評価 (75点) 全117分
あらすじ 蝶屋敷での修業を終えた炭治郎たちは、短期間のうちに40人以上もの人が行方不明になっているという無限列車に到着する。引用- Wikipedia
もう一人の長男の物語
本作品は「鬼滅の刃」の劇場アニメ作品。
監督や制作会社に変更はなく、TVアニメの続きとなっている。
葉っぱ
画像引用元:劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 予告編より
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
冒頭、「お館様」が鬼殺隊の墓参りをしているシーンから始まる。
何気ないシーン、カメラの端に映る「葉っぱ」の動きに思わず目を奪われる。
そんな葉っぱを繊細に描かなくても、風にたゆたってる葉の動きをなめらかに
動かす必要など本来は一切ない。
だが、この作品はそんな葉っぱの動きでさえこだわりを感じる。
思わず画面の中央より、画面の端にある葉っぱの動きに、葉の描写に目を奪われる。
制作の「Ufotable」がTVアニメ以上にこの作品を作り上げている、
作画に関して一切の妥協をしていない、葉の動きでさえこだわる余裕すら見せる
作画力の高さを冒頭わずか1分足らずで感じられる。
ストーリー的には完全にTVアニメの続きだ。
ジャンプ原作のアニメの場合、基本的にはTVアニメの続きはやらずに
「劇場版オリジナルストーリー」をやることが多いが、
この作品は完璧な続編となっている。
キャラクター紹介、これまでのあらすじと行ったものは一切なく、
あくまで原作、もしくはTVアニメを見ている人前提の作品になっている。
非常に割り切った作りではあるものの、これだけ人気のある作品であり、
映画からの「新規層」を無視したからこそ、あらすじやキャラ紹介をなくし、
スッキリとしたストーリー構成になってると言えるかもしれない。
炎柱・煉獄杏寿郎
画像引用元:劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 予告編より
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
今作における、もうひとりの主人公と言ってもいいのが彼だ。
「柱」の一人であり、TVアニメでも出てきてはいたものの、
キャラクターの掘り下げ、印象づけはまだ浅いキャラクターだった。
そんな彼の印象をつけるのが「声のデカさ」だ(笑)
炭治郎たちが乗り込んだ列車で彼を探していると声が聞こえてくる。「ウマイ」と。
思わず見ているこちら側も「うるせぇ」と思ってしまうほどのバカでかい声、
劇場のスピーカーだと「微振動」も感じるくらいの声のデカさだ。
TVアニメではここまで極端な音量の大きさにはなっていなかった。
劇場版になり、彼のキャラ付けをするためにあえて
他のキャラと比較して3倍位の音量にすることで「炎柱・煉獄杏寿郎」という
キャラの印象を強烈に植え付けられる。
何処を見てるのかわからない視線、目の怖さ、しかし、炭治郎達と話すときは
何処か優しさを感じるキャラクターだ。
主人公である炭治郎より強く、圧倒的な存在。
そんな存在を見せつけられるのが戦闘シーンだ。
狭い車内、そんな車内に現れる鬼。そんな鬼に対しての一刀。
何度も斬りかかるのではなく、たった1度の攻撃で鬼を殺す。
「炎の呼吸」、文字通りの炎のエフェクトは見ているだけで心をたぎらせ、
そんなエフェクトがなめらかに動き、技に変わる。
この「エフェクト」の描写はTVシリーズにもあったものの、
劇場版ということで更に繊細に描かれている。
スクリーンを意識した大きな動き、ただ見せるだけではなく、カメラワークと
意味のある「スロー」演出をすることで一瞬の動きをしゃぶり尽くすように
見せることで、一気に「炎の呼吸」のかっこよさに心を奪われる。
印象付けられたキャラのかっこいい技を見せることで、
この作品のもうひとりの主人公である彼の掘り下げと
キャラ付けをし、際立たせている。
魘夢
画像引用元:劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 予告編より
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
今回の鬼は強敵だ。いつも強敵ではあるものの、いつもの鬼とは手段が違う。
彼は眠らせて夢を見せる。幸せな、自分が望む理想の世界で幸せな夢を見れる。
そんな幸福な世界を見せた後に絶望するような世界を見せ、
その「顔」を好むのが彼だ。そこを食らう眠り鬼、なんとも鬼畜で
サディステックな鬼だ。
炭治郎たちも、煉獄杏寿郎でさえ、彼の夢の術にかかってしまう。
炭治郎は妹以外のすべてを失った少年だ。失ったからこそ今があり、
今もなお彼は戦っている。しかし、夢の中で失った全てをもう1度味わえてしまう。
亡くなった弟たち、母、父、鬼殺隊ではない「炭焼き」の竈門炭治郎。
これは夢だとわかっていても抗えない。
本当ならずっとこのままここで暮らしていたい。
夢が現実で、現実が夢であればいいとさえ思ってしまう。
だが「竈門炭治郎」というキャラクターは紛れもなく主人公だ。
過去を振り返らず、過去にしがみつかず、過去にとらわれない。
戻ることは出来ないとわかってるからこそ前に踏み出す。
決してウジウジと悩んだりしない。救えなかったことを謝りつつも
彼が夢から醒める流れは思わず涙腺を刺激されてしまう。
そんな幸せすぎる夢を見せる鬼だからこそ、明確に彼は怒りをぶつける。
時には「鬼」に対して慈愛の心すら見せていた彼が、
「鬼舞辻無惨」以外に明確な怒りを見せるような存在だ。
「人の心の中に土足で踏み入るな」
竈門炭治郎
画像引用元:劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 予告編より
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
仲間が眠っている中で彼一人が魘夢に挑む。
魘夢は何度も何度も炭治郎を眠らせようとするが、そのたびに彼は夢の中で
「己を殺す」ことで目を覚ます。明確な魘夢への怒り、自分の家族を
陥れた魘夢という存在は鬼舞辻無惨と同様に許されざる存在だ。
戦闘シーンの中で主人公の自決シーンが流れる作品などこの作品くらいだろう(笑)
魘夢との戦闘シーンが本格的になってくると魘夢は
「触手」のようなもので攻撃してくる。もはや鬼ってなんだっけ?と思うほどの
異型な姿、そんな異型な姿の存在に対して繰り出される水の呼吸、
洗練された水の呼吸のエフェクトは劇場スクリーンで見劣りすることなど一切なく、
流れるような戦闘シーンに見てるこちら側が呼吸を忘れてしまいそうになるほどだ。
戦いが進むに連れ、仲間も目を覚ましていく。
そんな仲間も協力して戦うシーンはゾクゾクするようなエフェクトの嵐と
考え込まれたアクションにより練り込まれている。
仲間と協力して敵を倒す。
努力、友情、勝利のジャンプ三大原則を
しっかりとこの作品でも味わう事ができる。
「上弦の参」猗窩座
画像引用元:劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 予告編より
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
しかし、容赦がないのがこの作品だ。必死に戦い掴んだ勝利。
炭治郎は動くこともままならぬほどだ。
そんな彼らの目の前に「上弦の参 猗窩座」が現れる。
死闘のあとに更に死闘だ、この作品は容赦がなく無慈悲だ。
下弦の敵に苦戦していたのに柱でも勝てるかどうかわからない上弦が現れる。
相対するのは「炎柱・煉獄杏寿郎」だ。
竈門炭治郎はこの瞬間から、この作品において少しの間、主人公ではなくなる。
終盤の主人公は間違いなく、紛れもなく「煉獄杏寿郎」だ。
刀と拳、ロックなエレキなBGMが流れる曲とともに戦いの幕が上がる。
猗窩座はわかりやすい戦闘狂だ。強さを求めて鬼になった存在であり、
そんな強さを求めているからこそ「煉獄杏寿郎」を鬼に誘う。
鬼の再生する体と再生しない人の体。
それを見せつけられるような戦闘シーンの描写は息をつく暇がない。
腕がとんでもすぐに再生し、削り合うような戦闘シーンの中で
徐々に煉獄杏寿郎は追い詰められていく。
長男
画像引用元:劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 予告編より
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
「煉獄杏寿郎」も「竈門炭治郎」と同じく長男だ。
幼い頃には母をなくし、小さな弟と、柱の父と暮らしていた。
しかし父は唐突に柱をやめ、彼が柱になっても彼を認めなかった。
それでも小さな弟の目標に慣れるように、母の言葉を胸に刻み、
彼はここまで戦い抜いてきた。
彼が戦う理由はシンプルだ。「誰かを守るため」に戦っている。
強いものとして、強く慣れる存在として、それが彼の存在意義だ。
「強い者は人を救う宿命を背負うべき」
亡くなる前に母に言われた言葉を胸にいだき、彼は生きてきた。
長男として弟を守り、柱として若い芽を守り、鬼殺隊として鬼から人を守ってきた。
彼は強さを求めてた戦ってきたのではない。
誰かを守るために戦ってきた。だからこそ強い。
強さのための強さではないからこそ鬼の誘いは決して受けない
例え左目を潰されようとも、例え腹に穴を開けられようとも、
彼は最後の一瞬まで諦めず、最後の一瞬まで誰かを守ろとうした。
鬼を殺すのが彼の戦いではない、「守る」のが彼の戦いだ。
彼が放った奥義は痺れるほどかっこいい。
彼は守った。彼は戦いに勝った。
炭治郎が自分たちを守ってくれた彼の勝利を必死に泣き叫び、
鬼に言い放つ様はこの作品の最大の見せ場かもしれない。
終盤の20分、本当に息をするのを忘れるほどの戦闘シーンと
「煉獄杏寿郎」という一人の男の物語を見せてくれた。
総評:息もつかせぬ映画
画像引用元:劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 予告編より
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
全体的に見て素晴らしい完成度だ。
TVアニメ、もしくは原作を読んでいることが前提になっているものの、
きちんと「続編」としてファンの期待に沿うような内容になっており、
期待通り、いや、期待以上のものを見せてくれたと感じられる作品だ。
後押ししているのはアニメーション部分のできの良さだけではない。
「声優」の演技もこの作品には欠かせない。
魘夢を演じる平川大輔さんの演技は魘夢というキャラの蠱惑的な魅力を引き出し、
猗窩座を演じる石田彰さんの演技はもはや流石としか言いようがない圧倒感、
そして逃げる際の小物感は石田彰さんだからこその演技だ(笑)
「煉獄杏寿郎」を演じる日野聡さん。大声でも不快感がなく、
まっすぐで貫き通し幼な芯の強さのある声と「技名」を叫ぶ瞬間の
ぶれない演技があるからこそ「煉獄杏寿郎」の強さをより深く感じられる。
鬼や柱をベテランともいえる声優陣が演じるからこそ、
この作品のキャラクターの魅力もより深まり、より物語に入り込める。
もちろんストーリー的にはまだ続く感じではあるものの、
1本の映画として、「煉獄杏寿郎」の物語として
しっかりと見応えのある作品だった。
個人的な感想:石田彰
画像引用元:劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 予告編より
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
やっぱり流石である(笑)
キャラクターの掘り下げとしてはやや薄い猗窩座というキャラの
強敵感を見事に演じており、彼が出てきた瞬間にテンションが上ってしまった。
泣いたという感想も多く見かけるものの、私も確かにウルっとした部分は
何箇所かあったのだが、私が泣く前に3つとなりくらいの席のお姉さんが
嗚咽まみれで大号泣しており、そちらにやや意識を持ってかれてしまい
私の涙は引っ込んでしまった(笑)
鬼滅の刃が好きならば、間違いなく楽しめる作品だ。
そして「劇場」で是非見てほしい作品だ。作画のクォリティの高さ、
煉獄さんのくそデカボイスをぜひ劇場で味わってほしい。
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鬼滅の刃のアニメ初めて観たけど自分も割りとこのくらいの点数
なんか思った程 映画の割りに作画凄まじくなかったのと常に誰か所狭しと
喋ってるから正直余韻が無かったと言うか