あらすじ 引用 -19世紀末、ヴィクター・フランケンシュタインによって屍体の蘇生技術が確立され、屍者が世界の産業・文明を支える時代が到来していた Wikipedia
冒頭の10分のハードルを超えられない
原作は伊藤計劃によるSF作品だが作者が執筆中に亡くなり、
円城塔が引き継いで完結させた小説。
監督は牧原亮太郎、制作はWIT STUDIO
見出して感じるのはWIT STUDIOらしい濃ゆい作画だろう。
19世紀が舞台という世界観の設定を活かした背景の描写は、
「スチームパンクSF」というJungleにふさわしい油と白煙と、
サビ臭さを感じるような描写であり、
「スチームパンク」という言葉が好きな人にはたまらない雰囲気だ。
更にストーリー。
「死者を擬似的に生き返らせる」技術があり、
いわゆる「魂」の存在しないゾンビ的な存在として
労働者や兵士に代わりにしているという世界だ。
非常に独特かつ、惹きつけられる。
冒頭の10分、起承転結でいえば起の部分の圧倒的な
「魅力」は素晴らしく、一気に作品の世界観に飲み込まれるような感覚になる。
「映画」という媒体を意識した端から端まできっちりと
細かく描かれた描写も素晴らしく、
「スクリーン」をきっちりと意識した画面作りになっており、
アクションシーンではきっちりと迫力のあるシーンに仕上げている。
しかし、ストーリーが非常に忙しい。
尺自体は「2時間」と90分かそれ以下の事が多いアニメ映画では
余裕のある尺なのだが、場面展開がかなり多い。
場所だけでもイギリスから始まったかと思えば、
いつのまにかインドに居て、そうかと思えばアフガニスタン、
日本、アメリカ、またイギリスと、移動しすぎだ(苦笑)
各国ごとの背景の描写はたしかに素晴らしいのだが、
2時間という尺の中でここまで場所移動をされると、ついていきづらい。
そもそも「登場人物」は「何が目的」で「どうしてここにいるのか」という
キャラクターの行動理由が中盤くらいまできちんと把握しきれず、
専門用語も非常に多いため余計に混乱する。
誰と誰がどういう理由で戦っているのかが「ふわっ」としてることも多い。
キャラクター描写を深める部分がやや
「ダイジェスト」チックになっている部分もあり、
キャラ描写が浅いのにあっさりと退場してしまうことも有り、
どうにも慌ただしい感じが否めない。
ストーリー自体も内容自体は面白く良くできている。
だが、そのよくできているよう内容を慌ただしく描きすぎており、
そのせいできちんと面白さが伝わらず、
冒頭で上げられたハードルをいつまでたっても超えないまま終わってしまう。
結局、2時間という尺でこの作品をきちんと描ききれていない。
削るべき部分、削ってはいけない部分をまとめてきれておらず、
原作を読んでいれば補完できる部分もあるだろうが、
原作を呼んでいないと補完できずにざっくばらんに見せられている感じが強い。
最後まで見て残っているのは結局、冒頭の作品の雰囲気と
10分のストーリーくらいで、結局作品の雰囲気や作画だけの
いわゆる「質アニメ」で終わってしまった感じが否めない作品だ。
全体的に見て色々と惜しい作品だ。
世界観、設定、キャラクター、作画など素材は素晴らしいのに、
それを2時間という尺でうまくまとめきれておらず、
結局「面白い雰囲気」は伝わるのだが、
雰囲気だけで終わってしまった感じが強い。
牧原亮太郎監督は「ハル」のときにも感じたが、
作画や演出などアニメーション部分での描写は素晴らしいのだが、
ストーリー展開やストーリーの描写が
いまいちうまくないように感じる。
検索した所だいぶ原作と内容を変えているようだ。
終盤の慌ただしい感じや唐突な展開、イマイチ釈然としないラストなど、
細かい部分でしっくりとこず、なんだかなーという感じが
凄い残ってしまった。・
余談だが原作者の伊藤計劃氏はこの作品を30ページ書き上げたところで
亡くなったらしい。
そういう情報を事前に知っているからというのもあるのかもしれないが、
冒頭の20分くらいと、その後の100分で印象が違って見えてしまう。
つかみは本当に素晴らしかった、だが、そのつかみの素晴らしさを
作品全体の面白さに仕上げきれていない感じがある作品だった。
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貼られてるPV間違ってますよ