評価 ★★☆☆☆(31点) 全12話
あらすじ 高校生・柊誠一がいつも通りにイジメられながらの学校生活を送っていた時、突然 《神》を名乗る謎の人物の声が聞こえ、クラスメイトとともに異世界へと召喚されてしまった。引用- Wikipedia
対象年齢小学生
原作は「小説家になろう」にて投稿された小説作品。
監督は奥村よしあき、制作は HOTLINE
時系列シャッフル
1話冒頭から時系列シャッフルをかます、
主人公のモノローグで状況が軽く説明されるが説明が説明になっておらず、
全裸の美少女に主人公がいきなり抱きつかれる。
そもそも美少女がどういった経緯で美少女になったのか、
なぜ主人公に思いを抱いているのか。
そういった過程を一切、アニメを見ている側には伝えられていない状況で
時系列シャッフルをかまされてもシーンのインパクトよりも
状況に対する困惑感のほうが大きく、あえて時系列シャッフルをした意味が薄い。
なろう原作作品らしく、この作品は異世界転移者だ。
ただ異世界転移させられるのは主人公単体ではなく「クラスメイト全員」であり、
主人公は見た目や匂いで「いじめられる」ほどのクラスの中でのカーストは低く、
クラスメイトもヤンキーみたいなやつばかりだ。
主人公をかばうもの、味方をするものはだれもおらず、
本来はグループごとに転移するはずだったのに、
彼だけはその立場故に1人だ。そんな彼を哀れに思った神は
彼にもう1つだけ特別にスキルを授与するところから物語が始まる。
作画と声優
作画のクォリティは冗談抜きで酷い。
演出でごまかしている部分は多いものの、
主人公は例えば5日間も森の中でさまよっていたはずなのに服は綺麗なままだ。
細かいディティールにこだわる余裕が制作にはないのが見て感じ取れ、
OP自体も止め絵や作中から流用したシーンばかりで構成されている。
やたら崩した作画にすることでギャグシーンにおける
ギャグを強めているのは分かるものの、
予算的にもそういった演出しかできないのだろうと感じてしまう。
しかし、その分、声優は無駄に豪華だ。
主人公を演ずるのは下野紘さん、ヒロインは花澤香菜、井上麻里奈、 南條愛乃など
2021年のアニメというよりは10年くらい前のアニメなら分かると
言いたくなるほどのベテラン陣ばかりだ。
冒頭からそんな「下野紘」さんらしい安定の童貞声優ぶりを見せつけてくれるが、
昨今の鬼滅の刃ブームのせいもあってか、
善逸のイメージに引っ張られてるのもあり、
ハイテンションな演技がこの作品に対する嫌悪感のようなのを強めてしまっている。
進化の実
クラスメイトが安全なところへ転移したのと違って
主人公だけはやたら高レベルな場所に転移させられてしまう。
高レベルなモンスターがはびこる場所で彼はなんとか生き抜こうとしながら
色々なもの拾い食べているうちに「進化の実」も食べてしまう。
主人公はモンスターを倒せば、そのモンスターの力を手に入れる「完全解体」というスキルを神様からもらっており、
そのスキルのおかげで倒せば倒すほど強くなる。いわゆるチートだ。
進化の実の効果で進化するとステータスもどんどんとアップしていき、
酷い見た目も進化することでまともになる。
特に主人公が努力しなくても、拾ったものと与えられたものだけで
どんどんと強くなる過程を描くかと思えば、
五ヶ月も時系列が一気に進む(苦笑)
その五ヶ月間の苦労がもっと描かれていれば主人公への感情移入を
もっと強められたかもしれないが、あっさりと強くなっている。
高校生や中学生あたりが色々なヒットしたなろう作品に憧れて
書いたようなインフレ展開は苦笑いしか浮かばない。
数々のスキルを手に入れて強くなった主人公の
戦闘シーンもギャグかと思うほどひどく、何の迫力もなければ面白みもない。
とんとん拍子に強くなり、とんとん拍子に進化していく。
これが真面目に描かれていれば流石に見るのはきついが、
ギャグタッチで描かれているからこそなんとか見れるレベルだ。
必死で主人公がハイテンションにギャグを噛ましているものの、
全てツボを外しているような感覚だ。
あえてツボを外す、笑えないギャグを入れるのが
この作品のやり方なのか?と思うほど笑えない。
ゴリラ
主人公は強くなったせいもあり、高レベルな強いゴリラに気に入られてしまう。
このゴリラはメスだ。もう、この時点で
「あー、このゴリラは1話冒頭のあの美少女になるんだな」と馬鹿でもわかる。
本来はゴリラが美少女になるというのはこの作品のインパクトの1つでもあるはずのに、
そのインパクトが無駄な時系列シャッフルのせいで薄れてしまっている。
本来は物語の序盤では美少女になるということはわからず、
彼の強さと体臭に惚れたゴリアな「サリア」の甲斐甲斐しさや
女子力の高さ、主人公への一途な気持ちに彼が徐々に揺れ動いていくというのも
この作品の魅力のはずだ。
だが、1話冒頭の時系列シャッフルやOPでの美少女の姿という「ネタバレ」をてしまっている。
主人公がゴリラでありながらゴリラな「サリア」への
恋愛感情をつのらせていく、いわゆる美女と野獣的なことをしたいのはわかる。
見た目はゴリラでありながら徐々に彼女への気持ちが募り変化していく。
この序盤のストーリーと流れ自体は悪くはない。
自分の命すらも犠牲にし自分を守ってくれた彼女、
異世界という場所で、孤独だった彼に唯一優しくしてくれた彼女。
見た目なんて関係ない、種族の違いなど関係ない。
彼女を失ったからこそ主人公が物語の主人公へと至る。
そんな序盤の展開は作画の酷さや演出の酷さはあれどまっすぐとした
王道なストーリーを見せてくれる。
これで「あ、このあとに死なずに美少女になるんだ」というネタバレさせなければ
もっとこの作品を素直に楽しめたのにと時系列シャッフルをしたせいで
色々と台無しになってしまう。
ストーリー的にも色々と最初にあった要素を消すような展開が多い。
不細工な主人公も進化の実の効果で進化しイケメンに、
ゴリラなヒロインも美少女の姿に。
不細工な主人公とゴリラなヒロインというこの作品の特徴も
序盤であっさりとなくなってしまう。
ゴリラなヒロインはいつでもゴリラな姿にもとに戻れるものの
作中の9割のシーンでは美少女だ。
面白そうな要素、他の作品と区別化している要素が
序盤でほとんどなくなってしまうのは残念でしか無い。
ゆるガバ
序盤をすぎると典型的ななろうストーリーになる。
主人公とヒロインは街へ行き、ギルドに入り、クエストをこなす。
もうなろう系アニメで1億回くらい見たような展開だ。
ただ、基本的にこの作品はギャグとして割り切って作られている。
一応、魔王や魔王軍などが存在し、主人公以外のクラスメイトや
上級生たちは勇者として特訓をしているようだが、
特に主人公が魔王を倒すようなストーリーになったり、
元の世界に戻るために躍起になったりするわけでもない。
目的としては仲の良かった上級生たちと再会するという目的は有るものの、
そんな目的はさておいて脇道にそれたストーリーを展開していく。
ギャグやパロディ要素も非常に多く、そんなギャグやパロディをさくさくと
えがきつつ、ツッコミどころ全開のストーリーを明るくコミカルに魅せている。
真面目に見たら損をする作品だ。
制作側もあえて、この作品のこのツッコミどころのある内容を
突っ込ませることを目的として作っているのでは?と感じるほど、
スキだらけでガバガバなストーリーを一切隠さず、
むしろ作画の悪さなどで誇張して魅せているようにすら感じる。
ノリ自体も昭和のようなノリや自分で自分に突っ込んだり、
どこかでみたようなわかりやすい変態キャラやギャグ的なキャラも多く、
そういった元ネタや別の作品の要素すらもあえて感じさせることで、
見る側がツッコミ疲れするほどの
ツッコミどころを大量に作中の中に盛り込んでいる。
説明描写
説明描写も多い、特に主人公が戦った魔物、いわゆるボスキャラの
バックボーンなどを「本」という形で絵本のように見せ、
主人公たちにもさくっと敵キャラもバックボーンを説明する。
非常にわかりやすく、この作品でわからないという要素は一切ない。
世界観やストーリー、キャラクターの過去や設定、
キャラクターの考えていることや心理描写まで全て台詞として出ている。
主人公もいじめられているという設定なのに、そこに対してなにか
暗い展開やあるわけでも、復讐展開があるわけでもない。
彼は底の抜けたように明るい。
だからこそ、チートな能力を持っても、なろう系主人公にありがちな
「不快感」のようなものを彼からは殆ど感じない。
いくらチートな能力をどんどんと手に入れても、それをひけらかすわけでもなく、
俺つえーみたいな展開も少ない。
例えば本を読むだけで魔法やスキルを取得しても、
それを自ら「ページを捲っただけだよ!?」と突っ込むことでギャグにしている。
確かに彼は強いものの、ボスキャラ的な敵にはそこそこ苦戦する展開があり、いい意味で嫌味がない。
主人公がモテる理由もゴリラはともかく、
他のヒロインはきちんと「流れ」があり、ハーレム要員に加わる流れも納得できる。
色々とご都合主義は多いが、そのご都合主義をごまかさず、
主人公の底抜けの明るさとギャグ要素の数々がこの作品だからこその、
ノリと雰囲気を生み出している。
話が進んでるんだか進んでないんだか…
主人公と同じく召喚された者たちは王に命じられ訓練したり、
学園へいかされたり、生徒同士でゴタゴタが色々とあるようで、
主人公の活躍と同時に「一方そのコロ」的に描かれてはいるものの、
特に必要のあるシーンには感じない。
これで1クールの中で彼らと再会し、
なにかしらエピソードが描かれるならまだ分かるが、1クールで再会することはない。
主人公は主人公でハーレム要員を増やしつつ、権力者たちと
いつのまにか仲良くなり、仲間を増やしていく。
タイトル通りの勝ち組人生にまっしぐらだ。
パロディ要素も話しが進めば進むほど増えていき、
もうファンタジー世界でいかにパロディを入れるのか
制作側が勝負をしているのでは?と思うほど盛り沢山だ。
最終話では2期をやりたい感じビンビンのラストで終わっており、
作品を見終わった後に驚くほど何も残らない(苦笑)
ただ、単純に駄作というにはなにか違うようなそんな気もあり、
「進化の実」とは一体何だったのかと感じてしまう作品だった。
総評:もうチートいらねぇよ
全体的にみてどう評価していいか迷う作品だ。
作画のレベルは低いものの、ギリギリ作画崩壊はしておらず、
キャラクターの行動原理や心理描写は説明台詞の多さでわかり易すぎるくらいわかりやすい。
ストーリーはあってないようなもので話が進んだか進んでないのかよくわからず、
そもそも主人公の目的というのもふわっとしている。
魔王を倒すために紛争するわけでもなく、元の世界に戻ろうともしていない。
同じ学校の先輩と再会するという目的は有るものの、
そのために行動しているのは最初くらいだ。
魔族やら人間やらが色々と画策しており、
クラスメイトや先輩たちはそれに巻き込まれてはいるものの、
主人公自体は特にそこに関与しておらず知りもしない。
最終話で新キャラが出てきたり、2期があれば
クラスメイトや先輩たちが絡んでくるストーリーにはなりそうだが、
先が気になる、先が見たいという面白さはない。
だが、「もうチートいらねぇよぉ」という最終話の
主人公の台詞通り、この作品の主人公のチート能力そのものを
主人公がどこか迷惑がっているからこそ、
なろう作品特有の主人公への嫌悪感や不快感があまりなく、
基本的にギャグで描かれているからこそストレスになる展開もない。
ただその反面でどこかノリが古く、上滑りしまくったギャグの数々と
どこかでみたことの有るようなギャグキャラ達など、
小学生くらいなら笑えそうだが、大人が見ても乾いた笑いしか出ない。
これを「あえて」そうしているのか、本気でやっているのか。
その判断が見ている最中につかず、結局この作品はなんだったのだろうかと
思ってしまう。
ヒロインは多いものの、そんなヒロインを使いこなせておらず、
最終話あたりで「あー、そんな子も居たな」と思うようなキャラすらいる。
本来はゴリラなヒロインがメインヒロインのはずだが、
そのメインヒロインでさえ影が薄い始末だ。
「進化の実」とは一体何だったのか…
と思い返しても、これだ!と表現する言葉が見つからない。
常に歯に何かが挟まり続け、最終話になると全ての歯の隙間に
何かが詰まったまま終わってしまったようなそんな作品だった。
個人的な感想:絶妙なバランス…
1歩間違えばとんでもない駄作になりそうなところを
ギリギリ持ちこたえているようなそんな印章を受ける作品だ。
つまらないと切り捨てるには何かがありそうな
そんな予感を感じさせつつ、なにもない(笑)
ギャグの古さやノリの古さはかなり人を選び、
なろう特有のご都合主義全開の部分も人を選ぶ。
ただ、なぜか嫌いにはなれない。
この気持ちをいつか言語化出来る日が来るかもしれない。
そういった意味でも2期があればもしかしたら
その「なにか」が分かる…かもしれない(苦笑)
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