日常

これこそが日常アニメだ!「江戸前エルフ」レビュー

4.0
江戸前エルフ 日常
画像引用元:©樋口彰彦・講談社/「江戸前エルフ」製作委員会
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評価 ★★★★☆(70点) 全12話

TVアニメ「江戸前エルフ」PV第1弾

あらすじ 東京都中央区月島。江戸時代より400年以上の歴史を刻む『髙耳神社』。祀られたるそのご神体は、異世界から召喚され、すっかりひきこもったエルフでした引用- Wikipedia

これこそが日常アニメだ!

原作はコミックDAYSで連載中の漫画作品。
監督は安齋剛文、制作はC2C

我にレッドブルを捧げよ!

1話簿冒頭から、やや癖のあるキャラクターデザインが印象深い。
色合いが濃ゆく、まつげや眉などの細かいパーツを
強調するかのようなデザインは独特で印象に残りやすく、
しっかりとしたクォリティで描かれる作画が
そんなキャラクターの印象をより強めている。

舞台はとある神社だ。
創社400年以上の東京の神社の巫女である主人公、
そんな神社には「御神体」として崇め奉られている「エルフ」がいる。
和な世界でファンタジーなエルフが居るという違和感こそが
この作品の魅力であり、エルフのエルダこそがこの作品の核だ。

彼女はひきこもりでだらしない性格をしている。
ゲームやアニメやお菓子やジュースが大好きで、
巫女である主人公に「レッドブル」を要求する始末だ(笑)

エルフというイメージとはかけ離れた存在である彼女の
ダメっぷりは異世界から召喚されて400年、
すっかり「日本」という国にそまり、だめになっている。

そんな駄目な彼女を支える主人公や周囲の人物も魅力的であり、
主人公のクラスメイトなど、キャラクターデザインのおかげもあって
出番は少なくとも印象が強く残る。
キャラデザと作画の魅力がキャラの印象に繋がり、
そんなキャラの日常とギャグアニメとしての面白さが強まっている。

御神体

駄目なエルフとはいえ地域に愛される御神体だ。
エルフであるがゆえに「不老不死」だ。
永遠の命という不変不在の存在だからこそ
駄目でも、引きこもりでも、人見知りでも、地元に愛されている。

基本は日常コメディだ。
このあたりのギャグの当たり外れはあるものの、
1話1話のテンポ感がすばらしく、
駄目なエルフという「ボケ」とそんなエルフに厳しい巫女な主人公という
「ツッコミ」のバランスがよく、夫婦漫才のような心地よさがある。

二人の関係性も微笑ましく、
人見知りで引きこもりなエルダを叱りつつも、
そんな彼女の「愛」とエルフゆえの生き方、死生観のようなものも
主人公は理解している。

エルフと違い人は100年足らずで死んでいく。
だが、エルダは400年前の約束を守り、御神体として有り続けている。
変わらないエルフが変わり続ける人間世界を見守ることに意味がある。

主人公とエルダの関係も主人公の年齢を考えれば
あと80年ほどしか無い。エルフにすれば一瞬だ。
そんな刹那の時のなかで多くの人間と関わることを彼女は好まない。
多くの死を看取り、多くの親しい人を見送ってきたからこその
彼女の今の生き方はどこか切なさを感じるものだ。

そんな切なさがあるからこそ、1日1日の日常が際立ち、
彼女たちの日常にどこか哀愁を感じつつも、
クスクスと1話1話しっかりと笑えてしまう。

400年以上、この世界で生活をシている彼女だが
引きこもりが故の「ジェネレーションギャップ」もあり、
江戸時代の知識で止まってる部分のあるエルダだからこその、
些細な日常の中でのジェネレーションギャップがギャグになり、
日常を盛り上げている。

作画のクォリティも素晴らしく「決め」のシーンの
作画を美麗に描くことでよりキャラの魅力を強め、
日常という本来ならメリハリがつきにくいジャンルの話に
作画でメリハリを付けている。

その他にも料理などの作画も本当に美味しそうに描くことで、
「食」という日常には欠かせないものを際立たせることで
より「日常」の描写が深まっている。

そんなエルダだけでなく主人公である「小糸」も
ただのツッコミ役ではない。
幼い頃に母をなくし、母の役目を引き継いでいる。
エルダのお世話をしているものの同時に彼女にとって
エルダはある種の母代わりの存在だ。

二人が精神的に支え合っていることが
話が進めば進むほど感じることができ、
見れば見るほどこの作品の世界観とキャラクターに
愛着を持ってしまう。

エルフと江戸

日常ギャグアニメらしく、話が進むとキャラクターも増えてくる。
別の神社にも「エルフ」が400年以上前に召喚されており、
そんな他の神社のエルフや巫女が訪れることもある。

序盤でしっかりと主人公とエルダを掘り下げているからこそ、
中盤からキャラクターが追加されてもキャラが薄まることもなく、
ブレることもない。
むしろキャラが増えることで引きこもりで人見知りな
エルダが少しずつ変わりながら序盤にはない「ワチャワチャ感」が
強まってくることで話がダレない。

序盤をすぎると江戸時代に召喚されたエルダだからこその
「江戸小話」のような江戸時代の小ネタや出来事を
江戸時代から生きてる彼女の経験から語ることもあり、
この作品だからこその特徴にもなっている。

そんな江戸時代から東京に住んでいる彼女の目線で、
東京の各地が描かれることもあり、
ある種の「聖地要素」としてスカイツリーや月島の各所などが
リアルに描かれているのは面白いところだ。

10年以上前は色々な日常アニメが聖地化を狙った要素があったが、
そんな日常アニメのブームも終わり、聖地化も減った今、
この作品はかつての日常アニメに習うように
丁寧に「日常アニメ」というものを作り上げている。

きちんと魅力あふれるキャラクターを描いているからこそ、
そんな何気ない日常が面白いものになっている。
なにか特別なことが起るわけではない、強い恋愛要素があるわけでもない、
ただ日本の東京にある神社に「エルフ」がいるという異質さだけで、
この作品は日常アニメというものを作り上げている。

演じている声優さんたちのバランスも素晴らしい。
人間の巫女を演じているのは割りと若手の声優さんであり、
逆に何百年も生きているエルフたちはベテランの声優さんが演じている。
この若手とベテランの掛け合いが日常の中での
会話の盛り上げに一役買っている部分もある。

ほんのり百合

序盤で主人公の初恋の相手とも言える存在が
「エルダ」であることが発覚する。
長年探し続けてきた相手がエルダと知っても
強い恋愛要素が生まれるわけではないものの、
「エルフ」ゆえの美しさを持つ彼女に時折見惚れることもある。

がっつりとした百合要素ではないものの、
この「ほんのり」とした百合要素もこの作品の魅力であり、
長身なエルダと違い、低身長な主人公という対比も
この作品の魅力に繋がっている。

サブキャラクターも魅力的だ。
月島の住人たち、他のエルフや巫女など
あくまでもメインキャラは二人ではあるものの、話によっては
そんなサブキャラが絡むことでにぎやかな日常が描かれる。

あくまでも日常だ。
そんな日常の中の非日常であるはずの「エルフ」であるエルダが
オタク生活を楽しんでいるのも良いギャップであり、
ときに「神事」として神社の仕事に勤しむ様子も
どこか厳かな雰囲気を醸し出している。

いつまでもいつまでも

少し古い作品になるが「かみちゅ!」などを思い出すテイストが
どこか懐かしさを感じながらも、
1クール、素晴らしい日常が描かれている。

毎話毎話、基本的な設定を軽くナレーションで紹介してから
始めるのも地味に効果的だ。
どの話から見ても問題ない「日常」アニメだからこその、
1話1話の面白さと繋がりの無さが1クール全体で
肩の力を抜いてさくっと楽しめる魅力を醸し出している。

最終話は神事である「祭」が描かれて終わる。
巫女である主人公が苦手な弓に挑戦し、
祭りを成功させる。
何気ない日常が最初から最後までまっすぐに描かれている作品だった。

総評:崇めよ!駄目エルフ!

全体的に見て素晴らしい日常アニメになっている。
かつては日常アニメブームが巻き起こり、
美少女キャラが大集合な4文字アニメが多かったが、
そんなブームもさり、日常アニメブームも終わった中で、
この作品は「日常」というものを芯に捉えた作品になっている。

異世界からエルフがやってきて400年以上御神体をやっている。
そんな日常の中の非日常が日常にほんのりとしたスパイスを感じさせつつ、
巫女である主人公と、エルフであるエルダ、
そんな二人の凸凹コンビな日常が微笑ましい。

ただただ日常が綴られているというわけでもなく、
主人公は幼い頃に母をなくし、エルダは不老不死であるがゆえに
多くの人を見送っている。
そんな二人の過去があるからこその関係性が微笑ましく、
エルダは多くの人とあえて関わらない。

それは元来の性格ゆえのものもあるかもしれないが、
多くの人と関わってしまえば、
そんな人達を見送るときの悲しみも増えてしまう。
それをわかっているからこそ、少ない人達と深く関わり合いながら、
彼女は永劫の時を過ごしている。

そんなどこか「悲哀」すら感じさせるキャラクター設定のはずなのに、
400年以上日本に住み着いている彼女の江戸あるあるや、
すっかりオタクになってしまったエルダが愛らしく、
だらしないエルダをまるでお母さんのように叱る主人公も可愛らしい。

作画のクォリティも素晴らしく、毎話毎話
「決め絵」がきちんとあり、普段のシーンの作画と
魅せるときの作画のクォリティの違いがあるからこそ、
「日常」という本来はメリハリの少ないジャンルのアニメでありながら、
きちんとメリハリが生まれている。

こんな日常をずっと見続けていたい。
まさに「日常アニメ」でしか感じられない魅力を
この作品は秘めており、1話から最終話までニコニコしながら
見てしまう作品だった。

個人的な感想:日常アニメ

日常アニメは難しいジャンルだ。
そこに「部活」要素や「趣味」要素を足すことで
日常アニメにしている作品も多いが、
この作品は「エルフ」が居るということ以外に特別なことはない。

一歩間違えばとんでもなく、つまらない作品になってしまうところを
魅力的なキャラクター描写を掘り下げることによって、
そんなキャラクターの日常が面白いものになる。
2期、3期、4期とやって欲しくなる作品だ。
これぞまさに日常アニメといいたくなる作品だった。

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「」は面白い?つまらない?

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