人間の三大欲求を満たす嗜好のアニメ、ああ・・・腹減った
監督は新房昭之、アニメーション制作はシャフト。
数多くのアニメ作品の中で
「いなりずし」が1話の1シーン目にアップで映る作品はまず無いだろう。
そのいなりずしをヒロインが「美味しそう」に頬張る
欲情したような瞳と艶かしい唇、食べた後には「よだれ」を垂らしている、
製作会社の「シャフト」臭全開の演出だが、
そのシャフトらしい演出を「食べる」シーンで生かすことによって
ここまで「セクシー」でここまで「食欲」をそそるシーンに作り上げている
「可愛い女の子が物を食べる」
この1行でこの作品を思わず「見たい」と思う男子は多いはずだ
小さい口で美味しそうにものを食べ、幸せそうな表情を浮かべる少女が
大好きな紳士は日本という変態文化が栄えている国においては
珍しくない「フェチズム」の1つのはずだ
かく言う私もその「変態紳士」の1人である(笑)
この作品はそんな紳士、そんなフェチズムを持って生まれてしまった
そんな性癖が目覚めてしまった人のためのアニメと言っても過言ではない。
ほのぼのとした普通の少女たちの日常、そんな何もない日常だからこそ、
「日常の中の食事」が何気ない幸福だ
そんな「何気ない幸福」をアニメーションの中の演出で
最大限に「幸せ」と「美味しさ」を表現している
普通の寄せ鍋、普通のオムライス、普通のインスタントラーメン
もう、本当に「普通」の料理ばかりだ
食アニメだからといって自分で作れないような料理ではない、
食アニメだからといって食べた後に車イスで病院を駆けまわるわけでもない
あくまでも「普通」の料理を食べて、女の子たちが「普通」に美味しそうにする。
食べた後に過剰なリアクションをするのではなく、
あくまでもリアクションとしては普通だ。
だが、その「普通」のリアクションを「演出」で後押しする。
はっきりいって、この演出に限って言えば過剰とも言える。
だが、演出が普通なら確実につまらない。
食べるシーンの演出の数々は「エロス」だ。
唇、喉仏の動き、よだれ、表情、
食べたものの「美味しさ」が伝わると同時に「妖艶」さを醸し出し、
「咀嚼」という何気ないシーンで最大限の「エロス」を表現している。
この過剰な咀嚼エロスの表現は人によっては嫌悪感を抱くかもしれない
描かれる食べ物は「食欲」をそそり、
描かれる咀嚼シーンは「性欲」をそそる。
そして放送時間が深夜だったいうこともあり睡眠欲までそそられる(笑)
この作品の食事シーンは人間の3大欲求を表現していると言っても過言ではない
だからこそ「三大欲求」を表現するために過剰な演出で
見ている側にストレートに「欲求」を伝えている。
ストレートだからこそ嫌悪感を抱きやすい。
この食事シーンの演出は「無駄」と感じる人もいるかもしれない
だが、アニメという娯楽媒体だからこそ、その「無駄」を最大限に興じている
普通の食事シーンを普通に演出しては何も伝わらない
そこに「無駄」ともいえる過剰なエロティシズム演出をいれることで
人によっては情欲を、人によっては嫌悪感を感じるシーンにしており
「好き嫌い」はハッキリ出るものの、
だからこそ「面白い」と感じるシーンになっている
ただストーリー的には本当に日常モノであり、
それ以上でもそれ以下でもない感じが物凄く強く出てしまっていた
「祖母」を亡くし一人暮らしをしていたヒロインのもとに
「週末」だけ親戚の子が泊まりに来るようになるところからストーリーが始まる。
祖母を亡くした後に「料理」が下手になったと感じていたヒロインの変化は
1話で完結してしまっており、それ以降は大きな変化はない。
大きな変化がないのが日常ものの特徴ではあるものの、
1話1話のストーリーが「のほほん」としすぎている感じは強い。
毎話毎話、美味しそうな料理が色々と出てくるものの
その「料理」に関連したストーリー作りが弱く、
あくまでも「日常」の中の「食事」であるがゆえに
その食事に関連したストーリーになっていない。
例えば料理アニメのように「料理大会で1位になってやる!」という目標や
孤独のグルメのごとく「仕事先の町」でふと入った店の料理を味わうわけでもない
あくまでも普通の少女たちの、普通の食事。
それがこの作品の「良さ」であると同時に、
それ以上ストーリーを広げられない「欠点」にもなってしまっており、
だからこそ食事シーンを過剰に演出することで淡々としたストーリーを
盛り上げようとしているのが伝わる。
ヒロイン達が「美術学校」を目指す受験生というのも
「料理」という部分とズレてしまっている。
美術学校に入るために勉強しているキャラクターたちと、
毎話描かれる「食事」のシーン、
この2つがうまく絡み合っておらず別々の作品を見ているような感じだ
これで料理の専門学校を目指しているならば統一性が出たかもしれないが、
「美術学校に入りたい」という設定がどうにも作品の中に馴染んでいない
これは個人的すぎる意見かも知れないが、
もっとシャフト臭を出しても良かったのでは?と感じてしまう
新房昭之監督らしい実写演出や文字だけのカット、
絶望先生もびっくりな癖の有り過ぎる演出の数々など
「平坦」なストーリーだからこそ、もっと癖のある演出で
日常ストーリー部分を刺激的に見せても良かったのではと感じてしまう。
3話のように「演出過多」ともいえる新房昭之監督らしい演出が目立つ話だと
普通の何気ないストーリーでも「面白い」と感じられるのだが、
逆にその演出過多がない話だとどうにも物足りなさを感じてしまう。
シャフト演出は最近、嫌われやすい演出ではあるものの
そこは割りきってこの作品に盛り込んで欲しかったところだ
逆に言えば中途半端に入れるよりも、やらないならやらないほうがよかった。
それほど1話1話のストーリーが「のほほん」としすぎていて
冗長に感じる部分が多く、食事シーン以外で素直に面白いといえるシーンが少ない
シャフト演出が効いているときは面白いと感じる部分も多いが、
中途半端なシャフト演出は逆に「のほほん」とした雰囲気作りを壊してしまっており、
話によって「演出の当たり外れ」が多いのは気になるところだ
キャラクターは非常に可愛らしく、
その可愛らしさが食事シーンでエロティシズムに変わるのだが、
「日常」の中での可愛さの描写が物足りない。
更にそんな「キャラクター」の作画が極端に崩れている時もあり、
料理の作画が物凄く安定しているだけに
キャラの作画崩れが目立ってしまっていた。
ついでにいうなら「百合」要素もある。
ガチガチな百合要素ではないものの、女の子同士の距離感が非常に近く
そういう雰囲気を匂わせる台詞もあるため、
苦手な方は嫌悪感を抱きやすいだろう。
全体的に見て非常に好き嫌いがハッキリする作品だろう。
日常的な淡々すぎるストーリーは「のほほん」と癒やされる雰囲気はあるものの
同時に退屈に感じてしまう時もあるだろう。
メインの食事シーンもエロティシズムあふれる演出と
「美味しそうな料理」の数々は食欲と情欲をそそられるが、
過剰すぎて嫌悪感を抱きやすい演出だ。
だが、逆にはっきりしているからこそ「好き」な方にとってはたまらないだろう
女の子同士の緩い日常を描きながら、
物語のアクセントとして日常の「料理」を描写し、
咀嚼フェチな紳士たちにはたまらない女の子の食事をタップリと楽しめる(笑)
序盤の段階で気に入ったなら最後まで楽しむことができる、
逆に序盤の段階で嫌悪感を抱いてしまったら最後まで見るのは厳しいだろう。
余談だが、この作品の感想をいろいろなサイトで見たのだが
原作は「アニメ以上」に過剰な食事シーンらしい(笑)
私もGoogleの画像検索で見た限りでしか無いのだが、
確かに色がついていない分、アニメとは違って「生々しさ」が強く出ており、
原作は原作である意味、食事シーンがギャグのようにもなっている。
原作はギャグ、アニメはエロスと原作とアニメの違いがハッキリ出ているのは
面白いかもしれない。
残念なことにDVD1巻の売上が1500前後と厳しい。
2期の可能性は原作の売上促進次第だろうが、非常に残念だ
ひだまりスケッチのように1期2期3期とストーリーが積み重なるたびに
もっと違った魅力が出てきそうな作品なだけに
1期だけで終ってしまうのはもったいない作品だ
個人的にはアニメで描かれる「料理」描写が好きなだけに満足感が強かった
ついでにいえば、梅津さんによるOP、坂本真綾さんの曲、
新房昭之監督とどこか「それでも町は廻っている」を思い出させる感じだった
あの作品もあまり売れず、好き嫌いが別れる作品だったが
この作品も同じような感じになってしまったのは何とももったいない。
「それでも町は廻っている」の自販機うどんの描写が好きだった方、
あのシーンを覚えている方にはおすすめな作品だ
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