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何も終わらないセラフ「終わりのセラフ」レビュー

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評価/★★☆☆☆(25点)/全24話
終わりのセラフ 名古屋決戦編 第4巻(初回限定生産)(特典ディスク付) [DVD]

あらすじ
突然発生したウイルスにより大人たちが死に絶え、人間社会が崩壊してから4年。残された子供たちは吸血鬼たちが住む地下都市に囚われ、血液を提供する代わりに生かされるという家畜同然の生活を送っていた。その中の一人、百夜優一郎は「家族」である百夜ミカエラたちと共に地下からの脱出を図るが、ミカエラたちは脱出計画に気付いた吸血鬼たちの手にかかって死亡し、優一郎は唯一地上へ帰還する。

何も終わらないセラフ

原作はジャンプスクエアで連載中の漫画作品、
とある魔術の禁書目録でお馴染みの鏡貴也が原作者の作品だ。
監督は徳土大介、製作はWIT STUDIO。
分割2クールで放映された作品だが、当サイトでは1レビューに纏める

見だして感じるのは重苦しい雰囲気だろう。
子どもたちが逃げ惑う中、大人が血を吐いたり、
護送車のようなもので運ばれ、とても楽しそうじゃない施設で保護され、
施設では子どもたちは大人に蹴飛ばされたりと
重苦しい雰囲気が1話からただよっている。

更にベタッとした作画。
濃ゆい色合いで塗られた髪のキャラクターデザインや、
油絵っぽい感じのゴシック的な背景など
その重苦しい雰囲気を後押ししている。

そしてストーリー。
吸血鬼たちに囚われていた少年少女たち、
ある日、彼らは吸血鬼の世界から逃げ出そうとするが捕まってしまう。
仲間たちを犠牲にして助かった主人公は一人、人間の世界に戻り
主人公は吸血鬼を倒す部隊へと入隊するという所からストーリーが始まる

この雰囲気は最近のアニメにしては非常に珍しく、
分割2クールという尺の余裕から生まれる丁寧なストーリー展開は
若干のテンポの悪さを感じる部分はあるものの、
妥協のない「グロ描写」を1話から視聴者に見せることによって
きっちりと作品の世界観に入り込ませる。

ただ2話以降から、その折角の雰囲気があっさりと
最近のラノベアニメっぽくなってしまう。

例えば1話の時点で2話のように普通に学校に通ってて
後で主人公の過去である1話の内容を描くなら分かるのだが、
1話で過去回想でしっかりと主人公の辛すぎる過去と
人口が10分の1に減った末期的な世界観を描写した後に
急に学園ファンタジーラノベアニメのような雰囲気の話を描写されると
混乱してしまう。

見ていない人に分かりやすく言うならば。
1話が進撃の巨人だったのに、2話がフルメタル・パニックのような感じだ
もちろん平和な学校に見えるが実は色々と設定や伏線があるのだが、
パット見そうとしかみえない雰囲気の違いは
原作を読んでいない人にとってはやや戸惑う部分だろう。

そして腐女子向けと感じる要素。
少年時代の主人公と友人の距離感や、
そんな友人を「家に招待」して色々やっているキャラクターなど
明らかに腐女子受けを狙ったセリフやシーンが非常に多い。
男同士のお姫様抱っこなどが嫌いな方には受け入れがたいだろう

また2クールという尺があるからか、
丁寧といえば聞こえがいいが、はっきりいってテンポが悪い。
主人公が吸血鬼と戦うための武器を手に入れるのが7話。
それまで戦闘シーンらしい戦闘シーンは本当に数えるほどしか無く、
派手なシーンや「おぉぉ!」というようなシーンは少ない。

1話の作品への引き込みは素晴らしかったのだが、
その引きこまれた後の期待感になかなか答えてくれず
淡々とストーリーを展開しているような印象が強い。

仲間や友達などいわゆる「ジャンプ漫画」的要素が非常にしつこく、
それが何か燃えるような熱血的戦闘シーンとともに描かれるなら
努力友情勝利というジャンプ漫画らしい面白さがあるのだが、
この作品の場合は淡々としたストーリーの中で
淡々と仲間や友情を描いてしまうため、盛り上がりどころが薄い。

また、「死んだと思ってた人物が実は生きてました」という展開が
この作品でもあるのだが、生きてることは視聴者にはバレバレだ。
OPから隠す気がないのは分かるのだが、
主人公側のストーリーの間に「実は生きてた」人物の視線の
ストーリーも挟み込まれるため、余計にテンポが悪くなってしまう。

OPでバレバレなのは構わない。
だが、せめて主人公の視点で生きていたことが判明した時に
「実は生きていた」人物がなぜ生きていたのかという回想が入れば
スムーズなストーリー展開になり、
盛り上がり所まで早くいけるのにもどかしい感じになっている。

更に音。戦闘中の「効果音」がこの作品はやけに小さい。
武器と武器がぶつかる音、肉を切り裂く音、
そういった戦闘における「音」の迫力が全く無い。
文字で表すのが非常に難しいのだが・・・

普通の刀と刀がぶつかる音が「カキンカキン!」ならば
この作品の場合は「ティーン、ティンカシュカシュ」という
妙にすかした音になっており、この「効果音」のせいで
せっかくの戦闘シーンに集中できない。
作画的にもアクション的にも激しく動いてるのに、
その激しさに効果音が見合っていない。

序盤を過ぎる敵も味方もメインキャラがほとんど死ななくなる。
無名のキャラやぽっと出のキャラ、サブキャラなどは死んだりするが
物語を盛り上がるための「メインキャラの死」が無く、
決着のつかないフラストレーションの溜まる戦闘シーンばかりで
そこに爽快感が生まれない。

淡々としたストーリーでも構わない、遅いテンポでもかまわない。
その中で貯めこまれたフラストレーションが
解放されるような戦闘シーンや展開があれば盛り上がるのに、
盛り上がらなければならない戦闘シーンが
「紙芝居」的な作画だったりする場合も多く、
結局、淡々とした印象がいつまでたっても続いてしまう。

せっかく主人公が力を渇望し、
力を手に入れて強敵と戦おうとしてるのに邪魔が入ったり、
「そこはすっきりと見せてくれよ!」と思う展開があまりにも多い
どんどん敵も味方も増え、どんどんインフレしていくのに、
いつまでも敵も味方もメインキャラは生き残っている。

伏線や設定を引き延ばす展開も多い。
「実は生きていた」キャラクターが主人公の秘密を知っているのだが、
なかなか主人公に話さない。
主人公が聞く耳を持たない展開もあり、ちょっと引き伸ばしすぎだ。

ストーリー的にも結局、消化不良で終わっている部分が多すぎる。
原作が完結していないから仕方ないとはいえ、
はっきりいって「アニメ化」が早かったのではないかと感じる作品だ

全体的に見て面白くなりそうで面白くならない作品だ。
1話の期待感は素晴らしいのだが、その期待感に沿うような
爽快感のあるストーリーはなく、淡々とストーリーを進めながら
淡々と戦闘シーンを描く。
盛り上がるか?面白くなるか?というシーンの寸前で
寸止めを喰らうような展開ばかりが続き、
結局消化不良で終わってしまう。

分割2クールでやった割にはストーリーが完璧に
「俺たちの戦いはこれからだ、原作を呼んでね」で終わっており、
これもう少し区切りがよければいいのだが、
流石に色々な要素を投げっぱなしにしすぎだ。

人間同士のいざこざも始まってるわ、
吸血鬼同士のいざこざも始まってるわ、
天使が出て来るわ、悪魔は出て来るわ、
塩だらけになるわ、いきなり4ヶ月たつわと
終わった後に「???」となるめちゃくちゃな展開だ。

これが1クール目の終わりなら、
2クール目に期待!となるのだが、2クール目の終わりでこの展開だ。
区切りが悪いのにも限度がある。

また全体的に「演出」と「効果音」が悪く、
せっかく盛り上がりそうな戦闘シーンが盛り上がらなくなっているのは
非常に気になった。
作画の質や動きの部分では悪くないのに、
演出と音のせいでせっかくのアクションで素直に燃えられない。

売り上げ的にも中途半端だ。
1巻はイベントチケット効果で6000枚売れているが、
それ以降は2500枚前後。
原作のストックもほとんど使い尽くしているらしく、
減作の売り上げの伸び次第で2期といったところだろうか。
原作が月1連載なだけに3期があるとしてもだいぶ先だろうが・・・

アニメ化が正直早かったと感じてしまう。
1クールで1期だけ放映するか、
逆にもう少し原作ストックが溜まってから2クールないし、
完結してから4クールなどのほうが向いている作品だろう。

決して駄作やつまらないという作品ではないだけに、
原作にある面白さがアニメではストレートに伝わらないのは残念だ。

「」は面白い?つまらない?

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  1. 匿名 より:

    とある魔術の禁書目録の作者は鏡貴也さんではなく、鎌池和馬さんです。
    鏡貴也さんの代表作は「伝説の勇者の伝説」「いつか天魔の黒ウサギ」などで、どちらもアニメ化されています。

    > 盛り上がるか?面白くなるか?というシーンの寸前で 寸止めを喰らうような展開ばかりが続き、 結局消化不良で終わってしまう

    鏡貴也さんの作品では、基本的に主人公が物語が進み黒幕と対峙したとき、少数の犠牲か多数の犠牲かしか選べない状況と、黒幕なりの大多数を生かすための正義を聞かされます。一般的な作品であれば、物語で培った主人公の正義と黒幕の正義が対立し、黒幕との戦闘が始まります。おそらくここが作品の一番盛り上がる場面になります。しかし、終わりのセラフや伝説の勇者の伝説では、「そもそもの犠牲を前提とする条件自体を変えるべき」という結論に至ります。これによって、黒幕をこの状況にした「黒幕の黒幕」と戦うために黒幕と共同で戦うことになります。そこから敵側だったキャラの掘り下げが生まれ、鏡貴也作品の魅力のひとつとなっています。(個人的な印象です。)
    おっしゃるとおり、物語の盛り上がる場面である正義と正義の対立を先延ばしにしているため、寸止めを喰らわされるように感じることも多いです。また、先程の流れを多用するため、黒幕の黒幕の……黒幕を倒さなくてはならなくなり、いつまで経っても物語の区切りが来ません。
    難解で絶望的な世界の中で、主人公が友情や愛情を受け入れていく姿を淡々と描写する作品です。また、キャラの掘り下げはきちんとされており、主人公の考えは浮つかず真っ直ぐで、見ていてどのキャラクターにも好感が持てます。多くの他のアニメもそうですが、もう少し尺があれば、テンポの調整が上手くいけば、より多くの評価を得られたと思います。