就職活動に行き詰る青年・サイタマは、ある日街で暴れていた怪人から顎の割れた少年を救う。その際、「ヒーローになりたい」という幼き日の夢を思い出し、就活をやめてヒーローになることを決意。3年間に及ぶ懸命なトレーニングの末、彼はどんな敵でも一撃で倒せる最強の力を手に入れたが、その代償として頭髪全てを失う。しかし、いつも一撃で決着が付いてしまうことから戦いに対する緊張感などを喪失、ヒーローになった現在でも無気力な日々を送っていた。
最強のヒーローの規格外の強さと規格外であるがゆえの悲哀
原作はウェブで連載中の漫画な本作品。
アイシールドなどでお馴染みの村田雄介氏がリメイクし、
となりのヤングジャンプで連載しており、
同じ話と漫画とウェブで違う作画で見ることが出来るという
かなり特殊な作品だ。
監督は夏目真悟、製作はマッドハウス
見だして早々、驚く。
この作品は「アクション漫画」だ、書き込みや作画のレベルが高くて
お馴染みの村田雄介氏が原作では作画を担当しているだけあって、
アニメーションに伴い「原作では1枚ので表現されているシーン描写を
漫画とは比べ物にならない作画枚数で表現しなければならない。
そして、この作品は人気作だ。
製作前から制作陣に対する「プレッシャー」は半端なかったはずだ。
あの村田雄介氏の作画を、人気の原作を「アニメ化」する。
私がアニメ監督ならば断る(笑)
そんなプレッシャーがある中でこの作品は期待に答えてくれる
1話冒頭から怪人の激しい攻撃と、その攻撃によって壊される街並み。
かつての「ドラゴンボール」を彷彿とさせる素晴らしいレベルの作画で
一気に画面に引き寄せられ、作品に引き込まれる。
がっつりと作品に魅入られた後に主人公のの「ワンパン」の作画。
この作品の主人公は強い。
あまりにも強すぎるため、どんな敵でもパンチ一発「ワンパン」で
やっつけてしまう。
子供向けの「アンパンマン」の「アンパンチ」の威力を
青年誌で連載する漫画で同レベルで表現してしまったがゆえに
どんな敵でも「ワンパン」で終わってしまう(笑)
このワンパンはその名の通り、一瞬のワンパンチ。
だからこそ妥協はできない。
思わず、本当に思わず1話が始まって2分半ほどの最初の
「ワンパン」のシーンを何度も何度見てしまいたくなるような
「一瞬の作画に掛ける気合」が凄まじく、その気合にすっかり魅了されてしまう。
そしてストーリー。真っ直ぐだ。
ああ、これぞ少年漫画、ああ、これぞヒーロー漫画。
思わずため息が出るほど「これだよ!これ!」と言いたくなるような
忘れていた少年心を呼び覚ましてくれるような
ド直球、どストレート、ど真ん中なストーリーが本当に心地が良い。
主人公である「サイタマ」は就職活動に行き詰まっていた。
そんな中、怪人に襲われた少年を救う。
彼はその時子供の頃の「ヒーローになりたい」という夢を思い出し、
ヒーローを目指す。
そして3年の修業の末、彼はどんな敵も一撃で倒す「ワンパンマン」となる
これだけだ(笑)ものすごくわかりやすい、ものすごくシンプル。
「伏線?なにそれ?」
この作品からはそう言われているのかと錯覚するほどの
余計な味付けのないシンプルかつストレートなストーリーだ。
だからこそ「アクション」が際立つ。
どんな敵でもワンパンで倒してしまったり、、
修行も何もしていないただの就活生が「ネクタイ」で怪人を倒してしまったり、
ウルトラマンもびっくりな巨大な敵が街を破壊しまくったり、
本気で「蚊」を潰したりetc…
シンプルなストーリーだからこそアクションで妥協してしまえば
あっさりこの作品の面白さは半減する。
だが至高の「戦闘シーン」があるからこそ、
シンプルなストーリーの中で戦闘シーンが際立ち、より面白くなる。
戦闘シーンが長時間に及んだりしてダレたり、
主人公ががかっこつけることもない。
短時間でものすごく強そうな敵をすごい威力のパンチで粉砕する。
この文章ではわずか1行のシーンをほんのわずかな戦闘シーンの中で
ぎゅっ!っと圧縮して描くからこそ、
戦闘シーンの面白さと激しさと迫力が濃縮してみている側に伝わる。
漫画では1枚絵でかっこよさ&激しさを見せていたシーンを
アニメでは1枚絵と1枚絵をスピード感のある動きのある作画をつなげ、
きっちりとかっこいい1枚絵を見せつつ、
すぐにスピード感のある動きにつなげる。
大量の作画と1枚1枚の質があるからこそ出来る戦闘シーンだ。
単純な小競り合いや狭いフィールドでの戦いならまだしも、
この作品における戦闘のフィールドは広く、
キャラクターの移動距離も尋常ではない。
最終話に至っては月と地球レベルの移動距離だ(笑)
だからこそ大胆にキャラクターを激しく動かす動の面白さと、
技を出す瞬間、パンチを繰り出す瞬間の静の面白さ、
アニメーションにおける、静と動の魅力あふれる戦闘シーンになっている
そして、キャラクターの魅力。
この作品の主人公は「ハゲ」ている(笑)
どんな敵でも一撃で倒す圧倒的力を持ってしまっているがゆえに、
逆に無力感すら感じている。飄々とし、常に冷静、常に無表情。
外見からは強さを感じさせない彼、
だからこそ、その見た目と強さのギャップが引き立ち、
その強さがあるゆえのヒーローととしてのどこかさみしげな日常が面白い。
この作品はヒーローものでやってしまえば欠点になる要素を組み込んでいる。
「全く負けない、全く苦戦しない」ヒーローは面白くはないという点だ。
強さの表現として同等の敵が現れ、苦戦しながらも勝利する。
時には修行し、時には仲間と協力して敵を倒すからこそ
見ている側の感情が刺激され「面白い」と感じる。
昨今のラノベアニメの流行りである「俺TUEEE」もこの矛盾をはらんでいるが、
その最強状態になるための制約があったり、欠点をつけることで
「主人公が全く負けない、全く苦戦しない」ストーリーにはしていない。
だが、この作品は違う。欠点がない、制約もない。
「アンパンマン」でさえ水に濡れたら力が出なくなるが、
この作品の主人公は別に小麦粉でできているわけではない。
故に最強、故に常に勝利しかない。
その欠点から生まれるであろう「つまらなさ」を
主人公の「無力感」につなげる。
強くなりすぎてしまったゆえに本気で戦える敵が居ない、
故にどこか虚しく、どこかさみしげだ。
だからこそ見ている最中に不思議な感覚に襲われる
「この主人公の無力感を解消する圧倒的な敵が現れてくれないか」
「いつ、この主人公は負けるのだろうか」
「むしろ主人公負けるシーンが見たい」
ヒーローもの、アクションもので「ヒーローが負ける姿が見たい」と
思う作品などこの作品くらいだろう(笑)
だが、恐らく多くの人が1話を見終わった段階でそう思うはずだ。
それをわかっていてストーリーが作られているからこの作品はすごい。
この作品は色々な特撮ヒーロー作品ががごっちゃになっている。
だからこそ敵も改造人間だったり、薬品で細胞が変異した怪人だったり、
地底人だったり、宇宙人だったりと何でもありだ。
なんでもありだからこそ、どんな設定の敵でもOKな世界観になっている。
だからこそ「最強のサイタマ」を倒すのがどんな敵なのかを見たくなる。
そして、味方も何でもありだ。
この世界では大量の怪人がいる一方で「大量のヒーロー」も存在する。
サイボーグだったり、忍者だったり、超能力者だったり、
怪人が何でもありなのと同じく味方も何でもありだ。
言い方は極端だがスーパーロボット大戦のヒーロー版のような世界観だ。
色々なヒーローが色々な怪人と普通の特撮アクションもののように
苦戦して戦っている中で、
主人公であるサイタマはさらっと現れ、時には全裸で
規格外の威力の「ワンパン」で敵を倒してしまう。
ヒーローたちにもそれぞれの事情や過去がある。
敵の怪人たちにもそれぞれの事情や過去がある。
だが、そこにサイタマが現れたら最後だ。
どんな事情があっても「ワンパン」で解決してしまう。
そんな彼が作品の主軸にしっかりと居るからこそ、
そんな彼に「関わるキャラクター」の物語も面白くなる
彼に憬れるサイボーグ、忍者、超能力者、サムライetc…
主人公ではないが彼らの実力は他作品ならば主人公レベルの実力だ。
だが、サイタマが強すぎるあまり
真剣に特撮ヒーローの世界にいるはずのキャラクターの行動や言動が
「ギャグ」になってしまう展開が面白い(笑)
どんなに強かろうが、どんなにかっこつけようが、どんな能力をもってようが
一瞬で終わってしまうのであれば意味が無い。
逆にその強さや事情の説明が長ければ長いほどワンパンで終わるオチに対する
フリのようなものになっており、より笑いが強まる。
本来なら3話くらいかけて倒すような強敵さえも、
本来ならば主人公が傷だらけで血まみれになるような技でさえも、
5分もかからずサラリと無傷で倒してしまう。
敵が可哀想になるほどあっさりだ。
負けないヒーローというバトルものでは欠点になる部分を
最大限に「生かす」ことで「ワンパンマン」という作品を作り上げており、
最強のヒーローによる至高の戦闘シーンと、
最強なヒーローによる最高のギャグを同時に味わうことが出来る作品だ。
全体的に見て素晴らしい作品だ。
どんな敵でもワンパンで倒すヒーロー、この主人公を軸にし
ストレートなストーリーをまっすぐに描く。
戦闘シーンを妥協せずにダイナミックに描くことによって、
より主人公の強さが際立ち、より主人公の魅力が強まっていく。
このヒーローはいつ負けるのか、このヒーローはどうやったら倒されるのか。
特撮アクション、ヒーロー物ならば本来であれば望まない
「主人公が負ける様」を見たいと感じさせるほどの圧倒的強さ、
彼に立ち向かう敵キャラを応援したくなってしまうほどの実力差。
本来ならば欠点だ。
バトル物でありがちなインフレが最初からマックス、
ゆえにインフレは起こっていない、主人公の強さは最初から
ゲームで言えば「バグっている」ほどの強さであり規格外だ。
そんな彼に巨人が、怪人が、改造人間が、地底人が、宇宙人が挑む様を見る。
これだけの作品なのに面白い。
最強すぎる主人公が他の作品の主人公ならば苦戦する敵をあっさり倒し、
仲間が苦戦して戦っていた敵もあっさり倒す。
だが強さゆえの「悲哀」があるからこそ、
彼に不思議な愛着がわき、彼が対等に戦える相手が出て来ることを望んでしまう。
特に最終話など「これは負けるかもしれない」と思うほどの強敵だ
宇宙から来た最強の敵、本気で殴られれば月まで飛ばされるほどの威力。
ドラゴンボールのフリーザー戦、セル戦、ブゥ戦を
一気に見てるかのような激しすぎる戦闘シーンは息を呑むほどだ
そんな相手に対しても彼は無傷だ。
サイヤ人なみに金色に光輝いた敵の攻撃でさえ、本気の「殴り」で終わってしまう。
ヒーローが、主人公が「勝ってしまう」事が残念に感じてしまう。
こいつもだめだったかと(笑)
ワンパンで倒される敵が「有名声優」ばかりなのも素晴らしい点だ。
中尾隆聖、石塚運昇、小山力也、森川智之など
本来はアニメにおける「ラスボス級」な声優陣が演じる敵キャラだからこそ
より強さが伝わる。
豪華声優陣の「ラスボス演技」と「やられっぷり演技」は本当に素晴らしかった
感覚としては3話に一回くらいの間隔でラスボスと戦っているような作品だ(笑)
欠点があるとすれば1クールで終わってしまうことだろう。
ようやく主人公以外のメインキャラが出揃った感じの所で
終わってしまった感じが強く、これからもっと面白くなるのに、
これからもっと強い敵が現れそうなのに終わってしまう。
原作が隔週連載であることを考えると2期はまだまだ先だ、
売り上げ的には1巻は1万枚超えと2期が十分できる売り上げなだけに
早く2期が見たい。
素直に沿う感じさせるほど素晴らしい作品だった。
1話から最終話まで余すこと無く面白い。
そんな作品はめったにない。
原作の面白さとアニメ制作人の気合の入れっぷりが
素晴らしいアニメに仕上げてくれていた。
個人的にOPが「JAMPROJECT」なのもツボだった。
最終話では別に主人公が攻撃しているわけではない、
むしろ敵がめちゃくちゃ殴っている状況にもかかわらず流れるOPが
ギャグにすらなっていた。
本来は敵をようやく倒し必殺技を出す最終話のシーンでOPが流れることで
熱さが際立つのだが、敵の必殺技のシーンで
OPが流れるなどこの作品くらいだろう(笑)
2期、待ってます。
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