あらすじ 江戸は下町の長屋に暮らす絵師の鉄蔵こと葛飾北斎とその娘、お栄。そして居候の善次郎。3人は書き損じが散らかった部屋を気にも留めず、日夜創作活動に励んでいた。そんな彼らのもとに鉄蔵のライバル歌川門下で若年ながら頭角を現す国直も出入りするようになる。引用 – Wikipedia
映画としてはつまらないが、決して作品が面白くないわけではない
監督は原恵一、制作はProduction I.G。
副題のMiss HOKUSAIのとおり、葛飾北斎の娘を主人公としている。
見だして感じるのはロックな曲調だろう(笑)
舞台は江戸であり登場人物はもちろん和装、
それなのにオープニングではエレキギターがかき鳴らすBGMだ。
この不思議なミスマッチさながなんとも言えない空気感を生んでいる。
そしてセリフ回し。
きちんと江戸言葉で話しておりセリフが難解になっている。
直接的な表現でなく、抽象的な表現による会話なども多く、
きちんと「江戸文化」の中での自然なセリフになっている。
そんなセリフだからこそ不思議な空気感が漂っている。
葛飾北斎と娘のお栄、そんな二人の日常。
全体を通して大きな物語があるわけでもない。
丁寧なセリフ回し、きちんと書き込まれた背景、
醸しだされる空気感、二人の何とも言えない日常のストーリー、
その1つ1つがうまく絡み合いリアルな「生々しさ」を生んでおり、
その生々しさがこの作品の面白さになっている。
江戸時代の匂いや、そこに暮らす人の生き様を垣間見えるような
味わいを感じることのできる作品だ。
ただ、その反面で1つの映画として地味だ。
この作品は起承転結のある作品ではない。
オムニバス形式に細かいエピドードを繋いでおり、
はっきりいってしまうと平坦に感じやすいストーリー構成だ。
メリハリがなく淡々とストーリーが進んでしまう感じが強い。
面白いのだが地味だ、地味だが面白い。
この「地味さ」が映画としては欠点であり、
私はこの作品を「劇場で見たい」とは思わない。
随所で葛飾北斎の絵と同じ情景が描かれていたりもするのだが、
「江戸時代」を忠実に描くためにどうしても色合いが地味で、
演出面での弱さを感じてしまう。
だが、この作品において派手な色合いの演出は
「染み渡るような面白さ」を殺してしまいかねない。
映画としては欠点ではあるが、この作品を描く上では地味さは
仕方ない部分が大きい。
全体的に見て非常に好みの分かれる作品だ。
映画という媒体としては退屈に感じる部分が多いが、
アニメとしては江戸時代を扱った貴重な作品であり、
「葛飾北斎の娘」という題材を生々しく描き、
最初から最後まで淡々としてはいるが、
見終わった後にしっとりと面白さがにじみわたっている。
ただ、やっぱりアニメ化向きの作品だったとはいえないだろう。
確かに丁寧に書き込まれた江戸時代の描写は面白いのだが、
話の地味さや演出面での地味さは退屈に感じる部分も大きく、
オムニバス形式のストーリー構成は話の当たり外れや、
全体を通してのストーリーが無いため地味すぎる。
実写化ならこの地味さがもう少しごまかせた部分もあっただろう。
題材としては非常に面白く、
アニメ化というよりは「大河ドラマ」向きの作品のようにも感じる。
もう一歩何かあれば、そう感じるもどかしさがつきまとってしまう作品だった。
「葛飾北斎の娘」というキーワードに惹かれた方ならば、
見て損はないかもしれない。
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