先日、ちょっと気になるツイートがありました。
ちょっと重い話になりますが、アニメ業界がどうやったらよくなるかリプでアイデア下さいませんか。いま、倒産予備軍も増えてまして、現場は恐ろしく疲弊しています。「現場を知らない癖に…」とか言ったりしませんので、一般の人からのアイデア知りたいです。お気軽にどうぞ~。返事のリプします。
— 榊正宗@東北ずん子東急ハンズ梅田店物販 (@megamarsun) 2019年1月3日
榊正宗さん自身は3DCG制作会社の方なので、
このツイートの真意はよくわからないものの、
去年末にアニメ産業レポート2018も無料で見れるようになったので、
それと合わせて考えていきたいと思います。
なおレビュー内の数字は全てアニメ産業レポート2018によるものです。
合わせてご覧ください。
http://aja.gr.jp/jigyou/chousa/sangyo_toukei
いつもどおり長い記事ですのでお暇な時にお読みください。
2017年のアニメの売上
毎年発表されているアニメ産業レポートによると
2017年はも108.0%アップ最高値更新しアニメ市場は2兆円を突破したようです。
ただ、この市場は海外の伸びが大きく、
配信事業が10年前の5倍になってます。
日本でもNetflix、Amazonプライム、Dアニメ、バンダイチャンネルなど
「アニメをネットで見る」という文化がここ2~3年ですっかり
定着してきた感じがありますね。
最新話の放映も翌日だったり、テレビ放送とリアルタイムではありませんが
元々一週間や二週間遅れで放送される地域もあることを考えると、
アニメを見れる「地域差」というのも埋まってきてるのはいい傾向だと思います。
その結果、国すらまたぎ海外事業がかなり成功してるようです。
BD・DVD
いわゆるビデオの売上ですが、
私は2017年は下手したら100億を切るかもと思っていました。
年間を通して1万枚以上売れた作品が少なく、
配信事業へのシフトも相まって100億円切るのではと。
しかし、2017年のデータによるとビデオの売上は117億円(制作会社への売上)
2016年が125億円でしたが、8億の減少ですんでいました。
ちょっとこれは予想を裏切る結果でした。
2016年はユーリ!!! on ICE、うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEなど
女性向け作品の売上が凄まじく女性向けアニメの時代が始まるか!?と
少し話題になったくらいでした。
2017年といえば戦姫絶唱シンフォギアAXZ、この素晴らしい世界に祝福を! 2など
売れはしたけど「覇権」と言えるかはちょっと難しいアニメが多く、
また1番売れた作品がGRANBLUE FANTASY The Animationなだけあって、
あまりいい印象ではありませんでした。
(グラブルの円盤にはゲーム内アイテムが特典で付きました)
しかし、それでも8億円の減少で100億を切らなかったのは
いい結果と言えるかもしれません。
こうなると円盤を買う層というのはあまり変わってないのかもしれませんね。
劇場アニメ
2016年は君の名は効果もあってか664億円という売上になっていましたが、
2017年は410億円。2015年と比べると60億円の減少ですが、
2014年は417億円なのであまり変わってない印象ですね。
2017年のアニメ映画は
「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」
「メアリと魔女の花」
「ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜」
「夜は短し歩けよ乙女」
などなど色々ありましたが、個人的には夜は短し歩けよ乙女以外は
微妙な印象でした。
ただ日本のアニメ映画市場では毎年、
ドラえもん、クレヨンしんちゃん、名探偵コナン、ポケモンというBIG4がいるので、
あとはその他のアニメ映画がどれくらいヒットするのか?というのが
毎年の売上の変化につながってるような気がします。
2018年は「名探偵コナン ゼロの執行人」が異様なまでにヒットしたので、
2017年よりは少し上がってるかもしれませんね。
円盤の売り上げは減っているが配信は増えている
アニメ制作会社全体の売上は2270億円から2412億円に増えてます。
しかし、冒頭のツイートにもあったように倒産危機にある会社が非常に多い。
実際、2018年には潰れた会社もありました
ただ、この潰れた会社は「潰れるべきして潰れた」会社だったと私は思います。
去年潰れたプロダクションアイムズは人気シリーズでもある
デート・ア・ライブ2期の作画が非常に悪く、
その後に作った「俺、ツインテールになります。」は完全に作画崩壊をおこし、
社運をかけて作ったアクティヴレイドがいまいちヒットしなかった。
その後も色々と制作していましたが潰れたと聞いたときも
「まあ潰れるだろうな」という感じになってしまう制作会社でした。
この制作会社はアニメのプロデューサーが立ち上げた会社でした。
そもそも制作会社が多すぎる
日本には現在、200社以上の制作会社があります。200社です。
この制作会社が全て1年に1本作るとしたら、
単純に200本制作されることになります。
全ての制作会社が元請けで作るわけではありませんが、
これだけ制作会社が増えれば潰れる所も出てきて当たり前ではないでしょうか?
制作協力やクレジットされない孫ウケしてる会社も多いと思います。
下請けをする会社も増えたことでアニメーターにはより低賃金しか支払われません
私もアニメのレビュー記事を書くときは必ず監督の名前と
制作会社の名前は最初に記載するようにしています。
これはかつては「あ~あそこの制作会社ね」というネームバリューのある
制作会社が多かった頃の名残です。
ですが、最近はレビューの時にwikipediaからコピペしても
「これ他に何作ってる制作会社だっけ?」となることが多く、
調べると何処からか独立してる制作会社だったりします。
しかし、アニメ制作市場に流れているお金は
ここ数年2000億前後のままです。
制作会社が増えればそのお金は分散し、
結果として1つ1つの会社の売上が減ります。
TVアニメの「放送枠」というある程度限られた枠の中で、
制作会社同士がアニメ史上に流れるお金を奪い合ってるような
状況なのでは?と感じています。
アニメ制作会社がきっちりと権利を持つ
結局、見てる側の立場としてはできることは円盤や
グッズを買うことくらいで、限られています。
クラウドファンディングでアニメを作るところも増えてきてますが、
クラウドファンディングで作られたアニメって往々にして微妙です。
アニメ制作会社が潰れないようにするためには、
TVアニメを作る以外の方法を考えなければなりません。
その1つが「権利」でしょう。
この手で一番うまくやってるのが「京都アニメーション」です。
京都アニメーション、通称京アニは「KAエスマ文庫」という
自社レーベルを持っています。
中二病でも恋がしたい、境界の彼方、Freeと
京アニが最近制作するアニメは全て自社レーベル初のものです。
TVアニメの売上だけではなく、派生するグッズなどの売上も
全て京都アニメーションに入ることになります。
円盤の売上はあまりよくなくてもグッズの売上でカバーすることもできるため、
京都アニメーションは制作会社でも儲けてる部類でしょう。
もちろん自社レーベルを立ち上げるための資金や、
ブランド力があったからこそなせる技でもあります。
らき☆すた、涼宮ハルヒの憂鬱、けいおんなどの売上があったからこそ、
今の流れに繋げられた部分は大きいのでしょう。
しかし、権利を持つということはかなり大きいです。
権利を持たない原作ありの制作ばかりをしている制作会社は、
いわゆる「自転車操業」状態になりつつあるのではないでしょうか。
配信サイトへのシフト
TVアニメはテレビ局が当然間に入ります。
テレビ局が間に入らなければ直接懐に入るお金も大きくなるのですが、
テレビアニメという媒体上、厳しい所があります。
最近「OVA」というのが本当に減りました。
80年代~90年代はOVAという媒体はかなり盛んだったのですが、
最近では作られても1巻~2巻だったり、
原作コミックの特典だったりすることが多い現状です。
しかし、かつてのようにBD・DVDで発売しなくとも
現在は配信サイトという市場があります。
「Netflix」は去年辺りからオリジナルアニメにかなり力を入れており、
テレビ局を介さずに行えるアニメ制作市場が今後、
伸びてくるのでは?と感じています。
そういった時代の流れに制作会社がきちんとついていけるか?という
ところが今後、5年、10年先の制作会社の生存率につながるかもしれません。
視聴の限界
これはここ2,3年言ってますが、流石に年間200本は無理です(苦笑)
私は去年、150作品以上見てます。
無理をすればもう少し見れるとは思うのですが、
無理して見だしたら楽しめなくなってしまうので無理はしたくありません。
配信サイトが増えたことで放送時間にかぶりついてみたり、
録画予約するという手間がなくとも見る手段が増えてきていますが、
それでも200作品は多すぎると誰しもが思っているはずです。
アニメ化できる原作も無限にあるわけではありません。
ここ数年のアニメの中には
「これは果たしてアニメ化するほど原作が面白いのか?」
とアニメの出来栄えよりも原作の面白さを疑ってしまうような作品もあります。
アニメ制作側も無理にアニメ化しているような作品は、
やはり総じて面白くはありません。
制作側も視聴者側も無理せずに見られる本数に減らせば、
必然的に1つ1つの作品のクォリティも上がり、
1つ1つの売上も増えるのではないでしょうか?
投げ銭、会員特典etc…
アニメを見てる最中にYOUTUBEの生放送のように
投げ銭できるシステムがあれば違うかもしれません。
このあたりはアニメと言う媒体との相性がどうなのか?という問題点はありますが、
結構やってみたら面白いかもしれません。
300円や1000円の気軽な投げ銭ができるシステムがアレば
チリも積もればなんとやらな売上になるかもしれません。
これまたYOUTUBEの仕様ですが「会員特典」として、
先行配信を見れるようするようなシステムも面白いかもしれません。
素人考えでもいろいろと思いつきます。
正直、制作会社の経営陣がTVアニメ制作に縛られすぎているのも
問題なのではと感じています。
ここでいくらいろいろな意見を述べても制作会社さんが
一歩踏み出してくれなければ同仕様もありません
柔軟に対応してほしい
潰れる制作会社は今年もあると思いますが、
私はそれでアニメ業界の終わりや日本のアニメはオワコンだなんて思いません。
制作会社の経営者の責任によるところが大きいと感じているからです。
200社以上もある中でTVアニメ市場のお金を奪い合っている現状では、
潰れるべきして潰れる所は今後も出てくるでしょう。
そこであえて戦わずにNetflixなどの配信サイトでのオリジナルアニメに場を変えるか、
投げ銭やプレミアム会員などの後方支援を味方につけて戦うか、
はたまた自社レーベルを立ち上げて地盤を築くかは制作会社次第です。
去年爆発的に増加した「vtuber」なんかも、
本来はアニメ制作会社が自社で立ち上げてもおかしくないものです。
時代の流れに対応し、柔軟な会社が生き残る。
これは「アニメ制作」という業種にかかわらない企業の生き方だと思います。
最後に。
私は今年もアニメを見続けます、アニメが好きだからです。
だからこそ、ヒットする作品が多く生まれると嬉しく、
逆に「面白いのにBD売上にはつながらない」作品を見ると歯がゆく感じます。
配信やグッズの売上などでカバーできたとしても、
やはり現在も2期があるかどうかは「円盤の売上」によるところも大きく、
面白い作品なのに円盤が売れないから2期ができない作品というのが
多くある現状が非常にもったいなく感じてしまいます。
そういう作品が配信サイト独占配信や投げ銭などの売上で
2期につながるようになれば1オタクとして嬉しい限りです。
作品の雰囲気や内容によって最適な「ビジネスモデル」で
アニメ市場をもっと盛り上げていけるように
1オタクとして応援しております。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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