「大雪海のカイナ 1話天膜の少年」レビュー

評価 ★★★★☆(60点)

TVアニメ『大雪海のカイナ』ティザーPV／2023年1月放送開始

あらすじ地表を覆った大雪原から逃げるように人々は巨樹「軌道樹」の上に「天膜（てんまく）」を作って生活していた引用- Wikipedia

SF版ジブリ
総評：圧倒的世界観
1. 個人的な感想：予想外

SF版ジブリ

本作品はTVアニメオリジナル作品。
監督は安藤裕章、制作はポリゴン・ピクチュアズ

大雪海

冒頭から独特の雰囲気を醸し出している作品だ。
主人公は全身を防護服のようなもので多い、
顔と口は防塵マスクのようなもので覆われている。
彼がいる場所が危険で満たされていることを見ている側に感じさせ、
彼が「狩る」生物も大きなトンボのようなものだ。

3DCGで描かれた世界観はこの作品の世界観を後押ししており、
この壊れてしまった世界の冷たくも、どこか澄んだ空気感を
鼻腔で感じるような雰囲気を醸し出しており、
圧倒的な「世界観」を見ている側に感じさせると同時に、
この作品への没入感を生んでいる。

この作品の世界の地球は「雪」に覆われてしまっている。
太陽の退化の影響が、人類による自然破壊の影響か、
それは１話の段階ではわからない。

だが、１話の段階で私達が暮らす地球とは違う地球、
「滅びかけている地球」であることをひしひしと感じさせる。
人々が住む場所は巨大な木の上だけしかなく、
食料は大雪原の「虫」を命がけで狩るくらいしか得られない。

緩やかに人類は滅亡していっている。
なにかがおきれば、ちょっとしたきっかけで、
あっさりと、この世界は滅びてしまいそうな危うさが、
この作品の魅力にもなっている。

SF版ナウシカ

あまりこういうと良くは聞こえないかもしれないが、
どこか「風の谷のナウシカ」の雪バージョンのようにすら見える部分もある。
ナウシカはファンタジーとして描かれているが、
この作品はSFだ、SF版ナウシカというのが１番伝わりやすい表現かもしれない。

「文字」の文化も滅びつつある。
日本語が表記された看板は「先人」から受け継がれているものであり、
読める人も限られている。
それほど地球が滅びかけてから時間がたっていることを
さりげなく感じさせてくれる。

１話はその「世界観」を丁寧に見せている。
CGで描かれたこの「大雪海のカイナ」の圧倒的な世界観に、
視聴者を飲み込もうとしている。

この閉ざされた世界に生きる「若者」であるカイナ。
老人たちはこの滅びをどこかで受け入れつつあるものの、
彼は受け入れていない。
大雪原の下にある「光」に彼は希望を見出している。

逆ラピュタ

そんな彼の前に大雪原の下からやってきた少女が現れる。
何かを求める旅の中でなにものかに追われ、
たった一人で大雪海の上までやってきた少女。
そんな少女と少年が出会うところから物語が始まる。

空からではなく「地下」から女の子がやって来る。
まさに逆ジブリ的なニュアンスを含んでいるものの、
圧倒的世界観を描いたあとだからこそ、
この王道なストーリー展開がたまらない。

一体、大雪海の下には何があるのか。
少女はどんな秘密を抱えているのか。
たった１５分しかない尺で見ている側の「冒険心」を
強く刺激してくれる作品だった。

総評：圧倒的世界観

全体的にみて１話の時点では飲み込まれるような圧倒的世界観が描かれている。
１つ１つの要素を紐解けばナウシカやジブリ的な要素が多いものの、
それがパロディやパクリではなく、きちんとこの作品だからこその要素に
うまく置き換えており、ジブリに対するリスペクトを感じつつ、
ファンタジーなジブリを「SF」というジャンルにうまく置き換えている。

特にフルCGだからこそ、このジブリ感がいい意味で薄まっているのだろう。
ぬるぬると動くキャラクターのアニメーション、
雪に覆われた地球の雰囲気やそこに住まう虫たちの気持ち悪さ、
雪をかける生物や機械の描写などCGだからこその良さが出ており、
この作品の雰囲気づくりを後押ししている。

気になるのは１話１５分という短さや、
序盤の段階ですでに「続編」となる映画の公開が決まってる部分だ。
１クールでは終わらず、続きは映画で！という展開になりそうだが、
そのあたりがどうなるのかやや気になるところではあるものの、
強く期待したい作品だ。