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「ぐでたま 〜母をたずねてどんくらい〜」レビュー

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評価 ★★★★☆(66点) 全10話

『ぐでたま 〜母をたずねてどんくらい〜』予告編 – Netflix

あらすじ 寿司店の冷蔵庫の中で目覚めた、怠け者の卵のぐでたまと元気いっぱいなヒヨコのしゃきぴよ。引用- Wikipedia

至高の食育アニメ

本作品はNetflixで配信されているアニメ映画作品。
監督は榊原幹典、制作はOLM

実写とCG

ここ最近、実写とCGをかけ合わせた作品が増えている。
実写映画の中でCGが使われるのは当たり前だが、
例えば「ソニック」や「名探偵ピカチュウ」など、
人間は人間がそのまま実写で演じ、ソニックやピカチュウなどの
キャラクターはそのままのデザインでCGで描かれるというパターンだ。

こういう作品を「実写映画」としてみるのか「アニメ映画」としてみるのかは
非常に難しい部分だ。実写映画でもCGが当たり前に使われるようになり、
アニメ作品の中でもいわゆる「実写演出」をする作品も古くからある。

実写映画の中でも人間が演じていても、
そこにCGで特殊メイクを施したりすることもあり、
アニメでもモーションキャプチャーを使って
キャラクターを動かしたりもしており、
実写とアニメの「境界線」が昨今ではかなりあやふやになりつつある。

当サイトは今までこういった判断が難しい作品のレビューをしてこなかったのだが、
ここ最近、ソニックを見たり、ぐでたまを見たりしてしまい
「レビュー欲」が湧いてしまった(笑)

なので今後は実写とアニメの境界線が曖昧な作品も
レビューする方針に切り替えていきます。
しかも、本作品を手掛けるのはあの「OLM」だ。
ポケットモンスターなどでおなじみの制作会社であり、
そんな会社が関わっているからこそレビューしたくなってしまうものだ。

ぐでたま

ぐでたまは非常に可愛らしいキャラクターだ。
割れた卵から生まれたそれは「生卵」そのものであり、
ぬるんとした動きとなめらかな質感をよそに、
そのなのとおり「ぐで」っとしている

「流されるだけの人生ー」

まるで社会人5年目くらいの現実と社会に諦めたような
セリフは独特の哀愁を漂わせており、
愛くるしいルックスとは裏腹な「ギャップ」がぐでたまの魅力だ。

ぐでたまは「サンリオ」のキャラクターであり、
サンリオらしいかわいいキャラクターではあるものの、
同時にどこか哀愁を感じるキャラクターは子供だけでなく、
大人も何かを感じてしまうキャラクター性の強さがある。

そんなぐでたまが冷蔵庫の中で出会ったのが
「しゃきぴよ」だ。
ぐでたまと相反する存在であるしゃきぴよは、
卵から生まれたひよこだ。しゃきっとしているしゃきぴよは
「母」の存在を知らず、母を求めている。

自身の母の名前も母がどんな見た目かも知らない。
純粋な「しゃきぴよ」と、どこかやさぐれている「ぐでたま」。
この正反対とも言えるコンビが会話をするだけでギャグになる。
真面目で純粋なしゃきぴよの言葉に「だらー」っと答えるぐでたま。

しゃきぴよが真面目に話しているのに、
ベーコンを掛ふとんにして寝ようとするぐでたまが可愛らしくて仕方ない。
特にぐでたまの好物がツボだ。「醤油」である(笑)
醤油を求めて口を伸ばす姿と、醤油が大好きという設定だけで
キャラクターが見ている側のツボに入ってしまう感じだ。

ときおり見えるキュートな「おしり」も魅惑のポイントだ。
そんな二人がお寿司屋さんの冷蔵庫で出会い、母にあいにくために旅立つ。
ひよこと生卵が果たして、どこにいるかもわからない
「お母さん」に会うことはできるのか。

子供向けのストーリーでありながら、大人も気になってしまう。
シンプルに先の展開が気になる作品だ。

武内駿輔祭

本作品で喋るのはひよこや生卵だけではない。
回転寿司屋に流れている「いくら」や「たまごの寿司」も
当然のように喋る(笑)卵ならば意思があり喋る。
そんな喋る声や顔を見えるのは「やる気のない人間」だけだ。
ぐでたまが見えるのはぐでっとした人間だけであり、
普通のやる気のある人間には生卵にしかみえない。

そんな卵たちがぐでーっと一人ひとりの、
それぞれの立場だからこその言葉を漏らす。
いつ食べられるかわからない、だが、それは彼らの運命であり、生まれた意味だ。
「食材」だからこそ食べてもらえるこそ意味がある。

回転寿司で回転から流れ続けた「卵寿司」は心まで乾いてしまっている。
この作品はある種の「食育」のような要素もある。
彼らは食べられたくないわけではない、むしろ、食べられたいと思っている。
短い生の中で人間に食べられることが彼らの「本望」なのだ。

だが、ぐでたまは食べられることを拒絶する。
しゃきぴよの「母に会いたい」という夢、
そんなしゃきぴよの誘いに面倒くさがりつつも、
「食べられるだけ」の人生がちょっとしたきっかけで変わることができた。

だからこそ、彼は食べられることを拒否する。
そんなメッセージ性を感じるようなテーマを感じつつも、
卵の数々を「武内駿輔」さんが演じていることに驚いてしまう(笑)
いくらも、生卵も、プリンアラモードも武内駿輔さんだ。

エンドロールで「武内駿輔」さんの名前の数々を見るたびに
1オタクとして笑ってしまう感覚だ。

母を訪ねてどんくらい

しゃきぴよとぐでたまの道程は長い。
どこにいるかもわからない母親を探すために、
ありとあらゆる場所に彼らは訪れていく。
そんな中で多くの人と出会う。

ときには総理大臣、ときにはTV番組のディレクターに。
そんな出会の中で二人は様々な経験をする、
特に「総理大臣」になる展開はぶっ飛んだ展開だ(笑)

生卵が総理大臣になるという意味不明な展開は
この作品だからこそ許されるものであり、
1国の総理大臣が「生卵」に悩みを吐露し、
そんな総理大臣に「なんにでもなれる」といわれ、
総理大臣になる(笑)

意味不明な展開ではあるものの、その意味不明な展開が
予測不可能なストーリーになっており、
思わず大人でもクスクスと笑えて、ぐでたまたちの可愛さにハマる。

EDなどを抜けば1話10分ほどの癪だからこそ、
グダグダにならずにサクサクと物語が進んでいき、
1話毎に様々なキャラクターが登場し、ぐでたまたちと
絡むことで物語が展開していく。

母を訪ねて三千里のごとく波乱万丈な道中は
子供も大人もハラハラドキドキ、クスクスと楽しめるストーリーだ。

腐る

しかし、ぐでたまはあくまで「卵」だ。しかも「生」である。
みなさんも御存知の通り、卵は腐りやすい。
ゆで卵ならばともかく、生卵は25度くらいの気温なら2週間が賞味期限だ。
長い道中の中でぐでたまも「腐り」はじめてしまう展開は衝撃だ。

腐った卵はどうなるのか。やさぐれてしまう(笑)
作中では実際に腐った卵のキャラクターも出てきており、
心までも腐った彼はヤンキーのごとく脅迫してきたりもする。

お尻から徐々に腐り始めるぐでたま、
完全に腐りきる前に母にあわなければならないと
ハラハラさせられるのだが、
なぜか「乾燥剤」で腐った部分が治る。意味不明である(笑)
だが、ぐでたまだからこそ許される。

なにせ生卵が総理大臣になれる世界だ。
乾燥剤の1つで腐敗が治ってもおかしくない
もらった乾燥剤を抱え、母を探す二人の旅路の果てにはなにがあるのか。

衝撃的展開

終盤の展開はかなり衝撃的な展開だ。
自ら生まれた養鶏場の場所を知り、二人で尋ねる。
途中、料理されかけることもあったが、ぐでたまはぐでたまの意思で
しゃきぴよと母に会うことの方を求める。
自分自身の存在意義、アイデンティを見極めた彼の「カラザ」が空を舞う(笑)

そんな終盤でぐでたまとしゃきぴよの母が違うことが明らかになる。
卵の殻の色が違ったからこそ、二人の母が違うことは
見ている側にはわかっていたことだ。
だが「しゃきぴよ」の母がすでに処分されている展開はあまりにも衝撃的だ。
鳥だからこそ、最後は処分される。

卵を産まなくなった鳥は最後は処分される。
大人ならばわかっていたことだ、だが、その真実を受け止めようとする
「しゃきぴよ」の表情があまりにも辛い。
子供向けの作品でありながらも、この作品は「死」を描いている。

直接的な表現はもちろんない。
だが、彼らは人間に食べられるために生まれてきた存在だ。
だからこそ、彼らは食べられてこそ生まれてきた意味がある。

長い旅路の中で「ぐでたま」は色々な卵たちに出会ってきた。
いつまでも食べられない卵寿司、腐った卵、
腐らないように抵抗し続ける卵、
「塩」すら振られていない自分は何者にもなれていない。

だが、しゃきぴよと出会い、旅をしたことが彼にとって特別だ。
このまま腐ってしまうより、誰かに食べられたい。
卵料理の中の卵料理、キングオブ卵料理にされたぐでたまは
最後には食べられて終わる。

衝撃的だ。単純な「死」の描写ではなく、誰かに食べられて存在が消える。
温かいご飯の上にのせられて、そのまんま食べられる。
そんな様子を「母」と「しゃきぴよ」に見られながら見送られる。
卵だからこそ誰かに食べられてこそ意味がある

彼の存在意義を貫き通したラストと言えるものの、
彼が人間の体内に入り、消えゆくシーンは
「ターミネーター2」を彷彿とさせるほどの悲しいラストだ。

だが、そんな涙腺を刺激されたと同時に笑える展開も訪れる。
ある種の「輪廻転生」的な概念と食育を描いたこの作品は
大人も泣かされるような骨太の作品だった。

総評:子供も大人も笑って泣ける

全体的に見て素晴らしい作品だ。
人間による実写部分とCGによるキャラクター描写がかけあわさることで、
現実世界の中を動き回る「ぐでたま」や「しゃきぴよ」の
可愛らしさが光っており、子供が見れば、生卵を割って
思わずぐでたまが出てこないか話しかけたくなるような
没入感も生まれている作品だ。

生卵に意思があり喋る。
そんなぶっ飛んだ作品ではあるものの、
そんなぶっ飛んだ作品だからこそのストーリー展開が
大人でも予想できないような物語を生んでおり、
毎話出てくる色々なキャラクターとともに「ぐでたま」という
キャラクターに自然と愛着を持ってしまう。

そしてラストの展開だ。
ある種の「死」を描き、そこからの輪廻転生を描く。
食育という意味でも子供が見たら泣いてしまうかもしれないが、
大人でも「そういうふうに描くのか」という衝撃があり、
そんな衝撃的な展開のあとに再びぐでたまが生まれてくる。

日本的な概念である輪廻転生と「食育」という要素を描きつつも、
ぐでたまらしいストーリーがクスクスと笑いを誘い、
終盤は思わず大人でも涙腺を刺激されてしまう。

1話10分という短さもちょうどよく、全話見ても2時間もかからない。
ぜひ、大人も子供見てほしいと感じるハートフルな作品だった。

個人的な感想:何気なく

Netflixにこの作品のサムネイルが出ており、
本当に何気なく1話を再生した結果、最後まで一気に見てしまった作品だ。
最初はぐでたまの可愛らしさに惹かれ、武内駿輔さんの演技の数々に笑い、
ぶっとんだストーリーにワクワクし、最後は思わず涙腺を刺激されてしまう。

1話10分、子供向けの作品と侮るなかれ、ぐでたまは
大人こそ見てほしいと感じてしまうような
そんな作品だった。

最近は「リラックマ」のアニメがNetflixで配信されたりもしていたが、
「ぐでたま」もここに加わっている。
サンエックス、サンリオなど「キャラクター」はどこかで見たことがあるが
詳細は知らないようなキャラクターたちの物語が
「Netflix」という媒体で描かれるのはコンテンツの拡大という意味でも
いい影響なのかもしれない。

次はポムポムプリンあたりが同じような感じで
アニメ化される日も近い…かもしれない。

「ぐでたま 〜母をたずねてどんくらい〜」は面白い?つまらない?

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