評価 ★★★★★(82点) 全10話
あらすじ 不慮の事故で命を落とした高校生の佐藤和真(カズマ)は、天界で女神アクアに異世界への転移を持ちかけられる。引用- Wikipedia
この素晴らしいファンタジーギャグアニメに祝福を
原作はライトノベルな本作品
監督は金崎貴臣、制作はスタジオディーン
お決まりの異世界転生からギャグへ
引用元:©2016 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会
この1話冒頭で「わかりにくい」と思う人は居ないはずだ。
昨今のラノベ原作ではよくある「オタクな主人公」と
「異世界召喚型」のストーリー、そのテンプレート的な要素でしかない部分を
視聴者が「わかっている」前提ではなく、1から丁寧に説明してくれている。
主人公はトラックに引かれそうになった女の子を助けようとして死んでしまう。
目が覚めるとイスしかない空間で死んだ主人公と、
死後の行く末を決める女神が対話する。
Theテンプレート、なろう系と揶揄されてもおかしくない始まり方だ。
しかし、この作品はそんなお決まりなテンプレートをギャグにしてしまう。
主人公は寝不足でトラックと低速のトラクターを「勘違い」して
突き飛ばして助けようとした女の子には怪我をさせてしまっているし、
主人公はトラックに引かれたと思って「ショック死」している(笑)
そんな主人公の無様とも言える死に様に笑いが止まらない女神、
そんな女神に「イラッ」っときた主人公というところから物語が始まる。
異世界転生やこの手のファンタジーの「お約束」を
この作品はギャグにしている。1話冒頭から作品の雰囲気、
作品がやりたいことをきっちりと感じさせてくれる。
転送特典
引用元:©2016 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会
この手の転生・転送なファンタジー作品の場合は
その際になんらかの「特典」がある。いわゆる「俺TUEEE」要素だ。
この作品の世界でも転生特典がある。
「1つ」だけ特別な武器やアイテム、才能を持っていけるという特典だ。
そんな中で主人公である「カズマ」は生意気な態度で自分を笑った
女神を持っていくことを宣言する。
その反則ともいえる決定が受け入れられ、女神が慌てふためく中で
女神とともに異世界に転送される。
めちゃくちゃだ(笑)
普通なら物凄い強い武器やチートな能力で異世界無双するのが
この手の作品のお決まりだが、この作品は能力やアイテムをくれる
「女神」そのものをつれていってしまう。
戸惑い慌てる女神の姿に主人公であるカズマは
まるで「悪役」のような笑みを浮かべつつ高笑いをする様をえがくことで、
主人公の性格の悪さと主人公の魅力を感じさせてくれる。
王道な世界観と設定なのに、その裏をかくようなキャラクターたちの
行動や言動が異世界ファンタジーを異世界ギャグファンタジーにしている。
うまくいかない
引用元:©2016 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会
基本的に彼らの冒険はまるで上手く行かない。
チートな武器や能力の代わりに女神を持ってきたはいいものの、
主人公自身能力は平凡、普通のモンスターを退治するのにすら苦労する。
それだけならいいが田舎の街のためクエスト自体も少ない。
金もなければ力もない、馬小屋で過ごし、肉体労働で日銭を稼ぐ(笑)
こんな異世界ファンタジーがあっただろうか。
冒険者らしくクエストにいっても、女神様はカエルに飲み込まれ
唾液まみれにされ泣きわめく。
そのうまくいかない日々が「ドタバタコメディ」になっており、
まるで4コママンガのように小さいエピソードを積み重ねつつ、
エピソードごとにきちんと「オチ」がつく。
オチがつけばアイキャッチが表示され場面が変わる。
本当にギャグアニメのような演出とストーリー構成になっている。
残念系ヒロイン
引用元:©2016 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会
この作品はある意味で「ハーレム」な作品だ。
主人公であるカズマの仲間には女神、魔法使い、女騎士が居る。
どの娘も美人、美少女、2名はナイスバディと
バランスの取れたヒロイン構成だ。
しかし、この作品はそんな王道の「ハーレム要素」すらギャグにする。
なにせ、全員が「駄目だこいつ」と主人公だけでなく視聴者すらも
思わずつぶやいてしまうような残念系ヒロインたちだ。
女神である「アクア」はほとんどのステータスが高いのだが、
「知力」だけが平均以下であり、その力をうまくつかうことができず
失敗ばかりだ。
魔法使いである「めぐみん」は最強の攻撃魔法エクスプローションを
使えるのだが、1日1回しか撃てないうえに他の魔法は一切使えない、
しかも1日1回はどこかでうっぷんを晴らすように
エクスプローションをうちはなつ。
女騎士である「ダクネス」は何故か攻撃が一切当たらないが
自分を「盾」にされることを望んでいる。
モンスターに捕食されたい、ヌルヌルにされたい、痛めつけられたい。
魔王に捕まりたい、エロい目にあいたい、Mだ(笑)
見た目は美少女、美人なヒロインだが中身が残念すぎる彼女たちのおかげで
ハーレムなはずなのに一切ハーレムな雰囲気が出ていない。
残念な彼女たちの行動や言動にドン引きする主人公や「敵」に
思わず同情してしまうほどだ。
クズマ
引用元:©2016 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会
そんな残念系ヒロインに主人公も一切負けていない。
彼は盗賊のスキルである「スティール」を覚えると本領発揮し始める、
奪えるものはランダムなはずなのになぜか下着ばかりを盗んでしまう、
しかし、彼は盗んで謝るのではない。
盗んだパンツをひけらかしぐるぐる回しゲスな笑みを浮かべる。
クズである(笑)
彼の悪役としか思えないようなニヒルな笑顔は
クズかつゲスな行動や言動は多いものの憎めない主人公になっており、
ファンタジー世界に「風俗」があるとしれば鼻の下を伸ばし来店する様は
男の子ならば強く、強く感情移入できるはずだ。
いい意味でまっすぐな「男の子」であり、
チートな能力は一切ないのにファンタジー世界で必死に活きようと、
一応は主人公として残念なヒロインたちをまとめ上げており、
クズな一面やドスケベな一面もありつつも、魅力のあるキャラクターだ。
天丼
引用元:©2016 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会
この作品はいついかなる時でもギャグ要素を忘れない。
「魔王の配下」という中ボス的な敵キャラクターが現れても、
一切シリアスな雰囲気にならない。
シリアスなはずの敵でさえも「ギャグ」に巻き込まれてしまう。
一歩間違えば死んでしまうような戦闘でもギャグだ。
緊張感のあるシーンのはずなのにギャグにする、しかも天丼だ。
同じギャグを同じように積み重ねることでギャグとしての面白さを強めている。
何度も何度もカエルに飲み込まれるヒロインたちはもはやお約束だ(笑)
お色気
引用元:©2016 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会
この作品は妙にフェチズムに溢れている。
露骨なセクシー要素は描かれないのだが、
だが妙に「フェチズム的」なセクシー要素がふんだんに含まれている。
ヒロインが下着を履いてないよう見えたり、揺れる胸だったり、
服の隙間だったり、お尻のラインだったり、鎖骨だったり、
直接的な描写ではないのにエロスを感じる描写の数々はくすぐられる。
9話はある意味、この作品らしいギャグとお色気要素の混合といってもいい。
ファンタジー世界で「サキュバス」がやっているお店という
男ならば1度は訪れたい店に主人公であるカズマが訪れたことによる
ドタバタコメディとエロスの数々はこの作品の真骨頂ともいえるかもしれない。
「三石琴乃」さん演ずるサキュバスのエロさ、
そしてヒロインの可愛さと、9話は最高潮といってもいい。
「ヒロインと一緒にお風呂」というラブコメやハーレムにおける
サービスシーンですら、この作品はギャグにする。
エロいのにギャグ、素晴らしい組み合わせだ(笑)
声優
引用元:©2016 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会
この作品に欠かせないのが声優さんたちの演技力だ。
「雨宮天」さん演ずるアクアの駄目な女神のダメっぷりな感じの演技は
本当に素晴らしく、時には女神のような高潔さを出しつつ、
ときには最大限のダメっぷりを見せてくれる。
「高橋李依」さん演ずるめぐみんは、中二病感溢れるセリフを
同等と演じつつ、見た目の可愛さを更に底上げしてくれるような
可愛らしい声と演技の数々は素晴らしかった。
「茅野愛衣」さん演ずるダクネスは清楚かつ高潔な女騎士を演じつつも、
ドMという彼女の1面を最大限に表現してくれていた。
茅野愛衣さんの声と演技がダクネスというキャラクターにピタッと
ハマっていた。
そして主人公であるカズマを演ずる「福島潤」、
残念なヒロインの残念な行動や言動を気持ちよくツッコミ、
ときには男の子らしい欲望を下心たっぷりに演じ、
感情移入できる主人公を演じあげていた。
キャラクターと声優がぴったりとハマっていた。
終盤
引用元:©2016 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会
ただ、なぜかとあるサブキャラクターとのエピソードが省かれており、
少しだけ時系列が飛ぶ、どんな理由があったかはわからないものの、
全10話構成だから仕方ないのかもしれないが、
違和感のあるストーリー構成だ。
しかし、その点を除けば全10話で異世界ファンタジーギャグアニメを
繰り広げており、毎話きちんと笑えてきちんと面白い。
最終話のオチも含めて最初から最後まで楽しめる作品に仕上がっている。
総評:駄目な彼らが愛おしい
引用元:©2016 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会
全体的に見て素晴らしいファンタジーギャグアニメだ。
「異世界転生」という要素を逆手に取るような要素の数々、
チートじゃない主人公、駄目すぎるヒロインたち、
うまくいかない異世界生活と1つ1つの要素を普通とは逆方向に伸ばしつつ、
それをきちんとギャグとして仕上げている。
シリアスな展開など殆ど無く1話1話サクサクと進み、
4コママンガのようにアイキャッチをはさみつつ描かれる話は
シンプルに面白く、クスクスと笑えて駄目なキャラクターたちに
愛おしさすら感じさせてくれる。
やや話によってキャラの顔の作画にばらつきはあるものの、
ギャグだからこそ気にならず、セクシーなシーンの描写は
フェチズム溢れる描写になっており、
一人ひとりのキャラの可愛さをしっかりと感じることができる。
1話を気に入れば最終話まで全10話スッキリ楽しめる、
そんな作品だ。
個人的な感想:雨宮天
引用元:©2016 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/このすば製作委員会
この作品まで私は「雨宮天」という声優さんにいまいちピンと
来てなかったのだが、この作品における雨宮天さんが演じた
「アクア」というヒロインの演技には驚いた。
時には女神のように、時には馬鹿っぽく、時には暴れ回り、時には叫ぶ。
それまでの「雨宮天」さんのイメージにはなかった演技が
アクアというキャラクターにピタッとハマった感覚だ。
彼女以外の他のキャラも
キャラクターと声優の声と演技がハマってると耳で感じることができる、
きちんとした「キャスティング」がキャラの魅力を底上げしてくれている。
この作品はそんな作品でもある。
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