あらすじ 精霊が実体として存在し人間のパートナーとして共に生きる世界。カトヴァーナ帝国の少年イクタ・ソロークは、昼寝と徒食と女漁りに精を出し、日々を怠けながら過ごしていた。だが彼は、帝国一の科学者アナライの弟子の一人であり、後に「常怠常勝の智将」と呼ばれることになる比類なき才気を持っていた。
引用 – Wikipedia
マッドハウス制作なのに漂うGONZO臭
監督は市村徹夫、制作はマッドハウス。
なお監督は新人であり、長年演出家を努めている。
なお、そういう監督の作品は総じて駄作になるジンクスが私の中にある。
見出して感じるのはキャラクターデザインの微妙さだろう。
だれも知らないようなRPGゲームの主人公のような
特徴のない主人公のキャラクターデザインは何のインパクトも残さず、
可愛げの一切ないヒロインのキャラクターデザインは、
はっきりいって不細工ぎみ。
装飾品や服装などでなんとか特徴を出そうとしているのだが、
最近のアニメでここまで「無個性」なキャラクターデザインはなかなかない。
独特な「唇」の描写は若干印象に残るものの、
どちらかというと妙に強調されすぎていて気持ち悪い。
更に主人公の喋り方。
演じているのは岡本信彦さんなのだが、
はっきりいって「イラッ」っとくる喋り方や台詞回しであり、
主人公の外見と喋り方のせいで物語の芯にいる主人公に対して
嫌悪感をいだきやすい。
登場人物の名前でさえ
「イクタ・ソローク」「ヤトリシノ・イグセム」など
字面で見れば覚えやすいのだが、音で聞くと頭に一切記憶に残らない名前だ。
無個性なキャラデザとおぼえにくいキャラの名前、
専門用語や回りくどい台詞回しなど
世界観がよくわからない中でストーリーが展開されても内容が頭に入ってこない。
取っ掛かりというものがこの作品にはない。
例えば主人公がかっこいい!だったり、ヒロインが可愛い!だったりといった
外見的な取っ掛かりは皆無であり、
この後どうなるのかな?といったストーリーの面白さも序盤では見えない。
アニメ的な「面白さ」というのが序盤では感じられない。
おそらく同じシーンでも原作の「小説」という媒体で読めば
面白いと感じられるシーンでも、
アニメになってしまうと、原作の面白さを殺してしまっている。
この作品が面白くなってくるのは4話あたりからだ。
1クールの作品で4話くらいからようやく面白くなってくるというのはやや遅く、
これが2クールの作品ならば序盤の淡々さやストーリー展開の遅さは
理解できるが、1クールの作品で4話から盛り上がってくるというのは
視聴者を意識していないストーリー構成だ。
序盤の1話や2話は物語の始まりではあるが、
やろうとおもえば時系列を変更して中盤くらいに過去回想として
差し込んでもいい話だ。
原作通りにやろうとしてアニメにおけるストーリー構成が甘く、
その結果、序盤はキャラクターへの感情移入がしづらく作品に入り込めず、
地味な印象のまま見るのをヤメてしまった人も多くいるだろう。
主人公自体が「頭脳派」であり、剣の達人なわけでも
凄い魔法が使えるわけでもない。
部隊を率いて敵よりも凄い作戦を考えてそれを実行しているだけであり、
主人公の凄さと言うものがストレートに伝わりにくいうえに、
主人公が建てた作戦も冷静に考えるとツッコミどころも多い。
そもそも世界観の設定も把握しきれない。
「精霊」という存在がついているのはわかるのだが、
その存在理由やなぜ精霊がついているのかもよくわからず、
たまに出てくるのだが「作品における必要性」をあまり感じず、
精霊はいるのに魔法の存在はあまり描かれない。
そうかとおもえば「科学」という言葉が主人公の理念にもなっていたり、
いまいち設定を見ている最中に飲み込めない部分がある。
一見重厚そうな世界観だったり、一見頭の良さそうなストーリーに見えるのだが、
少し考えるとツッコミどころが生まれ、そこが気になってしまう。
ストーリー自体の「流れ」は悪くはない。
いわゆる作品のプロット的にこの作品を見ると面白そうなのだが、
そのプロットから細かいストーリーを見ていくと、
作品全体にほころびが生まれてしまっている。
例えば物語中盤で主人公がドヤ顔で「高山病」を持ち出してくる。
それを知らない友軍がピンチになっていたり、
高山病にならないように主人公が対処したりするのだが、
このシーンをリアルだと思う人もいるかもしれないが、
そもそも主人公以外、誰も山に登ったことがないのか?と思うほど
「高山病」に対して無知だ。
主人公の頭の良さを際だたせるために、
普通のキャラの知能知識レベルを下げているだけであり、
主人公お得意の科学技術ならわかるが生活の知恵レベルの高山病対処を
持ち出されてドヤ顔をされても萎えるだけだ。
そもそも高山病になる原因は酸欠と言われているのだから
使い道の薄い「精霊」を使って対処できそうなものなのだが・・・
全体的に見てアニメーションとしての面白さの薄い作品だ。
たまに戦闘シーンで激しく動くことはあるものの、
物語の主軸たる主人公が「軍師」だからこそシーン描写は地味であり、
序盤の淡々としたストーリー展開ととっつきにくさなど、
全体的に地味であり印象が薄い。
本来はこの作品は2クールないし4クールくらいでがっつりと
描かなければならない作品だ。
しかし、1クールという尺しか与えられていないのに、
原作通りに1クール真面目に作ってしまったために、
まるで全50話近いアニメの序盤を見ているような感覚で終わってしまう。
ライバル的存在も現れ、本来はここから面白くなるのだろう。
そういった雰囲気や要素はすごく感じるところでストーリーが終わっており、
見終わった後に1つの作品を見終わった感じが薄く、
続きも2期というよりも「原作読んでね!」という制作側の意図が
物凄く伝わってしまう。
ずっと見ている間に違和感があったのだが、
本作品の監督である市村徹夫氏が「GONZO」でいろいろな作品に
関わっていたと知って納得してしまった。
この作品自体はマッドハウス制作の作品だが、
キャラクターデザインや序盤の地味さなど、
まさに10年くらい前の死にかけのGONZOの作品臭がすごくする。
GONZOというアニメ制作会社が印象に残っているのは、
基本的に2クールで原作の改変をしてても完結させるからこそであり、
売れる売れないではなく貫き通した何かと、
1つの作品を完結させるスタイルがきちんとあったからだろう。
しかしマッドハウスで1クールでは
この10年前のGONZO作品のような印象は残らない。
制作がGONZOで2クールあったならばこの作品も、
もっと面白くなったかもしれないだけに残念だ。
売上的には正確な枚数は出ていないものの爆死。
原作の売上もあまり伸びていないようで、
2期の可能性は薄いだろう。
個人的にはどうにも最後まで主人公の「科学的うんぬん」の
セリフの違和感を脱ぎされなかった。
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