これぞ嗜好のオープンワールドRPGアニメ
監督は伊藤尚往、アニメーション制作はマッドハウス
なお本作品はMMOを題材にしている。
見だして感じるのは声優「日野聡」の凄さだろう。
「日野聡」といえばライトノベルアニメが流行りだした頃から
ゼロの使い魔、灼眼のシャナなど多くの作品の主人公を演じており、
「日野聡」=主人公という印象が強い人も多いはずだ
ただ、近年はどちらかというと主人公の友人ポジション的キャラクターや
サブキャラクターなど主人公以外のキャラクターも多く演じており、
アニメが始まってすぐに「日野聡」の声を聞く機会は減ってしまっていた。
だからこそ久しぶりに「日野聡」が演じる主人公は少し「懐かしさ」を感じると
同時に、あの頃にはなかった「声の圧」を感じる。
この作品の主人公は外見はゲーム内のキャラクターだ。
しかも「アンデッド種族」のキャラクターであり、
外見は魔王のような骸骨キャラクターだ。
表情の変化は骸骨であるがゆえにほとんどない。
だからこそ「声優の演技」で感情や心理を表現しなければならない。
数々の主人公を演じてきた「日野聡」さんだからこその演技といえるだろう
そしてストーリー。
主人公であるモモンガは誰もいないMMOの世界でサービス停止の瞬間を待っていると
終了時間を過ぎてもサーバーが落ちず、ログアウトもできず、
更に喋りかけないと話さないはずのNPCがAIではなく意思を持って
普通に話しかけてくるようになり、
自分が「ゲームのキャラクター」になってしまったことに気づき、
更には元のゲーム世界ではなく異世界へと転移している
この作品は「MMO」を題材にしている。
だが同時に他のログアウトできない作品と違い、
主人公は「元の世界に戻る」事をあまり望んでいない。
現実世界では天涯孤独のしがないサラリーマンであり、
衰退したとはいえ入り込んでしまったゲームをLVMAXになるまでやりこみ
愛している。
彼に付き従うNPCも定型文や決められたセリフではなく意思を持って動く。
転移してしまった世界も「ファンタジー世界」のような表現になっており、
他のMMO題材作品とはまったくもって違う作品といえる。
どっちかというと「ゼロの使い魔」のように異世界召喚型ファンタジーに近い。
主人公が召喚されてしまったのが異世界ではあるものの
人間の姿ではなくゲーム内のキャラやアイテム、設定を引き継いだ状態になっている
はっきり言おう、これは最高の「RPG」だ。
割り振られたキャラクターを自ら操作し、そのキャラクターになりきり
架空の世界での冒険、戦闘を楽しむ。
NPCキャラクターは人間のように意思を持ち、決められたイベントもない
広大な未知のフィールド、無数のNPC、究極のオープンワールドRPGといえるだろう
そんなオープンワールドRPGを主人公を通して楽しむようなアニメだ
そして、このゲームの目的は
「どうしてこうなったのか?」「自分以外に転移してしまった人間は居るのか?」
ということだ。
エンディングがあるかどうかはわからない。
主人公を通して予測できない「RPG」をプレイしているような感覚になるほど
物語の「地盤」「雰囲気」づくりが素晴らしく、
話の展開が一切読めないからこそストーリーが純粋に面白い。
この作品を見ていると素直な感想が素直に浮かぶ。
丁寧に作られた世界観と物語の序盤があるからこそ、
ストレートに面白さが見ている側に突き刺さり、
他のMMO題材作品や異世界召喚型ファンタジー作品とは
「別の視点」で描かれている作品だからこそストーリーの予想ができない。
そのストーリーも非常に丁寧に描かれている。
時系列の変化がゆっくりであり、丁寧すぎるくらいにストーリーを描写している。
このせいで若干のテンポの悪さは感じるものの、
「ストーリーの面白さ」がしっかりとあるからこそ
テンポが悪くとも欠点にはなっていない
そして主人公のキャラクターが素晴らしい。
彼はゲーム内ではギルドの長であり、魔王のような存在だ
NPCに対してはきちんとゲーム内キャラクターを演じてしゃべるのだが、
プレイしているのは「普通の人間」だ
外面は威厳のあるしゃべりなのに、内面では慌てふてめく様子のギャップが
「ギャグ」になっており、非常に愛着の持てる主人公の描写になっている
更に戦闘シーン。
この作品の戦闘シーンの作画枚数はそれほど多くはない。
だが「演出」と「カメラアングル」できちんと戦闘シーンの迫力を出しており、
モンスターなどを「3DCG」で描写することでゲーム感もだし
「見せ方」を工夫することで作画枚数の少なさをごまかしている
そして戦闘における主人公の描写。
主人公は元のゲーム世界ではやりこみまくっており
アイテムも豊富に持っている。
特にアイテムに関しては他のやりこんだプレイヤーが残したアイテムももらっており、
アイテム使いまくりで戦闘に挑む(笑)
他の異世界召喚ファンタジーアニメならば基本的に主人公は何も持っていない、
ログアウトできないMMO系でも
レベルこそ高いがアイテムを豊富に持っているとは限らない
やりこみまくったゲームキャラのままアイテムも引き継いで異世界に来たからこそ
アイテムを引き継いだ「二周目のRPG」のような贅沢なアイテムの使い方をする
いわゆる「俺TUEEE」状態なのだが、その「俺TUEE」にきちんと理由付けがされており
MMO題材ならではの「課金アイテム」の存在、
最終話のまさに「レアアイテム」だらけの戦闘シーンは
MMOを題材にした作品らしい戦闘シーンといえるだろう
全体的に見て堅実かつ丁寧に作られた作品だ
「MMO」が題材になっているものの「ログアウトできない」系ではなく、
MMOで使っていたキャラのまま別の世界へと転移してしまうという発想の面白さ、
その面白さを序盤できちんと描くことによって
作品の世界観にきっちりと入り込むことができ、
「MMO」でやりこんでいたキャラだからこその強さと
人間の時とのギャップがギャグになっている。
ただ堅実かつ丁寧に作られているせいでストーリーの展開が遅い。
1クール尺では本筋のストーリーが進んだのか進んでないのかもよくわからず、
この作品をゲームに例えるならまだ最初のボスを倒したくらいのところであり、
この先に何人のボスが居て、ラスボスはどういう存在で
どういうエンディングを迎えるのか。
そういうストーリーの「全体像」が全く見えてこない。
テンポが遅いからこそ、本当に「RPG」をプレイしているような感覚になれる
広大なフィールド、先が見えないストーリー、魅力のあるキャラクター、
この作品を「プレイ」してみたくなるほどRPGの面白さが詰まっている作品なのだが
最終的なプレイ時間がどれくらいか見えないのが若干の不安要素にもなっている
まだまだ「序章」な感じも強く2期以降、どういうふうにストーリーが展開するのか
気になる所だ。
売り上げ的には1万枚を超えており、原作もかなり売れているようだ
2期の可能性は非常に高いだろう。
個人的に細かい点で気になる部分はあったものの
ストレートに突き刺さる「面白さ」があっただけに強く2期を期待したい作品だ。
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