評価 ★☆☆☆☆(17点) 全12話
あらすじ 畜生活を送っていた桐尾礼治(レイジ)は、会社に向かって歩いていたらいつの間にかに異世界の森にいた。引用- Wikipedia
無味無臭
原作は小説家になろうで連載していた小説作品
監督は佐藤まさふみ、制作はEMTスクエアード
説明不要?
1話冒頭の時点でもう、説明しなくてもご存知ですよね?と
「異世界に作ろうドラッグストア」というタイトルだが、
すでに1話の時点でドラッグストアが完成しており、
美少女店員が二人もいる状態だ。
物語における「導入」が1話で描かれていない。
転移なのか転生なのか、主人公がどうしてこの世界に来てしまったのか。
ドラッグストアはどういう経緯で作られたのか、
美少女店員2人とはどう出会い、どういう経緯で店員になったのか。
そういった導入がまったく描かれておらず、
すでに構築されている主人公とヒロインの関係性、
すでに出来上がってしまっているドラッグストアと、
物語の途中から魅せられている感じが非常に強い。
あえて1話では導入を描かずに2話などで
原作における1話を描く手法はアニメではたまにあるが、
この作品は2話になっても3話になっても4話になっても導入が描かれない。
導入部分が描かれないことで、
この作品への没入感、キャラクターへの感情移入が生まれづらくなっており
いまいちこの作品の面白さがピンとこない。
「こんなに褒められたの初めてかも、以前じゃ考えられなかった」
主人公がそんな台詞を言うものの、
その「以前」を見てる側は知らない。
登場人物の会話から断片的に語られる過去から
見てる側が読み取らなければならない。
幽霊だの人狼だの見た目だけ可愛い女の子はいっぱいいるものの、
その可愛い女の子のバックボーンが語られない。
導入部分は最終話で描かれるものの、
おそらくは制作側も「導入部分」の意味の無さを感じたからこその
カットだったのかも知れない。
主人公はそもそも異世界に来る前は社畜な営業職をしていた男だ。
この営業職がせめて「薬」に関連していればまだ理解できるが、
別にそういう要素はない。
つまり主人公は現代的な「薬」の知識は一切なく、
異世界に来たらいきなり「薬」を作れるスキルを何の努力も得て
異世界で自由に薬を作れるスキルでドラッグストアをしている。
もはや「異世界転移」という必要性すら感じない。
なんか歩いてたら異世界にきてしまい、
「これが流行りの異世界転生か」で納得してしまうような導入だ。
制作側がカットしたくなる気持ちもわかるが、
それでも「ドラッグストア」ができる過程まで
カットしてしまったせいで1話からこの作品に入り込めない。
テンプレ
1話からある種のテンプレートが出来上がっている。
錬金術師であり薬を作れる主人公のもとに困っている人が現れる、
その困った人のトラブルを解決するために主人公が何かを作り、
トラブルが解決するという流れだ。それ以上でもそれ以下でもない。
1話1話の話が非常に浅く、
タイトル通り「スローライフ」であり、魔王を倒したり、
世界の平和を守るわけでもない物語なのはわかるものの、
「スローライフ」だから内容が浅くていいというわけでもない。
でてくるキャラクターはキャラクターデザインのおかげもあって
可愛く、なろう主人公にありがちな不快感もない主人公ではあるものの、
キャラクター自体に深みがあるわけでもない。
しかも薬を作るシーンは毎話のようにあるが、
「バンク」、いわゆる使いまわしだ。
何を作るにしても同じシーンを使いまわしており、
そのシーンが別に面白いわけでもないのに尺を使って
同じシーンを毎話ながしている。
コメディ
トラブル自体も物によっては5分足らずで解決することも多く、
話の広がりが生まれない。
ただ、その浅さを逆に利用し1話に数エピソード詰め込んで、
テンポ良く展開することでギャグが際立っていることもある。
特に4話などは下ネタなどそれまでの話で1度もなかったのに、
唐突に「夜のトラブル」が主人公に持ち込まれ、
媚薬を作る流れになり、その媚薬を間違ってメインキャラたちが飲んでしまう
流れはきちんと話も広がっており、キャラの魅力も活かした話になっている。
基本的にコメディタッチで描かれているおかげで、
話自体は浅いもののリズミカルに描くことでその浅さを誤魔化しており、
いい意味でテンポの良さが生まれることで
この作品が掲げる「スローライフ」らしい
ほどよい面白みのある話に仕上げている話もある。
しかし、ギャグであるがゆえに当たり外れもも大きく、
見る人の好みが分かれる部分が大きい。
そのゆるいコメディの中でも基本は「キャラ萌え」を意識して作っており、
キャラが気に入れば楽しめる部分もある。
割り切ったキャラ萌え作品として仕上げている。
キャラクターが増えれば増えるほどワチャワチャ感も生まれ、
そんなキャラクターたちのボケに対して、
主人公が突っ込むことでギャグが成立しており、
見ているとこの作品の世界を徐々に楽しんでいる自分がいる。
特に「残念なショタ魔王」様が主人公の前にでてくると
作品全体がまとまったような感覚すら生まれる。
ただ、出会いが描かれていないメインキャラは
いくらその後のエピソードがあってもいまいち感情移入しきれず、
サブキャラのほうが魅力的に感じてしまう。
何でもアリ
話しが進めば進むほど主人公の能力のチート感が強まる。
研磨材、接着剤、布が再生する薬など「くすりとは…?」と疑問に思うようなものを
作り出したかと思えば、一時的に死者の記憶を具現化するような
薬まで開発する。
もはや薬師の領域を超える物を作り出してしまっている。なんでもありだ。
1話の時点で主人公が作っている「エナジードリンク」も
傭兵や魔王など一部「中毒」に近い状態になっており、
それを分かっているのに主人公は提供を止めない。
依存させれば儲かる!などとゲスな考えがあるならばまだしも、
善意で安く譲ったりするくらいだ。無意識に中毒患者を作り出している。
そもそも主人公にろくな現代的な薬の知識がないため仕方なく、
純粋な「医療薬」を作ることはない。
「無免許薬剤師」だからそこは守っているんだろうか(笑)
もはや薬師とはなんなのかと話しが進めば進むほど言いたくなってしまう。
つっこみどころ
トラブルを解決するために薬に頼るのはお約束だが
「それでいいのか?」と思うような話も多い。
例えば弓が苦手なエルフが狩猟祭で優勝するために主人公のもとへ駆け込んでくる。
主人公はエルフに弓の特訓をさせつつも、魔獣がよってくる薬を使わせる。
完全に不正である(苦笑)
もちろん弓の特訓の成果もあるのだろうが、
薬を使ってれば目の前に魔獣が寄ってくる薬を使えば
弓の腕が悪くてもある程度の成果は残せそうだ。
明らかな「不正行為」をしているのにそこに言及するキャラはいない。
こういう突っ込みどころが多く、
細かい部分でも引っかかるところは多い。
そういった部分をテンポとコメディ要素とキャラ萌えで割り切ることで
なんとか乗り切ったかのように見える作品だ。
総評:無免薬師、異世界人をエナドリ中毒にする
全体的に見てかなり人を選ぶ作品だ。
1話から物語の導入を描いておらず、
すでにキャラ同士の関係性も構築されドラッグストアもできており、
主人公がどういった経緯でこの世界にきてどうやって
ドラッグストアを作ったのかという部分がまるで描かれない。
終盤で経緯と出会いは描かれるものの、
結局、ドラッグストアを作った経緯はアニメでは描かれておらず、
まるで物語が途中から始まったような感覚があり、
序盤はこの作品の世界に馴染みにくい。
しかしながら中盤からキャラが増えドタバタ感がまし、
主人公のツッコミに切れが増していくため、
コメディ部分が際立ち、それなりにこの作品を楽しむことができる。
良くも悪くもキャラ萌え作品であることは否めない。
それでも1話1話の話の薄さや、当たり外れもかなり大きく薄くて浅い作品だ。
作画はそこまで悪くないものの、悪くないどまりだ。
主人公を演じている「福島潤」さんの演技に助けられていることも大きく、
不快感こそ生まれないものの無味無臭さも同時に生まれている。
そもそもの「薬師」という設定ももはやなんでもアリになっており、
医療品ではなく、日焼け止めやエナジードリンクなどの
医師免許も薬剤師の免許も薬の知識もない主人公が
薬事法に触れないように配慮しているのか?と思うほどの
薬の数々はまるでドラえもんの道具レベルのご都合主義感がある。
キャラクターを好きになれれば楽しめる部分はある作品であり、
そういった意味ではキャラ萌えに割り切った制作陣は
ある意味ですごいのかも知れない。
個人的な感想:薬師とは…
一時的に死者蘇生みたいなことをする薬がでたあたりから
「あー、もうなんでもありなんだな」とは思ってしまったものの、
もう少し薬師らしい要素を出せなかったのだろうか…
不快感が生まれず、ひたすらに薄味なため気づいたら
全話なんか終わっていたという感覚が生まれる。
見れることは見れるが、記憶には残らない。
そんな印象のある作品だった。
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください