大人になってもう1度泣ける、これぞリメイク作品
わさび版ドラえもんとしては第6作目にあたる。
テレビ朝日開局55周年記念作品として作られている
見出して感じるのは懐かしさだろう。
この作品を始めてみる子供にはそんな懐かしさは感じないとは思うが、
旧作を見た人なら序盤のシーンは「子供の頃に見た鉄人兵団」を強く思い出すはずだ
スネ夫の従姉妹が作ったロボット、ボーリングのたまのような球体、
空から突然現れるロボットのパーツ。
当時とは違いデジタル作画で綺麗に描かれてはいるものの
セル画で見た時と「変わらない」印象を覚えるシーンの数々は
リメイクとしての期待感を強く感じさせる序盤だ。
これまでのリメイク作品は同じシーンでもデジタル作画の綺麗さゆえに
演出不足になってしまい迫力不足になっているシーンも多かったが、
この作品は「デジタル作画」で綺麗になった分をきちんと音や見せ方で
迫力をつけており、きちんと「魅せる」シーンづくりになっている
特に男の子なら序盤の「ロボットのパーツ」がどこからともなく落ちてくる
期待感はたまらない。
ドラえもんの道具によって鏡の世界にゾクゾクとパーツが集まっていき、
徐々に、徐々に「巨大ロボット」が出来上がってくるシーンは
男のロマンすら感じさせる。そして出来上がったロボットのかっこよさ。
私がこの作品に好感が持てるのは「デザイン」をあまり変えていないことだろう。
「ザンダクロス」のデザインも基本的には変わっておらず、
セル画ではなくデジタル作画になったことでスッキリとしたフォルムになっており、
「コクピット」の描写などはセル画よりも洗練されており、
どちらがいいかは個人の好みにもよるが
「リメイク」したからこそのデジタル作画だからこその面白みが生まれている
特にザンダクロスを使って「高速道路」を華麗に飛び越えたり
バレエを踊ったりするシーンなどは思わずニヤけてしまう。
デジタル作画だからこその「軽い」動きをうまくザンダクロスの動きに活かしており、
その軽さだけではなく、ザンダクロスがもつ「兵器」の破壊力を
きっちりとした「重さ」のある演出でデジタル作画の欠点を消している
だからこそ違和感がない。
子供の頃に楽しんだ「鉄人兵団」を大人になって声優が変わり
デジタル作画になっても同じように楽しむことができる
同じシーンを同じように、同じストーリーを同じように楽しむことができるのは
リメイクならば当然のことではあるものの、
過去のドラえもんリメイク作品ではできていなかったことが
この作品できっちりと出来ている。
更にそこにギャグが追加されている。
これは「新ドラえもん」の特徴とも言えるのだが、
旧ドラえもんとは違い軽いノリやギャグが非常に多い
ロボットネタで「ドラえもん」が比較されたり、
鉄人兵団が攻めこんでくる焦りから警察に電話するシーンでのネタなど
旧作にはなかった「ギャグ」要素が新ドラえもんならではの見やすさを生んでいる
そしてリルル。彼女のキャラクターデザインも大きな変更がない
ただ、彼女に関しては旧作に比べると序盤から若干「人間」っぽさが強く
ロボット特有の無感情さや「怖さ」がなく、
人間の綺麗だけど怖いお姉さんのように仕上がっている所は賛否両論だろう。
だが、前述したとおり「新ドラえもん」ならではの見やすさを追求するなら
このキャラ変更は私は「アリ」だと感じている
更に最大の改変は「ピッポ」の存在だろう。
旧作を見た方にとっては「誰だソレ、また改悪かよ」と思うかもしれない。
軽く説明すると、このキャラクターは「ザンダクロスの頭脳」だ
ボーリングみたいな玉といえば思い出す方も多いだろう。
旧作では強制的に改造手術され仲間になったが、
恐らくその表現も今の時代は色々と問題なのだろう
旧作では低い声で怖さもあった彼だが、
本作品では明るい声で生意気な性格で「ひよこ」のような外観になっている
彼の存在のお陰で「見やすさ」がより強まっている
そして「ビッポ」の存在があることで「ロボット」であるドラえもんと
人間である「のび太」達の友情や、
鉄人兵団の奴隷制度や労働ロボット達の立ち位置がしっかりと見ている側に伝わる
「友達」という要素を前面に押し出すことによって
「のび太」という主人公の存在も強まり彼との友情が深まることで
ストーリーと作品に浸ることができる
色々と改変は多い。
だが「時代」の移り変わりによる表現の変化や、
見やすさと軽さ、ギャグテイストの強い「新ドラえもん」だからこその改変だ
旧作との違いがきっちりあり、その違いがまた面白さに変わっている
単純に「きれいな作画」でリメイクするのではなく、
新声優陣になったからこそ、新しいドラえもんになったからこその追加要素や
表現の変化は旧作とは又違う「面白さ」が出ている
「ビッポ」と「リルル」、この2人のキャラクター同士の会話が
旧作よりも分かりやすく「リルル」の考えの変化や心理描写を感じやすくさせており
のび太に対してのビッポ、しずかちゃんに対してのリルル、
人間とロボットの「友情」が徐々に、徐々に築かれて行くのを感じられる
特にのび太の一言で「ピッポ」が号泣してしまうシーンは
思わずこちらも涙腺を刺激される
彼の考え方の変化、心理描写は本当に秀逸だ
伝わりやすくなったからこそ終盤の二人の行動が強く胸に突き刺さる
鉄人兵団に5人で挑む中、「ピッポ」がザンダクロスに乗り込み戦うシーン、
旧作では絶対に見られなかった「ロボットアニメ」ばりの
素晴らしい戦闘シーンの中での彼の自己犠牲。
ボロボロになったザンダクロスの姿で最後まで「のび太」たちを守りぬく姿は
大人でも強く涙腺をくすぐられるはずだ
のび太の前で消えるピッポ、しずかちゃんの前で消えるリルル。
自分の存在が消えることを覚悟しても歴史を改編する二人の姿は
思わず涙が流れてしまうはずだ
そしてラストシーンでの二人の姿のおかげで温かい気持ちで見終わることができる
全体的に見て素晴らしいリメイクだった
序盤から中盤まではきちんと旧作通りにストーリーを進めつつも
デジタル作画によるアクションシーンの激しさや見やすさを生んでおり、
旧作と同じように本作品も楽しむことができる。
中盤からは「ピッポ」というキャラクターを新たに追加することで
より「心理描写」が鮮明になりストレートに見ている側にキャラクターの感情が伝わり、
最後の2人の自己犠牲、そしてラストシーンで思わず涙を流してしまう作品だ
欠点をいうなら「ミクロス」の存在が蔑ろになっていることだろう。
旧作ではコミカルに動きやセリフで印象に残っているキャラクターだが
本作では「ピッポ」というキャラクターを描くために削られてしまっている
ただ、「旧作」は「旧作」、「新作」は「新作」とイイ意味で区別がついており
どちらも基本的なストーリーは変わらず、少しずつつ違う面白さがある
単純にきれいな作画で新声優陣でリメイクするのではなく、
同じ内容の作品を同じように仕上げるのではなく、違った楽しみ方に仕上げるのは
素晴らしいリメイクの仕方だ。
旧作に思い入れが強い時になるところもあるだろう。
リルルの人間ぽさや、ミクロスの存在感の無さなど私も見ている最中には気になった
だが、終盤の展開からラストまでのシーンを見ると
そういった「気になっていた」モヤモヤは綺麗に消し飛び、
子供の頃と同じように楽しみ、子供の頃と同じように涙を流し
すっきりと温かい気持ちでこの作品を見終わることができた
旧作はあくまでも「藤子F作品」だが、
この作品は「アニメ新ドラえもん作品」だ。
藤子不二雄先生らしい作品から感じる「怖さ」や「圧」はないものの、
きちんと、その旧作をリスペクトしつつ子供が楽しめる
アニメ映画に仕上げているといえるだろう
ようやく、きちんと「見れる」ドラえもん映画ができたことは素直に嬉しい。
6作品目にして、ようやく人に進められる新ドラえもん作品だ
新ドラえもんに対して拒否感のある方もぜひ、騙されたと思って見ていただきたい
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