評価 ★★★★★(85点) 全2話
あらすじ 秘宝「リトルコメット」を狙い東ドロアに潜入したルパン三世と次元大介。仕事に成功しての逃走中、一発の銃弾が次元を襲う!引用- Wikipedia
これぞ大人向けルパン
本作品は2012年に放映された「峰不二子という女」の流れを組む
ルパン三世のスピンオフアニメ作品、
監督は小池健、制作はテレコム・アニメーションフィルム
これぞルパンが本来持つ空気感
引用元:原作:モンキー・パンチ©TMS
見出して感じるのは「ハードボイルド」な空気感だろう。
普段のTVスペシャルやTVシリーズのコメディ調とは違う渋い音楽、
「劇画調」の作画はルパン三世という作品本来が持つ渋さとニヒルさを
感じさせてくれる
キャラクター同士の会話でさえTVSPとはまるで違う。
軽快ではなく、「ウィット」と言いたくなるような言葉遣い、
PG12指定されているだけあり「大人」を意識した絵作りと会話の脚本は
見出して感じる「インパクト」こそないものの、
じわりじわりと面白さが染み渡ってくる
銃火器の細かい描写、音。
そういったTVスペシャルではカットされがちな
「大人にこそ分かる渋い面白さ」の細かい表現、生々しい「銃撃」の演出など
劇場アニメーションという劇場の音響を意識した
重厚な音だけでニヤニヤとしてしまうほどだ。
ルパン三世という作品をアニメーションで描く上で大人向け、
子供を無視した原作基準なハードボイルドな作品に仕上げると、
こうも「絵」と作品から感じる面白さの「圧」が違うのか!と
感嘆の声を上げたくなるほどハードボイルドなアニメーション表現が素直に面白い。
ヤエル奥崎
引用元:原作:モンキー・パンチ©TMS
今作の敵は「ヤエル奥崎」だ。依頼人の支持に従う暗殺屋であり、
ターゲットの墓を事前に作り、サイコロでターゲットを
何発で殺すか決め、彼に狙われて生き延びたものは居ないという
何ともワクワクさせてくれる敵キャラだ。
コレがTVスペシャルにはない要素でもある。
「歯ごたえ」を感じる「魅力ある」敵キャラ、
メインキャラであるルパン三世や次元大介の魅力にふさわしいと感じる、
敵キャラが居てこそのルパン三世だ。
「世界一のガンマンは二人いらない」
次元大介のそんなセリフが染み渡る。
なぜ次元大介は狙われるのか、ヤエル奥崎に次元は勝てるのか。
シンプルなストーリーでありながらじわりじわりと面白さを湧き上がらせる
エロス
引用元:原作:モンキー・パンチ©TMS
この作品は大人向けだ、容赦なく血の表現があり、暴力的な表現も多い。
そんな大人向けであることを象徴するようなキャラクターが「峰不二子」だ。
お宝をセクシーな格好で盗み出そうとしたところを見つかり敵に捕まり、
服をひっぺがされて監禁される(笑)
当然、そこに謎のモヤや光はない。
きちんと「峰不二子という女」がいい意味で画面に刺激的なスパイスを与える。
峰不二子という女らしい色気と策略、お約束敵展開が
ハードボイルドの中の「色気」をきっちりと担っており、
TVスペシャルという家族で見ることを意識した作品では不可能なお色気描写が
本当に素晴らしい。これは決して「エロ」い意味でいっているのではない。
ストレートな「エロ」ではなく、少し恐怖感すら感じるような状況でのお色気が
ハードボイルドの中のお色気演出の魅力を醸しだしており
本来のルパン三世という作品の中の「エロス」を
この作品を通じて感じることができる
天才的頭脳と天才的射撃能力
引用元:原作:モンキー・パンチ©TMS
この「キャラクターの能力」が地味な雰囲気の中でしっかりと分かる。
派手なシーンづくりで派手にキャラクターの動かして見せつけるのではない、
しっかりと作りこまれた「雰囲気」の中で見ている側に伝わる。
早く動かすだけが脳じゃない。
きっちりとした「演出」をすることで魅せるシーンを作り上げている
ガンマンとガンマンの、まさに「息を呑む」対決を描いている。
次元大介が最初に彼に「負ける」理由まできちんと納得できてしまう。
次元大介の銃に対するこだわりと、ヤエル奥崎の銃に対するこだわり。
同じこだわりでも銃に対して愛着を持つ次元大介と、
銃に対して道具として使いこなすヤエル奥崎の違いが勝敗を分ける。
スナイパーに遠距離から狙われる緊張感、決定的に描写される次元大介の死、
話が進めば進むほど、積み重ねれば積み重なるほど
「ぞくっ」っとするような面白さが染み渡ってくる
ここまでが前編だ。この作品は前編と後編に分かれており、
前編で「次元大介の死」という強烈な引きを生んでいる
後編
引用元:原作:モンキー・パンチ©TMS
ハードボイルドに重く、ニヒルに、渋く前編が描かれており
後編は「ルパン」を主軸にすることで「ルパン三世」という作品の持つ
コメディさと爽快さ、そういったものが後編では全開になっており、
「どろっ」と暗く前編が終わり、その直後にすぐに爽快感溢れる展開になることで
雰囲気がガラリと変わる。
このおかげで若干淡々としていると感じる「前編」から
スピード感のある展開になる「後編」で見ている側に
「ダレ」や「テンポの悪さ」を感じさせず、
テンポよく前編の伏線を回収することで見事な爽快感を生んでいる
若干説明過多になりすぎている感じも否めないが50分という尺では仕方がない
緻密に計画を立て静かに遂行し、華麗に盗む。
「泥棒」というものを描いたルパン三世という作品らしい
ストーリー構成ともいうべき清々しさを感じるようなストーリー展開だ。
再戦
引用元:原作:モンキー・パンチ©TMS
特に後編終盤の展開は素直に、
本当に素直に「かっこいい」という言葉が口から漏れてしまう。
思わず体が痺れる感覚を覚えるほどアニメーションとして素直に
「かっこよさ」を感じるシーンになっている。
一度は負けた次元大介がヤエル奥崎に挑む。
ちなみに私は、あのシーンを見た時かっこよすぎて変な声が出た(笑)
次元大介がこだわった「ロマン」の勝利だ。
何とも次元らしいセリフと共に勝敗がつく。
ガンマンとしての「死」の描写、
二人が仕事を終えたあとに吸う「タバコ」の表現も
PG12だからこその表現であり、これぞ大人の私達が見たかった
ルパン三世だと思わせる作品だった。
総評:これがみたかった!
引用元:原作:モンキー・パンチ©TMS
全体的に見てこれぞ「ルパン三世」という作品だった
昨今の素直につまらないと言いたくなるようなTVスペシャルのルパン三世とは違う、
原点回帰的なハードボイルドなルパン三世、
ニヒルで渋く、素直にかっこいいと言えるキャラクターの魅力、
そんなキャラクターの魅力が光る「ストーリー」が見れば見るほど
話が進めば進むほど「面白さ」を見ている側に実感させていく。
はっきりいって最近のTVスペシャルのルパンは駄作ばかりだ。
本当にプロが脚本を作っているのか?と疑いたくなるほど
アニメとしてつまらない作品ばかりの中で、この「原点回帰」ともいえる作品は
ルパン三世という作品の新しい可能性を示唆している。
子供の頃にルパン三世という作品をテレビで楽しんだ子供達が大人になったからこそ
子供だましな脚本ではない、本来のルパン三世の面白さを再認識し
噛みしめるような作品があってもいいはずだ。
この作品はそんな「大人になった視聴者に送る」ルパン三世といっても過言ではない
たった50分、アニメにすれば2話だ。
だが、そんな50分の中でこの作品は「ハードボイルド」という作品の面白さ、
「ルパン三世」という作品の本来の面白さを存分に表現している。
この作風でぜひTVシリーズを見たい。
酷い駄作しか生まないTVスペシャルなどもう作らなくてもいいだろう。
この作風のルパン三世を、
大人になったルパン三世の視聴者の為もっと作って欲しい。
そう感じさせる作品だった。
個人的な感想:求めていたもの
引用元:原作:モンキー・パンチ©TMS
最後の2人のセリフ、二人のシーンがもう・・・本当にたまらない。
ああ、私はこんなルパン三世が見たかったんだ、このルパン三世が見たかったんだと
見終わった後に素直にそう思ってしまう作品だ。
特にセリフのセンスはTVSPにはないセンスだ。
そして憎い演出。
貴方は覚えているだろうか「マモー」を。
さぁ、気になった貴方はぜひこの作品を見るべきだ(笑)
ぜひ、同じスタッフでTVシリーズが作られることを期待したい。
定期的に映画やOVAで展開していくのも悪くはないだろう
「峰不二子という女」「次元大介の墓標」、次は彼だろうか。
TVスペシャルではギャグ要員にしかなっていない彼の魅力を
このテイストでぜひ味わいたいところだ。
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