評価 ★★★★☆(67点)全91分
あらすじ MI作戦の成功を足がかりに、鎮守府の戦力は南方の海域に進出。敵泊地の攻略を続け、その戦域を少しずつ拡大していた。
引用 – Wikipedia
TV版が足を引っ張っている
本作品は艦これの劇場アニメ作品。
監督は草川啓造、制作はディオメディア。
一応、角川映画40周年記念作品となっている。
見出して感じるのはカメラワークの良さだろう。
海上を滑る艦娘たちを舐めるようにぐるっとカメラを動かし、
きちんと「風にたなびく髪」を描写し、
大きなスクリーンを意識した画作りに成っていることを感じる。
はっきりいって明らかにTV版とレベルが違う。
TV版の戦闘シーンは見ていても特に面白さはなく、
手抜きのCGと演出で何の迫力もない戦闘シーンで見応えなんてものはなかった。
しかし、劇場版は始まってそうそう「絵力」が違う。
当然予算は違うだろう、だが、ここまであからさまに違うと笑ってしまう(笑)
細かいキャラの動き、カメラワーク、演出、飛び交う砲弾、
手抜きだったTV版は何だったのか?と思うほど気合の入ったシーンづくりは、
TV版では感じなかった「緊張感」を冒頭からしっかりと見ている側に感じる。
1番違うのは水しぶきだ。
TV版では「水しぶきをあげておけばいいんだろう」という演出でしかなかったが、
劇場版ではきっちりと「重さ」と攻撃の「強さ」を表す演出になっており、
気合の入った作画とあいまってきっちりとした迫力が生まれている。
TV版で感じたCGを使ったことによる「軽さ」というのが劇場版ではまるでない。
このレベルをTV版に求めるのは酷なのはわかっている。
だが、もう少しこの劇場版レベルに近づけられなかったのか?と思うほど
レベルが違いすぎる。
比較として伝わりにくいかもしれないがまさに「月とスッポン」(苦笑)
製作会社が変わったんじゃないか?と思うレベルだ。
中盤の戦闘シーンではきちんと「戦闘機」による戦闘も描かれる。
きちんとした空中戦が描かれ、迫力のある戦闘シーンを展開し、
夜戦の緊迫感なども素晴らしい。
TV版にはなかった戦闘の「緊張感」がきっちりと表現され、
キャラクターたちが小破、中破、大破していく様がきちんと丁寧に描かれる。
そしてストーリー。
TV版の艦これは設定やキャラを盛り込みすぎて作品として崩壊していた。
頑なに描かない提督、伏線何それ美味しいのというような投げっぱなしの要素、
ゲーム版の要素をとりあえず全部盛り込んでみましたと言わんばかりの内容は
原作ファンでも呆れるレベルだった。
しかし、今作では明らかにストーリーのレベルも違う。
TV版で轟沈した「如月」が轟沈した敵から「ドロップ」するが、
彼女は轟沈以前の一部の記憶を失っており、身体には謎のアザ、
そして海が赤く染まると言う現象が起きていて・・・
と、びっくりするくらい先が気になる展開を描いている。
TV版では投げっぱなしに近くなっていた「如月」の要素をきちんと回収し、
原作ゲームの艦娘が「ドロップ」するという要素もきちんと織り込んでいる。
そしてTV版ではきちんと描かれなかった「艦娘」と「敵」の存在自体の
秘密や謎を掘り下げるような展開になっている。
見ている側としては「ようやく明かされた」という感じも強い。
本来はTV版で描かなければならなかった内容を圧縮して
劇場版で描いているような感じであり、
TV版では欠けていた「伏線の回収」と「盛り上がり所」、
コメディ要素でごまかさないシリアスストーリーは素直に面白い
この劇場版のストーリーがもしTV版の5話以降で描かれたら、
間違いなくTV版艦これは名作になっていた。
そう感じるほどガチな「シリアス」な雰囲気漂うストーリーと、
艦娘たちが背負う運命の重さの設定は素晴らしく、
明かされる主人公でも有る「吹雪」の秘密も相まって
ストーリーの盛り上がり方が本当に素晴らしい。
総評
全体的に見て完成度の高い作品だ。
「艦これ」というゲームの中で明かされていないバックボーンを
きちんとストーリーの中で明かしながらも、
「吹雪」というアニメにおける物語の主人公の存在の意味、
艦娘たちの戦い続ける運命を絡めながらきちんとしたストーリーを魅せてくれる。
TV版では戦闘シーンはCGの割合がかなり多かったが、
劇場版では手書きがかなり多い。
だからこそ、きちんとした「迫力」が生まれ、見ごたえが出ている。
「轟沈」の意味もより深まることで戦闘シーンの緊張感もきっちりと出ており、
最後までスクリーンで見ても遜色のない戦闘シーンを見せてくれた。
欠点を言うならば、この作品をきちんと楽しむためには
TV版を見ないといけないということだ。
お世辞にも完成度が高いと言えない駄作なTV版を見ないとわからない点も多く、
せっかく劇場版の完成度は高いのにTV版の完成度が低いせいで
足を引っ張ってしまっている。
やや強引な手法では有るが今から艦これという作品を見る人がいるならば
TVアニメを4話まで見てこの劇場版を見ればいい。
サブキャラの説明などがやや薄くなってしまうかもしれないが、
ストーリー的にはつながる。
一言で言ってしまえばなぜTV版から作画もストーリーもこのクォリティで
できなかったのか?という点に尽きるだろう。
作画の面は予算の関係があるから仕方ないにしても、
ストーリーだけでもこのくらいの設定の活かし方と伏線の活かし方をすれば、
もっと多くの人が艦これという作品に対して好感を持てたはずだ。
個人的な感想
個人的に言えばTV版があの出来栄えだったので何も期待してなかったのだが、
びっくりするくらい面白かった(笑)
TV版の出来栄えを考えると素直に人に勧めづらい作品であることが
本当に残念であり、見ようかどうか迷ってる人がいるならば見て損はない作品だ。
なお艦これは「2期」が決定しているようだ。
果たしてこの2期が劇場版よりの2期なのか、TV版よりの2期なのか
流石にここまで劇場版の完成度を高めたのだから、TV版のような
完成度に引き下げることはないと願いたいが果たして・・・(苦笑)
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