鳴子、松雪集、鶴見知利子、久川鉄道ら6人の幼馴染たちは、かつては互いをあだ名で呼び合い、「超平和バスターズ」という名のグループを結成し、秘密基地に集まって遊ぶ間柄だった。しかし突然の芽衣子の死をきっかけに、彼らの間には距離が生まれてしまい、それぞれ芽衣子に対する後悔や未練や負い目を抱えつつも、高校進学後の現在では疎遠な関係となっていた。
あの夏に忘れたものはありませんか?
監督は長井龍雪、脚本家は岡田麿里
ノイタミナ枠で放映された作品だ。
基本的なストーリーは青春系。
引きこもりになっている主人公の前に小学校の頃、事故で亡くなった「めんま」が現れる。
主人公は、事故で亡くなる前、めんまに「ブス」と言って謝っていないことを後悔しており
「めんま」が亡くなったことで、その時に仲よかった友達とも疎遠気味になっていた。
「めんま」は主人公に願いを叶えて欲しいという所からストーリーは始まる
小学校の頃仲よかった友達と、成長すると疎遠になる。
そういうことはよくある、この作品では
二人は進学校へ、二人は底辺高へ、一人は自由人とそれぞれの道を進んでおり、
それぞれの立場で悩みがあり、思いがあり、暮らしている。
序盤の段階では小学校の頃仲良かった友達同士はどこか遠慮がちでどこか壁ががある
そんな状況で主人公である仁太だけが「めんま」の姿が見える。
彼女の姿は主人公たちと同じく成長しているが、性格や行動や言動は小学校の頃ままだ。
変化した5人と違い彼女だけは昔のまま「仁太」に無邪気に接する。
それは同時に主人公をイラつかせるが、それと同時に主人公が変わるキッカケにもなっている。
登場人物は「あの頃は良かった」と思いながら「あの頃に置いてきてしまった思い出」を
もう1度噛みしめるように「めんま」のお願いを叶えようとする。
ゲームのレアモンスターをゲットしようとしたり、秘密基地にみんなで集まったり、
そんな中で登場人物達は徐々に「あの頃」の距離感、「あの頃」と同じように戻っていく
それは「あの頃」とは違い成長している彼らの今の悩みも少し実解決していく
引きこもりだったり、変わらない自分だったり、終わらない初恋だったり、
徐々にあの頃の彼らを重ねつつ今の彼らが変化していく。
このストーリーの演出は憎い。
10代後半になれば、誰しもこういった経験や思いは少なからず経験しており、
視聴者のセンチメタリズムをくすぐる。
あぁ、そういえば自分にはこういう友達がいたな、子供の頃はこういう遊びをしていたなと思い出させる。
同時にEDテーマの「secret base 君がくれたもの」が流れる。
20代以降ならご存知のこの楽曲は、10年前にリリースされたZONEの曲だ。
センチメタリズムをくすぐられているところに、更に追加打撃を与えてくる。
トータルすると、このアニメは視聴者を「泣かせ」にきてる。
随所随所に盛り上がりを入れ、登場人物たちのセリフで涙腺を刺激する。
一人ひとりのキャラクターを生かし、リアルにそこにいて自然にストーリーを展開していく
様々な問題を抱えた登場人物たちが「めんま」の存在によって少しずつ代わり変化していく。
丁寧に描写されたキャラクター描写で変化した彼らは
今度は「めんま」がいなくなってしまうことでの変化を恐れる
このストーリー自体は、似たような話は実写では多々ある。
いわゆる黄泉がえりは作中でも出ていたが、まさにそれだ。
ただアニメでこういったストーリーは新鮮味があり、
そこに声優による演技と演出、そして音楽がうまく兼ね合わされ
一週間おきに見るのではなく、全11話一気に見ることにより
そういった細かい部分も吹き飛ばして、涙が流れてしまう。
特に声優さんの演技は光る。
これが中途半端は声優ならここまでの感情移入は難しい。
きちんと演技のできる、きちんと叫ぶことの出来る、きちんと泣くことの出来る
しっかりとした演技のできる声優さんの演技だからこそ、
きちんとキャラクターを魅せ、きちんとキャラクターが生きてくる。
全体的に本作品は完成度が非常に高い。
11話という尺の中で、若干描写不足に欠ける部分もあったが
11話という尺を考えれば、これ以上どうストーリーを描写すればいいのだろうか
ただ、脚本家が少ない話数で描きたい事がもっとあったと感じさせる部分があり
そういった面でストーリー的に「気になる」箇所はいくつかある。
特に終盤では終盤の勢いに任せた部分があった
更にいえば、あなるというアダ名や中盤でのあなるが不登校など「必要か?」と思う部分もある。
後半では「めんま」が筆談をしだすが、もっと早くから出来なかったのか?
など根本的に気になる部分はあるが
だが、そういった部分を演出と勢い、そして声優さんの演技でうまく覆い隠し
吹き飛ばして作品全体としての完成度は高いと感じさせる。
特に最終話の超平和バスターズとしての子供の頃から思っていた、隠していた感情や秘密を暴露し
ようやく互いを理解でき、子供の頃と同じように接することができるようになる。
だが、それは同時に「めんま」との別れを示唆しており、
主人公にしか見えてなかった「めんま」の姿がお別れのときだけ、他の友達にも「めんま」が見えるようになり、
別れが訪れる。
岡田麿里脚本の真骨頂とも言える「叫び」と「泣き」が最高潮に高まり、
そこにしっかりとした声優さんの演技が重なる。
一人の一人のキャラクターがしっかりと作られ、生きている。
アニメなのに、アニメ的でははない、だが、アニメ。
非常に「ノイタミナ枠」らしいアニメだな~という空気感たっぷりで全11話見ることができる。
しかしながら、非常に好みがわかれる作品ではある。
この手の作品は視聴者を泣かせるために全て考えられており、予めラストは決まっているのが想像しやすい。
故に、毎週ストーリーが気になるという感じではなく、
一気に見なければ作品に対する感情移入が維持しづらい部分もある。
人によっては「泣け!」と言われているように感じることもあるだろう。
私も最初は泣く作品だと聞いていたのでクールに見ようと構えていたのだが、
残念ながら終盤で涙腺は崩壊してしまった・・・(苦笑)
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください