評価 ★★★☆☆(52点) 全12話
https://www.youtube.com/watch?v=AYydQH0eNu0
あらすじ 殺し屋バディである一騎と零はとあるクリスマスパーティで人身売買組織のボスを暗殺するが、そこへ「パパ」と抱きつく幼女が飛び込んでくる。引用- Wikipedia
脚本が夜逃げした
本作品はPA.WORKSによるTVアニメオリジナル作品。
監督は浅井義之、制作はPA.WORKS。
ストーリー構成、脚本原案はニトロプラスの下倉バイオ。
カーアクション
1話冒頭から激しいカーアクションと銃撃戦が描かれる。
この作品の主人公の二人は「殺し屋」だ。
依頼を受けてターゲットを殺す、そんな裏世界で生きる二人。
しかし、そんな二人にはちょっとした秘密がある。
「子供」がいることだ(笑)
幼稚園に子供を預けつつ、仕事に勤しむ。
昨今では珍しくない光景ではあるものの、彼らが「殺し屋」であることが
この作品の最大の特徴だ。
殺し屋としてバディーなダディ-達、タイトル通りわかりやすい設定だ。
そんな二人がなぜ子持ちのパパになったのか。
1話はいわゆる「前日譚」から描かれる。
殺し屋ゆえに
彼らの生き方は刹那的だ。裏世界に生きる二人だからこそ、
日々生きていることこそが奇跡だ。
だからこそ、1日に1日を刹那的に生きており、
宵越しの金ももたず、最後まで責任を取れないからこそ猫も飼わない。
そんな彼らの前に一人の子供が現れる。
殺しの依頼を遂行する中で出会った「父の顔」を知らない小さな女の子。
そんな父を彼らは依頼の中で殺してしまう。
父の顔を知らぬ女の子は彼らを本当の父を殺したことは知らずに、
父と思い込んでしまう。
一歩間違えばとんでもなくシリアスな状況だ。
血の繋がりもない家族、疑似家族をやらなければならない。
この点においては「スパイファミリー」を彷彿とさせる設定であり、
色々とかぶる部分は確かにあるものの、
状況やキャラクター設定はだいぶ違う。
あちらは互いに「嘘」をついている関係性だ。
しかし、この作品は嘘をついているのは大人だけ、
真実を知らないのは子供だけだ。
しかも主人公達は子供の親を殺している。
シンプルに先が気になるストーリー展開を1話から産んでいる。
子供
彼らが父親と勘違いさせ連れてきてしまった子供である
「ミリ」は子供らしい子供だ。
どこぞのピンク髪の子供のように超能力など特別な力も持っていない。
何も知らない純粋な子供だ。
初めて会った父親に甘え、父親と遊ぶことを楽しみ、美味しそうに彼の料理を味わう。
母親からも見放され、愛人だった本当の父親のもとに一人送り出されている。
彼らもそんな境遇の子供だからこそ、彼女の父を殺してしまったからこそ、
どこか罪悪感のようなものを抱えており、だからこそ、
彼女を一人で放り出したりはしない。
「殺し屋」なんて商売をしているものの、
あくまで彼らは仕事としてそれをこなしている。
そんな刹那的な生き方をしていた二人の前に
純真無垢な子供が現れることで変化していく。
一人で留守番させれば部屋を荒らしてしまい、
彼女に構わなければ不機嫌になる。
自分の本当の娘ではない小さな子供をどう世話すれば良いのか。
序盤は彼女に振り回される二人を描いており、
それが3人のメインキャラクターのきちんとした掘り下げにも繋がっている。
特に「ミリ」は可愛らしい子供だ。
いい意味でも悪い意味でも子供らしい子供であり、
その無邪気さやわがままっぷりは見ている人の中では
気になってしまう人もいるかも知れないものの、
シンプルな子供らしい可愛らしさと魅力を内包している。
父親
二人の主人公の家庭環境はあまりよくない。
特にレイは本当の父に父と呼ぶなと教育されるような環境で育っており、
二人とも親の愛情を普通には受けていない。
父親とはなんのか、家族とは何なのか。彼らもよく分かっていない。
ミリの父はすでに死に、母は彼女を見放している。
だが、ミリは子供だからこそ純粋に「親の愛情」を求めている。
父親の定義すらわからない二人はミリから家族を、
愛を、父としてのあり方を学んでいく。
パパと呼ばれることを拒否し、否定し、自らの父親との
仲は最悪な「レイ」ですら、ミリと関わる中で
家族であることを、父になろうとしていく。
二人の変化がわかりやすく、丁寧な心理描写と少ない登場人物が
キャラクターの深い掘り下げに繋がっている。
少女の本当の父を殺してしまった二人が、
嘘を付きながらも少女と疑似家族を形成し父になっていく。
序盤は丁寧にそんなストーリーを描きつつ、
同時に見ている側に彼らの過去を匂わせながら、
いつ彼女に「真実」が明かされるのかという期待感も生まれている。
そんな一歩間違えばシリアスなストーリーになりそうなところを、
料理を作ったり、遊んだり、保育園に入れたりと
ほんわかなストーリーが描かれていく。
仕事と両立
ある種のシングルファーザーのような状況が描かれている。
二人とも殺し屋としての仕事をシなければならない、
そうしなければ生活もできなくなり、3人の家族を保てなくなる。
保育園を利用したり、知人に預けたり、
二人ではあるものの「シングルファーザー」の子育てのようなものを
コミカルに描いており、
中盤は仕事と両立しながら子育てに奔走している。
レイは父のように、カズキのほうは母のように彼女に接している。
男性二人、父親二人という特別な家庭環境ではあるものの、
中盤からは役割が分かれており、子供ができたばかりの夫婦のような
いざこざや役割分担の悩みなども描かれている。
「幸せってこんなんだっけ…」
ふとした瞬間にそう感じることもあるものの、
子供可愛さゆえに、常日頃の忙しさ故に、
そんな悩みは何処かへとんでいくことはあれど、
鬱憤が溜まって爆発することもある。
「殺し屋」としての彼らの仕事は中盤からは鳴りを潜め、
中盤からは完全にファミリーものだ(笑)
母や父としての悩み、偽りの家族であるということの悩み、
悩みながらも彼らは楽しそうにしている。
しかし、彼らは停滞している。
殺し屋として人を命を奪ってお金を稼いでいるということや、
過去のトラウマや父親に彼らは縛られている。
そんな中で「ミリ」は大きな変化だ。
たった一人の少女が二人の大人の男を本当に少しずつ変えていく。
自分の変化に気づきつつも、その変化を少しずつ受け入れ変わっていく。
誰も幸せにできなかった男が誰かを幸せにできるのか。
家族というものを味わえなかった二人が血の繋がりのない家族になれるのか。
非常に丁寧に描かれたストーリーが積み重なるごとに染み渡る。
母親
そんな家族の幸せをつかもうとする中で、
本当の母親が彼女を迎えに来る。
愛人との子供を産み、自分の子供を放り出したはずなのに、
自分勝手に彼女が迎えに来る。
ミリにとっては本当の血の繋がりのある親だ。
1度、彼女を突き放したとはいえ、彼女を愛している。
子供が自分の元からはなれ、赤の他人、しかも「殺し屋」と
暮らしていると知れば自分の子供を迎えに行くのは当然と言えるかもしれない。
しかも本当の母親の「余命」はあまり長くない。
自分勝手と言えるかもしれない。
だが「血の繋がり」は何よりも濃いものだ。
それを彼ら自身も良く分かっている。
ミリとともに居た彼らが変わっていったように、ミリと居なかった
本当の母親も変わっていった。
「殺し屋」という裏の稼業をしている二人に子育てをする資格はない。
それは当然の言葉だ。
いつ恨みを買われて誰かに襲われるとも限らない。
「組織」に雇われてる彼らにとって子供の存在は本来は邪魔なものだ。
しかも、彼らは本当の父親を殺している。
それをミリには告げていない。
彼女の幸せを願うからこそ、彼女に普通の幸せを掴んでほしい。
今の殺し屋としての自分たちといれば普通の幸せではいられない。
急展開
ただ終盤はかなり急展開だ。
ミリの母親が急に改心して現れて彼女を引き取っていく展開もそうだが、
レイの父親がミリやミリの母親を排除しようとしたり、
その流れでミリの母親があっさりと殺される。
色々展開が急すぎるストーリー展開だ。
本来はもう少し、2クールくらいでじっくりと描いたほうが
自然な展開になるところを1クールという尺ゆえにさばききれていない。
そのせいで終盤にかなり展開を詰め込んでしまっている感じが強く、
みている側の中で色々と消化できないものができてしまう。
しかしながら展開自体は悪くない。
偽りの家族だった殺し屋の二人が、
ミリの「本当の父親」になるためにけじめをつける。
親離れできていなかったレイが親離れをし、親になる。
この展開自体は丁寧に描かれており、
1本の作品をみ終わった満足感を感じる作品だったものの、
作品としての風呂敷のたたみ方の強引さは目立ってしまう。
組織からの足抜けやミリの父親を殺した事実など、
そういったところがやや強引かつ濁されて終わっており、
色々ともったいない作品だった
総評:
全体的にみて展開自体は王道であり、
手堅く「子育て」ストーリーを描いており、
殺し屋の二人の小さな変化と成長が1クールでしっかりと描かれている。
その一方で終盤の詰め込み具合は凄まじく、唐突に死ぬキャラや、
最終的に「それでいいのか?」という部分も出てくる。
特に真実については隠されたままだ。
二人の父親が自身の本当の父親を殺したことを彼女は知らない。
母親の死については理解しているようなのだが、
「成長」した彼女がどう二人の父親を解釈しているのかなど
細かい部分はぶん投げられてしまっている。
キャラクターやストーリー、要素自体は悪くなく、
面白い作品ではあるものの、1クールという尺では
掘り下げきれていない部分や描ききれていない部分も多く、
「殺し屋」という他人の命を奪う重い要素を
最後までうまく扱いきれずに、中途半端にコメディかつ、
中途半端にシリアスにしてしまっている感じが否めない。
悪くない作品ではあるもののアラが目立つ部分も多い。
ハッピーエンドで1クールでまとめてはいるものの、
強引に作品自体をまとめてしまった印象が拭えない作品だった。
個人的な感想:うぅーん…
昨今のPA.Worksは大ヒットしそうな作品は生み出してるのに
ヒットしきれない印象だ。
去年のパリピ孔明、アキバ冥途戦争もそういう感じだったが、
今作もいまいちぱっとしない。
話自体は王道でありキャラクターは魅力的で
ストーリーも序盤から中盤は悪くないのに、
終盤が微妙というのはパリピ孔明やアキバ冥土戦争でも感じたことだ。
アニメーション自体のクォリティは高いのに、
それを「アニメ」としてのパキっとした面白さに仕上げきれていない。
この作品も1クールではなく2クールくらいでがっつりと
描かれてれば違ったかもしれない。
レイの物語はがっつりと描かれていたが、カズキのほうは
そこまでがっつりと描かれていないなど、
W主人公なのにキャラ描写のバランスの悪さも感じてしまった。
本来は1番重要なはずの父親を殺した事実も結局明かされないのも
なんだかなーとなってしまうポイントだった。
本当に色々と惜しい作品だ。
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