映画

今年のすみっこ映画はやべぇぞ…「映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」レビュー

4.0
映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ 映画
映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ
スポンサーリンク

評価 ★★★★★☆(66点) 全70分

『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』ぺんぎん?の世界一ゆるいあくしょんしーん/11月3日(金・祝)全国ロードショー

あらすじ ある日、森のはずれでつぎはぎだらけの古い建物を見つけたすみっコたち。そこはおもちゃを作る工場だった。引用- Wikipedia

今年のすみっこ映画はやべぇぞ…

今年のすみっこ映画は
やべぇぞ…

本作品はすみっコぐらしの映画作品。
すみっコぐらしとしては三作目の映画作品となる。
監督は作田ハズム、制作はファンワークス

2年ぶり

前作から約2年ぶりの映画作品だ。
最近は以前にもまして色々なところで「すみっコ」たちを
見かけるようになり、ありとあらゆるところで
コラボをして、目にする機会も増えたキャラクターたちだ。

そんなおなじみのキャラクターたちが
おなじみのキャラクター紹介とともに現れる。
彼らはその名の通り、人間たちの世界では仲間はずれや
捨てれられたりした存在だったり、
どこか普通とは違う存在だ。

例えばとんかつ、彼はとんかつのはじっこであり、
油っぽいからと食べ残されてしまっている。
同じようにエビフライのしっぽも食べ残されてしまっている。

他にも寒いのが苦手なしろくまだったり、
トカゲのふりをしている恐竜だったり。
どこか世間から外れた、普通ではない存在そのものの
キャラクター化と言える存在だ。
だからこそ我々オタクにとって愛着が湧く存在とも言える(笑)

ある種のマイノリティ的な存在である彼ら
今回は「しろくま」の過去が描かれる。
彼は元々寒いところに家族と住んでいたのだが、
寒いのが苦手で暖かい場所に移り住んでいる。
しかも、家族に黙って家出したような状態だ。

寒いのが苦手だからと家族に黙って家出していた衝撃の事実と
ともに、そんな家族から子供の頃から好きだった
「くまのぬいぐるみ」が届けられる。

くまのぬいぐるみには元々ボタンがあったのに、
ほんもののペンギン(偽物のペンギンもいるためこうよばれている)が
持ってくるときに木の枝に引っ掛けて落としてしまっており、
そんなボタンを探すというところから物語が始まる。

彼らは基本的に「言葉」をしゃべることはない、
彼らのセリフはときおり文字で表現されるものの、
ナレーションベースでストーリーは進行していく。
いつものすみっコぐらし映画のテンプレートを守りつつ、
いつものように冒険が始まる。

工場

彼らがボタンを探す中で訪れたのは町外れの森にある工場だ。
いつからそこにあったのか誰も知らない、
いつまで工場として何かを生産していたのかすらわからない。
人の気配もなく、おばけでも出そうなほどの雰囲気だ。

そんな工場の中でボタンを探していると
「しろくま」が誤ってボタンを押してしまう。
すると工場が動き出し工場長の「くま」が彼らを歓迎してくれる。

今回のすみっコぐらしはややホラーな雰囲気もある作品だ。
1作目はSNS上で「実質奈須きのこ」と評価され、
意味不明なバズり方をしたのだが、確かに感動できる作品で素晴らしい作品だった。
2作目も夢をテーマにしており、
すみっコたちの夢を思い出す流れは素晴らしいストーリーだった。

今作はどちらかといえば感動に重きをおいていない。
むしろ、どこかダークな雰囲気すらある。

労働!労働!労働!

くまの工場長に気に入られた彼らは工場で働くことになる。
この工場は「おもちゃ」を作る工場だ。
くまのぬいぐるみを作るために作業を分担し、
それぞれのキャラクターが、それぞれのキャラクターらしい
行動をしながら、ぬいぐるみを作り上げる姿は本当に可愛らしい。

だが、どんどん話の方向性が恐ろしくなっていく。
工場長は彼らを労働者として歓迎している、
食べ放題の美味しい料理を提供し、快適な寝室も用意してくれる。
しかし、その代わりに彼らは働かないといけない。
彼らを働かせるために工場長は快適な環境を用意している。

家に帰らせないように、ずっとここにいてもらえるように。
最初はすみっコたちも楽しくおもちゃづくりをしていたのだが、
どんどんと「ノルマ」が増えてくる。
最初は10個くらいだったのに、物語の中盤になると50個、
そして最終的には「1000個」のノルマが課せられる(笑)

住み込みのブラック企業で働いているような感覚だ。
その日1番働いた人にはMVPとして表彰され、
グラフで成績が張り出されている。
ノルマ、仕事の成績…ブラック企業で働いていた大人が見たら
意外たくなりそうなほどの労働環境だ。

快適な衣食住を完璧に提供しているだけに
現実世界のブラック企業に比べればマシかも知れないが、
別にすみっコたちは働いても賃金をもらえるわけではない。
そう考えると人間社会のブラック企業よりやばい工場だ。

当然、労働契約などもかわしていない(苦笑)
彼らは「おもちゃを作ってみない?」と言われ、
それぞれが工場長に褒められた勢いで働いてるに過ぎない。
これぞまさに「やりがい搾取」だ。

おそらく子供の目線で見ればこのあたりは気にならない上に
ブラック企業!なんて考えは思い浮かばないはずだ。
楽しそうに働くすみっこコたちの可愛らしい姿を楽しめる、
だが大人が見るとどうしてもブラック企業という
キーワードが頭に浮かんでしまう。

この労働環境は一体どうなってしまうのか、
すみっコたちは大丈夫なのか。
大人が見るとハラハラしてしまう。

限界

1日1000個なんてノルマをすみっコたちにこなせるわけもなく、
事故も発生してしまう。
だが工場長はそんなことよりも「もっとおもちゃをつくらないと…」とあせり、
ノルマを増やしていく。

彼は別におもちゃを売って儲けてるわけではない。
おもちゃは町に出荷され無料で配られ続けており、
しかも、この工場で作られたおもちゃは勝手に動き回る。

最初は無料で配られるおもちゃに街のこどもも喜んでいるのだが、
いつのころからか需要と供給のバランスが崩壊し、
街は「遊んで…」といいながら迫ってくるおもちゃで溢れかえっている。
まるでゾンビ映画だ(笑)

街の住民はおもちゃを怖がり鍵を締め家に立てこもり、
街中にはゾンビ映画のごとく、おもちゃが徘徊している。
ホラー映画のような絵面に
「この作品はどうなってしまうんだ?!」と
大人の方が身を乗り出してストーリーが気になってしまう。

当然、そんな工場で働くすみっこたちにも限界が来る。
工場長は常に彼らを監視し、サボっていると怒られる。
強制労働だ(苦笑)

しかし、工場もおもちゃを作り続けないといけない理由がある。
彼もまた「すみっコ」なのだ。

存在意義

工場は忘れられた存在だ。
かつては人気があり、色々なおもちゃを作り続けてきた。
しかし、人気はやがて陰り、工場も必要がなくなってしまう。
「工場」そのものが意思を持ち、自らの使命をもとに
おもちゃを作り続けている。

おもちゃを作ることが工場としての彼の存在意義だ。
しかし、それが1度奪われてしまっている。
だからこそ、彼は新しいおもちゃを作り続けている。
そうしないと忘れられてしまう、そうしないと自分の存在意義が失われる。

逃げ出したすみッコたちを捕まえるために
「真の姿」をみせて彼らを捕まえようとするさまは、
ロボットアニメのような構図が生まれており、
同時に特撮映画のような巨大な生物と小さな生物の対比による
ダイナミックなアクションシーンまで生まれている。

あくまでコミカルに、すみッコたちの可愛らしい行動や姿を
子供目線では楽しめるが、
大人目線で見るとものすごくハラハラドキドキしてしまう作品だ。

SDGS

新しいものを作り続けないと存在意義が失われる。
工場はそうおもってたからこそ、
需要に見合わない量のおもちゃをすみッコたちに作らせている。
しかし、それは資本主義な社会においては不要な存在だ。
いつかは倒産する。ブラック企業は常に倒産と背中合わせだ。

工場は子供の笑顔が好きで、子供の笑顔が生まれるおもちゃを
作ることが大好きだっただけだ。
それが資本主義ゆえに満たされなくなってしまった。
彼もまた資本主義の犠牲者だ。

そんな彼に「しろくま」がSDGSの精神を投げかける(笑)
しろくまが子供の頃からなんども母に「ツギハギ」してもらいながら
大切にしてきた「くまのぬいぐるみ」は昔、工場が作り出したものだ。
新しいものを作り続けなくても、彼が作ったものを
今も大切にしてくれている存在がいる、それが彼にとって救いになる。

必要がないものを作り続けることはこの資本主義な社会では不要なことだ。
誰かに求められるものを、需要があるものを作ってこそ
資本主義な世界でビジネスは成り立つ。
工場はすみッコたちに「新しい職」をみつけてもらい、
新たな自分の存在意義を見つけるところでこの作品は終わっている。

とんでもない作品だ(笑)

総評:まさかのブラック企業アニメ!?

全体的に見て予想外すぎる内容だ。
1作目も2作目もファンタジーな内容で、
そこに「すみっこ」というある種のマイノリティなキャラの存在が
愛くるしく、くすくすと楽しみながら、
最後は泣けてしまう作品になっていた。

だが、この作品はものすごく社会的な作品だ。
ブラック企業と知らずに労働者になったすみっこたち、
最初は自分たちを褒めてくれて、美味しいご飯をいっぱい用意してくれて
快適な寝室まで与えられて幸せに暮らしている。

しかし、どんどんとノルマがかさんでいき、
仕事は常に監視され、逃げ出そうとすれば捕まり労働させられる。
「ブラック企業」と「やりがい搾取」を
こんな可愛らしいキャラクターでコミカルに描いている。
大人が見ると胃がキリキリするような作品だ。

そこに資本主義の犠牲者である「工場」というキャラクターや、
まるでゾンビ映画のゾンビようなおもちゃだったり、
最後はロボットアニメか特撮映画のようなアクションシーンまで描かれており、
大人が見ると処理しきれないほどの情報量を叩き込まれる。

子供が見たら素直にかわいいすみっこを見て楽しめて、
最後は「よかったね」と言えるような作品になっているのだが、
大人が見ると倒産しかけたブラック企業に巻き込まれた
すみっこと、そんなブラック企業の社員が転職するまでの
物語に見えてしまう(笑)

1作目や2作目とかなり方向性としては違う作品だ。
子供が見ても楽しめることはもちろんなのだが、
この3作目に限っては大人が見るからこその
視線で描かれる部分のテーマ性も在り、
かなり「深い」作品と言えるかもしれない。

ちょっと衝撃的な作品だった。
4作目の映画がどうなるかわからないが、
3作目でこんな内容を見せられると、
4作目がいったいどんな作品になるのか予想もできないだけに、
次回作が楽しみで仕方なくなる作品だった。

個人的な感想:予想外

本当に軽い気持ちで足を運んだ作品だったが、
予想外すぎる内容で笑ってしまう作品だった。
すみっコぐらしという子供向け映画で、まさか
「ブラック企業」や「やりがい搾取」、資本主義なんて
言葉をレビューで使うことを誰が予想しただろうか。

ブラック企業で勤めていた方が見たら
トラウマが呼び起こされてしまうかもしれない。
そういう人にとっては閲覧注意な作品だ。

ただ、子供も楽しめて大人も色々な意味で楽しめる作品だ。
おもわず語彙力を失って「今年のすみっこ映画はやばい…」と
つぶやいてしまうような作品だった。

「映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」に似てるアニメレビュー

「映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください

  1. 匿名 より:

    全く同じ感想を持った者ですが
    涙を何度も拭いました。
    しろくまのぬいぐるみを大事にするところは、NHKみんなのうたの「くまのぬいぐるみ」を思い出しました。
    そして、工場が泣いているのを掘っとけないしろくまに、また涙して。
    工場の想いにも胸が締め付けられました。

    小さな町工場が発展して巨大工場となり、バブル弾けて倒産って、日本の縮図、失われた30年そのものではないですか。

    すみっこたちこそ、日本の救世主です。すみっこたちのような心を持つことが日本を救うと感じた、
    論文書けそうなほど深い作品に感動しました。

  2. 匿名 より:

    子供向けなのに普通に泣いたわ