サスペンス

「ACCA13区監察課」レビュー

4.0
サスペンス
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評価 ★★★★☆(74点) 全12話

あらすじ かつて、12の地区による一斉クーデターが起こり、各地区ごとによる自治が認められた経緯があるドーワー王国は、現在13の自治区から構成されている。引用- Wikipedia

虚々実々

原作はオノ・ナツメが手掛ける漫画作品。
監督は夏目真悟、制作はマッドハウス

飄々とした始まり


画像引用元:ACCA13区監察課 12話より
©オノ・ナツメ/SQUARE ENIX・ACCA製作委員会

1話、不思議な始まりだ。
何が大きな出来事が起こるわけでもない、
主人公の朝の風景が描かれる。
朝のニュースを見てパンを食べてコーヒーを飲み、妹と会話を交わす。
仕事着に着替えタバコケースを手にし、仕事に出る。

たったこれだけだ。
だが原作の「オノ・ナツメ」先生が手掛ける絵柄の雰囲気が
しっかりと出ているキャラクターデザインは
すらっと等身が高く独特な味わいがあり、そんな味わいと
世界観にすっとのめり込む。

まるで油絵の匂いでもしそうなベタっとした背景の作画が
この作品の世界観をより作り上げており、
そんな世界観をさりげないセリフで視聴者に感じさせる。

街ゆく人の言葉、同僚との会話、流れるニュース。
説明口調で説明するのではなく、自然とこの作品の世界観を説明してくれる
王政であり、13の自治区に別れた国であり、タバコが高級品。
そんな世界で主人公は「ACCA」という国をまとめる組織に
務めているものの、ACCAの監察課は廃止寸前だ。

不正を見ぬくための監察課ではあるものの、
平和な世の中なため必要がないと思われている。
主人公はひょうひょうと無表情で何を考えているかわからない、
常にタバコの煙をくゆらせながら彼は淡々と自らの仕事をする。

平和になっても、人は人だ。必ずそこには欲望がある、
平和だからこそ、そんな欲望は「不正」という形で
この世界にはびこっている。そんな欲望を主人公はさらっとみやぶる。
厄介に思われている主人公と、何かを企んでいる上層部。
街に潜むクーデターの影。

どこか虚無的な主人公のニヒルなセリフとこの作品らしい音楽が
この作品の世界観をより深みのあるものにし、
そこにそっとタバコの匂いすら感じさせる。
ものすごく派手なシーンがあるわけではない、だが、飲み込まれる魅力が
この作品にはある。

1話から登場人物が多く、セリフ量も非常に多い。
一言で言えば「濃い」作品だ。
ドロドロのイタリアンエスプレッソを少しずつ飲み干すように、
ゆっくりとこの作品は始まる。

絡み合う


画像引用元:ACCA13区監察課 2話より
©オノ・ナツメ/SQUARE ENIX・ACCA製作委員会

この作品の人間関係は複雑だ 。
監察課に務める主人公の周りには彼を疎ましく思う上層部や、
彼にお門違いな恨みを持つものの彼の妹に一目惚れするもの、
彼の友人や、同僚など多くの人物が1話で出てくるが、
その人物たちが話が進んでくると掘り下げながら
どういう人物かが描かれていく面白さがある。

この街で、ドーワー王国で生きる彼らの生々しいともいえる
人間らしい生き様があり、そんな彼らの過去と今と未来が
この作品では描かれてると行ってもいい。
複雑に絡み合う人間たちの欲、そんな欲望という生々しいものを
ニヒルにかつ、スタイリッシュに描かれている。

なぜ、この人物がこういう行動をし、こんな表情を浮かべ、
こんなセリフを吐くのか。そういった事情が徐々に描かれていく。
誰がこの平和な国でどんな目的でクーデターを企んでいるのか、
主人公の味方も敵もよくわからず、仲間と思ってた人物ですら
怪しい行動をしており、そんな物語が粛々と進んでいく。

まるで複数の色だけで染められたパズルだ。
どんな絵かまるでわからない、そんなパズルのピースを
1つずつ埋めていく。最後にはどんな絵になるのか、
先の展開が予想できないからこそ面白い。

主人公の行動理念すら見てる側には把握しきれず、
誰が何のために行動しているのかがまるでつかめない。
これほど掴みどころのない作品は珍しく、
会話劇でお互いの腹を探り合うような掴みどころのなさが
面白さの本質にもなっている。

派手なアクションはない、だが、この会話劇の妙は
素晴らしい味わいを生んでいる。

スイーツ


画像引用元:ACCA13区監察課 4話より
©オノ・ナツメ/SQUARE ENIX・ACCA製作委員会

そんな陰謀と欲望渦めく中でもコメディは忘れていない。
キャラクターたちが「人間らしい」からこそ、
彼らは食への本能を抑えきれず、パンやスイーツを楽しんでいる。

13の自治区に別れた国、自治区によっては閉鎖的で
近代的なものを拒んでいる自治区もある。
だからこそ彼らは陰謀をめぐらせつつも、
自分が普段住む自治区では味わえない「食べ物」を望み、
それを心の底から味わっている。

「食」とは快楽の1つだ。
美味しいものを堪能するという行為も人の欲望の1つであり、
自らの欲望を叶えようとする彼らだからこそ食にも貪欲だ。
さりがなく食べている普段の食事、夜にバーで飲むウィスキー、甘いもの。
それぞれのキャラクターの好物がそのキャラクターらしさにもなっている。
食を楽しむ彼らが可愛く感じてしまう。

巻き込まれ体質


画像引用元:ACCA13区監察課 5話より
©オノ・ナツメ/SQUARE ENIX・ACCA製作委員会

色々な自治区で住む彼らの自治区に主人公が毎話訪れながら、
徐々に、徐々に、平和なはずだったこの国の現実を主人公の目線で
視聴者に見せ、同時に「クーデター」の影もちらつく。

友人が実は自分を監視していることを知り、
自分がいつの間にかクーデターの重要な人物にさせられてても、
主人公は決して感情を高ぶらせず、タバコをくゆらせ、冷静に対応する。
本来なら裏切りに怒り心頭してもおかしくはない、
だが、「ジーン・オータス」という主人公は常に飄々としている。

欲望をたぎらせているキャラクターばかりの作品だからこそ、
主人公は自身の欲望を見せない。
いや、むしろ彼はただ「巻き込まれた」だけだ。
何も知らない、知らされていなかった青年がなぜか
クーデターに必要な重要人物として扱われることで物語が進んでいく。

彼が何も知らない、わからないという視聴者と同じ立場だからこそ
主人公と同じ目線で物語を味わうことができる。
クーデーターは誰が何の目的でやるのか。

中盤になると総集編ではないものの、
主人公が自ら今までの流れを軽く振り返ることで、
話についていけてない人も7話の冒頭で改めて追いつくことができる。
この作品はこういう「説明」の見せ方が自然だ。
視聴者に向けた説明ではあるものの、そう感じさせない。

なぜ彼がクーデターに必要な人物とされたのか。
彼の両親がなくなった昔の事件と、彼の両親の出生。
彼の友人はなぜ彼の傍にずっと居たのか。
主人公と王家のつながりが明らかになることで
すべての物語ピースが気持ちよくハマっていく。

思わず「そういうことだったのか」とニヤニヤしながらぼやいてしまう。
30年前から、主人公が生まれる前から続く物語だ。
1クールでそんな壮大な物語がこの作品では描かれる。
過去が明らかになるからこそ今が分かる。

序盤の話の積み重ねが7話、8話で生きてくる。
主人公はパンが好きだ。そんなパンが好きなことでさえ
この作品はきちんと理由がある。
この作品ほど酒とタバコが似合う作品はない。
この作品をつまみにしていい酒が飲める。

まるでウィスキーボンボンのように最初は甘く、
徐々にアルコールの苦味を感じさせ、
そして最後はウィスキーの香りを残すような
そんな味わいの変化を目で味わえる。

緊張感


画像引用元:ACCA13区監察課 9話より
©オノ・ナツメ/SQUARE ENIX・ACCA製作委員会

真実が明らかになったからこそ終盤には緊張感が生まれる。
いつ殺されるかわからない、いつクーデターが起こるかわからない。
そんな中で様々なキャラクターが己の目的のために動く。
決して無駄なキャラクターが居ない、彼ら一人ひとりに意味があり、
そんなキャラクターが終盤で一気に動くことで面白さが佳境を迎える

真実を知ったからこそ動くもの、真実を知らなくとも動くもの。
序盤でサブキャラクターでしか無かったキャラクターの
さりげない活躍がにくく、思わずニヤついてしまう。
あまり有能ではないように思えたキャラクターの
有能すぎる活躍ぶりがたまらない。

傷つくものが現れる中で「もらいタバコのジーン」は
すべての国から煙草を受け取る。
煙草はその自治区がクーデターに参加する意思だ。

王子としての資格を持つ彼にすべての自治区が託す。
クーデターを望み、バカ王子ではなく、主人公が王になることを
皆が望んでいる。
巻き込まれた異質な彼が、決断を迫られる。王になるか否か。

そんな緊張感と緊迫感にまみれているのに
彼の同僚はのんきに恋バナをしてたりする。
この緊張と緩和、シリアスとギャグのバランスが最後まで崩れず、
最終話を迎える。

クーデター


画像引用元:ACCA13区監察課 12話より
©オノ・ナツメ/SQUARE ENIX・ACCA製作委員会

そもそもは「時期の王となる王子」が愚かだからだ。
彼は「ACCA」を廃止し、王室主導の政治を行おうとしていた。
現状が平和な自治区が多いからこそ極端とも言える改革を嫌う
自治区は多く、それゆえに彼を愚かだと思い、
主人公を王に仕立て上げようとしていた。

1クールかけて私達視聴者はそう思わされた。
何も知らなかった主人公がすべてを知り、全てを知ったからこそ
巻き込まれただけ言われただけではなく己の意思で判断し、
作戦を結構する。作戦はシンプルだ。

もし王子が考えを変えたらクーデターの必要はない。
ACCAの必要性、ACCAの意思を伝えることで彼の意思を変える。
彼は愚かだったかもしれない、だが、決して馬鹿ではない。
それは1クールかけて描かれてきたことだ。

クーデターは起きるものだと思っていた。
そういう流れが11話まで描かれていた。
だが、驚くほどあっさりとクーデターは行われず、王子は考えを変える。
視聴者も、そしてすべての計画を考えていた黒幕も
主人公たちに騙される。

綺麗に物語の流れがひっくり返る。
最後まで視聴者は黒幕とともに主人公に騙されていた。
思わず、ニヤついてしまうほど全てが綺麗に丸く収まっている。
まるで少しだけ古い隠れた名作の洋画を見終えたような
そんな余韻を残すエンドロールと
ラストシーンとともに、この作品の幕は降りる。

総評:これほど煙草と酒の似合う作品はない


画像引用元:ACCA13区監察課 12話より
©オノ・ナツメ/SQUARE ENIX・ACCA製作委員会

全体的に見て素晴らしい作品だ。派手な展開やアクションはない。
会話劇で多くのキャラクターたちが腹のさぐりあいをしながら、
徐々に作品全体の謎が紐解かれていきながら最終話へとつながる。
1クールというストーリー構成を見事に生かした展開と、
ニヒルで魅力あふれるキャラクターたちが織りなす物語を
最後のシーンまで味わえる作品だ。

序盤ではこの作品がどういう話なのかがわかりにくい。
だが、話が積み重なることでようやく全貌が見えてくる。
最初は意味のわからなかった主人公がもらう「煙草」、
それぞれのキャラクターたちが好きな食べ物や酒、
1つ1つのことに意味があり、無駄なキャラや要素がない。
無駄のない作品と言える。

それゆえにどこか綺麗すぎるくらいだ。
特に最終話は色々なことがうまく収まりすぎた感はややあり、
驚くほどあっけなく物語が綺麗にまとまってしまう。
その綺麗すぎるまとまり方は賛否が分かれるところかもしれないが、
それを差し置いても会話劇の妙を感じられる作品だ。

やや癖のあるキャラデザであり地味さは否めないものの、
ゆっくりと休日の夜にでもウィスキーとタバコと、
そして甘いスイーツとともに、この作品を嗜んでいただきたい。
きっといい「つまみ」になるはずだ

個人的な感想:酒と煙草と甘いもの


画像引用元:ACCA13区監察課 4話より
©オノ・ナツメ/SQUARE ENIX・ACCA製作委員会

若気の至りから吸って飽きて辞めて、
10年以上吸ってない私がタバコを吸いたくなる、
そんなにアニメだ。

ストーリーもさることながら出てくる料理の数々が
妙に美味しそうで食欲もそそられてしまい、
タバコも吸いたくなり、お酒も飲みたくなる。
もしかしたら人を駄目にするアニメかもしれない(笑)

「」は面白い?つまらない?

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  1. BIG-Oは神アニメ より:

    ACCAを見ると眞子さまと圭君を思い出す。2人には子供が生まれる。彼らを描いたのがACCAという作品。