評価 ★★☆☆☆(35点) 全104分
あらすじ 世代を経るごとに混ざり合う“個性”が人類を終焉に導くとする思想「個性終末論」を掲げる謎の集団「ヒューマライズ」。引用- Wikipedia
3作品目の呪い
本作品は僕のヒーローアカデミアの映画作品。
僕のヒーローアカデミアとしては3作品目の映画作品となる。
監督は長崎健司、制作はボンズ
個性終末論
本作品の敵はいい意味でヒロアカらしい敵だ。
彼が訴えるのは「個性終末論」と呼ばれるものであり、
個性が進化し、人と人とが混じり合う中で更に複雑になる個性は
いずれ人の手に負えないものになるという考えのもと
個性を持つ人類を滅ぼそうとしている。
本編で使われてもおかしくないような敵の思想だ。
もともと主人公である「緑谷出久」は無個性だった。
そんな彼がオールマイトから個性を譲渡されて今がある、
しかし、己の持つ力も誰かに譲渡する未来が来るかもしれない。
そうなれば彼は無個性だ。
無個性と個性を持つ人間の「狭間」に存在するような主人公、
そんな主人公が相対する敵こそが「個性終末論者」だ。
世界各地にある支部は世界各地で個性を暴走させる爆弾を使い、
個性を持つ人間を絶滅させようとしている。
「個性」というものが当たり前に存在する世界に現れた脅威だ。
そんな脅威にヒーローが「世界中」を駆け巡り対処する。
1作目のようにオールマイトと緑谷出久が対処するわけでもなく、
2作目のように1-Aの生徒たちだけで対処するわけでもない。
「全てのヒーロー」が敵に立ち向かう。
夜のミッションだからこそ彼らが着るヒーローコスチュームは
いつもと違い、劇場版オリジナルの新コスチュームステルススーツだ。
いつもの衣装とは違うからこその特別感とファンサービスを冒頭から見せ、
映画冒頭からドバドバとおなじみのキャラクターたちの活躍が描かれる。
パルクール
そこに絡むのが今作のオリジナルキャラである「ロディ」だ。
彼は運び屋として汚れ仕事を引き受けており、そんな仕事の中で「緑谷出久」と出会う。
1作目も2作目も映画オリジナルキャラは敵キャラを除き、
あくまでサブキャラクターとして緑谷出久たちに絡んでいた。
しかし、3作目ではがっつりと緑谷出久と絡む。
序盤では海外の街並みを駆け回る、いわゆる
「パルクール」的なアクションで街を駆けずり回る様子は
アクションシーンとしての見応えを生んでおり、
それ「黒鞭」を使いこなしながら緑谷出久が追うシーンは
どこか「スパイダーマン」を彷彿とさせてくれる(笑)
そんなロぃを助けようとしたために緑谷出久は
「指名手配」されるところから物語が動き出す。
なぜ彼が「大量殺人犯」として指名手配されてしまったのか、
「ロディ」を殺そうとする人物はなにものなのか。
なにかの犯罪に巻き込まれてしまった二人、
今作では緑谷出久とロディを中心に物語が語られる。
ロードムービー
今回はどこかロードムービーのような雰囲気がある。
指名手配されてしまった緑谷出久と、やばいぶつを運んでしまったロディ、
そんな二人が隣国まで逃げるための道中が描かれている。
しかし、それが特に面白いというわけでもない。
牧歌的な空気感の背景描写は悪くないものの、淡々とした展開が続いてしまう。
道中でも弓使いのヴィランが襲ってきたり、
「ヒーロー」、そして人というものを信じていないロディの成長と
変化は描かれてはいるものの、
「ロディ」というキャラクターばかりが描かれてしまっている印象だ。
ダイジェストでなおかつ歌を流しながらロードムービーを描いてはいるもの、
そのダイジェストで特になにか印象が残るようなシーンがあるわけではない。
背景のクォリティはそれなりではあるものの、ただ、それだけだ。
「国際的な事件」が起きているのに、こじんまりとした
ストーリーばかりが淡々と描かれる。
PVや予告編、更に冒頭でも出てきていた
「ステルススーツ」も冒頭以降一切出てこない。
何のための特別衣装なのだろうか…
えぇ?!
敵である「個性終末論者」たちもやや意味不明だ。
序盤から中盤まで緑谷出久たちを追っている「弓」のような個性を使う
ヴィランが居る。
彼女も「個性終末論者」なのはわかるが、彼女自身ももちろん個性持ちであり、
そんな彼女がなぜ「個性終末論者」になったのかなどは一切語られない。
敵側のメインキャラクターっぽいキャラクターなのに、
一切掘り下げがなく、更に途中で「自殺」する。
思わず「えぇぇ!?」と急な展開すぎて声が出てしまったくらいだ。
せめて自殺を試みるが、緑谷出久が寸前で助けるみたいな展開になるかと思いきや、
その場に轟や爆豪もいるにも関わらず、いくら敵キャラクターとは言え
見ているだけなのは彼らの「ヒーロー」としての流儀、
誰かを「助ける」という思いすらも抜け落ちているシーンに感じてしまう。
自殺を試みるものの、実は活きてましたみたいなシーンが有るならば
まだ消化しきれるが、彼女の出番はここまでだ。
他のキャラクターの描写も甘く、
ついでみたいに各地でのヒーローの活躍が描かれるものの、
2作目に比べると薄く、1作目よりも薄い。
爆豪は一応、緑谷出久とともに行動しており活躍の場はあるものの
まるでオウムのごとく「俺に命令すんじゃねぇ」「指図すんじゃねぇ」
と台詞を繰り返す。
ストーリーの練り込みの甘さを感じてしまう。
戦闘シーン
それでも戦闘シーンだけは本当に素晴らしい。
緑谷出久、爆豪、轟の「ヒーロー」としての力が成長したからこそ、
モブな敵キャラなど相手にならない。
それでも、きちんと緑谷出久、爆豪、轟の相対する敵が現れ
それぞれが戦うシーンの見どころはたっぷりだ。
しかし、緑谷出久の戦闘シーンだけは意味不明だ。
根塊の敵のボスの個性は「反射」という個性を持っている。
その個性ゆえに自らの個性を呪っているという設定自体は理解できる。
それゆえに人類の8割以上の個性を消失させようとするという
考えになるのは納得できないものの、ヴィランらしいとも言える。
そんな彼らが強敵と戦ってる間に世界中で戦ってる1-Aやヒーローたちの姿も
「一方そのころ」的に映し出されるためいまいち
戦闘シーンにも集中しきれない。
舞台を大きくした結果、場面転換もそれだけ増えてしまった印象だ。
ぶん..しん…?
終盤の緑谷出久の戦闘シーン、最大の見せ場と言えるシーン。
正直やりすぎだ。
なぜか急激に覚醒して超スピードで動き出したかと思えば、
「拳」が残像するほどのパンチを繰り出す。どこのゴム人間かと思うほどだ。
それだけならまだしも何故か「分身」する(笑)
パンチを超高速で繰り出しながら徐々にデクの身体が分散し
攻撃する姿は「どういうことなのか」よくわからない。
確かに動きまくり、激しい戦闘シーンだ。
しかし、そんな戦闘シーンに理解と感情が追いつかない。
2作目も1作目も「強敵」に対し、勝つ流れと理由に納得できた。
しかし、3作目のこの戦闘シーンの流れはかなり強引で
勢い任せにやってしまった感じが強く、
アニメーションの面白さに対し、アニメにおけるストーリーが
ついていっていない作品だった。
総評:3作品目という呪い
全体的に見て1作目、そして2作品目の面白さをまるで超えていない作品だった。
世界を舞台にしたことで1-A他のキャラクターの活躍が減り、
そのうえ世界中で活動する彼らのシーンを描くための場面転換が多く、
そのせいで戦闘シーンの腰を折られてしまっている。
「個性終末論」というもの自体は面白く、
「個性」というものが中心に社会が成り立っているこの世界だからこそ、
その「個性」そのものを不要と考え行動する敵は
ややぶっ飛んでいるものの面白い。
しかし、そんな敵の行動理念が敵のボス以外はほとんど掘り下げられず、
メインキャラかと思いきや急に退場してしまうキャラや
なんか強そうな敵が襲ってくるだけで物足りなさを生んでいる。
今作のオリジナルキャラである「ロディ」の成長と変化、
彼のキャラクターの描写は悪くないものの、
彼の描写に尺がとられてしまっている部分が多く、
そのせいで他のキャラクターの活躍がカットされてしまっている。
冒頭のパルクールアクションをするロディや、
それを追う緑谷出久のスパイダーマンのようなワイヤーアクションは
素晴らしいものの、終盤の戦闘シーンは勢い任せのノリで
やってしまっている感じが非常に強く、
なんかいきなりパワーアップして分身してすごい技を倒したという
「ふわっ」っとした戦闘描写になってしまっている。
前作もラストは「奇跡」というご都合主義がやや気になったものの、
まだ飲み込めたものの、今作は別に奇跡でもないんでもないのに
よくわからないパワーアップでよくわからない技を出して
敵を倒してしまったことで、盛り上がるというよりも
どこかシュールな雰囲気さえ生まれてしまっていた。
ターミネーターしかり、ホーム・アローンしかり
ハリウッド映画は「3」で駄作になるとよく言われる。
そんなハリウッド映画のお約束をアメコミ要素のある
「僕のヒーローアカデミア」が取り込んでしまったような
そんな感覚に陥ってしまう作品だった。
個人的な感想:2作目…
2作目がある種の禁じ手を使った映画だっただけに、
3作品目ハードルが上がってしまっていたのは事実だ。
しかし、それでも1作目のようにファンが見たかったシーンを
見せてくれるわけでもなく、2作目のように
ファンが予想もしてなかった展開を見せてくれたわけでもない。
デクが分身するのはある意味で予想外ではあるものの、
「そうじゃない」感が強い作品だった…
原作はそろそろ終わりそうで、アニメでもおそらくラストまで描かれるだろう。
劇場映画も4作品目が制作される可能性も高い。
4作品目ではぜひ「有終の美」を飾るような作品になることを期待したい。
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物語全体を通して細かい違和感がずーっと続く映画でした。
序盤はデクがロディを追いかけるシーン。ロディに土地勘があるとはいえ、あくまで常人の身体能力にあそこまでワン・フォー・オールの力が苦戦するのは……。
中盤はレビューにもあった敵の自殺を誰も止めないシーン。本編では宿敵の弔すら救済しようと足掻いているデクにあるまじき行為です。
終盤は反射の個性に闇雲に殴りかかるデク。ジャンプ主人公の中でもデクは特に作戦で戦うタイプです。重度の個性オタク(ヒーローオタク)であり、相手の得意不得意を見極める事に長けています。今回の敵であれば「直接的な攻撃には無敵に近い一方で、足場を崩されたり等の間接的な攻撃には弱い」という弱点に普段のデクならすぐに気づけたはずです。
なのに映画中のデクは「遠距離攻撃なら反射されないと思った」「殴る瞬間にOFAを切れば反射されないと思った」とかバカ過ぎる作戦を立てたあと、もう諦めてひたすら敵を殴り続ける脳筋になります。
最終的に「諦めずに何度もぶつかっていけば、お前も人と触れあえたんだ!」ってのを言わせるためにデクの知能を下げたのは分かるんですがね…………そもそもワン・フォー・オールのパワーでしばらく殴り続けてようやく少し弱まってくるってレベルだから、日常生活じゃどうせ実現不可能では……?
それと敵が「この個性のせいで親に抱き締められたことすらない!」とか語りますが、デクにキックやパンチしていて矛盾してるんですよね。(敵自身から触ろうとする行為は反射されない?)
まるでヒロアカの映画じゃなくて、そっくりさんの映画を見てるような感覚でした。
人気投票(十傑)にロディがランクインしてる事から、キャラ人気は出てるみたいですがね……。
非常に惜しいです。