罰です。
クリエイターよ、お前は作り続けるのか?
監督は前田 真宏、制作はスタジオカラー
見出して感じるのは癖全開の作画だろう。
文字だらけの背景野中、黒塗された人物がまくし立てるように
「Kanon」について語る。
哲学的、自己対話、前衛的。
この作品を語るならこの言葉は欠かせないだろう。
この作品の内容は果たして何なのか、何を言っているのか
最初は全く理解できない。
自己啓発本にかかれているような、哲学本に書かれているような、
自己対話を主人公が繰り返す。
圧倒的なセリフ量と早口で喋る主人公「アダム」の
創作物に対するクリエイターとしての問答、
自らが作ったものにすら否定され批判され裏切られる苦しみを
前衛的な作画と「早口」のセリフで語る。
中盤を過ぎるとこの作品の内容がつかめる
この作品の内容は「クリエイターの苦しみ」そのものだ。
自分が作ったものに対する悩み、創作物に対する考え、
クリエイターとしての自分の苦悩。
何かを作るものならば、早口なセリフの中に聞こえるセリフに
「グサリ」と釘を撃たれるような感覚を覚えるはずだ
エヴァンゲリオンで「碇シンジ」の内面世界が描かれて以来、
内面世界を描かれる作品はあまり多くない。
碇シンジのような内面世界を描写してしまえば途端に
「エヴァのパクリ」と言われてしまうからだ。
しかし、この作品はそこに挑戦している。
あえてクリエイターの「内面世界」の描写に強烈に批判的かつ
強烈に刺のある言葉でクリエイターを攻め立てるようなセリフを
主人公である「アダム」に喋らせ、アダムに降り注ぐ。
クリエイターとしての悩み、クリエイターとしての自問自答。
自分が作ったものを自身を持ってエゴイズム限界で語る、
自分自身をも否定し、自分が作ったものに否定され、
自分が作ったものが作ったものに自分が作ったものを否定され、
自分が作っていないものまでも否定される。
それでも「クリエイター」は作り続けるのか?なぜ作るのか?
クリエイターとは何のか。
全体的に見て物凄く癖のある作品だ。
癖のある作画と癖のある演出、癖のあるセリフ、癖のあるテンポ、癖のある結末。
アニメーションを制作する彼らが、アニメーションや様々な創作物を創作する
クリエイターへと問いかける。
早口なセリフや哲学的セリフや小難しいセリフで直接的表現をさけつつ、
クリエイターの「苦悩」を抉るように表現し、最後に問う。
こんなに苦しむのにクリエイターを続けますか?と
主人公は言う。
想像するのは拷問だ、自分の世界は古いのか。
主人公が創作したものは言う。
同じような考えで同じようなものを作るほうが苦しまずに済むのではいか?
群衆は言う。
君たちにはオリジナリティはない、模造品だ
そして、この作品は問いかける、人に笑われても否定されても作り続けるのかと。
その群衆の「問い」に自称クリエイターと呼ばれる「アダム」は答える
泣きながら、感情を殺しながら。
「はい」
クリエイターであるはずの「アニメ制作」の人がこれを作っているのだ。
なんという自己否定、なんという自己嫌悪。
クリエイターでもない私が見ても「お腹が痛く」なるような
抉るような表現と言葉の数々は見終わった後に
なんともいえない虚無感すら感じるほどだ。
クリエイターならば是非、この作品を見て欲しい。
クリエイターでなくとも是非、この作品を見て欲しい。
何かを創作するもの、創作したものを見つめるもの。
誰が見ても、この作品の強烈なプレッシャーを感じるはずだ
1話完結だからこそクリエイターの「内面世界」の描写が
強烈なインパクトとともに伝わる。
これが30分も続いたらさすがにきつかっただろう(苦笑)
8分ほどの短編癪だからこそ、このプレッシャーを「面白い」と感じることができた
最初の一回は何がなんだかわからずに終ってしまうかもしれない。
だが、その後にもう1度見て欲しい。
この作品の抉るようなクリエイターの「内面世界」を感じられるはずだ
思わず何度も見て、もっとこの作品を味わいたくなる。
5回ほど見た辺りで若干気持ちも暗くなってきたので
3回位で止めることをオススメしたい(苦笑)
だけど、私は6回目を今見ようとしている・・・
はい。
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