評価 ★★★★☆(70点) 全13話
あらすじ 「架空(ゆめ)」は、現実に!これは、僕が最高のヒーローになるまでの物語だ。引用- Wikipedia
努力・友情・勝利、これぞジャンプだっ!
原作は週刊少年ジャンプで連載中の漫画作品。
監督は長崎健司、制作はボンズ。
アメコミ
見だして感じるのは「ああ、週刊少年ジャンプだな!」という感じだろう。
努力・友情・勝利と週刊少年ジャンプが掲げる掲載作品のテーマ、
そんなテーマを冒頭の1分とオープニングを見ることに
よって感じることができる。
ポルノグラフィティが歌うOP、ジャンプ漫画原作アニメのOPらしい
オープニング映像が「ジャンプ漫画原作」のアニメが始まった!という
強い感覚を感じることができる。
この作品はわかりやすくいえば「アメコミ」モチーフな
少年ジャンプ漫画だ。
全世界で超能力のような「個性」に目覚めるものが多発し、
その「個性」を使い悪事をはたらくもの「ヴィラン」が現れ、
そんなヴィランに対抗するためにヒーローという職業が生まれた世界だ。
そういう世界だからこそヒーローに憧れる人が多く存在する。
1話冒頭から「スパイダーマン」もびっくりなヒーローが
ヴィランと戦う様子を主人公と一緒に見せることで、
この作品の世界観をわかりやすく、ストレートに伝えている。
水をあやつるもの、怪物のような巨大な姿になるもの、
木をあやつるもの、ありとあらゆる個性という名の
超能力が存在することを1話冒頭でドカンと見せつけてくれる。
1話冒頭から叩きつけられたような捻りのない「正統派」なバトル作品だ。
簡単にいえばこの作品は「マーベル・コミック風ジャンプアニメ」だ。
「ヴィラン」という敵の呼称の仕方はまさしくそれであり、
アニメでも「アメコミ風文字演出」が
加わることで余計にその趣を強めている。
しかしこの作品はアメコミを「インスパイア」しているが、
あくまでも「ジャンプ漫画」だ。
アメコミでも見かけないヒーローになるための「学校」が舞台になっており、
主人公はそこに入学しようとしている「少年」だ。
だが、彼には「個性」がない。
個性
個性という名の超能力は、言い換えれば才能だ。
学力や運動と同じく、人によって大きな差がある。
犯罪に使われるような凶悪な個性もあれば、
ちょっとものを引き寄せるくらいの個性しかない人もいる。
多くの学生がヒーローに憧れている、主人公も同じだ。
だが、彼は誰もが知るほどの無個性であり落ちこぼれだ。
しかし、それでも彼は諦めない。
子供の頃からヒーローに憧れてきた。
ヒーローの中のヒーロー「オールマイト」に憧れた少年は
彼のようになることを子供の頃から願っている。
しかし、いくら努力しようとも彼に個性が授かることはない。
ヒーローになりたい、そんな思いだけをずっと抱えている。
そんな落ちこぼれな少年が「憧れのヒーロー」に出会うことで
彼の、主人公がヒーローになるためのストーリーが始まる。
オールマイト
帰り道にヴィランに襲われた主人公は、
子供の頃から憧れたヒーローである「オールマイト」に助けてもらう。
しかし、そんな彼の秘密を主人公は知ってしまう。
テレビの画面越しに見たヒーロー、オールマイトは多くの少年の憧れだ。
ヴィランがはびこるこの世界において「平和の象徴」ともいえる。
だが、そんな彼にもはや全盛期ではない。
少年が憧れたヒーローはヴィランとの戦いで後遺症の残る怪我をし、
1日3時間しか全盛期の力を出せない。
憧れの存在の真実、平和の象徴の現実を知った主人公。
それでもまだ「ヒーロー」になるのか。
戦って勝利を掴むのは画面の中のヒーローだけだ、現実は違う。
負けることもある、救えないこともある。
憧れだけでなく「現実」を主人公である緑谷出久は実感する。
個性がない現実、落ちこぼれという現実、憧れのヒーローの現実、
そんな現実を彼は目を背けて憧れと夢だけで歩いてきた。
しかし、憧れの存在の真実を知ったことで現実を実感する。
それでも突き進むのが主人公だ、ジャンプ漫画の主人公は逃げない。
「緑谷出久」という少年は自らに個性がなくとも、
友達を助けるためにヴィランに立ち向かう。
今まで彼は何もしていなかったわけではない、
誰よりも多くのヒーローを見て、誰よりもヒーローを学んできた。
だからこそ、彼にはわかっている。
例え助けようとしている友達が自らに悪口を言ってきたやつでも、
助けを求める声に「ヒーロー」ならば答える。
個性でも、才能でもない、その心のあり方こそが
「ヒーロー」だと彼はわかっている。
少年の行動に、信念に「オールマイト」も動かされる。
かつてのように力を出せなくとも、自らの体がボロボロでも関係ない。
個性もない、ヒーローでもない少年が友達を助けるために
ヴィランに立ち向かっている。
考えるより先に動き出してこそヒーローだ。
そんな少年にオールマイトというヒーローの中のヒーローは、
自らの「後継者」としての可能性を見出す。
「君はヒーローになれる」
友達にも母親にも、誰にも言われなかった言葉を
憧れのヒーローから投げかけられることで、
彼の未来が開ける。
修行
展開自体は王道ではあるものの、テンポはやや遅い。
主人公が憧れのヒーローに出会い、鍛えてもらい、能力を受け継ぎ、
ヒーロー科のある高校への受験に挑むとい
う序盤のストーリーだけで3話だ。
1話1話明確で「ストーリーの内容」がしっかりとしており、
その1話1話が積み重なっていく感じが「王道」の面白さを強めているが、
1話1話淡々と進めている感じもある。
だが、その淡々さが「落ちこぼれな主人公」の努力を引き立てる。
彼は特殊能力を持つのが当たり前の世の中で、何の能力も持っていない。
そんな彼が憧れのヒーローから「個性」をもらうことで、
ヒーローへの道が開ける。
しかし、あくまで「個性」はもらったものだ。
オールマイトの個性は受け継がれし特別な個性だ。
力を譲渡する力、「ワン・フォー・オール」は
受け継げば受け継ぐほど力が強くなっていくものだ。
オールマイトも受け継いだ個性を使い、平和の象徴になっていった。
そんな彼の後継者に緑谷出久という少年がなる。
だが、そう簡単ではない。
力を使うためには「努力」と「修行」が必要だ。
なろう系作品のように異世界転生したらチートな能力をもらった
みたいな安易な展開ではなく、
ジャンプ漫画原作らしい泥臭い修行パートが描かれている。
これぞまさに王道だ。
「他の人の何倍も僕は頑張らないといけないんだ」
無個性な少年が個性を手に入れるために
10ヶ月間、ずっと努力をし続ける。
緑谷出久という少年、緑谷出久という主人公が
どんなキャラクターなのかをきちんと掘り下げつつ、
彼が強くなる過程を丁寧に描いている。
彼が目指すのはただのヒーローではない、
憧れのオールマイトのような平和の象徴だ。
どこかで諦めていた夢、しかし向き合わなかった現実が彼にはあった。
だが、彼はオールマイトと出会うことで夢を諦めずに、
現実と立ち向かうようになっている。
試験
この作品はひたすらに王道だ。
なんてベタなんだろう、いやなんて「王道」なんだろうと
思わず感じてしまうほどだ、この作品に捻りなんて一切ない。
清々しさを感じるほどのストレートな設定と、
その設定に付き従うような愚直なまでの真っ直ぐなストーリーを
毎話、毎話、爽快感を強く感じさせてくれる。
「こういう展開になるんだろうな」という予想は見ている間にできる。
だが、その予想以上に予想通りな展開が
「待ってました!」と言わんばかりの王道の面白さを強く感じさせる。
落ちこぼれだった少年が憧れのヒーローに出会い、
師となり、彼に鍛えてもらうことで強くなり、
そしてヒーローになるための学園への試験に挑む。
試験と言えばジャンプだ。
ハンターハンターにNARUTOなど、
有名なジャンプ漫画には試験があることが多い。
そんな王道に習うようにこの作品にも試験がある。
試験の中で出会う後のクラスメイト達、
そんなクラスメイトたちとの試験を描きつつ、
「緑谷出久」が引き継いだ力の強さを感じさせる。
10ヶ月の努力の末に個性は受け継ぐことができた、
しかし、受け継いだ力は膨大だ。
彼の体に見合わない強すぎる力はコントロールすることが難しく、
最初に発動した時は片腕と両足が粉砕してしまうほどだ。
たった1発の殴り、その1発を自分のためではなく、
助けたいと思う少女を助けるために彼は使う。
考える前に動く、まさにヒーローだ。
眩しいまでの主人公の姿、そんな姿を
「ボンズ」というアニメ制作会社はみせてくれる。
巨大な敵に殴りかかる姿をダイナミックに描きつつ、
巨大な敵と主人公のサイズ感を表すためにカメラを引きつつ、
1枚の絵として完成された構図で魅せてくれる。
学校
言い方を変えればベタかつ、無個性な作品とも言えるかもしれない。
しかし、この作品はそう感じさせないように「アメコミ」というスパイスと
適度なギャグ要素をくわえ、ベタと感じさせず、無個性と感じさせない。
「王道の面白さ」を追求している作品だ。
ただ「王道」であるがゆえにストーリーのテンポはやや遅い。
徐々に個性を使いこなし、徐々にヒーローとして成長していく。
テンポが遅いからこそ1話1話にしっかりと「見どころ」があり、
淡々としているからこそ主人公の「努力」による成果を
見ている側にしっかりと実感できる。
いざ学校に入っても、個性をうまく使えない主人公にとっては
ちょっとした授業やテストですら大困難だ。
少しずつ個性を使いこなし、少しずつ自らの力にしていく。
その中で先生やクラスメイトなどのキャラも掘り下げていく。
主人公の緑谷出久は決してかっこいいと癒えるようなキャラではない。
なよなよした見た目で、オールマイトから個性をもらっても、
その力に振り落とされないように必死だ。
しかし、そんな必死な彼だからこそ、ヒーローというものに
しがみつこうとしている彼が徐々にかっこよく見えてくる。
幼馴染
そんなヒーローになろうとしている主人公に立ちはだかるのが
「爆豪勝己」という幼馴染だ。
子供の頃から個性のなく自信のない主人公と、
子供の頃から個性に目覚め自分に自信のある幼馴染。
正反対とも言える二人だ。
「爆豪勝己」という男は主人公をバカにすることで
自分というものを確立している。
自分より下の緑谷出久という男がいることで、
彼自信が優位な立場に立ち、
それが彼を彼たらしめんとしているといってもいい。
そんな自身の存在が揺れ動いてしまう。
個性がないと思っていた男が、とんでもない個性に目覚め、
自分の前に立ちはだかる。だからこそ許せない。
自分がバカにしていた男が、下に見ていた男が、
自分と対等のように目の前にいることが許せない。
幼馴染同士の模擬戦、本気で襲いかかる爆豪勝己と、
本気で力を使えない緑谷出久。
彼は力を調整できない、できないからこそ使えない。
下手したら殺してしまう。
だからこそ知恵を使う、一人だけでは敵わない。
そんな敵に「仲間」とともに挑む。
努力、友情、勝利、ジャンプ原作アニメらしい王道の展開だ。
戦闘シーンも素晴らしい。
さすがは「ボンズ」と言いたくなるほど丁寧な描写で、
激しいアクションを存分に見せてくれる。
激しい動きを魅せたかと思えば止め絵をしっかりとみせることで
アクションにメリハリが生まれ、ケレンミがうまれる。
基本的に人間VS人間であり、その中での「能力」の見せ方と動きを、
妥協なくしっかりと描くことで戦闘シーンを素直に楽しむことができる。
1期は全13話という短い尺ということもあり、
あくまで主人公とメインキャラの顔見せ程度で
終わっている部分はあるものの、
個性豊かなキャラクターの印象はしっかりと付く印象だ。
ヴィラン
終盤になると、主人公たちの前に「ヴィラン」が現れる。
個性という超能力がはびこる社会、そんな社会だからこそ、
その個性を人を殺すため、金品を奪うために利用するものもいる。
彼らの狙いはオールマイトだ、平和の象徴である彼を倒すことで
ヴィランたちの存在感を指し示す。
だが、主人公たちのそばにオールマイトはいない。
力を主人公にわたし、徐々に力もへっていき、
戦える時間も少ない彼のかわりに戦うのは
力と意思を受け取った次世代のヒーローたちだ。
しかし、彼らはまだプロですらない学生だ。
そんな彼らがヴィランに挑む。
互いの個性をしり、互いの個性を活かしながら戦うしかない。
そこに恐怖はある、少し前まで中学生だった少年少女だ。
だが、彼らはヒーローを目指すものだ。
恐怖を心の奥底に押し込めて拳を握りしめ勝利を掴む。
しかし、ヴィランも甘くはない。
学生である彼らに牙を剥いてくる、
そこに現れるのは平和の象徴たる「オールマイト」だ。
オールマイト
彼はこの作品の象徴たるキャラクターだ。
最強のヒーロー、この作品の世界における平和の象徴、
彼がいるからこそ一部のヴィランがヒーローというものに怯え、
犯罪を侵さない、犯罪の抑止力だ。
そんな彼が生徒や先生でも敵わない敵に挑む。
彼には全盛期ほどの力はない、時間制限もある。
だが、平和の象徴として、ヒーローとして、先生として、
そして緑谷出久という主人公の「師」として戦う姿は
1クール目の最大の盛り上がりだ。
オールマイトの力は超パワーだ、シンプルな個性だ。
だからこそ、彼の戦いはシンプルな殴り合いになる。
そんな殴り合いをボンズによる作画で盛り上げる、
殴るという動作、その1つ1つの所作を意識するような
流れるアニメーションと演出、
漫画のコマと「見開き」を意識したようなカメラワークが
素晴らしい戦闘シーンに仕上げている。
物語はまだ序章だ、主人公のまだ未熟で力も使いこなせない。
そんな彼がもっと先を、未来を、ヒーローを目指す物語が始まる。
総評:ここまでの王道はもう見れないかもしれない
全体的に見て素晴らしく「王道」な「少年漫画原作」のアニメだ。
正統派かつ、捻りのないどストレートなストーリーと設定、
本来はベタに感じたり、ありきたりに感じたしまいかねない内容だが、
そこに「アメコミ」というスパイスを加える事で
王道の面白さを突き詰めた素晴らしい真っ直ぐに素直に
「面白い」と言える作品に仕上げている。
予想しやすいストーリー展開ではある、
だが、予想しやすいからこそのお約束敵少年漫画の盛り上がり方を
シンプルに味わせてくれる。
ややテンポが悪いと感じる部分はあるものの、
過去のジャンプアニメに比べれば十分速い店舗だ。
俺TUEEでも、中二病でもない、才能に頼った主人公でもない。
「努力」で才能のあるものに追いつく主人公は見ていて清々しく、
彼の痛々しい戦闘シーンの数々は王道なストーリーの中での
盛り上がりを強めており、
彼が成長していく様をじっくりと味わうことができる。
努力・友情・勝利、
久しぶりに少年ジャンプが掲げるテーマを体現した清々しく突き進んでいる作品だ。
1期の段階ではストーリー的にはまだまだ序章だ。
アニメで完結まで見れることを期待したい。
個人的感想:原作完結記念
原作が最終話を迎え、アニメも最終章に突入し、
僕のヒーローアカデミアという作品の終りが見えてきたからこそ、
あえて1期を見返してみたが、
8年という月日がたってもしっかりとした面白さのある作品だ。
今のジャンプはワンピースをのぞき、
あまり長期連載というのをやらなくなった。
僕のヒーローアカデミアは10年という連載期間、
呪術廻戦でさえ6年であり、そろそろ完結しそうなことを考えれば、
今後10年以上同じ漫画が続くということはないのかもしれない。
そう考えると、もしかしたらジャンプという作品において
最後の王道の長期連載漫画だったかもしれない。
色々と感慨深い作品だ。
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