメとしては有名な制作会社だ。
そんな制作会社がNetflixで「ポケモン」を使った
ストップモーションアニメを制作している。

細かい描写のこだわりが見て感じられる。
ポケモンたちは基本的には「羊毛フェルト」のようなもので作られているが、
ポケモンの種類によっては羊毛フェルトではなく
別の素材で作られている。

おそらくだが「毛」があるポケモンは羊毛フェルトで、
毛のないツルッとした表面のポケモンはフィギュアとしてPVCなどで
作られている。
その質感の違いがリアルなポケモンの
肌感を感じさせてくれるものになっており、
見ていて思わず「触りたい」と思ってしまう質感だ。

そんな質感だけではなくアニメーションにもこだわりがある。
恐ろしく細かい動きが描かれている…もとい撮影されている。
特に「まばたき」に関しては意識的に撮影しているのだろう、
本当に細かく登場人物がまばたきしており、
髪のゆれなどもきちんと撮影されている。

撮影作業を考えるだけでめまいがしそうなほど細かい動きだ。

主人公

そんなポケモンリゾートを舞台にしているが、主人公は「人間」だ。
彼女は6年半付き合った彼氏と別れ、色々と仕事でミスをし、
不運なことが続いた彼女は心機一転、
ポケモンリゾートで働くことになる。

彼女は簡単に言えば都会で疲れた人間だ。
人間関係、仕事、そんなものに振り回される日常に
疲れ切った彼女は憧れのポケモンリゾートのコンセルジュになる。

このリゾートは自由だ。
何時に出勤してもいい、書類を提出しなくてもいい、
先輩も後輩も上下関係もない。理想の職場だ。

そんな職場で求められることはポケモンたちを
安全に幸せな気持ちになってもらうことだけだ。
自分にできることを、何をしてもいい。
「これをしなければならない」ということはない。

あまりにも自由だ。理想郷ともいえる。
しかし、ルールに縛られた都会人だった彼女にとって
逆にそれは難しいことだ。

序盤はポケモンリゾートで働く人々や、
ポケモンリゾートにきているポケモンたち、
自然と住み着いたポケモンたちを描きながら、
ポケモンリゾートという場所を描いている。

なにか大きな出来事が起るわけではない、
あくまでもポケモンリゾートでの日常が
都会からやってきた主人公目線で描かれているだけに過ぎない。

そんな淡々とした日常ではあるものの、
そんな日常を「アニメーション」が盛り上げている。
細かいキャラの動き、ポケモンたちそれぞれの可愛らしさが
際立つような描写の数々にニヤニヤしてしまう。

登場人物たちが会話している後ろでもポケモンたちが
楽しそうになにかをやっており、
画面の端から端まで計算されたシーンで構成されている。

コダック

主人公はそんなポケモンリゾートで「コダック」と出会う。
彼は自身の超能力の使い方に悩んでいる。
頭痛がたびたびおこり、その度に念力が勝手に発動して
周囲の人に迷惑をかけてしまっている。
それゆえに誰かと関わることをせず、こっそりと草むらに隠れている。

主人公もどこかコダックと似ている。
彼女には明確に「得意」と言えることはない。
他のスタッフのように料理が得意だったり、マッサージが得意なわけでもない。
そんな自分がポケモンリゾートでなにができるのか、
それをずっと模索している。

彼女は一生懸命だ。
ポケモンが大好きで、ポケモンが幸せになれるポケモンリゾートで
何かがしたい。そんな何かを一生懸命探しながら、
ポケモンたちに寄り添って、彼らの悩みを解決しようとしてくれる。

まっすぐな主人公とコダック。
この二人の関係性も微笑ましく、
コダックが主人公と触れ合うことで、自らの悩みを解決し、
自分の悩みを解決してくれた主人公とずっと一緒にいる姿が微笑ましい。

進化

ポケモンだからこそ進化することもある。
それは人間にとっての「成長」でもある。

コイキングでありながら泳ぎが得意ではなかったコイキング。
そのコイキングはいつも浮き輪をつけて泳いでいる。
そんなコイキングのために奪われてしまった浮き輪を
主人公やコダックが追いかけ回すのだが、
浮き輪は結局壊れてしまう。

しかし、そんな主人公たちの行動とは裏腹に
「コイキング」は「ギャラドス」に進化し、
得意ではなかったはずの泳ぎが得意になっている。

人間もポケモンも苦手なことをがあっても、
いつかは克服できる。
ときにはそれを自分らしさと認め、苦手なことを克服したり、
進化することで克服することもある。

この作品は「ポケモン」という題材を使って
個性というものを描いている。

ピカチュウ

最終話でやってくるピカチュウは「声が小さい」ピカチュウだ。
自分に自信がなく、怖がりで人見知りで声も小さい。
そんなピカチュウをトレーナーである少年は
「かっこわるい」と思っている。

主人公とコダックはそんなピカチュウになんとか
大きい声を出してもらおうとするものの、
結局、大きな声は出せない。

しかし、トレーナーである少年はピカチュウとともに
遊んでいるうちに「自分のピカチュウ」のいいところをたくさん見つける。
たとえ他のピカチュウのように大きな声が出せなくても、
自分のピカチュウの個性を彼は認め、
ピカチュウ自体も最後には自分の気持ちを「大きな声」で叫んでくれる。

苦手というのも裏を返せば個性だ。
無理に治す必要もなく、少しずつ変わっていけばいい。
そんな優しい世界が描かれている作品だった。

総評:みんなちがってみんないい

全体的に見てシンプルな作品ではあるものの、
全4話という短い尺でさくっと楽しめる作品だ。
ストップモーションで作られたアニメーションは
見ているだけで楽しく、1匹1匹のポケモンたちの
細かい動きや仕草に癒される。

ストーリーもポケモンという個性にあふれる存在達を
題材にしたからこその「個性」をテーマにしたものになっており、
得意なものが何もなかった都会に疲れた主人公が
ポケモンリゾートにやってきて自分らしさを見つけ出し、
コダックやピカチュウを幸せにしていく。

コダックもピカチュウも苦手なものがあったポケモンだ。
そんなポケモンたちが苦手なものという個性を自覚し、
それを少しだけ乗り越えていくストーリーは染み渡るものになっており、
ポケモンコンセルジュという作品の面白さを
しっかりと感じることができる。

その一方で全4話という尺はやはり短い。
あっさりと見終わってしまったがゆえに、
作品全体のストーリーのシンプルさも際立ってしまっており、
もう少し、せめて全8話くらいでもっと色々なポケモンを
見たかったなという思いも強まってしまった。

ただ、全4話だからこそ1時間足らずで見終われるお手軽さもあり、
いつか2期があることを期待したいところだ。

個人的な感想:コダック

ポケモンにおいてコダックがここまで
フィーチャーされる作品は珍しい(笑)
実質的にもう一人の主人公的な立場で全話に渡って
登場しており、コダックが好きな人にはたまらない作品かもしれない。

ただ最終話に限ってはピカチュウだらけになっており、
ポケモンというコンテンツにおけるピカチュウの力強さを
感じられる作品でも合った。

普通のアニメ以上にストップモーションアニメは制作に時間がかかるので、
早い段階での2期は期待できないかもしれないが、
いつか2期をやってくれることに期待したい。

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