評価 ★★★☆☆(42点) 全24話
あらすじ 舞台は壁とゲートで東西に分かたれた新宿區、イーストサイドの歌舞伎町。引用- Wikipedia
おあとがよろしくない。
本作品はproductionIGとKADOKAWAによるオリジナルアニメ作品。
監督は吉村愛。
歌舞伎町のシャーロック
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 1話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
この作品はタイトルでも分かる通り「歌舞伎町」を舞台にした作品だ。
法医解剖医であるワトソンが自分の近辺で起こる不思議な出来事の
操作を依頼すべく、歌舞伎町に訪れ「BARパイプキャット」に居る
オネエのハドソン夫人と出会う所から物語が始まる。
「シャーロック・ホームズ」を下地にした作品は実写やアニメに関わらず、
かなりの作品が作られている。
女性のシャーロックホームズだったり、舞台が現代だったり、様々だ。
ただ、そんな様々なシャーロック・ホームズ作品の中で
「ハドソン夫人」がオネエというのはなかなかに珍しい(笑)
「BARパイプキャット」には様々な探偵が集っており、
シャーロック・ホームズもその一人であり、
事件はランク付けされ、解決すると報奨金が出る仕組みになっている。
犯人を捕まえた最初の探偵に賞金が出るレース方式になっており、
様々な癖の有る探偵が事件を解決しようと躍起になる。
ゴチャゴチャ
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 1話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
ただ、1話からキャラクターが異常なまでに多い。
大量のくせのある探偵、「BARパイプキャット」に集まる客や店員など
名前を一切覚える余裕がないほどに大量のキャラが1話からひしめき合う。
ワトソンがホームズのもとにやってくるというSH系作品では
ベタな始まりにも関わらず、きちんとした「出会い」を描かず、
なんだかバタバタしたまま始まり、なし崩し的に事件の捜査を行う。
ワトソンが持ってきた依頼は何なのか、なぜホームズに依頼しようと思ったのか。
そういう1話で大事な「導入」がやや雑であり、
大量のキャラをゴチャゴチャ出すことで散らかってしまっており、
いろいろな要素を1話から出しすぎてしまっている感じが強い。
もっと丁寧に一人一人の探偵を出せばいいのに、一気に出してしまうのは
キャラの印象を薄めてしまうだけでもったいない。
落語
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 1話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
この作品の癖の強さは凄い。なにせ探偵であるシャーロック・ホームズは
推理を「落語」という形でわざわざ披露する。
一人で役を演じながら対話しながら落語という形で披露する。
うまいこと「有名な落語」に推理を重ね合わせているなら面白さが有るが、
ただ落語な口調で推理を披露しているだけであり、
1話の段階ではこの突拍子もない落語推理をどう受け止めていいかわからない。
彼は桃缶をチャーハンにぶっかけて食うような変人だ。
ただ「変人」を演出しようとして無理やりしている感じも否めず、
色々と制作側のやりたいことをキャラクターに盛り込みすぎてて、
話の中でそれをうまいことキャラの魅力として消化しきれていない。
落語で推理を披露するチャーハンに桃缶をかけるようなシャーロック。
たしかに面白そうな要素では有るが、1話の時点でそれが
キャラクターの魅力としてごちゃごちゃしすぎて伝わらない。
パスティーシュ
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 1話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
この作品は一言で言えば「シャーロック・パスティーシュ」の1つだ。
起こる事件は基本的にシャーロック・ホームズで描かれていた事件を
下地にしており、1話は「緋色の研究」、2話は「赤毛同盟」と
シャーロック・ホームズという作品を読んだことが有る人ならば
間違いなく知ってる話を下地にしている。
それゆえに話自体は読みやすいうえにしっかりとした基盤がある。
なにせ世界中で愛されたミステリー作品だ。
「シャーロック・ホームズ」という下地を、
歌舞伎町という舞台に癖のある探偵たちで描く。
BBCというイギリスの放送局で放送された「SHERLOCK」というドラマも
同じ手法で大ヒットした。この作品はそんな「SHERLOCK」を日本のアニメとして
やるというのが企画意図なのだろう。
「落語」という要素も日本らしさを強調するための要素であり、
パスティーシュでありながら個性を出すための要素だ。
シャーロック・ホームズという作品が好きな人だからこそ
分かる要素も多く、序盤から「メアリー」がでてくる上に、
依頼人ではなく探偵になっていたり、
高校生の「モリアーティ」がでホームズのそばにいたりするなどのアレンジには
興味を惹かれる所であり、原作を知っているからこその面白さがある。
聞きたいか?
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 2話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
2話になるとよりその傾向が強くなり、シャーロックの魅力もでてくる。
彼は推理を「聞かせたい」探偵だ。
犯人を捕まえた後に「ニヤニヤ」しながら「推理を聞きたいか?」と迫り、
落語としてそれを披露する。犯人にとっては意味不明でしかないが、
落語を披露される犯人の反応が描かれることで、
落語推理がギャグとして成立する。
犯人の思惑や行動を全てシャーロックが「落語」として披露する。
とんでもない嫌味だ(笑)
単純に推理をするよりよっぽど嫌味な推理披露であり、
その嫌味さと謎掛けによるオチが落語推理を落語推理として成立させており、
1話では感じにくかった面白さがにじみ出てくる。
小ネタやパロディ、ギャグも非常に多い。
1話完結の事件を解決しながら徐々にシャーロックとワトソンに関係性を深め、
癖のある探偵たちのキャラクターの印象をつけ、
ワトソンが持ち込んだ事件につなげていく。
最初は「なんじゃこれ?」と感じる落語推理も、
話が進めば進むほど癖になってくる。
ジャックザリッパー
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 9話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
世間を賑わせるジャック・ザ・リッパー。
殺人を犯し性器を切り取り、その血で「羽」を描くというサイコパスな殺人を
起こしており、犯行動機も誰がジャック・ザ・リッパーなのかもわからない。
徐々にシャーロックのそばに近寄るジャックザリッパー、
誰が「ジャック・ザ・リッパーなのか?」というミステリーの面白さを感じさせる。
殺されたモラン区長の娘、怪しげな行動をするモリアーティ。
ワトソンがシャーロック・ホームズに相談しに来た事件とのつながり。
2クールが故に話の展開はやや遅い部分があるものの、
じわじわと進むストーリーがじわじわと面白さを募らせる。
そして11話。1クールン終盤にジャック・ザ・リッパーの正体が明かされる。
おそらく多くの人が誰しも予想がしなかった人物だ。
1話からでているキャラクターでは有るものの、
そんな素振りは1度も見せていない。
どちらかといえば「ギャグ」や「コメディ」を引き立たさせるためのキャラだ。
しかし、彼の殺人の動機と殺人方法は彼だからこそのものだ。
誰も予想がつかないキャラクターだからこその意外性は
思わずニヤニヤとしてしまうほどの面白さを感じさせてくれる。
甘さを一切感じさせないジャック・ザ・リッパーの結末と
「彼」の行く末が気になる所で1クール終わる。
モリアーティ
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 18話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
彼はシャーロック・ホームズのそばにいる高校生だ。
彼はシャーロック・ホームズの理解者でもあり友人でもある。
シャーロック・ホームズが悩んでいた時に出会った友人であり、
彼が復讐のために殺人を犯してもシャーロック・ホームズは友人であり続けている。
本来、シャーロック・ホームズという作品におけるモリアーティは黒幕であり悪だ。
シャーロック・ホームズと友人になるなどということはない。
多くの「パスティーシュ」でもモリアーティは悪役だ。
だが、この作品ではそんな素振りはない。
彼は妹の復讐を近い、父親との関係に悩む高校生だ。
多くの「パスティーシュ」におけるモリアーティというキャラクター像とは
似てもにつかわない。1話完結の物語を描きながら、
そんなモリアーティとシャーロック・ホームズの関係性が描かれる。
17話でホームズとモリアーティが楽しそうに落語推理をする姿は
この作品でしか見れないシャーロックとモリアーティの姿かもしれない。
テンポ
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 14話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
ただよくも悪くもテンポは悪く、キャラクターを削れば
もっとサクサクと話を進められたのでは?という部分も強い。
多くいる探偵たちもストーリーの「芯」に絡む探偵は少なく、
単発で掘り下げる回などはあるものの影はかなり薄い。
癖のある探偵たちが多く集い、探偵たちが賞レースのように事件を解決する。
そんな1話で提示した要素がうまくつかこなせている感じがなく、
結局、探偵は多く入れ度解決するのはホームズばかりであり、
推理力もあまりない彼らが探偵として行動してもそれが面白いわけでもない。
探偵長屋、探偵たちによる賞レースによる事件解決というアイデアは面白いが、
それを使いこなせておらず、個としての探偵としての活躍もほとんどなく、
グループとしての探偵としての活躍も薄い。
いてもいなくてもどうでもいいようなキャラクターが多く。
2クールであるがゆえにキャラを多く出しているだけで使いこなせていない。
怪しさが怪しいままに。
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 19話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
中盤から「モリアーティ」は明らかに怪しい行動やセリフが多くなる。
怪しさが大爆発な状態で、全ての事件の黒幕は彼なんじゃないか?と匂わせる。
だが、1クール目ではそんなあからさまなことをこの作品はしておらず、
意外な人物がジャック・ザ・リッパーなのも面白かったところだ。
その意外性が2クール目にもあればこの作品全体の評価は違ったかもしれない。
2クール目のモリアーティは別人だ。
可愛げが一切なくなり、犯罪者を催眠術のようなもので操って犯罪を起こさせる。
シャーロック・ホームズという作品における「モリアーティ」へと変貌する。
モリアーティらしくないモリアーティがこの作品の良さもでもあったのだが、
その良さがなくなってしまう。
モリアーティという名前だからこういうキャラへと変貌しましたと
言わんばかりの変貌ぶりはちょっとついていけない。
居ても居なくてもどうでもいいような探偵たちのキャラ描写をするくらいなら、
もっとモリアーティというキャラをしっかりと描写し、
2クール目の変貌に納得できるような流れにしてほしかったところだ。
やりたいことは分かる。
「モリアーティ」という少年は「シャーロック・ホームズ」である
彼に対しての「確固たるイメージ」があった。
人の命よりも謎解きを楽しむ男、自分のような「サイコパス」であるという
願望に近いものが彼の行動につながっている。
だが、その変化があまりにも唐突で1クール目で可愛かったモリアーティが
まるで別人のように変わってしまうには納得できる流れではなく、
怪しい行動をしまくりで怪しい雰囲気を放っていた人物が実は
黒幕でしたと言われても何の意外性も盛り上がりも生まれない。
終盤は彼のサイコパス的な思考による自分語りが永遠と続くが、
正直共感も何もできず、特に彼の魅力につながるわけでもない。
もやもや
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 24話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
中盤以降はテンポもだいぶ悪かったが、終盤になるとさらに悪くなる。
モリアーティが黒幕でしたという展開も、ワトソンの偽装殺人も、
グダグダとした展開の中で見せてしまっており演出も極端に弱く、
本来なら盛り上がるべき所で盛り上がりどころを作れていない。
最終話でモリアーティからの手紙でシャーロック・ホームズが涙するのだが、
正直、殺人を犯しまくり、犯罪者に暗示をかけて犯罪を誘発した
「サイコパス」であり、彼に何の共感もできないキャラクターなのに
実は助けを求めていたんですというふうに描かれてもしっくりとこない。
最終話の最終話でトントン拍子に描かれる脱出ゲームも特に面白みがなく、
尺稼ぎにしかなっていない。
話自体は終わっているものの、綺麗に終わらせてもしっくりとこない部分が多く、
もやもやした感じが残る作品だった。
総評:活かしきれていない
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 22話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
全体的に見て1つ1つの要素を活かしきれていない作品だ。
探偵が集い賞金目当てに推理レースをする、探偵が集う長屋、
歌舞伎町、格差の有る社会、落語を使った推理etc…
要素だけ見れば非常に面白そうな要素は多いのにそれを活かしきれていない。
2クールの中でメインキャラクターの掘り下げが非常に甘く、
1話完結の事件や人情噺は面白いときもあるものの、
1話完結の事件の中でメインストーリーが少しずつしかすずまず、
2クール目は極端にテンポも悪くなってしまう。
キャラクターは癖があって魅力は有る。
だが、そんな癖と魅力のあるキャラクターをイマイチ使いこなせておらず、
探偵長屋のキャラクターの殆どは居ても居なくてもどうでもいいキャラだ。
そんなどうでもいいキャラのために割かれる尺が多く、
その割には掘り下げきれず、メインキャラとしての存在感も確立できていない。
1クール目はそんな癖のあるキャラと面白そうな設定による
ワチャワチャ感と1話完結の事件の面白さや、ジャック・ザ・リッパーの
正体の意外性やその結末は予想外であり、
1クール目までは面白いと感じる分も多い。
しかし2クール目からはそんな癖と魅力のあるキャラと設定を
使いこなせていない感じが強くでてしまっており、
「モリアーティ」というキャラの描写に必死になってしまっていて、
他のキャラの描写も極端になくなってしまう。
作品全体として「モリアーティ」というキャラを描きたかったのは分かるが、
もう少しキャラクターや設定を減らして1クールで描けば
制作側がやりたかったことや伝えたかったことがわかりやすくなったかもしれない。
2クールと言う尺を明らかに使い余している感じが否めない。
落語推理やキャラクター、この作品の雰囲気は面白そうなのに
雰囲気だけで終わってしまっている感じが否めない。
面白そうな要素や魅力的なキャラが多いだけにそれを使いこなせていない
「もったいなさ」を強く感じる作品だった。
個人的な感想:盛り上がらない
画像引用元:歌舞伎町シャーロック 24話より
©歌舞伎町シャーロック製作委員会
結局、盛り上がりどころがない作品だった。
モリアーティが黒幕でしたという部分にしろ、もう少し見せ方があったのでは?と。
あそこまで露骨に怪しい行動や表情を見せておいて何のひねりもなく、
黒幕でしたとやられても何のインパクトもない。
落語推理というアイデア自体は面白かったものの、それも活かしきれていない。
落語絡みの話もなく、落語の師匠も過去回想でしかでてこず、
もう少しせっかく盛り込んだ落語の要素をうまく使いこなせてなかったのだろうか。
キャラクターデザインはよく、可愛いキャラもかっこいいキャラも多くいるのに
そんな魅力的なキャラをいま1つ活かしきれていないもどかしさが
2クールつきまとう作品だった。
1クール目はそれなりに楽しんでみていたが、
2クール目からはグダグダで終盤の展開もモリアーティに同情するような
流れを描くのは理解不能でしか無かった。
ジャック・ザ・リッパーの正体と京極のエピソードは面白かっただけに、
1クール目の面白さを2クール目で維持できなかったのは残念だ。
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なんかわからんけどすごい印象に残ってる作品
個人的には2クール目のテンポの悪さがこちらのモヤモヤを引き立てる感じで面白かったと思う
ダラダラ見てたのに気づいたらめっちゃ引き込まれてた
感じ方は人それぞれだと思うけど、自分は結構好きでした