両親の仕事の都合で田舎へ引っ越してきた一条蛍と、越谷姉妹や宮内姉妹などとの日々の光景を描く。そこは「牛横断注意」の看板があったり、バスが2時間おきにしか来ないほどの地方であった。
1話が45分に感じるアニメ、だが、それこそがこのアニメの魅力。
督は『ココロコネクト』の川面真也、シリーズ構成は『たまこまーけっと』の吉田玲子、
キャラクターデザインは『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』の大塚舞、
音楽は『神さまのいない日曜日』の水谷広実、
アニメーション制作は『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』SILVER LINKと
最近のアニメに関わっている人が勢揃いという感じのスタッフだ。
冒頭の3分、このアニメの見方を一気に教えられたような気分になる。
描写されるのは畑、交通量の少ない道、のどかに流れる水、古いが広く立派な家、
高い建物なんて全然ない山に囲まれた「田舎」の風景をじっくり、じっくりと見せる。
じっくりと見せた後に主人公のなんとも気の抜けた「声」が画面から響いてくる
思わず「肩の力を抜いて何も考えず、まったりとご覧ください」と
1シーン1シーンから言われているようななんともいえない空気感だ
登場キャラが喋る度にまるで風船から空気が抜けるように
「ふにゃ~」っとした「ほわ~」っとした不思議な力の抜け具合を味わうことが出来る。
キャラクターの動きも早くない、ゆっくり動く(笑)
まるでナマケモノのごとく「にゃんぱす~」という意味不明な言葉と共にゆっくりと手を挙げる動作や
朝食の話をしたかと思えば、その直後は無言w
もはや話のテンポなんてものはない、そんなリズミカルなストーリー展開ではなく
おばあちゃんの昔話を聞くかごとく「ゆっくり」「まったり」と話が進んだかと思えば急に止まる(笑)
そんな独特なリズムで田舎に住む少女たちの本当に些細な日常が描写される。
全校生徒5人、家の鍵は締めない、お店はコープと駄菓子屋だけ、
レンタルDVDショップは10駅先と田舎すぎる田舎で暮らす少女たちだからこその
日常描写はこの作品ならではのストーリーだ。
ギャグもあるにはある。
メインキャラの床が抜けるという会話から男子生徒が床にハマっている描写がされたりするのだが、
ハマっている彼はスルーだ(笑)
いわゆる「ボケ」のような物も唐突に挟まれるのだが一切突っ込みなし、
田舎に住む少女たちだからこそツッコミなんて野暮なことはしない、
ボケも天然過ぎてボケと自覚していないボケだからこそツッコミが無くスルーでも問題ない。
逆にそれが笑えてしまう、こっちが思わず「スルーか!」「突っ込みなしか!」と
心のなかで突っ込んでしまうギャグ描写だ。
ひたすらギャグをスルーするのがこれほど面白いとは思わなかった。
会話と会話の「間」が本当に独特で、田舎という舞台だからこその会話の間、
間の中で聞こえてくる虫や鳥の声、のんびりと車の走る音、
「田舎の音」が会話と会話の間に聞こえるからこそギャグという要素をスルーした間の面白さが生まれている
一歩間違えばダレてしまうテンポの微妙な加減はこの作品ならではの「面白さ」だろう。
これほど間の面白さを感じられる作品はなかなか無い。
そのせいで1話1話が長く感じる。
1話25分ほどのアニメではなく、45分位のアニメを見終わったような体感時間なのだが
、 決して間延びしている、ダレているわけではない。
会話と会話のテンポの遅さ、ストーリー展開のまったりさ、
この作品のそういった「ゆったり」した雰囲気のおかげで1話1話をじっくりと味わえるようになっている。
1話が長く感じるというのは普通は駄目な評価をするときに使う言葉だが、
この作品に限ってはもっと長くこの空気を感じていたいと思うほど絶妙なゆったりさだ。
そしてキャラクター描写。
メインのキャラクターは4人であり、それぞれがそれぞれの魅力を出している。
田舎に住む小学生、中学生と「東京から来た小学生」という立ち位置もいい対比になっている
「宮内れんげ」は小学1年生、最近のアニメだと小学1年生くらいの設定でも大人びたキャラもいたりするが
この「れんげ」というキャラクターは本当に1年生らしい1年生だ。
「にゃんぱす~」という謎の言葉や語尾に「のん」とつける点や
自分が住んでいるところは田舎なのか?という疑問など
あどけない小学1年生らしい可愛さが出ており、萌えとはまたちがった可愛さを生んでいる。
「越谷夏海」は中学1年生、明るいムードメーカーであり
ツッコミ・・・担当に見えるが突っ込まない(笑)
おそらく他のアニメならば盛大なツッコミをしそうな立ち位置やキャラではあるのだが、
ツッコミそうで突っ込まない、ツッコまなくていいところで突っ込むという
なんとも味わい深いキャラだ。
「越谷小鞠」は中学2年生だ。
演じている「阿澄佳奈」さんお得意の「ちっちゃくないよ!」なキャラなのだが、
周囲に可愛がられ、いじられる様子は可愛い(笑)
いわゆるアニメ的な萌えの可愛さではあるのだが、
4人の中では「一番の年上」という設定を活かした大人に憧れる中学2年生らしい魅力を出している
駄々をこねる姿など可愛くて仕方ないw
そして「一条 蛍」、この娘、4人の中で私は一番好きだ(笑)
東京から来た転校生という立ち位置から他の3人と違う立場なのだが、
田舎の色々な出来事やモノゴトの1つ1つに驚き、新鮮に受け止める様子や
「飴」をもらっただけで喜ぶ様子、「飴」をかえしてと言われたて泣いてしまう様子など
純粋に可愛すぎるキャラクターだ(笑)
キャラクターデザインや着ている服も東京から来た転校生という設定をきちんと活かしており
他の3人との対比がきっちりできているのは素直に評価したい点だ。
ストーリー的には田舎の少女たちの日常だ。
転校生が来たり、田植えしたり、駄菓子屋にいったり、夏休みに帰郷してきた友だちができたり、家出したり。
日常系というジャンルに恥じないストーリーの内容だ。
田舎という舞台だからこそ、その少女たちの何気ない日常ストーリーが光り、
見れば見るほど話数を重ねれば重ねるほど、この作品にはまっていく。
特に4話は秀逸だ。
「宮内れんげ」はどう世代の友達は居ない、全校生徒5人の田舎では当たり前だ
そんな彼女に田舎に帰郷してきた「ほのか」という友だちができる。
初めて出来た同世代の友達に彼女ははしゃぎ、毎日彼女と楽しそうに遊ぶ。
しかし、彼女は唐突に田舎から帰ってしまう。
「宮内れんげ」はそのことを初めて聞いた後、じっくり、じっくりと受け入れる。
彼女の無表情を画面いっぱいに映し出し、
じっくりとその表情を視聴者に見せつけたあとに彼女に涙をこぼさせる。
「えーん!えーん!」と泣くわけではない、じわりじわりと彼女の寂しさが見ている側に痛いほど伝わってくる。
ここでも「間」の使い方のうまさを感じさせる演出だ。
これほど「無言の間」を上手く使いこなしてる作品は他にないかもしれない。
キャラクターが無表情に固まる、無言で流れる時間、そういった「静寂」がこの作品の中では多様されており
それが時には笑いに繋がり、時にはキャラクターの可愛さに繋がり、時にはしんみりとした気持ちにさせられる
会話と会話に挟まれる間をうまく使いこの作品の魅力と雰囲気を最大限に醸し出している
個人的には食べ物の描写にも目が行った。
かき氷、昔ながらの和の朝食、きつねうどん、きゅうり、果物、
そういった「田舎」の雰囲気溢れる料理や食べ物の数々は田舎の雰囲気をより良く醸しだしており、
そこに更に細かい点まできちんと描写されている田舎の背景や古びた学校や昔ながらの家など
料理だけではなく、キャラクターの作画だけではなく、
きちんと「背景」までこだわって描写されているからこそ、この雰囲気をより良いモノにしている。
全体的に見て素晴らしい日常アニメだった。
1話を気に入れば確実に最終話まで楽しめる安定した面白さを保っており、
静かに1話が始まり、静かに最終が終わる。
この「のんびり」と「しっとり」とした雰囲気を最後まで味わうことの出来る作品だ
それゆえに、最終話が静かに終わると不思議な「寂しさ」を感じる作品でもある。
終わった後にこの作品の雰囲気、キャラ、ストーリーにハマっている自分を実感することが出来るはずだ
もちろん欠点もある。
「のんびり」とした雰囲気は人によっては「間」とあいまって退屈に感じやすく、
癖のないキャラクターは強い個性を感じるキャクターとはいえない、
更に刺激のないストーリー展開はのんびりした雰囲気のせいもあり、合わない人はとことん合わない内容だろう。
しかしそれでも、その欠点を飲み込むほど徹底した田舎の描写、田舎の音、綺麗な季節の描写など
日本の昔ながらの良さを感じる背景がのんびりとした雰囲気を欠点ではなく魅力に変え、
その雰囲気の中で淡々とした描写と独特の「間」によるストーリー展開でシュールともいえる笑いを産んでおり、
その舞台でキャラクターが生き生きと動いていた。
微妙な表情の変化や、些細な表情の変化による声優の演技などアニメーションの面白さも強く感じられる作品だ。
ストーリー、キャラ、作画、曲、声優、雰囲気、テンポ。
欠点が殆ど見つからず、あとは見る人の「好み」の問題だ
見れば見るほど癖になる作品なだけに1話でぴんとこなかった方も4話までは様子を見てほしい
きっとその頃にはこの作品の「空気」が好きになるはずだ。
原作がマダ続いている作品なだけに2期を強く期待したい。
DVDの正確な売上がレビューを書いてる時点では不明なため何とも言えないが、
1巻は初日に完売している店もあったようなので売上的には悪くないはずだ。
2期、強く切望しております。
久しぶりに全話見終わった後にもう1度最初から見てしまった作品だった。
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