評価 ★★★☆☆(55点) 全12話
あらすじ ハクメイとミコチ。緑深き森で暮らしている、小さなふたりの女の子。 木の洞(うろ)に家を造ったり、葉っぱを傘にしたり、昆虫や鳥の背に乗ったり…… 引用- Wikipedia
借りぐらさないムーミン
原作は『ハルタ』で連載中の漫画作品。
監督は安藤正臣、制作はLerche
見出して感じるのは独特のゆったりとした雰囲気だろう。
二人の小人が家具を運んで家に帰る。
周囲の草花に対して明らかに小さい彼女たちのサイズ感が、
この作品の特徴の1つであることを主張したいのだろう。
だが、どうにもサイズ感がわかりにくい。
似た作品でスタジオジブリの「借りぐらしのアリエッティ」があるが、
あの作品は普通サイズの「人間」と小人のアリエッティという
「対比」があり、角砂糖などの人間基準のサイズがあるからこそ、
アリエッティ達の小ささを実感できた。
引用元:©樫木祐人・KADOKAWA刊/ハクメイとミコチ製作委員会
しかし、この作品の場合、サイズ的に虫と同じくらいである事は分かるのだが、
そのサイズ感を活かした何かがあるとは言えない。
本来ならこのサイズであれば脅威であるはずの虫や鳥といった生物は
彼女たちを襲ったり、食べたりはしない。非常に平和である。
世界観の作り込みとしても序盤はやや入り込みにくく、
お金の単位も「円」であり、普通に500円硬貨みたいなのもでてくる。
ファンタジーなのか日本なのかちょっとよくわからない感じの、
やや統一性のない世界観はやや気になる所だ。
「借りぐらしのアリエッティ」と似てはいるが、
「ムーミン」のような日常感と世界観と雰囲気があり、
洋服をきちんと着ているムーミンたちの日常を描いているといえば
わかりやすいだろう。
引用元:©樫木祐人・KADOKAWA刊/ハクメイとミコチ製作委員会
ほぼ毎話でてくる食事もこの作品の特徴であることは分かる。
だが、残念なことに「小人の世界」ならではの食べ物ではなく、
押し寿司だったり、ミネストローネだったりと普通過ぎる料理であり、
描写はしっかりして美味しそうに見えるのだが、
この作品だからこそ、この世界観だからこその料理の描写とは言えない。
演出も独特だ。
まるで古いアドベンチャーゲームのように背景の上に1枚絵を
2~3枚並べるカットイン演出は独特ではあるものの、やや癖が強く、
淡々としたストーリー展開だからこそこういった演出で
絵変わりさせて飽きさせないようにしてるのは分かるのだが、
それが効果的に作用しているとは感じにくい。
引用元:©樫木祐人・KADOKAWA刊/ハクメイとミコチ製作委員会
彼女たちの淡々とした日常は生活感あふれるものばかりだ。
日々の仕事、日々の暮らし、日々の料理。
たまに起こる非日常なファンタジーストーリーや事件はあるものの、
基本は平和で淡々とした日常であり、生活臭すらただよってきそうな
日常ストーリーはよく言えば癒やされる雰囲気なのだが
悪く言えば起伏にかける。
この作品の魅力は1話を見ただけじゃ伝わりきらないだろう。
話数を積み重ねることで徐々にメインキャラが増えていき、
それぞれのキャラの立ち位置やキャラ同士の関係性が深まってくると、
じわじわと面白くなってくる。
話が積み重なることで面白さも積み重なっていく。
引用元:©樫木祐人・KADOKAWA刊/ハクメイとミコチ製作委員会
はじめはハクメイとミチコのなんてことのない日常だ。
そこに行きつけの喫茶店のマスターだったり、歌がうまい女の子だったり、
変な研究をしてる人だったり、大工の親方だったり、美容師だったり。
色々なキャラクターが彼女たちの日常に絡んでくることで、
作品の厚みが増してくる。
序盤で面白さが伝わりにくいのは、物語の主人公である
「ハクメイ」と「ミコチ」の出会いが描かれていないのもあるのだろう、
1話の時点で彼女たちは一緒に住み、互いをわかってる。
物語が進む中でハクメイがミコチの家にある日、転がり込んできたという
話はふわっとセリフの中に出てくるのだが、それ以外の描写はない。
1話の時点で完成された関係性がすでにあり、
そこから更に他のキャラとの関係性が進んでいくものの、
序盤の時点でその完成された関係性に入り込みにくく、
彼女たち以外のキャラが彼女たちに馴染みだすのと同じように
見ている側も馴染んでいく作品だ。
引用元:©樫木祐人・KADOKAWA刊/ハクメイとミコチ製作委員会
総評
全体的に見て朝アニメやNHKで4クールぐらいガッツリと見たかった作品だ。
序盤ではこの作品の面白さや魅力が伝わりにくく、
話が進み、キャラクターが増えることでしみじみとした面白さが出てくる。
中盤になると気づくと「ハクメイ」と「ミコチ」の生活に癒やされ、
何気ない日常の、何気ない話をまったりと楽しむ事ができる。
ただ良くも悪くも「日常アニメ」特有の起伏の無さは出ており、
キャラクターや世界観が醸し出す「雰囲気」を楽しむアニメだ。
壮大なストーリーや強い笑いを期待してはいけない。
話によって当たり外れもあり、印象に残る話もあれば残らない話も多い。
1話複数エピソード構成になっているため微妙な話も
冗長にならずにテンポよく描いているのはいいのだが、
その反面でもう少し丁寧に描いても良かったのでは?と感じる部分もあり、
1日1日をきっちりと描いている作品だからこそ、
1話複数エピソード構成に逃げてほしくなかった。
内容的にもNHKでやっていてもおかしくないほど健全であり、
全50話くらいガッツリと見てから評価したくなる作品だが、
残念なことに全12話で終わってしまい、
ようやく味が出始めて、染みてきたところで終わってしまう作品だ。
引用元:©樫木祐人・KADOKAWA刊/ハクメイとミコチ製作委員会
個人的な感想
個人的には序盤はそんなに楽しめなかった。
世間の評判の割には微妙だなと淡々と見ていたのだが、
7話くらいで「あ・・・面白いかも?」と感じ始め、
最終話では「もっとみたかったなー」と思ってしまっていた。
なんとも不思議な作品だ(笑)
インパクトという点では薄く、
淡々としているため切ってしまった人もいるかもしれないが、
騙されたと思って6話くらいまで見てみると
感覚が変わってくるかもしれない。
売上的には4000枚ほどと結構売れている。
BOX売りにしてるのもうまい売り方であり、
原作の売上の伸び次第では2期も期待できる枚数だろう。
2期があるならば2クールか4クールくらいでがっつりと見たい所だ。
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