評価 ★★★★☆(75点) 全11話
あらすじ 無限列車での任務を終えた炭治郎たちの次なる任務を描く遊郭編。鬼殺隊最高位の剣士《柱》の一人、音柱の宇髄天元とともに炭治郎たちが向かうのは、鬼の棲む遊郭。引用- Wikipedia
Ufotableの真髄、ここに極まれり
本作品は鬼滅の刃の2期。
映画である無限列車編を全7話で放送したあとの2期であり、
やや中途半端な時期から放送が開始し、2021年12月から放送された。
2021年秋アニメではあるものの、放送時期はほぼ2022年冬アニメであり、
全11話という構成もまた驚かされた。
監督は外崎春雄、製作はufotableと1期から変更はない。
煉獄杏寿郎という名の呪い
2期は無限列車編からの地続きのストーリーだ。
上弦の鬼である猗窩座を目の前にし何もできなかった炭治郎たちと、
失われた柱の一人である「煉獄杏寿郎」。
その影響は大きく、炭治郎の中には未練が残る。
もしもあのとき、もっと力を持っていたら、なにか別の方法があったのでは。
それは炭治郎だけでなく伊之助や善逸、鬼殺隊の人々、
そして煉獄杏寿郎の家族もまた彼を失った悲しみに暮れている。
だが、それでもウジウジせず前に進もうとしているのがこの作品のいいところだ。
「煉獄さんのような強い柱になります」
柱の控えである継子も彼にはおらず、弟子のようなものも今はいない。
だが、そんな煉獄さんの意思を炭治郎然り、多くの人が
自分にできることで継ごうとしている。
「キャラクターの死」の影響をしっかりと描くことで、
そのキャラクターの死の意味を物語の中でも築き上げている。
受け継がれし火の意志、1期と同様に2期もまた
この作品が「ジャンプ」の集大成であることを感じさせてくれる。
煉獄杏寿郎という男の死と向き合う、荼毘に付すような1話だ。
映画である無限列車編に至るまで、
この作品ではメインキャラクターの死は描かれていなかった。
そんなメインキャラの初めての死を無限列車編で描き、
2期ではそんな死に向き合い再び歩き出す1話から始まっている。
悲しみに暮れている時間はない。
鬼は人が悲しんでいるからと人を喰うのをやめてはくれない。
だからこそ彼らは立ち止まらない。
もうひとりの柱と出会い、新たなる任務を受け、炭治郎たちも動き出す。
無限列車編からの2期の1話として心地よい流れになっている
音柱
1期では水柱・冨岡義勇と出会い物語が動き出し、
無限列車編では炎柱・煉獄杏寿郎と出会うことで物語が動き出した。
そして2期では同じように音柱・宇髄天元と出会うことで物語が動き出す。
彼のキャラクターとしてのインパクトは炎柱以上だ。
勝手に女の子を連れ去ろうと仕方と思えば、神を自称し、
炭治郎たちに命令の絶対遵守を言いつけ、派手な姿ではあるものの元忍であり、
嫁は3人もいる(笑)
ド派手な姿を脱ぎ捨てれば眉目秀麗な色男であり、
インパクトのあるキャラクターだからこそ序盤はギャグ要素が非常に多い。
世間知らずな炭治郎や人間の街についての知識のない伊之助が
「遊郭」という我々でさえ「未知」の場所に対するリアクションそのものが
ギャグになっており、
あいも変わらずハイテンションで善逸が突っ込む姿は1期から変わらない。
遊郭への潜入調査という、1期や無限列車編とはまた違う物語の中で
彼らは「女装」している(笑)
何も知らぬ炭治郎たちが女装しながら遊郭で働きながら、
遊郭の基礎的な知識や用語を解説しつつ、この2期の「遊郭編」だからこその
空気感を作り上げている。
特に街の描写はさすがだ。
大正時代という背景だからこその建築描写、遊郭だからこその
きらびやかな内装の描写は一切の妥協がない。
そこに三味線などが奏でる音楽が加わることで、優雅さと淫靡さと悲哀さに
満ち溢れる「遊郭」という場所の空気感を目と耳、鼻でさえ感じられるようだ。
実際に漂うわけではない、だが、この空間づくりが見るものの鼻腔に
「おしろい」や「白檀」の香りを感じさせる。
成長
序盤は鬼との戦いもなく遊郭での潜入捜査という日常が描かれる。
炭治郎は器用に何でもこなしつつ、善逸は三味線の腕前を上げている(笑)
そのなかでも猪之助は普段のあのイノシシの被り物をしておらず、
女装用の化粧もしていないのに女性のような顔だちが特に強調して描かれている。
鬼の気配を感じ、遊郭の中を走り回るだけで、その横顔の美しさを感じさせる、
彼だけ顔の作画のクォリティが他のキャラだけ2段階くらい違うような感じだ。
無限列車編、煉獄杏寿郎を失ったことへの後悔は彼の中にも残っており、
鬼に対する思いやより強くなっている。
善逸も同じだ。彼は臆病な人間だ、
なるべく鬼と出会いたくない戦いたくないとすら思っていた青年だ。
そんな彼が眠ってもいないのに背後に唐突に現れた上弦の鬼の存在に
怯えつつも、自らの恐怖よりも、目の前で泣いている女の子を、誰かを守ろうとする。
誰かを守るために立ち向かおうとする行為は
彼の成長を強く感じさせるシーンだ。
炭治郎も同じだ。柱に生き残るために帰れと言われても、
彼は自らの責務を果たそうとすると同時に
「絶対に死なないでほしい。」
と伊之助に問いかけるシーンは煉獄杏寿郎への後悔があるからこそだ。
3人のメインキャラのバランスがよく、日常描写の中で
キャラクターを描きつつ、ギャグを描きつつも
「鬼」の存在を臭わせ、描写していく。
上弦
中盤からはほぼ戦闘シーンだ。
鬼滅の刃は1期でUfotableが手掛ける戦闘シーンが
いい意味で話題になり火がついた作品だ。
それを制作側がわかってるからこそ戦闘シーンの描写はえげつないものがある。
炭治郎が相まみえるのは上弦の鬼だ。
因縁の相手である猗窩座と同じ上弦、数字は違えど上弦だ。
そんな相手に「炭治郎」一人でどう立ち向かうのか。
自身の未熟さ、自身の力の弱さを自覚しつつ、
彼が血まみれになりながらも刀を振る姿はまさしく主人公だ。
着物の帯を硬化し自由に操る。そんな鬼の技だからこそ、
Ufotableらしい高速の動きの描写と「多角的」な帯の動きを画面いっぱいに、
まるで「劇場のスクリーン」を意識した構図で描かれている。
TVアニメでありながら、スマやタブレット、パソコンの画面や
TVのモニターサイズで戦闘シーンが描かれていない。
そんな広角的なカメラアングルと多角的なカメラアングルを
組み合わせつつも、スローなどでじっくり見せるわけでもない。
素早く、まるで激流の川のごとく次々と繰り出される技の数々、
活劇という言葉がふさわしい攻守の応酬に目が離せない。
中盤の禰豆子の覚醒戦闘シーンは素晴らしい。
上弦の鬼に体をバラバラにされようが一瞬で再生し、
鬼としての本能を爆発させながら暴虐の限りを尽くす。
「刀」ではない「徒手格闘」による鬼と鬼との戦いは思わずニヤニヤしてしまう。
鬼滅の刃という瞬時に自らの身体を再生する鬼が出てくる作品だからこそ、
そんな鬼と鬼の戦いのあまりにも人離れしすぎた
人外の領域にいたった鬼同士の戦いがたまらない。
場面転換
ただ、前半の場面転換の多さはやや気になるところだ。
炭治郎が上弦の鬼の本体と相まみえている中で、
別の場所では伊之助や善逸、音柱が鬼に捕まっていた人質たちを
助けるためになんとかしようとしていたりと、
違うところで戦ってるがゆえの場面転換が発生してしまっている。
更に回想シーン。
これは1期のときからそうだったが、戦闘中に回想シーンが
頻繁に挟まってしまうことで作品全体のテンポがやや悪くなってしまっている。
ものすごく盛り上がる戦闘シーンが描かれているのに、
そんな戦闘シーンの中で場面転換し回想シーンが描かれてしまうと
せっかくの盛り上がりがあまり持続しない。
戦闘途中の説明台詞の多さもあり、原作からの問題点はあるかもしれないが、
調べたところアニオリもちょこちょこあるようで、
1話の長めのアニオリパートもそうだが、
「1クール」という尺にするためのストーリー構成や尺の「調整」が
作品全体にあり、そこがちょこちょこと引っかかるような印象につながってしまう。
例えば炭治郎が相手に一太刀いれるまでにしても
長い説明台詞がだらっと続いている部分が多く、
漫画という媒体ならともかく、見ればわかるような部分さえ
漫画の台詞をそのまま引っ張ってきてしまうために
戦闘シーンでの間延びも生まれてしまっている。
ただ、それでも、そんなテンポの途切れや間延び感を
高クォリティの戦闘シーンでスカッと吹き飛ばしてくれる。
もうひとり現れる上弦、首を切っても死なない鬼。
強敵にたいし、主人公たちもくじけずに立ち向かう。
エフェクト
中盤までの戦闘シーンでも本当に素晴らしいのだが、
特に終盤の戦闘シーンは「これぞUfotable」だといわんばかしのクォリティだ。
1期でもヒノカミ神楽のシーンが話題になったが、
美しい火のエフェクトとアニメーションは鬼滅の刃というアニメの
クォリティの高さを感じさせてくれた。
しかし、2期ではどちらかというと鬼滅の刃というよりは
「Ufotable」らしさが全開だ。
特にエフェクトとカメラワークはFateや空の境界などの
過去の「Ufotable」が手掛けてきた作品の戦闘シーンすらも呼び起こさせる。
「Ufotable」という会社が築き上げてきた技術、
「Ufotbale」だからこそできるアニメーション。
その真髄ともいえる戦闘シーンが終盤で描かれる。
剣戟の嵐、闇に光るエフェクトとエフェクトのぶつかり合いから生まれる渦、
そんなまるで台風で荒れる海のような戦闘シーンを
単純な「カメラ」ではなく「ドローン」で撮影するかのような
自由で細かくスムーズな動きで縦横無尽に映し出すことで生まれている。
これが22年の月日をかけてUfotableが生み出したUfotableらしさなんだと
言わんばかりの戦闘シーンはアニメにおける1つの到達点だ。
自らの血を使い斬撃そのものを操る鬼、
血の斬撃の回るエフェクト、そんな技に対し、
音柱たる「宇髄天元」の日輪刀が縦横無尽に変化し対応し防ぎ切る。
無限とも言える斬撃の応酬、決して止まることのない戦闘シーンに
息を呑み、目を離せない。
宇髄天元
彼もまた炭治郎と同じく「煉獄杏寿郎」の思いを受け継いでいる。
だが、彼のようにはなれないとわかっている。
誰かを守って死ぬ、自らの命を投げ捨てて誰かを守った彼の存在は
鬼殺隊の人々に多くの影響を残している。
彼は自らの命をも守ろうとしている。
生き抜かなければ、生きなければ意味がない。
忍びとして育てられたがゆえに、そういうふうに生かされてきた中で
兄弟や多くの人の命が犠牲になってきたのを見てきた彼だからこそ、
もう誰も失いたくない、それは自らもだ。
人の世の影にいきた忍びたちの分まで
「ド派手」に生きようとする彼の処世術。
それこそが彼の魅力であり、彼そのものだ。
兄と妹
「お前も鬼にならないか」
そう問われた煉獄杏寿郎は頑なに人であることにこだわった。
そんな彼の意志を受け継いだ炭治郎だからこそ、
同じ問いかけをしても彼は一切ぶれない。
遊郭に潜んでいた鬼も、炭治郎と禰豆子と同じく兄妹だ。
それはあり得た炭治郎と禰豆子の未来だ。
もう1つの兄妹の物語、立場が、状況が、タイミングが、
何かが1つ違えば上弦の6の鬼たちと同じく炭治郎も鬼になっていた。
悲しき兄妹の物語。
敵の掘り下げといえるものは最終話でしか描かれないものの、
それでも鬼滅の刃らしい鬼たちの過去の描写は、
熱き滾る戦闘シーンのあとにどこかしんみりとした趣を残すものだった。
総評:派手にユーフォに任せておけや!
全体的に見てTVアニメとは思えない戦闘シーンを見せてくれた作品だった。
Ufotableらしいエフェクトの嵐と自由すぎるカメラアングル、
作画枚数を一体何枚使ったんだと思うような戦闘シーンの数々は
さすがの極みであり、特に終盤にかけて盛り上がる戦闘シーンは
さすがはUfotableだと言いたくなる出来栄えだ。
ただ、その反面で1クールという尺にするための調整がやや目立つ。
アニオリシーンの数々はやや引っかかりを覚え、
回想シーンや場面転換の多さは原作からの問題点もあるかもしれないが、
漫画の説明台詞をそのままアニメという媒体に持ってきてしまったがゆえに
テンポの悪さや戦闘シーンの盛り上がりの腰を追ってしまっている。
「アニメーション」としては素晴らしいものの、
アニメとしては1クールという尺の縛りに引っ張られてしまった感も強い。
終盤になると少年漫画にありがちなご都合主義もやや目立ち、
なかなか死なない敵や死んだかのように見えて実は生きてました的な
展開が敵にも味方にも多い。
このあたりのご都合主義をどれくらい飲み込めるのかで
2期を楽しめるかどうかのポイントにもなっており、
そのご都合主義な部分を高クォリティの戦闘シーンでいい意味でも悪い意味でも
うまく覆い隠しているが気にならないといえば嘘になる。
本来は8話ないし、9話くらいでまとめたらちょうどよくなる話を
1クールにするための調整が気になるものの、
TVアニメとは思えないほどのクォリティで描かれているアニメーションは
一見の価値ありだ。
3期も決定しており、3期が1クールになるのか2クールになるのかはわからないが、
このクォリティのまま最後までアニメ化されることを期待したい。
個人的な感想:善逸
1期では善逸のハイテンションなツッコミが
あまりしっくりとこなかったが、2期ではそれがやや抑えられているのは
個人的には良かったと感じる部分だ。
ただ2期では場面転換の多さや回想シーンや説明台詞の多さは
流石に気になるところであり、もう少しテンポを上げても良いのではと
感じてしまう2期だった。
1期ではあまり感じなかった間延びやテンポの悪さを感じてしまったのは
本当にもったいない。
1クール、全12話ないし全13話という尺の縛りが故の
欠点はいろいろな作品でも起こっているが、
まさかそれを鬼滅の刃で感じるとは思わなかった。
3期ではこのあたりが改善されることを期待したい。
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください
原作もそうなんでしょうけど、回想シーンや爆乳クノイチの皆さんが出てきてもウズイさんの魅力掘り下げに至らなかったのが個人的にはう〜んって感じでした。
毎週楽しみに見れたので満足なんですけどね
面白かった!!!!!!!!
俺的には1点だわ。