短編アニメだからこその「余韻」を楽しんで欲しい
制作は「ウルトラスーパーピクチャーズ」、監督はイブの時間でお馴染みの「吉浦康裕」
見出して感じるのは独特の「空気感」だ。
イブの時間を見た方なら伝わると思うが、吉浦康裕監督のキャラクターとキャラクターの
会話と会話の「間」の取り方が素晴らしく、
ヒロインが喋った時から生まれる「空気」とヒロインを見つめる主人公の心理が
会話と会話の「間」の空気感から読み取れる。
普通の「高校生」の会話のシーンだ、よくある、よく見るシーンでしか無い
だが、そんな「よくあるシーン」が空気感でここまで、いつもと違ったものに見えるのは不思議だ
本当に自然に「学校」でのキャラクター同士の会話が描かれており、
細かい描写が自然な間と空気感をうまく描写しており、
主人公の恋心、女の子同士の嫉妬などを冒頭の「5分」という尺の中で
台詞でストレートに伝えるのではなく「空気」と「間」で伝えている
そして個人の「世界観」というこの作品の主旨。
個人個人が仲良くなるには「似た世界」を持っているからだと主人公は思っている
少し「中二」的感覚の残り方が妙に高校生という立場の主人公のリアルさを産んでおり、
視聴者のあの頃を思い浮かばさせるようなシーンの数々だ
「自分の高校生の時こうだったな~」と刺激され、思い出がよみがえるようだ
そんなリアルな空気感を生んでいるからこそ
主人公とヒロインの「ストーリー」が気になる。
1度聞いた曲は忘れずに引くことのできる主人公と、
子供の頃から見る夢の中で聞く歌を知りたいヒロイン、
少しだけ特殊な能力を持つ主人公と秘密のあるヒロイン。
この2人の関係性、この2人の微妙な距離感、
少しずつ進む物語がまるで「小説」のページをめくるような感覚にすら囚われる
ストーリーが進むと「夢」というワードが出てくる。
音楽を通して主人公とヒロインが見るファンタジーな夢、
別の世界の出来事なのか、果たして空想なのか。
唯一それを理解し、見ることの出来た主人公に「同じ世界」を感じたヒロインと主人公、
そして共通の世界を感じてしまったからこそ「周囲」の関係も変化する
少しファンタジーな展開になっても「普通の高校生」というシーンは忘れずに描写するため
重くなりそうなシーンが続いてもふと「高校生」のシーンが間に挟まれるため重くなりすぎず
物語を見終わることができる
だが・・・最後に決定的な「すれ違い」が生まれて見ている側に強烈なインパクトを残す
全体的に見て非常によく出来た短編アニメだ。
本当に素晴らしい短編小説を読んでいるような感覚と
ちょうどいい世界観の描写と生々しい高校生の会話と間、
そして最後に決定的な主人公とヒロインの「すれ違い」と「勘違い」が描写されることで
見ている側が「あぁあ!!!」と思わず叫びたくなるようなラストを迎え、
物語の先が気になるところで物語が終わる。
この後2人がどうなるのか、すれ違いはどうなるのか。
生々しい心理描写と間と台詞があるからこそ、
主人公とヒロインの「今後」が気になる、今後のストーリーが想像できる
その「余韻」の素晴らしさが短編アニメの素晴らしさであり、
その「あとがきになる」所が短編アニメの欠点でもある。
実に短編アニメらしい素晴らしい作品だったといえるだろう
逆にこれが1クールのアニメの1話だったりすれば、
中盤以降物凄く重くなりそうな展開だったり、
逆に中二病ファンタジー全開な展開になって拍子抜けしてしまうかもしれない
そういった意味では「この2人の後」を描かないことによる
見ている側の「想像」が刺激される作品だった
また主人公とヒロインを演じた2人の声優さんの素晴らしい演技、
松岡禎丞さんの少し気弱な男子高校生の演技は
オドオドしすぎずちょうどいい「気弱さ」がより生々しい高校生になっており、
上田麗奈さんのあこがれの美少女というヒロインの演技から
「テンション」の上げ下げの激しい難しい演技がよりリアルな女子高校生になっていた
個人的には「沼倉愛美」さん演じるヒロインの友人のギャルっぽさが素晴らしかった
女性同士の嫉妬から生まれる少しの「いじめ」のシーンでの演技や距離感の演技、
あのキャラクターが居たからこそヒロインに対しての共感が生まれていた
アニメミライの短編アニメは時折「続編」や「テレビアニメ化」の企画が
立ち上がることもあるのでこの作品も2人の「先」が気になるからこそ見たいと思うのだが、
同時にこの「ストーリーの余韻」というこの作品の良さが続編が生まれることで
消えてしまうのももったいなとも感じてしまった。
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