これぞ受け継がれる火の意志の物語
タイトル通り「ナルト」が主人公ではなく、息子の「ボルト」を主人公とした物語。
監督は山下宏幸、製作はstudioぴえろ
見だして感じるのは圧倒的な「戦闘シーン」だ
これまでのナルトの劇場版でここまでの
激しい戦闘シーンが冒頭から描写されることはなかった
しっかりした「殺陣」と高速な動きとそこから放たれる忍術の数々、
これぞ「忍者」の戦闘シーンと言わんばかりの圧倒的な戦闘だ
それだけでなく、きちんと「スクリーン」の大きさを意識している
画面の端から端まで動かし、きちんと劇場ならではの音響を意識し
迫力のある戦闘シーンが描写されている
はっきりいってこれまでのナルト映画で
ここまできちんと評価できる戦闘シーンはなかった。
冒頭から「最後のナルト映画」に掛ける意気込みを強く感じられる
そして「ボルト」の物語が始まる。
長いレビュー文章を書く前に一言だけ先に言ってしまうと
この作品は「ボルト」というナルトの息子を通して、
もう1度「ナルト」の少年時代を味わうような感覚になれるような作品だ
初期の「NARUTO」のように笑える任務にスリーマンセルで挑む。
ド派手で行動な忍術ではなく下忍らしいシンプルな忍術でシンプルな任務に挑む様子は
ナルトの少年時代を思い出すような描写だ
父親が通ってきた道を息子もたどる、シンプルなストーリーではあるものの
「王道」のジャンプ漫画ならではの王道ストーリーがしっくりとくる。
落ちこぼれだったナルトが火影になり、父親になる。
そんな彼は息子に対しての接し方がひどく不器用で、
そんな不器用な父親に対する「反発」が微笑ましく見えてしまう。
ナルトを初期から読んできた「ファン」だからこそ、
ナルトと同じような感情でボルトを見てしまう。
一種の「父性」や「母性」をくすぐられると言っても過言ではない。
ボルトが主人公の物語ではあるが、
20代以上の人ならば「ナルト」の視線でついこの物語を見てしまうはずだ。
「歳をとり、結婚をして、子供も生まれる。」
ナルトを子供の時代から読んでいた年代も同じような状況に居る方も多いはずだ
私は違うが(苦笑)
だからこそボルトの生意気な態度、反発するシーンなどに苛立ちは覚えず
不思議な感情で見ることが出来る。
ナルトらしい不器用さとナルトの子供らしい反発ぶり、
二人の不器用な「親子愛」が垣間見えるシーンは不思議な面白さがある
更にサスケとナルトの会話。
年をとった二人の会話は色々な問題が解決したあとだからこその「平和な会話」だ。
ボルトの前でナルトの昔話をするサスケなど
腐女子でなくとも「ニヤニヤ」っとさせられるような気分になるほど
ナルトが好きな人にとってはたまらないシーンの連続だろう。
そして、そんな「ボルト」が中忍試験に挑む。
父親に認めてもらうため彼なりに努力をしサスケの弟子になるために
「螺旋丸」を身につける修行をしているシーンは、
あの頃の、自来也の前で同じように修業をしていたナルトと重なり、
思わず「ニヤニヤ」っとしてしまう。
ナルト同じように努力をし、忍術を身につける。
ナルトの息子であることを強く視聴者に実感させると同時に
「ナルト」とは違う部分もきっちり見せる。
「ボルト」は甘い。
ナルトのように孤独な少年時代を送ってきたわけでも厳しい任務があるわけでもない
幸せな家庭があり、ほのぼのとした任務を受けており、
幸せだからこそ余裕があるからこそ親に甘えているからこそ「反抗」できる
親が偉大だからこそ、その大きい壁に焦りを苛立ちをうみ、
彼にナルトがやらなかった「不正」を働かせ、ズルをする。
結果的にその「ズル」が父親を失うきっかけになる。
失って初めて彼は父親の偉大さと強さ、
そして自分の甘さと無力さを自覚し「成長」する
王道だ、だが、王道であるがゆえに王道だからこそストレートに突き刺さる
私は不覚にもナルトの「あの服」をボルトが袖に通した時、
サスケの傷が入った「額当て」をした時、
思わず少しだけ「涙」ぐんでしまうほどやられてしまった。
長年、ナルトを楽しんだ私達だからこそ、
長年、ナルトという作品を味わったからこその積み重ねによる感動が生まれている
だが、はっきりいってしまうと今作は「敵」の描写が甘い。
原作のラスボス関連の敵ではあるのだが掘り下げが甘く、
「ぽっと出感」がものすごく出てしまっており、
能力も「敵の忍術吸いとって吐き出すよ!」というシンプルで強いのだが
「体術には弱い」というとんでもない弱点があり、ちょっと拍子抜けだ(苦笑)
1時間半という尺の中で「ボルト」を描かなければならず
その他のサブキャラクターが背景に描写されているだけのキャラも多く
尺の都合上仕方ない部分があるのはわかるが、
一部キャラのファンの方は若干の物足りなさがあるかもしれない。
だが、一部の描写を削ったからこそきちんと「ボルト」の物語が盛り上がっている
特に終盤の戦闘シーンは本当に素晴らしかった。
思わずそんなシンプルな褒め言葉が出てしまうほどの
ダイナミックかつ高速な戦闘シーンはぜひ劇場のスクリーンで味わっていただきたい。
サスケとナルトの「連携技」の数々、「須佐能乎をまとった尾獣」による攻撃など
もう思わず「おぉぉ!!!」と叫びたく鳴るような戦闘シーンは
手に汗握り、思わず笑ってしまうほどの素晴らしさだ
動かし方、見せ方、技の出しどころ、映画ならではのシーンなど
きちんと「楽しませる」シーンづくりになっている。
そしてラスト、終盤の戦闘でもちろん「サスケ」と「ナルト」が活躍するのだが
この作品はあくまで「ボルト」の物語だ。
だからこそ最後の彼が放つ「螺旋丸」が物語の締めとしてふさわしく、
その彼だからこその「螺旋丸」を自然な流れで敵に当て、
ナルトとボルトの親子の物語としてふさわしい描写になっていた。
これぞまさに「火の意志を継ぐ者」という物語に仕上がっていた
全体的に見て物語に無駄がない作品だ
冒頭から最後のシーンまできっちりとしたストーリーができており
きちんと「伏線」をはり、それを活かすことで物語を盛り上げており
今までの「ナルト」を見てきた読者、視聴者だからこその感情移入と
積み重ねによる盛り上がり所をきっちりとつくっており、
ナルトという作品が好きならば間違いなく楽しめる作品になっている
欠点を言うならば前述したように一部キャラの掘り下げ、描写不足は否めないが
逆に言えば余分な描写がないからこそ王道ストーリーが際立ち、
シンプルに「面白い」と言える作品になったといえる。
もう1つ言うならば原作、及びスピンオフの物語を読んでいないと楽しめないが
それを評価に付け加えてしまうのは野暮だろう。
個人的には今までのナルト映画の出来栄えから
全く期待しないで見に行ったのだが、見事にいい意味で裏切られてしまった
まさかナルトの映画で涙腺をくすぐられるとは思っても居なかった
エンドロール後の「オチ要員」として使われる大蛇丸にも注目していただきたい(笑)
原作者が流石にこの続きを書く予定がないようなので、
アニメスタッフがアニメオリジナルで映画を作らないかぎり
この作品が「最後のナルト映画」となるだろう。
きちんと有終の美を飾った作品なだけに個人的にはこれで終わりでいいのでは?と
強く感じている。
それを考慮し、最後のナルト映画として少しだけ点数を高くしました。
ナルトが好きならば、見て損はない作品だ
戦闘シーンのクォリティの高さからぜひ「劇場」で味わっていただきたい
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