前作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のラストで少佐こと草薙素子が失踪してから4年後の2032年が舞台。
少女型の愛玩用アンドロイド「ロクス・ソルス社製 Type2052 “ハダリ(HADALY)”」が原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺するという事件が発生した。被害者とメーカーの間で、示談が不審なほど速やかに成立し、被害者の中に政治家や元公安関係者がいたことから公安9課で捜査を担当することになり、公安9課のバトーは、相棒のトグサとともに捜査に向かう。
圧倒的な映像、難解なストーリー、これが押井守の世界だ。
本作品は2004年に公開された劇場映画作品。
『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の続編にあたる。
基本的なストーリーはSF。
前作のラストで人形遣いと融合した草薙素子。
そんな彼女が失踪して4年がたち、バトーはとこか憂いを秘め
九課のチーフ役にはトグサが務めている現状だった。
そんな中、愛玩用アンドロイドが暴走を起こし持ち主を殺すという事件が起きた
なぜ愛眼アンドロイドは暴走したのか・・・公安9課は捜査を始める
という所からストーリーは始まる。
序盤から引き込まれる。
愛玩用アンドロイドが急に動き出しバトーに遅いかかかる。
それだけのシーンなのだが、あえて速い動きではなく
ゆっくり、ゆっくり、まるで魅せつけるかのように叩きこんでくる。
アニメーションではあるのだが1コマ1コマしっかりしたカラー漫画を見ているな
1シーンごとの印象を強く脳内に植え付ける。
圧倒的な「絵力」というのを感じることができる
更に戦闘シーン、中盤の戦闘シーンの迫力はかなりの見どころだ。
それまで淡々とストーリーを追い、その最中にバトーとバトーが飼っている犬との
何とも言えない日常生活を描き、刺激的なシーンは少ない。
しかし、唐突に激しい戦闘シーンが差し込まれる。
主観で描かれる銃撃シーンの銃撃の音、重さなどの音響のこだわりと
電脳をハックするという攻殻機動隊らしい戦法で一気に脳に刺激を与えられ、
更にその後の戦闘シーンの迫力は凄まじい。その戦闘シーン自体は2分とない。
しかし、アンドロイドの腕をねじ切るなんてシーンは
普通の発想では絶対に生まれないような斬新かつ洗練された描写だ。
ねじれる肌と破壊された時のパーツ、脳からドーパミンが出るのを感じるほどの
濃すぎるまでの戦闘の内容は驚嘆のため息意外でない。
カメラワークもかなり凝っており、主観のカメラワークの切り替えなど
アニメでありながら実写的なカメラワークは見ていて非常に面白く、
印象的シーンをより印象的に魅せている。
ストーリー的にはかなり複雑・・・というよりも難解だ。
本筋のストーリー自体はそこまで難しい話ではないのだが、
本筋の流れを補足する要素が哲学的な要素がかなり多い。
様々な書物からの言葉を引用して物語の本質を追っていく形になっており、
まるで外部記憶という端末のある未来だからこそのある意味リアルな
高いレベルでの「会話」は面白くはあるが、反面全てを理解するのが難しい。
人の生き方、考え方、神、電脳化された生物、
そういった「個人」の考え方がこの作品には詰まっており、
その個人の考え方に共感できるか否かで物語の本質を面白いと感じるかどうか別れる
ある意味、1人の人間の考えに共感できるかどうかという印象だ。
「私は人の電脳化の末の生き方をこう思っている」
その主張を映像の印象と共に強くたたきつけられる。
それには歯向かいたくなるか、叩きつけられるだけか、
それとも強くたたきつけられたことさえ気づかないか。
ストーリーの本筋を表現する要素があまりにも回りくどく語っているので、
人によって好みが分かれる内容であることは否めない。
1回見ただけでは全て理解できる作品ではなく、何度も見た後に
監督のインタビューなどを見て、ようやく「それが言いたかったのか」とわかる。
映画という作品の中だけでは制作側の主張が抑えきれなく、
故に、難しい言葉と引用で言葉を省略し説明を省いたという印象もある。
そんな難しい内容をある1匹の犬が少しだけ柔らかくする
彼はバトーが飼っている犬なのだが、
ここまで可愛らしい犬の描写は今までのアニメの中ではないぐらい可愛らしい。
たれた耳、若干だらしない体、愛くるしい表情、バトーへの愛。
少佐を失ったバトーが求めた癒しが、見ている側の癒しにもなっていた。
全体的に見て、とてもじゃないが万人受けできる内容ではない。
100人が見れば、20人は絶賛し、25人は難しかったが面白かったといい、
25人は普通といい、20人はわけわからなかったといい、10人は犬が可愛かったと言う
そんな千差万別な感想が生まれてしまう作品だ。
さらに言えば前作を見るか原作を読んでいなければわかりにくい部分もある。
特に少佐に関しては唐突に現れるので、前作を見ていない方には
誰アレ?状態になってしまう。
しかしながら、圧倒的な映像美は昨今のアニメにも負けていない・・・
いや、昨今のアニメと比べるのもおこがましいレベルの映像美になっており
演出、カメラワーク、動きなど全てが斬新で刺激的な映像だ。
アニメーションとしての面白みを目と耳と脳でしっかりと感じることのできる作品だ
前作を見て面白いと感じたなら、ぜひこの作品を見て損はない。
哲学的な要素を除けば本筋のストーリー自体はわかりやすい
残念なのは圧倒的に主張の強い作品なだけに好みが分かれるということだ。
主張の強さがこの作品の「個性」でもあるが、
個性の強さは作品のアクの濃さにも繋がってしまっていた。
個人的には以前見た時は映像スゲーという印象で終わってしまっていた作品だったが
改めて見ると、この作品の映像美は「凄い」という単純な言葉だけでは
語り尽くせないほどの完成度になっている事に気づいた。
ストーリーの内容もたしかに難解ではあるが、
私個人としては他のアニメでは味わえないレベルの難解さは純粋に
面白みと感じることが出来た。
まだ見たことがない方はぜひ、前作と合わせてご覧ください。
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