フィクションだからこその思想と未来
監督は平松禎史、アニメーション制作はスタジオカラー
見出して・・・というよりはまず見る前に驚く。
日本アニメーター見本市ではこれまで
色々と年齢制限がかかりそうな作品がいくつかあった
MEMEMEやSEX and VIOLENCE with MACHSPEEDなど
Web媒体だからこその規制の無さを活かした性的表現の多い作品もある。
しかし、そんな作品ページでも「年齢確認」はなかった
しかし、この作品の場合は違う。
まず「18歳以上」かどうかを確かめられる(笑)
はっきりいって上記2作品でも明らかにR指定以上の内容だっただけに
「え・・?あの2作品を上回るのか!?」とちょっと
妙な期待感を見る前から感じてしまう。
だが、そんな期待感をすぐに折る(笑)
まるで「雑誌」の袋とじを開けたらがっかりなグラビアだった感じの
年齢確認させておきながら「真面目」すぎる世界観、
核ミサイルが日本に落ち、中国と同盟を結んだ日本という
見る前に感じた「エロい気持ち」をポッキリと折られてしまう。
だが、その「折れた気持ち」があるからこそ
この作品の面白さがにじみ渡る。
ある意味でこの作品は「18歳未満」には分からない要素が多い。
経済思想や政治的思想、そういった「思想」をこの作品は描いており、
セクシー要素はそんな中でのちょっとしたスパイスでしか無い。
「顔のない独裁者」
この作品で伝えたいことはこれだ。
顔のない独裁者という言葉の意味、日本が抱える政治的問題、
そういったものをテンポよく詰め込んで描いており、
そこに妙に生々しい権力者の「濡れ場」やセクシーシーンを入れ、
8分ほどの尺の中でフィクションの「未来の日本」を描く
ある意味で「フィクション」ではあるものの「リアリティ」を感じる内容だ
政治的思想や若干過剰な要素はあるものの、
最後のシーンの「この作品がいつまでもフィクションでありますように」の通り
こういった「未来」が生まれる可能性を今の日本は抱えている。
そんな未来をしっかりとした「背景」を描きつつテンポよく描くことで
妙な現実感と妙な幻想感が同居した不思議な雰囲気を醸し出しており、
リアリティを感じる内容であると同時にどこかフィクション要素が強く出ており、
見終わった後に不思議な感覚が残る作品だ
全体的に見て非常に癖の強い作品であり、
娯楽である「アニメ」でこういった特定の思想の要素が強い作品は
個人的にはあまり好きではないが、
だが「フィクション」という「創作物のアニメ」だからこその面白さがあり、
フィクションで描かれるこそストレートに作品のメッセージ性が伝わる。
伝わるからこそ個人個人で受け止め方が違うだろう。
特に政治的思想を強く持っている人は思想によっては
「嫌悪感」を抱きやすい内容かも知れないが、
あくまで「フィクション」であり「娯楽」のアニメだ
こういったifを創作物の中で描く面白さを、
そこは素直に受け止めて欲しいところだ
個人的な感覚かも知れないがBGMの「蛍の光」が
この作品の雰囲気作りを物凄く後押しししているように感じた
日本人なら誰しも耳にしたことがあるはずの曲なだけに
何かを訴えかける、メッセージ性の強い作品には最適だった
あまり高く評価しにくい作品ではあるが、
このレビューを踏まえて「見てみるか」と思ったならば
見て損はない作品だ。
逆に「うげ・・・そういう感じかよ・・・」と思った人は
見ないほうがいいかもしれない(苦笑)
ある意味で短編アニメにふさわしい作品だった
これが2時間の映画や1クールのアニメならば確実に厳しい。
8分という尺だからこその「思想」を素直に感じ、
面白いと思うことができた作品だ。
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