評価 ★★☆☆☆(22点) 全96分
あらすじ 向水ひな子は、幼少期を過ごした海辺の町にある大学に進学し、一人暮らしを始める引用- Wikipedia
スーパーリア充タイム
本作品は劇場オリジナルアニメ作品。
監督は湯浅政明、製作はサイエンスSARU。
脚本は吉田玲子。
月9かな?
引用元:(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
映画は始まって早々にGENERATIONS from EXILE TRIBEがガンガンに流れる中で
「海の見えるマンション」からヒロインが飛び出し、
サーフィンを楽しむ様子を見せられる。
本作の主人公をGENERATIONS from EXILE TRIBEである
「片寄涼太」さんが演じており、大人の事情をモロに感じる。
引っ越してきた彼女は不器用な性格で片付け諸國できず、料理もうまくない。
そんなヒロインを消防士な主人公が火事になったマンションから
ヒロインを救い恋が始まる。
凄まじいまでにベタベタな王道恋愛ストーリーだ。
もう「月9」かな?と思うほどの薄ら寒い
実写ドラマのようなストーリーを見せられる。
湯浅監督らしい癖の強い作画だったり、動きの面白さだったり、
湯浅監督が描く「世界観」をこの作品からはまるで感じない。
そもそもアニメにする意味はあるのか?と思うほど
実写的ドラマ的な内容であり、冒頭からまったくもってワクワクしない。
湯浅政明監督作品では初めての経験だ。
歌うなや…
引用元:(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
出会った後は二人のデートシーンだ。
EXILEの曲を二人で口ずさみながらデートをしたり、
ヒロインに主人公がサーフィンを教わって二人で波に乗ったり、
砂浜でコーヒーを飲んでたまごサンドを食べて、デートの帰りには
喫茶店でコーヒーとホットケーキを食べる。
そんなデートシーンをたっぷりと見せられる。
何回コーヒー飲めば気が済むんだと思うほどに見てて面白みが一切なく、
ただ最初から相思相愛な二人のイチャイチャしてる所を永遠と見せられるだけだ。
これのなにが面白いのだろうか?
名字呼びから名前呼び変わったり、将来の夢を語ったり、
何度もデートを繰り返したり、二人で歌う。
この歌うシーンがシンプルにキツイ。普通に歌うだけならまだいいが、
二人が少し「照れ笑い」しながら歌う。
まるで電車の中でディープキスを交わすカップルの姿を見せられるような
そんなゾワゾワとした気持ち悪さすら感じてしまう。
この二人のイチャラブが30分ちかく描かれる。
映画は1時間36分のため、3分の1近くがこのどうでもいいイチャラブだ。
湯浅政明監督作品で初めて「キツイ」と感じてしまった。
夕日をバックにキスシーンや海辺でおいかけっこイチャイチャなどという、
もうこすられまくったどこかで見たことのありすぎるシーンを
何の演出の工夫もなく描かれる。ダイジェストで3分位にまとめてくれと
思うほどたぁぁぁぁーーぷりとイチャラブを見せられる。
私はこんなシーンを湯浅政明監督作品で見たくはなかった。
召喚術
引用元:(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
永遠に1時間13分、イチャラブを見せられるのか?と杞憂していると
水難者を助けようとした主人公が死ぬ。主人公とヒロインに
感情移入してる人からすれば涙を流すシーンなのかもしれないが、
全く感情移入していない人からすれば「ガッツポーズ」するレベルだ。
ようやくイチャラブから脱却する。
ヒロインはメンヘラ感を爆発させる
「ずっと一緒にいてくれるって言ったじゃない!」とブチギレながら
彼が死んだことを落ち込む日々だ。コーヒーだけで彼氏を思い出し泣き崩れる。
イチャイチャの次はメソメソだ。
イチャイチャよりはだいぶマシだが、メソメソも面白いわけではない。
そんな落ち込む中で主人公と散々口ずさみまくった歌を歌うと、
なんと死んだはずの彼氏が「水の中」から現れるようになる。また歌だ。
まるで見てる側を洗脳するかのように何度も何度も同じ
GENERATIONS from EXILE TRIBEの歌を聞かされる。
湯浅監督は本当にこの曲を何度も何度も作品で使いたかったのだろうか?
そう疑問に思うほどシーンに合っていない曲を耳にたこができるほど
聞かされ続ける。
死んだはずの主人公の姿が見えるのはヒロインのみだ。
周囲からすればメンヘラをこじらせておかしくなったヒロインでしかないが、
ヒロインにとっては確実に水の中の主人公は存在している。
明るく描かれてはいるものの、水筒に「彼氏」を入れて
持ち歩くというのはちょっとしたホラーだ。
彼氏が死んでイチャラブが終わったかと思いきや、死んだ彼氏を
水筒の中にぶちこんでまたデートする、いい加減にイチャラブをやめてほしい。
水の表現
引用元:(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
湯浅監督の前作「夜明けを告げるルーのうた」では水の表現が秀逸だった。
人魚の力で操られた水の表現は素晴らしく、自由だった。
今作でもその水の表現は心地が良い。
前作とは違った「ぷるん」っとした水の表現は気持ちよさすら感じる表現だ。
ただ前作は一応「人魚の力」という設定があったが、
今作はそういうファンタジーな設定に対する設定の説明が一切ない。
水の中に現れる主人公もなぜ自分が水の中に現れることができるかわかっておらず、
最後まで「ふわふわ」っとした設定付けになっている。
おそらくはあえて説明しないのだろう。
一般受けを狙った作品なだけにそういったファンタジー部分の設定の説明は
不要だと感じたのかもしれないが、そのふわふわとして設定が
どうにもしっくりとこないものにつながっている。
落ち込んでるときに狙え
引用元:(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
死んだ主人公の後輩はヒロインに以前から好意を抱いている。
主人公が死んだ後は「ヒロイン」をストーカーし、
彼女が水筒を持ち歩いて水筒に話しかける姿に不審に思いつつも、
彼女の思いは募るばかりだ。
そして、どさくさに紛れて告白する。
こういうパターンの話を何度も見たことがあると思うほどに
擦り倒した人間関係の描写を「湯浅監督」作品で見せられるのは
本当にげんなりしてしまう。
主人公は主人公で「新しい波に乗れ」と繰り返す。
自分のことを乗り越えて新しい恋をしろという助言だ。
至極まっとうな助言ではあるものの、そもそも主人公が水の中に出てこなければ
ヒロインも主人公のことをもっと早く忘れられたのでは?と感じてしまう。
ヒロインはヒロインでメンヘラ大爆発で道路に飛び出す。
メンヘラすぎるヒロインに対して感情移入することが出来ない。
実は過去に
引用元:(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
ヒロインが主人公に対する気持ちを少しずつ整理する中で、
実は幼い頃に二人が出会っていたことが分かる。
彼のメッセージを受け取り、彼女のもまた前に進もうとする。
彼が人を助けた仕事をしていたように自分も人を助ける仕事をしようと。
「ヒロインがヒロイン自身の波に乗る」
これは主人公がしつこく言ってることだ。
彼女は大学生であり、将来が決まっていなかった。
そんな中でヒロインが進路を決める。
「ライフセイバー」だ。
結局、死んだ主人公の考え方に影響されまくった結果の進路であり、
それが「ヒロイン自身の波」なのか?と考えてしまうとひどく疑問だ。
そしてライフセイバーになるためのストーリーが終盤で描かれる。
せっかく話が盛り上がってきたのにまた盛り下がって
淡々とした描写が増えてしまうのは残念だ。
「湯浅政明」監督にしては淡々とした会話のシーンが多く、つまらない。
警察に電話しろ
引用元:(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
終盤、ヒロインと主人公の妹は「無許可」で花火を上げる若者の会話を耳にする。
1年前にヒロインが巻き込まれた火事の犯人だ。
さっさと警察に通報すればいいのに「証拠がないと」と彼を追い、
彼らは花火を打ち上げまくり、火事になる。
もう警察を呼ばない彼女たちに「イラっと」させられる。
火事になった結果、彼女たちは脱出できなくなってしまう。
消防隊員もお手上げな状態でヒロインは歌い出す。
主人公による謎の水パワーで一気に火は消える。
死んだ主人公は「他人には見えない」という設定はどこへいったのやら、
いきなり、色々な人に主人公の姿が見えるようになり、
主人公が生み出した水にヒロインが乗り脱出する。
「波に乗るんだ」
火事になった建物から脱出するという危機的な状況で
ヒロインは技を決めまくりながらくるくると周り笑いながら脱出する。
危機的な状況のはずなのに楽観的な曲やヒロインの表情や行動には
違和感しか無く、その違和感を感じたまま終わってしまう。
総評:湯浅監督である必要性を感じない
引用元:(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
全体的に見て「中の人」で実写映画としてやればよかったのではないだろうか?
川栄李奈、片寄涼太と人気のある男女の実写でやったほうが
シンプルに二人のファンの方もそのほうが楽しめたはずだ。
アニメーションとしての面白さはある。
火や水の表現に湯浅監督らしさを感じる部分はあるものの、
前作の「夜明けを告げるルーのうた」に比べると面白さは薄い。
湯浅監督の作品は「情報量の多さ」も魅力だった。
1シーンの中で叩き込まれるように様々な描写が有り、
それが良くも悪くも「湯浅監督」らしさだった。
だが、この作品にはそのらしさがない。
ひたすらに見せられるイチャラブ、しつこい洗脳ソング、
擦り倒した月9みたいなストーリーには何の面白みも感じない。
王道といえば聞こえはいいが、その王道にすらなりきれていない。
ただ擦り倒したお涙頂戴なストーリーなだけだ。
おそらく描きたかったことは彼氏依存のメンヘラ女子の自立なのだろう。
そのテーマやメッセージ性は伝わる部分はあるものの、
その「自立」が描かれてるのか?といえば疑問だ。
死んだ彼氏が人を救う仕事をシていた、死んだ彼氏の考え方に影響されて
彼女も「ライフセイバー」になり、自分ではうまく出来なかったオムライスが
うまく作れるようになった。
最後の最後まで「あの歌」を歌う彼女にもどこか未練がましさも感じる部分があり、
最後の最後で「彼氏のメッセージ」が彼女に伝わってまた泣き出すシーンは、
1時間13分描いて受け入れたはずの死を
また受け入れられないものにしただけでは?と感じてしまう作品だった。
個人的な感想:これは別に湯浅監督じゃなくていい
引用元:(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
この脚本なら、この映像なら湯浅監督である必要性を感じない作品だった。
「湯浅政明」という監督にもとめていた作品とはある意味で
180度違った作品であり、その違和感が最後まで拭い去ることは出来ず、
最後の最後まで聞かされるEXLIEの曲にEXILEが嫌いになりそうなほどだ。
例えばアナと雪の女王ですべての曲がレット・イット・ゴーだったらどうだろうか?
エルサもアナもオラフも全てレット・イット・ゴーしか歌わずに、
最初から最後までレット・イット・ゴーだらけなアナ雪。
見てない人でもうんざりする気持ちがおわかりいただけると思う。
おそらく普段アニメを見てない人は気にならずに、
この王道な恋愛ストーリーを楽しめるのかもしれないが、
私はこのリア充陽キャ大爆発なラブストーリーを受け入れることが出来なかった。
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