あと一ヶ月ほどで2024年も終了、
個人的に今年は第一子が生まれたこともあって余計に
時間の流れを早く感じる年でした。
どうもみなさん、笠希々です。
12月は師匠も走り回るほど忙しい月、師匠でなくとも色々と忙しいですよね。
今回はそんな師走に向けて「時間がない」ときでも楽しめる
短編アニメ映画特集なアニメコラムとなっております。
60分
以前からいわゆる短編アニメ映画というものは制作されていましたが、
近年、徐々にこの60分ほどのアニメ映画というものが
増えつつあるように感じます。
普通、アニメに限らず映画は90分以上。
短いものだと85分などの上映時間な作品もありますが、
基本的には90分以上上映されることが多いのが映画というものです。
それでも1クールのアニメなどに比べれば短く、
その短い中で起承転結を描くということは大変です。
90分でも大変なのに60分となればもっと大変です。
起承転結、それぞれ15分もかけられません(笑)
だからこそ圧縮した面白さが短編アニメ映画にはあります。
余計なシーン、余計なセリフ、冗長な展開、
そういったものを削ぎ落とされた結果の60分。
限られた尺の中でどう描くのか。
長編アニメ映画にとは違った魅力が短編アニメ映画にはあります。
今回はそんな短編アニメ映画、40分から70分未満の
アニメ映画をご紹介いたします。
数分間のエールを
このアニメコラムを書くきっかけにもなった作品でした。
この作品の制作はHurray!×100studio、Hurrayは
ヨルシカさんなどのMVを手掛けている制作会社です。
そんな制作会社が「MVづくり」というものを題材にした
アニメ映画を制作しました。
MVづくりという夢を追いかけている高校生、
夢を追いかけることを諦めようとしている新人教師、
夢を諦めた親友。
この三者三様の「夢」の描き方が本当に素晴らしく、
MV、音楽、絵という作っているものは3人共違いますが、
それぞれのものづくりというものに対する姿勢の違い、
現状と向き合い方の違いがはっきりと描かれていました。
68分という短い尺の中で描かれるクリエイターへの賛美、
多くの挫折を繰り返し、苦しい思いをしながらも
必死に作り続ける者たちへのエールに涙を隠しきれませんでした。
ルックバック
この作品もまたクリエイターというものを描いていました。
数分間のエールをがクリエイターの賛美、作り続けるものたちへの
エールを描いていたのに対し、ルックバックは
クリエイターの孤独というものを描いている作品でした。
子供の頃から漫画をかいていた少女が、
自分より才能があると感じる少女と出会う。
お互いがお互いの才能を認め合い、いつしか二人の少女は
漫画をともに手掛けるようになる。しかし、成長し、道がかわっていく。
絵や漫画、小説、何かを作り上げる人はいつだって孤独です、
自身の内面と向き合い、それを作品に仕上げる。
自分との対話の中で生まれる作品だからこそ、結果的に孤独な作業になる。
唯一の理解者だった親友と道を違える、
よくある出来事です。
しかし、そこからの衝撃的な展開は
見方によってはバッドエンドにすら見えます。
孤独に漫画をかいていた少女が、孤独に漫画をかく大人になる。
そんな孤独なクリエイターというものを描いたアニメーションの
描写も非常に素晴らしく、作中の5割の原画を監督自身が
手掛けるという意味がわからないことをしています(笑)
ある種の創作論を描きつつ、そんな創作論に負けない
狂気を感じるアニメーションを堪能できる60分でした。
クラユカバ / クラメルカガリ
この2作品、どちらも61分ほどの作品であり、
2作品とも同じ監督による作品で同時期に上映されました。
塚原重義監督が手掛けた2本の映画、
どちらも同じ世界観ではあるものの、描き方というものが違っていました。
クラユカバは非常に癖のある作品です。
一言で言えば和製スチームパンクともいえるような世界観で、
明治とも大正とも昭和ともいえるような時代で、
地下「クラガリ」という場所に魅入られる人々を描いています。
「深淵をのぞく時深淵もまたこちらをのぞいているのだ。」
そんな言葉が聞こえてくるような、わかるような分からない、
あえてそういう風に作品を制作しており、
クラユカバという作品を考えれば考えるほどクラユカバという
沼に堕ちていくような作品でした。
もう1つのクラメルカガリはそんなクラユカバを
エンタメに仕上げたような作品でした。
炭鉱の町での群像劇、ボーイ・ミーツ・ガールという
王道なストーリー展開がここちよく、クラユカバで描かれた
アーティスティックな作家性を見事にエンタメに落とし込んでいます。
あるものはこの街から抜け出そうとし、
あるものは反乱し、あるものは治安を維持しようとし、
あるものは過去を精算しようとし、
あるものはこの街で生き続けようとする。
60分の群像劇がたまらない作品でした。
同級生
この作品、ジャンルで言えばBL作品になります。
正反対ともいえる二人の高校生、
そんな二人が恋に落ち、付き合い、喧嘩し、仲直りをする。
そんな60分、たったそれだけの60分を
ものすごく丁寧に描いている作品でした。
無邪気な男と、つんつんとした男、
そんな二人の恋模様は甘酸っぱく、青春そのものです。
BLということで苦手意識のある人も多いかもしれませんが、
私が一時期BL作品ばかりを見ていたのはこの作品のせいです(笑)
苦手意識のあった私でさえBLというジャンルにハマらせてしまう、
そんな魅力を秘めた作品です。
王道を王道のままに、兎にも角にも「雰囲気」に飲まれる作品であり、
その雰囲気を後押しする声優さんの演技も本当に素晴らしく、
「神谷浩史」さんのときに無邪気でときに強引でときに素直な演技は
本当に素晴らしいものがありました。
これが90分だと間延びするかもしれませんが、
60分だからこそ短く綺麗に美しくまとめ上げられた作品です。
あさがおと加瀬さん
同級生がBLならこちらは至高の百合作品の1つです。
同級生とストーリー構成という意味では大きな違いはありません、
二人の同性カップルの青春模様を描く、
そのシンプルさが王道の面白さを醸し出しています。
人気な女の子と普通の女の子、そんな二人が付き合い始める。
些細なすれ違いや、学生だからこその進路の問題などもありつつも、
重苦しい展開には一切なりません。
シリアスな展開がないのに秀逸なキャラ描写と心理描写が
この作品の魅力でもあります。
細かく変わる表情の描写は二人のメインキャラを際立たせ、
もう見てるだけでたまりません(笑)
二人のヒロインの魅力を余すことなく感じられる60分、
王道でいいじゃないか、べたでいいじゃないかと聞こえてくるような
ストーリーに酔いしれるような至高の百合作品でした。
フラグタイム
この作品、ジャンルで言えば百合です。
しかし、そんな百合なジャンルで60分という尺を使い
「哲学」を描いている作品でした。
時間停止能力を持つ少女が時間停止状態の世界で
美少女のパンツを覗く。そんな行為から始まる百合な世界、
二人の少女は時間の止まった世界で、それぞれの処世術をさらけだし、
その処世術をぶつけあい互いに生き方の答えを見つけ出す。
60分の映画とは思えないほど深く、多種多様な要素が盛り込まれています。
その60分ゆえに展開の速さは気になるところではありますが、
二人の少女の哲学、自分を理解してほしいという気持ちは
見る人の共感を呼び、きれいなハッピーエンドにつながる、
この60分の濃厚な作品をぜひあじわってほしいと感じる作品です。
サマーゴースト
この作品は60分どころか40分しかありません。
本業がイラストレーターな監督が手掛ける世界観は
独特な雰囲気で彩られており、
その世界の中で「希死念慮」というものを描いています。
家庭環境やいじめ、病気。
若者は色々な悩みを抱えながら生きており、
その悩みに潰されてしまう人も少なからずいます。
この作品の中のキャラクターもそんな「希死念慮」を
抱えており、そんな少年少女たちが死んでいる「幽霊」と出会い、
自分自身の死生観を人生観を、今を見つめ直す物語でした。
非常に重い作品ではあるものの、生きるということの意味を
40分という尺の中で描いており、起承転結もスッキリとしており、
刺さる人には強烈に刺さってしまう、そんな作品です
映画すみっコぐらし
すみっコといえば人気キャラクターであり、
そんなキャラクターの映画も、現在3作品制作されています。
子供向けのアニメ映画だからこそ尺が短く、
基本的に3作品とも60分前後の映画になっています。
子供向けの映画としてみると、度肝を抜かれる作品です。
1作目は実質奈須きのこなんていわれてTwitterでバズりましたが、
2作目以降も、様々な趣向で子供よりも見ている大人の方が
刺さってしまうような作品に仕上がっています。
すみっこが好きなキャラクターたち、
ほこりだったり、エビフライのしっぽだったり、
飲み残されたタピオカだったり。
彼らはどこか世間からはみ出したり、余ったり、
忘れられている存在です。
そんな彼らが映画の中で様々なキャラと出会います、
1作目では絵本の中のひよこに、2作目では魔法使いに、
3作目ではおもちゃの工場長に。
そんな出会いと別れ、すみっこたちの物語が
大人も涙腺を刺激されるような作品に仕上がっています。
子供向けと舐めてかかるのではなく、ハンカチを
用意して挑みたくなる、それがすみっこぐらし映画シリーズです。
言の葉の庭
君の名は以前の新海誠監督は多くの短編アニメ映画を
手掛けており、秒速5センチメートルは名作と名高い作品です。
しかし、私はあえて言の葉の庭を勧めたい。
たった46分、そんな尺の中で描かれる男子高校生と女教師の
雨の日の逢瀬、これぞ新海誠監督だといわんばかりの内容です。
文学的な台詞回し、まるで読むアニメ映画。
ポエミーなモノローグと二人の会話が雨の中で響き渡ります。
そこに響く「雨の音」と雨の描写への狂気的なこだわりが
この作品の世界観を色濃いものにしています。
どこか感じるもどかしさ、大人のお姉さんに対する少年の憧れ、
新海誠監督の作品につきものな「童貞臭さ」も全開です(笑)
しかし、君の名は以前の新海誠監督につきものだった
ビターなエンドではなく、そこから変化が生まれた作品であり、
この作品がなければ君の名ははあそこまでヒットしていなかったかもしれません。
LUPIN THE IIIRD
このシリーズはルパン三世シリーズの映画作品であり、
通称「小池ルパン」と呼ばれている作品です。
3作品とも60分前後の作品で、一言で言えば大人向けのルパンです。
現在のルパンと言えば子供も見れるようなテイストの作品になっていますが、
ルパンという作品持つニヒルさ、大人向けの要素を強めたのが
このシリーズとも言えます。
劇画タッチの作画のおかげでルパン三世を始めとする
キャラクターの渋さが際立ち、そんな世界観の中で
ハードボイルドなストーリーが展開していきます。
エロスもある、血しぶきも上がる、タバコの煙もゆらめいている。
あの頃、TVの前でルパンを楽しんでいた子どもたち。
そんな子どもたちが大人になった今だからこそ、
そんな大人のためのルパン三世シリーズです。
次元大介、石川五ェ門、峰不二子、
それぞれのキャラがフィーチャーされた3作品は
どの作品も違う魅力があり、キャラクターの魅力をより
色濃く感じられる作品です。
アニメーションのクォリティも本当に素晴らしく、
小池ルパン4作目の制作も決定したこの機会に
ぜひ、この3作品をあじわっていただきたいところです。
凝縮された60分
60分という時間は長いようで短い尺です。
1本の映画の中でどのくらいのキャラを登場させ、
どういう要素を組み込んだストーリーを展開するのか。
1本の映画として成立させるために起承転結も意識せなばならず、
非常に難しい尺とも言えます。
しかし、今回紹介した作品はどの作品も本当に素晴らしく、
濃厚で濃密な60分間を過ごすことが出来ます。
最近叫ばれてるタイパなんてものも関係あるのかもしれませんが、
60分アニメ映画がちらほら増え始めており、
今後、この流れ、ブームが生まれるかもしれません。
時間がない中でも60分で楽しめるアニメ映画、
ぜひあじわっていただきたい作品ばかりです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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