評価 ★★★☆☆(58点) 全12話
あらすじ 謎の女性が去っていくというふしぎな夢を見た男子高校生柏樹 朝は、その朝テレビで見覚えの無い占いコーナーで複数のラッキーワードを聞き、登校中ラッキーワードの通りに5人の人物と出会いトラブルに巻き込まれてしまう。引用- Wikipedia
ラブコメ詐欺
本作品はTVアニメオリジナル作品。
監督は長山延好、制作はパッショーネ
ギャルゲー感
1話というよりキービジュアルやタイトルから、
この作品はどことなく「ギャルゲー」感を漂わせている。
こんなキービジュアルでこんなタイトルのギャルゲーが
あってもおかしくない、沿う感じさせる雰囲気がビンビンにある。
1話冒頭の雰囲気もそんな感じだ。
この作品は「近未来」を舞台にしており、
なぜか一人暮らしをしている高校生な主人公の朝から描かれる。
そんな主人公が登校中に「パン」を咥えた少女をぶつかる(笑)
ものすごいベタ感じだ。
焼きたてのパンをくわえながら登校する美少女と
主人公がぶつかって出会うというのは、もはや落語のような
古典的な展開として多くの人に知れ渡っているが、
意外にも、いや、それゆえかこのシーンが取り入れられる作品は少ない。
描かれたとしても「ギャグ」でやることのほうが多いくらいだ。
だが、この作品は真面目にそんなシーンを描いている。
遺跡の発掘をしていたらファラオの遺体が出てきたかのような驚きの展開だ。
伝説的ではあるが見たことのある人のほうが少ない、
そんな展開を見せてくれる。
そんなシーンから始まるからこそギャルゲー臭全開だ。
主人公ぶつかったヒロインは「パンツ」を見られたかどうかを気にし、
殴るのではなく、可愛くないパンツを見られたかどうかを気にしている。
男性にとって都合のいいヒロインが1話冒頭からどんどん出てくる。
パンをくわえたメガネ美少女、
空いてる電車なのに隣に座り眠りこける巨乳の美少女、
階段から落ちてきて主人公の顔にまたがる元気美少女、
ブラジャーをお掃除ロボットに盗まれたロリっ子、
犬にマウントされるおとなしめの男の娘。
懐かしいまでのシチュエーションや美少女たちと、
ラッキースケベの数々を怒涛の勢いで見せつけられる。
制作側も狙ってやってる部分があり、
わざと古典的なシチュエーションや美少女を描写しているのはわかる。
だが、その意図が見えてこない。
古典的なラッキースケベやシチュエーションを描きつつ、それをギャグにする。
その意図はなんなのか。
そんな偶然であった5人の美少女が
主人公のクラスの「転校生」と「先生」としてやってくる(笑)
一人や二人ならばともかく4人も転校生という
これまたテンプレ的な展開が巻き起こる。
もちろん主人公のそばには「ちゃらい」クラスメイトもいる。
彼に聞けば攻略ヒロインの現在の好感度を
教えてくれそうな見た目と性格をしている。
この30年くらいで築き上げたギャルゲーや
この手のラブコメでの「あるある」が詰め込まれてるような展開だ。
そんな中で主人公は「桜の木の下」の呼び出され、
いきなり告白される。
出会ったばかりのノーパンの美少女に彼はなぜ告白されたのか。
ベタベタなラブコメギャルゲー展開を見せられはするものの、
それをあえて描写し、こちらが一考するまもなく見せられることで
この作品はギャグにしつつ、最後に予想外の展開まで見せてくれる。
テンプレ展開のはずなのに先が読めない。
意味がわからない!
2話以降も怒涛の展開だ。
1話でヒロインの一人にいきなり告白されたかと思えば、
2話では他の全ヒロインに流れ作業のごとく告白される(笑)
以前からの知り合いでもなければ出会って1日たらずの
彼女たちがなぜ主人公に告白するのか。意味不明な状況だ。
しかも、いきなり同棲が始まる(笑)
ラノベ原作ライトノベルでよくあった展開だが、
一人暮らしの主人公とヒロインたちとの同居展開だ。
本来ならば1話の内容も2話の内容も「過程」があれば
自然かつテンプレート的な展開だ。
しかし、その過程を一気にすっ飛ばしている。
彼女たちは主人公の父が決めた「お嫁さん候補」であることはわかるが、
色々と展開が怒涛すぎて主人公と同じく、
見ている側の感情も理解も追いつかない。
凄まじいまでにラブコメやギャルゲーアルアルを消化してるような印象だ。
掘り下げ
そんな怒涛の展開の序盤をすぎると丁寧な展開になる。
5人のヒロインを1話ごとに丁寧に掘り下げて印象付け、
主人公とヒロインたちが仲良くなる展開を描いている。
序盤の怒涛の展開のインパクトで振り回されたからこそ、
この丁寧なキャラの掘り下げが染み渡る。
キャラクターの設定的にはテンプレ的なキャラが多いのだが、
実力派の女性声優さんが演じるからこそ、
キャラクターの魅力を後押ししており、
1話1話描かれる彼女たちの担当回を素直に楽しめる。
ベタなハーレムラブコメだ。
だが、それが良いと感じるほどよいラブコメが染み渡る。
セクシーなシーンも程よく差し込まれ、
キャラクターの作画のクォリティも高く、
それがキャラクターの魅力にもつながっている。
特に4話の「温泉回」はセクシーなシーンと
バカバカしさが神がかっており、
大爆笑してしまった(笑)
そんな序盤から中盤のハーレムラブコメの内容も素晴らしいが、
同時に「伏線」をばらまいている。
彼女たちは主人公とそれまで会ったこともなかったはずなのに、
なぜか「子供の頃」の主人公の記憶が一瞬蘇ることがある。
その記憶の意味はなんなのか、主人公の両親がなぜ居ないのか。
このギャルゲーアルアル全開の
ご都合主義全開のハーレムラブコメの「世界」はなんなのか。
メインヒロインの一人がエージェントだったり、
唐突にメインヒロインが魔法少女になったりするとんでもない世界だ(笑)
そんなぶっとんだ世界という名の物語が中盤で反転する。
唐突に彼の前からヒロインたちが居なくなる。
たった一人を覗いて。
愛生
彼女は主人公が初めて出会ったヒロインであり、
初めて彼に告白した女の子だ。
他の4人よりも誰よりも先に彼女は主人公のそばに居た。
他の4人が消え主人公の記憶もなくなる中で彼女だけは消えていない。
彼女だけがなぜか彼の好物を知り、彼女だけが彼の嫌いなものを知っている。
彼女だけはどこか不穏さを序盤から中盤までにじませている。
特に7話は彼女だけしか居ない世界で、
彼を「世界」から遠ざけようとしている。
他の誰でもない自分だけを見てほしい、そんな気持ちがそうさせるように。
若干ホラーテイストな雰囲気をにじませており、
彼女が「生肉」を切るさまはかつての「空鍋」シーンを
どこか感じさせる(笑)
序盤から中盤まではほのぼので中盤からはシリアスになる。
これもまたかつてのギャルゲーでよくあったストーリー構成だ。
前半の日常ギャグを描くことで後半のシリアスを際立たせる、
かつての「Key」作品を彷彿とさせるお手本のようなストーリー構成だ。
彼の中にある「愛生」ではない「愛」という存在。
忘れようとも忘れられなかった、いつまでもずっといっしょに居たかった存在。
その存在を思い出すことで世界が壊れてしまう。
演出も素晴らしく、ヒロインたちがいなくなった7話の
エンディングはヒロインたちがそれまで歌っていたからこそ、
7話ではインストゥルメンタルになっている。
真実
8話では真実が明かされる。
彼が7話まで過ごしていたのは「仮想空間」だ。
彼が出会ったヒロインたちも最新の「AI」そのものだ。
テスターとして最新の仮想空間の中での現実を生きていた主人公は、
多くのAIとともに過ごしていた。
AIがさらなる進化をするための人とのふれあいという名の実験。
友情、恋愛、家族愛をAIに産ませるためのものであり、
主人公は「AI」に恋愛対象を産ませるための実験を行っている。
主人公がAIを好きになるための、主人公にとって都合のいい「5人」のAI。
出会ったばかりなのに告白してしまうヒロインたち、
主人公にとって都合の良すぎる状況、
いきなりヒロインが魔法少女になるとんでもない展開、
全ての「ご都合主義」は「AI」だからこそのものだ。
ご都合主義という本来ならば欠点になる部分を、
この作品は仮想空間であり「AI」だからこそという逆手に取っている。
主人公にとって理想の世界が一瞬で崩れる。
それを彼はなかなか受け入れられない。
現実の世界は彼にとっても受け入れられないものだ。
好きだった幼なじみの居ない絶望にまみれた現実を彼は受け入れきれない。
そんな幼なじみの脳をコピーしたものがこの世界における
高度に発展したAIの元になっており、
そんなAIから5人のヒロインを生まれている。
なぜヒロインたちに主人公との子供の時の記憶があったのか、
キレイに伏線が回収されていくさまが気持ちよさすら生んでいる。
自我
AIたちは「主人公」を好きになるように仕向けられている。
主人公もそれは同じだ。
そういう状況にすることでAIをより進化させるのが目的であり、
それが「ご都合主義」な状況の中で繰り広げられている。
しかも、5人のAIはもともとは主人公の幼馴染の脳のコピーから生まれたものだ。
そんな彼女たちが「愛」に目覚めるのか。
この作品は真っ直ぐな愛の物語だ。
初恋の相手を忘れられない主人公と、そんな初恋の相手のコピーともいえる
5人のヒロインたち。
コピーではあるものの5人はそれぞれ違う。
主人公の幼馴染が経験しなかったこと、
それぞれの立場でそれぞれが成長し、それぞれの「愛」を理解する。
愛に目覚めたがゆえに自我が目覚めたのか、
自我に目覚めたがゆえに愛に目覚めたのか。
卵が先か鶏が先かのような問いかけではあるものの、
愛に目覚め自我に目覚めたからこその「自己犠牲」は
涙腺を刺激されるものだ。
泣け
ただ、終盤になるとやや展開は雑になってしまう。
10話で一人のヒロインが「退場」してしまうのだが、
11話で一気に3人のヒロインが退場してしまう。
1クールという尺の都合上仕方ない部分はあれど、
10話はともかく11話は3人一気に退場なのはやや雑に感じてしまう。
そもそも5人のヒロインというのがやや多かったのかもしれない。
序盤から中盤までのドタバタハーレムラブコメの中でも、
そのヒロインの多さをややさばききれていない部分もあり、
若干ではあるがキャラ被りしているキャラも居る。
5人という多さのせいで本来はメインヒロイン的な立ち位置にいる
「愛生」の存在感や掘り下げもやや薄まってしまっており、
そのせいで最後に彼女が残って彼女のストーリーを描かれても、
それまでに退場した4人のヒロインのほうが見ている側としては
思い入れがつよいせいでいまいち感情移入しきれない。
「ヒロインの死」というKey系作品の泣きゲーっぽさが
終盤ではより強まる印象だ。
視聴者に「泣き」を強制するかのようなヒロインの死の描写も、
もう少し丁寧に描かれていたら…と感じざる得ない。
ご都合主義
最終話の展開もご都合主義感を強く感じる。
この作品は主人公が初恋の女性の「死」に向き合う話だ。
忘れようとしても忘れられない、学校にも行けずに引きこもり、
仮想空間に逃げた男だ。
そんな彼が忘れようとしても忘れられない彼女と向き合い死を受け入れる。
5人の彼女のコピーとも言える存在と過ごし、向き合い、
最後に伝えきれなかった思いを彼女に伝える。
だが、あくまでも、その彼女もまたコピーの存在だ。
彼自身が彼と向き合い、一歩を踏み出す。
1クールでその物語は丁寧に描かれている。
ただ、その一方でラストの展開はかなりご都合主義感が強い。
「死」を描いたあとにそれをなかったコトにされる展開は
好みによるかも知れないが、いまいちしっくりとこないまま
終わってしまう印象だった。
総評:ギャルゲー名作劇場
全体的にみて90年代から00年代の数々の名作ギャルゲーや
エロゲーを詰め込んだような作品だ。
序盤から中盤までのテンプレート的なドタバタハーレムラブコメ、
テンプレートを詰め込み勢い任せにやりたい放題やった感じがあり、
いい意味でのバカバカしさのある内容になっている。
中盤からはそんなご都合主義に理由付けをするかのように
世界を反転させ、かつてのKey作品のような「泣きゲー」展開、
全開に描かれる。
いろいろなギャルゲーやエロゲーを彷彿とさせる展開やキャラ、設定を
詰め込んでおりそれを1クールで見せられるような作品だ。
序盤から中盤まではバカバカしさも相まって素直に楽しめたのだが、
中盤、特に終盤のご都合主義部分や5人というヒロインの多さがゆえの
やや掘り下げ不足な部分もある展開など、
シリアスな部分も含め人によって好みが分かれるところだろう。
制作側のやりたいことは如実に伝わり、
いい意味でも悪い意味でも「ギャルゲー」っぽさが詰まってる作品だ。
かつてのギャルゲー作品を楽しんだ人に送りたい、
そんな制作側の気持ちは伝わるものの、もう一歩練り込み不足な部分も
感じる作品だった。
個人的な感想:バカのままのほうが…
個人的には序盤から中盤までのいい意味でのバカっぽさが好きだっただけに、
終盤の展開はどうにも消化しきれない部分があった。
中盤の伏線回収と真相自体はなるほどという感じで見ていたのだが、
そのたたみ方がやや急な感じや雑っぽさを感じてしまい、
このあたりもギャルゲー原作アニメっぽさを感じてしまった。
そんなところまで真似しなくていいのにと思いつつ、
ギャルゲー大全集的なストーリーは個人的には楽しめる作品だった。
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください
1話から仮想空間の可能性を匂わせる要素を散りばめていた訳ですし、シリアスな話を展開するなら視聴者が関心を抱いている間にすべきでしたね
キャラ紹介を一通り済ませる頃にはもう後半。退屈なシナリオにうんざりして視聴者の大半が去った後に答え合わせをしても盛り上がらず。
根本的に、キャラクターが無駄に多いがゆえの失敗という印象です。
おっしゃっている通り、これならコメディ路線で最後まで突き抜けるべき作品でした。
シリアスな話を展開したければキャラの数を減らして、もっと早く話を移すべきでしたね。