評価 ★★★★☆(70点) 全12話
あらすじ クラエス公爵家の一人娘であるカタリナ・クラエスは、両親に甘やかされて育ったせいで高慢で我侭な性格になっていたが、8歳の時に父に連れられて城に出向いたところ、転んで石に頭をぶつけてしまう。引用- Wikipedia
誰よりも主人公な悪役
原作は「小説家になろう」で連載していたライトノベル。
監督は井上圭介、製作はSILVER LINK.
思い…出した!
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…1話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
この作品の主人公である「カタリナ」は高慢、そんな言葉が似合うようなお嬢様だ。
甘やかされ優雅な暮らしをしているお嬢様、
そんな彼女が「頭をぶつける」ことで前世の記憶を思い出す。
オタクだった自分、乙女ゲームを楽しんでいて17歳で死んだ自分の記憶だ。
「小説家になろう」という媒体で転生したりする事はしょっちゅうだ。
しかし、この作品の面白いところは転生ではあるものの、
最初から前世の記憶を持ったまま転生するのではなく、
「8歳」になっていきなり前世の記憶を思い出す。
幼少期から俺つえーの限りを尽くし、
チートの乱舞を繰り出すなろう主人公とは違い
この作品の主人公は決して能力的なチート要素はない。
チートと呼べる部分は1つだ。自分の運命を知っている。
「悪役令嬢である自分」が破滅する未来だ(笑)
転生してしまった世界はなぜか前世の自分がプレイしていたゲームの世界であり、
そんなゲームの世界の主人公ではなく、悪役の令嬢としてなぜか転生する。
彼女は自分が転生したキャラの末路を知っている。
ルートによる違いはあるものの国外追放、もしくは死刑だ。
なぜ転生してしまったかはわからない。だが、このままでは破滅だ。
1話の冒頭でこの作品の方向性がしっかりと見える。非常にシンプルだ。
「破滅フラグ」の回避だ(笑)
1の時点で主人公がやるべきこと、目的がしっかりと見えるのと同時に
物語に対する期待感をぐっと湧き上がらせてくれる。
脳内会議
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…1話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
彼女は脳内でいろいろな自分と会議をする。
ときには前向きに、ときには弱気に、ときには真面目に。
自分がプレイし尽くしたゲームだからこそキャラクターの性格やバックボーンも
ストーリーも知り尽くしており、だからこそ破滅フラグを
どうすれば回避できるのかということを話し合う。
前世のように17歳で終わらせたくはない。天珠を全うしたい。
そんな彼女の願いがあるからこそ、彼女はなんとか破滅フラグを
回避するために行動をする。彼女が転生してしまった令嬢はゲームで言えば悪役だ。
プレイヤーにも色々なキャラにも「嫌われる」敵役だ。
しかし、それはあくまでもゲーム内で決められたセリフと行動だ。
本来はゲームの主人公と「恋」に落ちる予定のキャラを、
「カタリナ」が行動をすることによって変えようとする。
孤独な幼少期を過ごして未来で主人公と出会い本当の恋を知るキャラならば、
孤独な幼少期を過ごさせなければいい(笑)
あくまでも「前向き」に行動力あふれ感情豊かにフラグを回避しようとする
「カタリナ」が本当に可愛らしく、あんまり頭が良くないからこそ
ある意味で場当たり的な行動や、意図しない行動をしてしまうことも多く、
打算的に動いているようで感情的な彼女の行動やセリフ、
それが彼女自身の魅力にも繋がり見ている側に予期させないストーリーにも繋がる。
破滅フラグを回避するため。
そんな打算的な行動のはずなのに彼女は真摯に人と接する。
だからこそ多くのキャラクターが彼女を愛してくれる。
彼女は全く気づかないまま、彼女に好意を寄せるキャラクターばかりだ。
破滅を回避せよ
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…2話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
カタリナは全く意図せずにゲーム内の台詞を使ってしまったりする。
本来はライバルヒロインが王子に言われる、いわゆる「落ちる」セリフを
ついつい使ってしまう。
本来は王子が庭を褒めて、王子がライバルヒロインの手を褒めるはずだった。
だが、カタリナが全部それを先にやってしまう。
男性キャラクターに惚れる前に「カタリナ」のほうの好感度が高くなってしまう。
乙女ゲームやギャルゲーにおいてハーレムルートがない限りは
「全キャラの好感度をあげる」というのは悪手だ。
好感度をあげてしまったがゆえに別のキャラの好感度が下がる原因にもなる。
まるで絶妙なバランスで作られた乙女ゲームのように
キャラクター同士の関係性がカタリナの行動によって変化していく。
本来はゲームでは交流すらなかったキャラとの縁が生まれ、
その縁のせいで別のフラグがたってしまう。
「破滅フラグ」というバッドエンドを回避するためという目的はあるものの、
決してシリアスにはならずにコメディタッチで描かれるストーリーに
クスクスと笑いつつ、キャラクターの可愛らしさを味わえる。
「カタリナ」もゲームの内容を覚えてはいるものの、
細かい部分を忘れがちだったり、そもそもプレイしていない「ルート」もある。
完璧にゲームを覚えていてミスがないように破滅フラグを回避するのではなく、
むしろミスだらけと言っても良いカタリナの行動がコミカルで面白い。
彼女はまっすぐだ。美味しいものがあればお行儀が悪くても
パクパクと食べまくり、仲良くなりたい、友だちになりたいと思えば
自身の破滅フラグなんて関係なく真っ直ぐに接する。
カタリナだけでなく、彼女の周囲のキャラも嫌味がない。
それぞれが自分の立場や見た目や生い立ちに悩んだりしていることはあるものの、
一人ひとりがしっかりと魅力的でキャラ立ちしている。
ストレスになるような展開もなく、サクサクとした小気味よいテンポで進む。
そして幼少期時代が終わり、15歳になる。
破滅フラグを回避するために好感度をあげ、キャラ同士の関係性を円滑にし、
キャラを孤独にさせず、ついでに万が一、国外追放されても大丈夫なように
スキルを磨きつつ成長する。多くの男性の心を
幼少期の頃から射止めてしまってる事を全く気づかないままに(笑)
別の意味で破滅しそうな未来を予感させつつ、
ついにゲームのスタートラインまで時系列が進む。下準備はバッチリだ。
変化
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…4話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
カタリナが幼少期に介入したせいでゲームのキャラクターたちの性格や
考えもだいぶ変化している。本来は孤独だったキャラが孤独ではなく、
兄との対立もなく、本来はゲームの主人公に惚れるはずだった彼らが
もれなく「カタリナ」に惚れている状況だ。
だからこそ本来の「主人公」が現れても彼らは一切なびかない。
カタリナが破滅フラグを回避しようとした結果、
主人公の恋愛フラグが潰れている。しかし、カタリナはそれに一切気づいていない。
中盤の段階で本来のゲームシナリオの破滅フラグは回避しているように見えるのだが
ゲームシナリオという「運命」が主人公とのフラグを立てようとイベントが起こす。
ゲームとは形は違うしキャラクターの反応も違う。
しかし、まるで収束される運命のごとくイベントは起きる。
そんなイベントに主人公は不安がりつつも作戦を立てるが、
的はずれな作戦ばかりだ。それが幼少期時代のようなコミカルさを維持させつつ、
同時に大人になったからこその恋愛事情も本格的になっていく。
婚約者としてカタリナを誘うもの、義理の弟として姉を思うもの、
兄の婚約者とはわかっているが好意を抱くもの、妹の友達して思うもの。
ゲームの主人公が攻略するはずだった彼らは「カタリナ」に首ったけだ(笑)
ことごとく潰れている恋愛フラグ、それでも起る運命という名のゲームイベント、
回避しているようだが違う破滅が起きそうな状況に
先のストーリーがシンプルに気になる。
カタリナという主人公が魅力的で裏がなく自分の気持ちに正直なキャラだからこそ
彼女に惚れるヒロインや男性キャラクターたちの気持ちがわかる。
ある意味で天性とも言える無自覚な人たらしである彼女は
「ゲームの主人公」でさえも惚れさせる(笑)
乙女ゲームなのに百合ルートを開拓しているのでは?と思うほどの攻略っぷりだ。
意図的に破滅フラグを回避し、意図的に恋愛フラグをつぶしているわけではない。
頭脳派ではない肉体派ともいえる主人公の行動がこの作品の面白さを
作り上げている。
イベント横取り
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…6話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
中盤からはゲーム本編に入るためイベントが次々と起る。
例え主人公が男性キャラの好感度を勝ち取っていても、
まるで運命のように必ずイベントは起る。しかし、それに気づくのは後からだ。
本来は男性キャラとゲームの主人公のイベントのはずなのに、
そのイベントが「カタリナ」と「ゲームの主人公」で起きてしまう。
しかし、それがいい結果につながる。
ゲームの主人公である「マリア」の過去、過去があり今があり、
そんな今にカタリナが向き合い、素直に接することでマリアも救われる。
カタリナと関わることで多くのキャラクターが救われている。
だからこそ、みんなが彼女を好きになる。
それはメインキャラだけではない。
本来のゲームではほとんどスポットが当たらないようなサブキャラや
モブキャラも、カタリナが真っ直ぐに接するからこそ明るく変化している。
ゲームの世界に転生してしまったということはカタリナ自身は分かっている。
だが、だからといって彼女は周囲のキャラクターを
「ゲームのキャラ」とは認識せず一人の人間として接している。
本来のゲームシナリオではある意味で彼らは操り人形だ。
しかし、そんな運命という名の糸をカタリナは意図せず切り落とす。
カタリナという本来は悪役であり敵役の存在が、悪役でなく敵役ではない
ゲームシナリオとは違った行動をするからこそ彼らもまた自由になる。
本来は決められた運命だ。男性キャラが好きになる相手は「マリア」であり、
カタリナは憎まれる相手だ。しかし、そんな運命を変えてしまった。
ゲームシナリオという決められたレールから、カタリナが解き放つことで
彼らが自由になり、そんな自由にしてくれた存在に自由に好意を抱く。
男性キャラも女性キャラも関係ない、逆ハーレムになろうと関係ない。
全キャラが自由に自らの意思で「カタリナ」という主人公を好きになっている。
その関係性が微笑ましく、カタリナを取り合うさまが可愛らしい。
ダンジョン
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…7話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
ただ、なぜかいきなり中盤でダンジョン攻略をしだす。
基本的に1話1話で変に話を引き伸ばさずにテンポよくストーリーが進んでいたが
7話で「あれ?」と思うほどテンポが悪くなり、
しかも、なろう原作アニメらしいダンジョン攻略なんかをやりだしてしまう。
それが特に面白いわけでもない。
キャラクター同士のワチャワチャはあるものの、この話は果たして必要なのか?
と思うほど本筋からそれてしまう。ダンジョン攻略したり、本の中に入ったり、
ちょっと展開が唐突であり違和感の感じるストーリー展開だ。
調べた所、この7話と8話の展開はアニメオリジナル展開らしい。
それがアニオリであることは納得してしまうほど違和感のあるストーリーだ。
せっかくテンポよくストーリーが進んでいるのに、
そのテンポが中盤で1度崩れてしまうのはややもったいない。
恐らく制作サイドとしては改めてメインキャラを均等に出し、
やや出番の少なかったアランを際立てようとしたのはわかるものの、
本筋から明らかにそれてしまう感じが強くでてしまっているのは残念だ。
一人の人間に
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…9話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
9話でカタリナの「メイド」の視点で改めてメインキャラを掘り下げる。
ずっと使えてるメイドだからこそ、カタリナの事も彼女の周囲のことも
よく分かっている。客観的にある意味、視聴者と同じ立場で
彼女たちを見守るメイドのストーリーはこの作品らしいキャラ描写を
改めて見せてくれる。
9話が面白かったがゆえに7話と8話の違和感が際立ってしまっている。
本来、ゲームではモブキャラでしかなかったメイドさえも
カタリナのあるがままの姿、あるがままの好意に救われてる。
彼女のおかげでモブキャラでさえ運命が変わる。
いや、ゲームシナリオという呪縛から解き放たれる。
「カタリナ様は私をアン・シェリーという1人の人間にしてくれた」
そんな彼女のセリフはこの作品の芯、そのものだ。
ゲームキャラでしかなかったはずの彼らが一人の人間になる。
自由と解放の物語だ。
しかし、そんな自由と解放とは裏腹にカタリナは運命という名の
破滅フラグに抗えない。
断罪イベント
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…10話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
どれだけキャラの好感度や性格や運命が変わっていても、
ゲームのイベントは違った形で必ず起る。ゲームシナリオの強制力だ。
しかし、彼女はそんなフラグを回避するために運命を変えてきた。
だからこそ起きるはずもないことが起きる。
本来は居なくなるはずのない主人公が居なくなり、
破滅フラグよりも最悪なバッドエンドへのルートが開かれてしまう。
巧みなストーリー展開だ。
視聴者としては明らかにカタリナの破滅フラグは回避しているように見える。
断罪されるようなことも、ゲームの主人公の邪魔をしてあげくに殺されるような
恨みを買うことなんてしていない。むしろ逆とも言える状況だ。
だが、そんな状況になってしまったからこそ、カタリナが主人公だからこそ
本来は恨みを買うはずのない人物から恨みを買ってしまい、
それが最悪なバッドエンドのルートへとつながってしまう。
愛
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…11話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
眠り続ける主人公の前に多くのキャラが訪れる。
眠り続けどうすることもできない自分の無力さを噛み締めつ、
彼らは自分自身のカタリナの思いを強く自覚する。
カタリナが居たからこそ彼らは変われた。強くなれた。
大嫌いだった自分を好きになれた。誰よりも彼女は主人公だ。
一人ひとりに彼女は真剣に向き合った。
向き合ったからこその今だ。ゲームのキャラではなく、
キースとしてアランとしてジオルドとして
メアリとしてニコルとしてソフィアとして。彼女は一人の人間として、
「カタリナ」という一人の人間として接した。
だからこそ彼女は愛されている。そんな彼女を失いたくない。
そばにいたい。どこへも行ってほしくない。
カタリナの「死」を予感させるからこそ彼らは強く自分の中の
カタリナへの愛を自覚する。
誰もが彼女のそばを離れない。そんな姿に涙を誘われてしまう。
悪い魔法使いに眠らされ、愛で目覚める。
そんな古臭いともいえる絵本のような展開をこの作品は見せてくれる。
ハッピーエンド
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…12話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
ただのゲームのキャラではない、一人の人間として接したからこそ
カタリナも自分の破滅だけでなくみんなのハッピーエンドを望んでいる。
1万9800回の脳内会議を経て彼女は運命の日にたどりつく。
ゲームでは起こり得なかったイベントが起る、いや、それはもはや
イベントと言うものではない。彼女たちの日常だ。
本来は攻略対象でなかった悪役令嬢が主人公の攻略対象になる(笑)
ゲームのシナリオを超えて、ゲームのシナリオという運命を彼女は打ち破り、
誰も知らない物語へ幕が開ける。
気持ちのいいラストと2期への期待感を抱かせつつ、1クールが終わる。
総評:かかってこい破滅フラグ!
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…8話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
全体的に見て愛すべきキャラクターと素晴らしいストーリーのある作品だった。
異世界に転生するという「なろう」ではありきたりな要素をうまく使い、
ゲームのシナリオという運命に抗うという作品の方向性を見せつつ、
そんな抗う主人公が知略を巡らせるのではなくどこか行き当たりばったりで
コミカルでまっすぐな彼女の魅力がこの作品の芯にある。
だからこそ、そんな彼女に惚れるメインキャラクターたちの気持ちがわかる。
幼少期から自分にまっすぐに接してくれて受け止めてくれる彼女の存在は、
男も女も関係なく惚れてしまう。それは本来のゲームの主人公でさえもだ。
最悪なバッドエンドの敵でさえ彼女に惚れてしまう。
そんな主人公の魅力がきちんとあり、見てる側もカタリナに惚れてしまう。
いい意味で変わらない「カタリナ」という主人公が破滅フラグを回避する。
ストーリー自体はシンプルなのに、そんなシンプルなストーリーを上手く見せ、
予想できるようで予想できないストーリー展開が心地よく、
気持ちのいいラストを迎えてくれる。
気になるところといえば作画が決して良いとは言えない所と
そもそもなぜゲームの世界に転生してしまったのか?という部分だ。
綺麗に終わっているだけに、ここから2期でどんなストーリーを
展開するのかも本当に予想できず、色々な意味で2期を期待したい作品だ。
個人的な感想:みんなかわいい
画像引用元:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…9話より
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
とにかくキャラがみんな本当に可愛らしかった。
幼少期からストーリーが始まってるせいもあるのだろうが、
成長してカタリナに恋している彼and彼女たちが本当に可愛らしく、
嫌悪感を抱くようなキャラクターがまるでいない。
変にストレスを与えるようなストーリーやキャラもおらず、
それなのにきちんとストーリーが面白い。
1クールで本当に話がようまとまっており、
2期がどうなるのか気になる所だ。
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください