評価 ★★★☆☆(57点) 全10分
あらすじ オオカミに食べられてしまった子ヤギ達を胃袋から助け出すお母さんヤギ。しかし、長男のトルクだけが見つからない!引用- Wikipedia
人間は愚かだ
本作品は最近話題の「PUIPUIモルカー」を
手掛ける見里朝希氏による短編作品。
2/28日まで無料配信中(要会員登録)
https://sst-online.jp/theater/9511/
ストップモーション
画像引用元:マイリトルゴート公式サイトより
©Tomoki MISATO / Tokyo University of the Arts
開始1分で動きの滑らかさに驚かされる。
この作品はいわゆる「ストップモーション」アニメだ。
ストップモーションアニメというのを知らない方に説明すると、
フィギュアや物、作品によっては「粘土」でできたものなどを
少しずつ動かし、それを1枚1枚撮影していき繋げる事でアニメにしている。
この作品の場合はフェルトでできた人形を使い、
1秒間に24枚撮影することでなめらかな動きを再現している。
最近では「リラックマとカオルさん」がこの手法を使っていたが、
この作品は個人制作の作品だ。
たった一人でこんな気の遠くなるほど細かい作業をやっていることを
想像するだけで目眩がしそうだ(笑)
動きだけでなく「表情」の変化も素晴らしい。
特に「目」の動きはキャラクターの心理描写そのものであり、
時に動揺、時に恐怖、時に焦り。
そういった「負の感情」を目で表している。
囚われた人間
画像引用元:マイリトルゴート公式サイトより
©Tomoki MISATO / Tokyo University of the Arts
この作品はグリム童話の「オオカミと7匹の子ヤギ」を元にしている。
狼に食べられた7匹の子ヤギ、母ヤギはそんな子ヤギを助けるために
狼の腹をかっさばいたが「6匹の子ヤギ」しか見当たらない。
母ヤギは7匹目の子ヤギである「トルク」を探すうちに、
一人の人間を「トルク」と勘違いし家に連れ去ってしまう。
食べられた子ヤギたちはところどころ胃液で溶けており、
彼らを哀れんだ子供は自分の着ている服を一人の子ヤギにかぶせてあげる。
そんな彼の体には「傷」がある。そこへ狼がやってくる。
狼は彼の「父親」であり、彼を傷つけた本人だ。
これは果たして現実なのか夢なのか。
狼へと変わる少年の父と、そんな父親という狼に歯向かう6人のヤギたち。
少年は子ヤギと母ヤギの助けもあり、父親という狼を倒す。
だが、少年は二度と家から出ることは出来ない。
考察
画像引用元:マイリトルゴート公式サイトより
©Tomoki MISATO / Tokyo University of the Arts
様々な比喩表現を感じ、色々な考察ができる。
もしかしたら虐待を受けている少年の深層心理の世界なのかもしれない。
もしかしたら擬人化された動物が存在する世界で、
少年は本当にヤギ達に助けられ、囚われたのかもしれない。
どちらとも判断できる。
狼に変貌する父親、ラストの何かを捜索しているかのようなヘリの音。
現実と夢、もしくはその「狭間」を感じさせる世界観の描写は
独特な雰囲気を醸し出しており、
その雰囲気が這い寄るようなゾクゾクとした怖さを生み出している。
主人公の少年は命という意味では助かっている。
虐待からも逃れることが出来ている。
そういった意味ではハッピーエンドとしてみることもできる。
だが、「居なくなった子ヤギ」と勘違いして母ヤギに囚われたままだ。
父の虐待から逃れた少年は、過保護という名の虐待にまたとらわれる。
そういった意味ではバッドエンドにも見えてしまう。
この、なんとも消化できないストーリーは独特な後味の悪さを生み出し、
1度見たら強烈な印象の残ってしまう作品だ。
総評:これがモルカーを生み出しもの…
画像引用元:マイリトルゴート公式サイトより
©Tomoki MISATO / Tokyo University of the Arts
全体的に見て、面白いor面白くないという感情ではなく、
センセーショナルな作品というのが1番わかりやすいかもしれない。
「フェルトの人形」という本来なら可愛さしか感じないものが
「狂気」を孕んだキャラクターとして描かれており、
可愛いはずなのに残酷な描写の数々にゾワッとしたものを感じてしまう。
虐待の描写から「性的虐待」を匂わせるシーンも有る。
CGや普通の作画のように生々しさやリアルな描写ではなく、
フェルト人形なのに目を背けたくなりそうなほど残酷な描写が多い。
そんな残酷な描写をフェルト人形で魅せることによって
この作品の独特な世界観と空気感が作られており、
たった10分ほどの作品ではあるものの、
1度見ると忘れられない強烈な印象の残る作品だった。
個人的な感想:気軽な気持ちで
画像引用元:マイリトルゴート公式サイトより
©Tomoki MISATO / Tokyo University of the Arts
PUIPUIモルカーも話題で、同じ監督の作品で無料で見れるからと
気軽に見たらとんでもない作品だった(笑)
とてもじゃないがお子様に見せていい作品ではなく、
大人が見ても、かなりショッキングな内容だ。
ただ、1度この作品を見てしまうと思わず色々と考えてしまう。
何気ないシーンの描写、母ヤギは手にしたもの、
冒頭のシーンの回想に見えるが実は違う石を詰めるシーンと
浮かび上がる靴。
たった10分な作品なだけに繰り返し見れてしまう手軽さがあり、
2度、3度みると「気づく」部分があり、
それに気づくたびにぞわっとしたものと作品に仕掛けられた要素に
驚いてしまう作品だった。
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