とある半島の海沿いにある田舎町に住む鹿田ココノツは漫画家を夢見ているが、父・鹿田ヨウから実家の駄菓子屋・シカダ駄菓子を継ぐように告げられる。しかし、それを嫌がるココノツの前にある日、都会からやってきた駄菓子マニアの女の子・枝垂ほたるが現れ、あらゆる手段でココノツに駄菓子屋を継がせようと奮闘する。
さや師可愛いよ!さや師!
監督は高柳滋仁、制作はfeel.
駄菓子を題材にした作品であり、実際の駄菓子が実名で登場している。
見だして感じるのは非常に珍しいパターンだ。
最近はOPの前にAパートを入れる1話が多いが、
この作品は最近では珍しく1話冒頭からいきなり普通のOPだ。
特に印象的ではないOPでいきなり始まる構成は若干ながら謎だ、
しかも1話の段階では未完成であり、余計に謎だ。
そして次に感じるのは「キャラクターの目」の特徴だろう。
いわゆる「ジト目」といえば良いのだろうか、
何人かのキャラの中に一人ジト目がいるという作品はよくあるが、
この作品の場合、登場人物のほとんどがジト目だ。
主人公も、ヒロインも、親族関係も、サブキャラクターも、全てがジト目。
原作からしてこういうキャラクターデザインのようだが、
若干ながら癖を感じるキャラクターデザインだ。
更に冒頭から妙に笑えないパロディギャグが挟まれる。
このネタが心底笑えない。
ネタ元は有名所が多く、ネタ元がわからないがゆえの笑え無さではなく、
間延びしたテンポのせいでパロディギャグに勢いがなく、
ギャグがギャグになっていない、
はっきりいってしまえばパロディになってすらいないパロディだ。
ジト目キャラクターデザインと、笑えないパロディギャグ。
この2つのとっつきにくさと相反するように
内容自体は「駄菓子」を扱ったとっつきやすい日常ギャグアニメだ。
1話からうまい棒をネタにし、懐かしい要素を入れつつ、
駄菓子の雑学やネタを入れながら話を展開している。
この駄菓子ネタ自体はあるある系や、突拍子もないネタが多いものの、
クスクスと笑えるものが多く、
駄菓子だからこそのなじみ深さと、駄菓子だからこその多様性のあるネタは、
毎話、駄菓子によって変わっていく話の方向性は素直に面白い。
1ネタ1ネタは非常によく考えられており、
いろいろな懐かしい駄菓子が登場しながらの日常ギャグは素直におもしろい。
味の組み合わせから食べ方まで「駄菓子」だからこその
汎用性のある内容は「なるほど、この駄菓子はこういうネタにしたのか」と
妙に達観した立ち位置からうなずいてしまうのは、
駄菓子を子供の頃に散々味わったからだろう(笑)
そして、この作品最大の魅力とも言えるキャラクターの存在。
主人公の幼馴染であり、主人公に恋心を寄せる、喫茶店で働く女の子。
ここまでなら多くのアニメ作品に存在する幼馴染キャラだが、
この作品の場合「目付きが悪いジト目」であり「ピアス」をしており、金髪だ。
一言で言うならヤンキーのお姉さんというような風貌の彼女、
そんな彼女が可愛い(笑)
主人公に対する嫉妬が爆発すると口調はヤンキーであり、
病んデレではなく、ヤンキーデレともいうべき彼女。
反応の一挙一動や、子供の頃のエピソードなど
思わずニヤニヤしてしまうほどの可愛さを秘めており、
メインヒロインの「ほたる」が駄菓子変人のために
余計に幼馴染の「さや」というキャラの可愛さが際立っていた。
だが、せっかくのネタが間延びしてしまっている。
1話の中で複数の駄菓子が登場する複数のエピソードで
構成しているにもかかわらず、
1話30分という尺の中で、その1つ1つのネタのテンポが悪い。
余計なパロディ要素、間延びしたどうでもいいシーン、妙な間、
せっかくの面白いネタを30分という尺に膨らませるために、
薄めているような印象が非常に強く、
原作を読んでいなくとも水増ししている部分が分かりやすく感じてしまう。
特にパロディ部分はそれが顕著だ。
ふくらませるならば食べるときの口元や舌、食べた時の味の感想の演出、
動きなどを膨らませればいいものを、
別に膨らませなくても良いシーンを膨らましたり、
余計なパロディ要素を入れてしまうため、
本来ならば笑えるシーンが笑いづらくなってしまっている。
はっきりいって演出が全体的に悪い。
妙に後ろからキャラクターを映すシーンが多かったり、
妙に合わないBGMが中途半端に入ったり、
シーンとシーンの間をつなぐために唐突に一瞬すぎるアイキャッチを入れたり、
話の盛り上がりの腰を折るような演出が多いのは気になる所だ。
ただパロディに関してはなぜか序盤のみで中盤以降から無くなる。
演出の方法がネタ切れでパロディを取り入れるなら分かるのだが、
最初にやっていたパロディのほうが早々にネタ切れしたのか、
序盤にやってみたものの合わないことに気づいたのか、
笑えないため中盤からパロディ要素が無くなるのはいい事ではあるのだが、
未完成のOPから始めた1話と同様に謎だ。
日常要素の部分のまったり感、駄菓子ネタギャグ部分の勢い、
本来はその2つの要素がうまく混ざることで
この作品の「テンポ」が生まれてくるはずなのだが、
この作品の場合、日常部分のテンポとギャグ部分のテンポが
両極端であり、アニメではそれがうまく混ざりきらなかった感じだ。
全体的に見て色々と残念な作品だ。
原作は1話10ページほどの作品らしく、現在まだ4巻しかでていない。
原作ストックを考えれば正直ってアニメ化が早かった感じも否めない。
だからこそ制作陣も30分枠という中で、
原作ネタを活かしつつ話を腹話ませて全12話のストーリー構成にするための
苦労は見えるものの、その苦労が結果的に原作の面白さを薄めてしまっていた。
1話30分という尺がこの作品にあっているかどうかは難しい所だ。
田舎という舞台、夏休みという時期だからこその日常的要素のまったり感は
30分という尺だからこそ感じられる作品の魅力が生まれているが、
駄菓子ネタだけに限定すれば1話5分や15分などのミニ枠のほうが
勢いがもっと生まれてギャグアニメとしては際立ったかもしれない。
両者が共存するこの作品はどちらが正解とも言えない。
30分の中で複数エピソードのストーリー構成は恐らく合っているが、
原作ストックがあまりないからこそ複数エピソードでは
早々に原作を使いきってしまい、パロディや演出でふくらませるしか無い。
極論を言ってしまえばアニメ化が少し図ったのではと感じる作品だ。
舞台が夏なのだから、あと2クール先延ばしにすれば、
もう少し詰め込んだストーリー構成もできたかもしれない。
決して面白くない作品ではない、だが、
もっと面白くなった可能性を感じる作品なだけにもどかしさを感じてしまう。
売り上げ的にはイベチケがついた1巻が2000枚前後と、
2巻以降の売上を考えればいわゆる爆死、
ただ減作の売り上げはそうとう伸びたという情報があるので、
それ次第では2期の可能性ももしかしたらあるかもしれない。
個人的には話によって当たり外れがでかい感じだったが、
沼倉愛美さん演じる「さや」がツボに入ったおかげで
ラブコメ的要素部分は素直に楽しめた。
ただ、やっぱりサンデーアニメは色々な宿命を背負ってるなと
ひしひしと感じてしまう作品でもあった(苦笑)
電波教師といい、境界のRINNEといい、うしおととらといい、
近年のサンデーアニメはなぜこうなってしまうのか・・・
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